映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ドミノ 復讐の咆哮」 ブライアン・デ・パルマ

2020-02-20 05:42:16 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「ドミノ 復讐の咆哮」を映画館で観てきました。


映画「ドミノ 復讐の咆哮」はサスペンス映画の巨匠ブライアン・デ・パルマ監督の8年ぶりの新作だ。しばらく噂を聞かないのでもうあの世にいってしまったのかと思ったくらいである。現在79歳まだまだ頑張る。ブライアン・デ・パルマ監督は顧客をビックリさせるのが趣味のようなところがあり個人的には好きだ。いよいよ久々新作を出すということで、刑事ものサスペンスという事前情報だけで映画館に向かう。


残虐な殺人手法や刑事と犯人のやりとりにピノ・ドナッジオの音楽独特の恐怖感を誘うストリングスがからむ。いかにもブライアン・デ・パルマ監督の匂いだ。その道50年以上の洋食屋にいって、昔からある名物のメニューを食べるような錯覚を覚える。前作パッションはサスペンス映画の醍醐味を見せてくれた。終盤戦のドキドキ感ある画面分割を使った映像ががよかった。でも、今回はいつものブライアン・デ・パルマ監督作品ほどエロティック度は少なめでビックリはさせてくれないなあ。

デンマーク・コペンハーゲンの刑事クリスチャン(ニコライ・コスター=ワルドー)とラース(ソーレン・マリン)は、市内パトロール中にある殺人事件に遭遇。クリスチャンは、殺人犯タルジ(エリック・エブアニー)を取り押さたが、隙を衝かれた際に同僚ラースが重傷を負う。さらには謎の男たちにタルジを連れ去られてしまう。

拳銃の不携帯というミスでラースを危険に晒したクリスチャンだったが、自身への失望と怒りから、上司からの謹慎処分を無視、同僚の女刑事アレックス(カリス・ファン・ハウテン)と共に元特殊部隊員の過去を持つタルジを追う。その頃、米国CIAの男・ジョー(ガイ・ピアース)らに拉致されたタルジは、家族の命と引き換えに、ある危険なミッションを命じられていた―。(作品情報 引用)


1.古典的サスペンス場面
もともとは2人乗りのパトカーに乗り、早朝4時の巡回運行の時に現場に向かったときの出来事だ。ブライアン・デ・パルマ監督得意のエレベーターでのアクションからスタートする。2人がエレベーターに入ると、乗ってきた黒人男性のスニーカーに血がついている。おかしいと感じて手錠をつけて逮捕する。


先輩刑事ラースに男を預けて、クリスチャン刑事は事件があるという部屋に向かうと指がカットされ拷問を受けたと思われる死体があった。あわてて被疑者のもとへ戻ろうとすると、すでに黒人男性は手錠を巧みに外して先輩刑事の喉もとを切りつけ屋根に逃げる。先輩刑事の介護をしようとしたら大丈夫だといわれ、屋根伝いに逃げる男を追う。

このあたりはいかにも古典的サスペンスの手法だ。誤って転落する寸前に軒樋にぶら下がる姿は1950年代のヒッチコック映画を彷彿させる。それに数々のブライアン・デ・パルマ監督でおなじみのピノ・ドナッジオの音楽が鳴り響くと、時代が数十年さかのぼる錯覚を得る。でも、現代の機器である携帯電話もインターネットもある。犯罪にはドローンの利用もある。しかし、ブライアン・デ・パルマ監督が持つ元来のリズムがそうは変わることはない。

2.出会ったことある出演者たちとスタッフ
主人公ニコライ・コスター=ワルドーの顔を見てどっかであったことあるな?と思ったけど、思い出せない。デンマークの映画なんだっけと思いながら、自分のブログを検索するとぶちあたったのが「真夜中のゆりかご」だ。デンマーク版「チェンジリング」で運悪く自分の子供を亡くした刑事が捜査に入った家の赤ちゃんと交換する話だ。


新たな相棒になる女性刑事役のカリス・ファン・ハウテン「氷の微笑」で有名なオランダ映画の巨匠ポール・ヴァーホーヴェン監督ブラック・ブックの主演女優である。この映画はよくできた傑作で、カリス・ファン・ハウテンが汚物まみれになったり体当たりの演技をしていたのが記憶に新しい。でもこの映画でその彼女だとは全く気がつかなかった。ここでは犯人に刺されて重体になった刑事と不倫をしているという設定だ。立ち回り場面もあったがさすがにアクションは得意ではなさそうだ。


音楽のピノ・ドナッジオは調べるとエルビス・プレスリーのラスベガスステージでのカバーがもっとも有名な「この胸のときめきを」の作曲者で、サンレモ音楽祭で自ら歌ったという。これには驚いた。この曲これまで1000回以上いろんなバージョンで聴いたことあるがこんなことは全く知らなかった。


さすがブライアン・デ・パルマ監督だけあって音楽のピノ・ドナッジオだけでなく撮影もスペインのペドロ・アルモドバル作品でも撮影監督を務めるホセ・ルイス・アルカイネと強力なスタッフがバックを固める。ただ、撮影と編集に関しては前作パッションの方がよかったなあ。

デンマークが舞台だ。行ったことのない場所の映像は観ていて楽しい。犯人を追って異国に移り闘牛会場でのパフォーマンスやオランダでの狂信的イスラム教徒の振る舞いも観られる。でもブライアン・デ・パルマ監督作品と期待していった割にはもう一歩かな?五反田の老舗洋食屋「グリル・エフ」のビーフシチューを食べている感覚だな?
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映画「1917 命をかけた伝令」 サム・メンデス

2020-02-19 06:43:54 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「1917 命をかけた伝令」を映画館で観てきました。


映画「1917 命をかけた伝令」はゴールデングローブ賞作品賞を受賞してアカデミー賞の本命と言われた作品である。「アメリカン・ビューティ」「007スカイフォール」「007スペクターサム・メンデス監督が祖父から聞いた話をもとに脚本を作り自ら監督をした。第一次世界大戦中に最重要伝令を伝えるために敵の陣地を抜けて味方部隊がいる最前線に進む英国軍の2人の兵士を追う。

映画を観ていて主人公にシミュレーションゲームのように数々の難関が押し寄せる様子は太宰治の「走れメロス」を連想した。一筆書きのように連続してワンカットで主人公を追っていく。ワンカット作品では「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が有名である。

カメラワークが実に素晴らしく、緊迫感のある中でさまよいながら進んでいく主人公を捉える。撮影監督ロジャー・ディーキンスのアカデミー賞撮影賞の受賞は当然とも言うべきカメラ捌きといえる。

第一次世界大戦中の1917年、欧州西部戦線ではドイツ軍と連合国軍の消耗戦が続いていた。4月6日、イギリス軍のマッケンジー大佐の部隊は撤退したドイツ軍を追撃していたが、敵軍は退却したと見せかけて、要塞化された陣地に最新兵器を揃えて待ち構えていることが判明する。明朝の突撃を中止しなければ、1600人の友軍の全滅は避けられない。伝えるための電話線が切れている。

英国軍の兵士スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)は、大佐の部隊に戦闘中止を伝達する命をエリンモア将軍から受ける。

ドイツ軍の占領地に分け入る2人に、敵が仕掛けたトラップが襲いかかかるが。。。

1.押し寄せる難関
相手の砲撃から身を守るための塹壕(ざんごう)が延々と続いている。その中を伝令を受けた二人は延々と歩く。それをカメラが連続的に追う。そのあとで敵の陣地だったエリアを歩く。たしかに相手は撤退しているように見える。しかし、洞窟のような場所をさまようとトラップに引っかかる。爆破でスコフィールドは埋まってしまう。それをブレイクが助ける。スコフィールドは目が見えない。なんとか立ち上がり目的地に向かう。

数軒の空き家が見える。誰もいない。上を見上げると、ドイツ軍と自国軍の空中戦がおこなわれている。ドイツ軍機が墜落してきて空き家にぶつかる。思わず敵のパイロットを助けようとしたら、ブレイクがうずくまっているのであるが。。。


このような形で、シミュレーションゲームのように難関が2人に襲いかかる。味方の部隊の車に助けられるが、車が泥沼に埋まったり橋が爆破されて車がこれ以上行けない。一人で潰された橋を渡って向かおうとすると、ドイツ軍の兵士の銃撃を受ける。こうして戦場の中、常に殺されるかもしれない緊張感の中で進んでいくのだ。


2.走れメロス
メロスは自分を処刑するなら、3日待ってくれといい、親友を人質にして妹の結婚式に向かう。ちゃんと帰らないと友人が処刑される。結婚式を終え戻ろうとすると、山賊に襲われたり、激流の川に流されたりする。やっとの思いで帰還するストーリーを連想してしまう。

主人公は敵の射撃から逃げるために川に飛び込む。一気に流される。このあたりもカメラがずっと追っている。セットなのか、実際の川なのかわからないが、主人公は大変な目に遭う。

流されて死んでもおかしくない。死体も川にはたくさん岸に積んである。

戦争映画と言っても、相手との攻撃を映すというわけではない。伝令をうけたまま、なんとか伝えようと懸命に陣地へ向かう兵士に押し寄せる難関をどう乗り越えていくのかをみせる映画である。それにしてもロジャー・ディーキンスの腕前には承服した。次に彼の映すカメラワークをみるのが楽しみである。
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映画「罪の手ざわり」 ジャ・ジャンクー

2020-02-14 19:32:52 | 映画(アジア)
映画「罪の手ざわり」は2014年公開の中国映画だ。


昨年観た作品の中では、ジャ・ジャンクー監督の「帰れない二人」は年を代表する傑作である。スケール感がある。自分のブログで昔の作品をチェックすると、「罪の手ざわり」が下書きのままになっていることに気づく。 ジャ・ジャンクー監督 作品の常連チャオ・タオがナイフを振り回す流血シーンが印象的で凄みを感じた。ところが、4つの物語をどうまとめて書くか頭が混乱している形跡がある。もう一度再見してみると、現代中国の縮図になっている作品だ。改めてブログを清書してみる。

ダーハイは山西省・烏金山に暮らす炭鉱夫。彼は、村の共同所有だった炭鉱の利益が、同級生の実業家・ジャオによって独占され、村長はその口止めに賄賂をもらっているのではないかと疑い、大きな怒りを抱いている。
「お前を訴えてやる」とジャオに伝えたダーハイは、ジャオの手下たちによって暴行され、大けがを負う。街の広場で演じられていた古典演劇「水滸伝」の主人公、林冲の「憤怒により、剣を抜き……」という言葉に自らの思いを重ねるダーハイ。帰宅したダーハイは猟銃を持って、役人たちのもとへと向かうが。。。(作品情報より)


重慶に妻と子を残し出稼ぎのため村を出たチョウが、正月と母親の誕生祝いにあわせて帰省した。「三男が帰ってきた!」という村人の声とともにチョウが帰ってくると、チョウの妻と幼い息子は複雑な表情で彼を迎える。
「送金を受け取ったわ。13万人民元。最後のは山西からだった」「武漢で稼いで、山西から送ったんだ」
出稼ぎとはいえ、各地から大金を振り込んでくる夫を怪しむ妻は、そっと夫のデイパックを開き、銃の弾倉を見つけてしまう。さらにそれぞれ行き先の違う切符を発見した妻は、「広州に行くの? それとも宜昌? 南寧? この村にいたらいいじゃない」とつぶやく。彼女は夫が何の仕事をして大金を送ってくるのか、ただの出稼ぎではないことに気づいていた。翌日、身支度を済ませると、チョウは街へ向かい、バッグを預けた後、金持ちそうな女を追い銃を向ける。(作品情報より)


夜行バスで湖北省・宜昌(イーチャン)に到着した男、ヨウリャンがカフェへ向かうと、恋人のシャオユーが待っていた。二人はもう何年もの付き合いになるが、ヨウリャンには妻がいる。「奥さんをとるなら、私と別れて。お互いに考えて決めましょう」


話し終えて再び別れると、シャオユーは勤め先の風俗サウナに戻る。彼女はここで受付係をして働いていた。
ある日シャオユーが勤務を終えて、勤め先の未使用ルームで洗濯をしていると、二人の男が「マッサージしろ」と部屋に入ってくる。自分は娼婦ではない、と断るシャオユーに男たちは執拗に迫るが。。。(作品情報より)

シャオユーの恋人、ヨウリャンが工場長を務める広東省の縫製工場で働く青年シャオホイは、勤務中に別部署のスタッフに話しかけた時、スタッフはうっかり機械に手をはさみ大怪我をしてしまう。スタッフが休んでいるときの給料はお前が払えと言われたシャオホイは逃げ出すように仕事を辞めてしまう。彼が向かったのは、東莞(トングァン)。より高給な仕事に就くために、香港や台湾からの客を相手にしたナイトクラブ「中華娯楽城」で働くことにした。この店でシャオホイは、東莞に向かう列車の中で偶然乗り合わせたしっかり者のホステス、リェンロンと出会う。


彼女と休憩時間に話をしたり、休日一緒に出かけたりして親交を深めるうちに、リェンロンに恋をするシャオホイ。ついに彼女に思いを告げるが、彼女には誰にも告げていない秘密があった


1.印象深いシーン1(オンナの逆襲)
不倫をして略奪愛に燃えるシャオユーが勤めているのはサウナだ。受付と雑務をしている。サウナには虎視眈々とオンナを抱きに来ている男たちが来る。普通に指名すればいいものを、サウナの中で雑務をしているところを客に見染められる。素人がいいと。お金はいくら出してもいいという顧客2人に対して徹底的に拒否する。

そのうちに言うことを聞かないので、1人の男がシャオユーを引っ叩く。一回ならず何度も引っ叩く。これでもかと。その時、シャオユーはナイフを暴力振るう相手に向けて切りつける。血が噴き出す。初めて見たときこのシーンには本当に驚いた。今回も同じだ。


不倫をしている2人、女性が買われるサウナ、切りつけるオンナ
恐ろしさを感じる。

2.印象深いシーン2(中国版風俗で働く女)
最初見たときも4話が気になった。いわゆる中国式風俗営業が垣間見れたからである。繊維工場で人にけがさせて、その分働けと言われて飛び出した青年が、東莞市(トングァン)の夜總会で働き始める。そこでは若き美女たちが金持ちのオヤジたち相手にカラダのお付き合いをする。夜總会でお客への顔見せで、買われる美女連があでやかな服装を披露する姿などが映る。中国映画では意外と見たことない。

自分はマカオでサウナと夜總会は経験している。まさに男性天国だ。映画に映る夜總会の女の子はまだ若くてかわいい。化粧を落とした姿は芦田愛菜にそっくりである。そんな女の子に青年は恋する。ここを逃げだそうと。でも彼女には3才の子供がいるのだ。生活をしなければならない。よくある恋の話である。

東莞(トングァン)という街をここではじめて知った。あやしいネオンサインが娯楽天国マカオを連想させる。場所は香港、マカオから深圳を隔てて北側に位置して830万人も人口がいるそうだが、性都とも言われる売春天国だという。へー!こんなところがあったのか!でもここへの交通手段は知らず、観光目的の日本人にはなじみが少ないかもしれない。ここでのきわどさは現代中国を象徴する何かを感じる。

3. 節操のない暴力
第1話と第2話を見返しても、説明が少ない。解説にもっともらしいことが書いてあるが、よくわからない。中国映画の傑作は映像で何かを感じさせようとする傾向があり、比較的説明が少ない。気がつくと暴力を振るっている。第2話の主人公は山賊のようなチンピラ兄ちゃんに金を出せと脅かされ、所持している拳銃でチンピラ3人を撃つ。いきなりのこのシーンで度肝を抜かれる。
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映画「ナイブズ・アウト」 ダニエル・クレイグ

2020-02-12 17:36:08 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ナイブズ・アウト」を映画館で観てきました。


映画「ナイブズアウト」は007のジェームス・ボンドことダニエル・クレイグが探偵に扮して事件の謎解きをする作品である。亡くなった著名ミステリー作家が自殺なのか他殺なのか、その謎を探るために雇われた探偵が故人に関わる全員の聞き込みをまとめながら真相に迫るというストーリーだ。

スターウォーズのライアンジョンソン監督がアガサクリスティーのミステリーを意識して脚本を書いたという。通常この手のミステリー映画の場合、時代が遡る場合が多い。ここでは現代の設定でインターネットもスマートフォンも存在する。古典ミステリーに範を持ちながら現代のペースでストーリーが進む。娯楽としては一級のミステリーでそれなりに楽しめる。

人気ミステリー作家で財も残しているハーランスロンビー(クリストファー・プラマー)が誕生日を祝うホームパーティの翌朝、屋根裏の自室で亡くなっているのを家政婦フランに発見される。大豪邸にはハーランの老母、不動産会社を経営している長女(ジェイミー・リー・カーティス)夫婦とその放蕩息子ランサム(クリス・エヴァンス)、出版会社を継いだ次男(マイケル・シャノン)夫婦とその息子、化粧品会社を経営している亡くなった長男の嫁(トニ・コレット)と娘メグ(キャサリン・ラングフォード)が暮らしていた。ノドを切っているということで、自殺の線が濃厚であった。


事件から一週間後匿名の依頼主から雇われた私立探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)が警察とともに遺族からの聞き込みに訪れる。調べていくと、それぞれに事情があるようであった。大豪邸に暮らす人たちとともに、メグの友人でハーランの介護をしている専属看護師マルタ(アナ・デ・アルマス)からも事情を聞くことになった。マルタは亡くなる前夜の深夜にハーランの自室で看護していた。

ハーランの膨大な遺産を誰が引き継ぐのか、遺書が弁護士により開封されることになったが。。。

ハーランの娘婿リチャードには浮気という弱みがあり、出版事業を行う次男ウォルトは信頼がなかった。また、ハーランの長女の息子である孫ランサムはハーランと財産のことでパーティ当日もめて、その場を飛び出しているようだ。そして、長女の未亡人ジョニは学費をハーランだけでなく二重にもらっている形跡がある。警察と探偵ブノワによる個別の事情徴収をしている映像で、ハーランとそれぞれの子どもたちにさまざまな葛藤があることが示される。見ている我々はいずれも何かがあってもおかしくないと感じさせる。


その後で、マルタに事情を聞く。ハーランは自分を看護してくれるマルタを心から可愛がっていた。しかも、マルタにはハーランがなんでもしゃべっているようだ。マルタはウソをつくと、嘔吐する習癖があった。探偵ブノワの前でも体裁をつくって遺族たちをかばおうとしたらゲロを吐いてしまう。

マルタはパーティがあった前夜にハーランの自室である屋根裏部屋に付き添いで行っている。ここでマルタは看護のうっかりミスをしている。それが映像で映される。これが事件のカギになる。でもそのうっかりミスをハーランがかばうのだ。そして周囲に言うもっともらしい言い訳までハーランが考えてくれる。


こうやって証言のカゲで実際はこうなんだという映像が続く。そしてこの後でマルタがますますキーパーソンの度合いを強める。どういうオチにするのかと思いながら、最後まで目を離せない。本当に意外!という展開ではない。ロバート・アルトマンの映画のように登場人物は多い。亡くなるクリストファー・プラマーが人物設定に即した演技を見せる。これがいちばんうまいかな。

容疑者の中では突出して活躍するという人物はいない。あえていえばマルタを演じたアナ・デ・アルマスであろう。母親が不法で入国しているエクアドルからの移民を演じる。アップデートな話題である。社会的マイノリティだっただけでなくあっと驚くようなことがマルタの元に起きる。そんなプロフィルの役をライアンジョンソン監督は現代アメリカの象徴のようにスクリーンに送り出す。アナも実にうまく演じて単なる探偵モノにしない部分を作り出している。

ダニエル・クレイグは探偵らしい探偵にはみえない。それでも探偵が主役だけあって最後はらしくまとめる。
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映画「工作 黒金星(ブラック・ビーナス)と呼ばれた男 」  

2020-02-11 14:03:42 | 映画(韓国映画)
映画「工作 黒金星」は2019年公開の韓国映画

韓国と北朝鮮との裏外交の駆け引きに絡む工作員を描いた作品である。両国の隠密組織の対決を描くだけでない。国家政治に絡んで北朝鮮の将軍様金正日まで登場させるのでスケールは大きい。新しき世界コクソンアシュラと存在感を見せてきたファン・ジョンミンが北朝鮮の裏経済ルートに接近する工作員となり、対峙する北朝鮮の対外政策のドンである李所長をイ・ソンミンが演じる。これが冷静沈着な演技で北朝鮮が持つ独特の冷徹さが伝わる。

1990年代初頭の朝鮮半島は、北の核開発をめぐり緊張状態にあった。92年、軍人のパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は“黒金星”というコードネームを与えられ、国家安全企画部のチェ・ハクソン室長(チョ・ジヌン)からの指令で工作員として北への潜入を命じられる。事業家になりすまし、北京に駐在する北の対外経済委員会の所長リ・ミョンウン(イ・ソンミン)に接近しようとする。


1995年3月、パクが北京で対外経済委員会に近い人物と接触して半年が過ぎたころ、委員会が急遽現金を必要とする事態に陥り、金持ちの実業家としてマークされていたパクにリ所長本人から連絡が入る。食堂に呼び出されたパクは、現金の他に南の情報を渡すよう持ち掛けられる。リ所長の傍らにいた国家安全保衛部のチョン・ムテク課長(チュ・ジフン)が高圧的に軍事機密を要求してくる。パクはスパイになる気はないと拒絶する。チョンとの確執を南の企業と取引をしたいリ所長がたしなめ、改めてミレニアムホテルで会食することになる。

パクは北での広告撮影を提案し、所長はピョンヤンに掛け合い3日で結論を出すと約束する。外貨獲得の責任者であるリ所長の信頼を得たパクは、最高権力者の金正日との面会にこぎつける。

その後、1997年、大統領選に立候補した金大中が支持率1位を獲得する。民主派の金大中当選を阻止したい与党寄りの国家安全部と北朝鮮当局が裏取引すると、自分の工作活動が無意味になるのでパクは改めて自ら動くのであるが。。。

新しき世界で破天荒なヤクザ、コクソンで祈祷師、アシュラで悪徳市長を演じたファンジョンミンがここでも若干お調子者の男だ。工作員でありながら表の顔はビジネスの世界に生きているという設定である。軍をやめた後でビジネスを始めたあとに自己破産したところを工作員に仕立てられる設定だ。裏世界に生きるのは新しき世界とアシュラの役柄に近いかもしれない。それでも度胸だけはあるといった感じで、高圧的な北朝鮮幹部に拳銃を向けられて物怖じしない。


イソンミンがいい。北朝鮮というと、拉致被害者が帰ってきたときにいた付き添いの男たちの顔が目に浮かぶ。人相は悪い。日本や米国と対峙する北朝鮮外交幹部も容赦ない冷徹なイメージがある。その路線にはピッタリだ。


北朝鮮も核開発しているのに相当な金もいるだろうけど、一部の海外貿易以外は門戸を閉じている訳だからそうは外貨は入らないだろう。今もニュースで話題になるが怪しい金を求めるのは仕方ない。だから、韓国から来た貿易商に関心を持つ訳だ。ここで注目したのは北朝鮮を写した写真を取扱うエージェントだ。これを機に行き来があれば観光産業の隆盛にもつながる。外貨も入る。


実話が基とすると、こういう話には金正日が関心を持ちそうな気がする。しかも、金正日が秘宝というべき壺をたくさん持っている場面が出てくる。それを観光に関わるエージェントを通じて売りさばきたいなんて話はまんざらありえそうな話だ。もし、両国が軍事行動に至れば金正日の利権がパーになりかねないという予測にパクが持ち込むのがこの映画のポイントである。フィクションとあえて断っているが事実に近い話はあったのであろう。
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映画「パラダイスネクスト」 豊川悦司&妻夫木聡

2020-02-10 05:37:21 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「パラダイスネクスト」は2019年の日本映画、オール台湾ロケである。

ラストレター豊川悦司を久々に見て、中華料理の看板がかかげられているエスニックな雰囲気のスチール写真が気になった映画があったことを思い出す。パラダイスネクストだ。


台湾ロケでロードムービー的色彩をもつ作品である。豊川悦司は熱風が漂っている光景の中で無口なヤクザを演じる。傑作とは思えないが、独特の空気感を持つ映画である。夜のネオンが印象的だ。

島(豊川悦司)は、地元裏社会のボスであるガオ(マイケル・ホァン)に守られ、世間から身を隠すように台北で生きる。その島の前に、突然お調子者で馴れ馴れしい男・牧野(妻夫木聡)が現れる。牧野は島が台湾にやって来るきっかけになったある事件のことを知っていると言う。島をガオに紹介した日本のヤクザ・加藤(大鷹明良)が島を訪ねてきて、牧野の写真を見せて殺すよう指示する。

牧野が命を狙われていることを知った島は何をやったんだと問い詰めるが、答えはない。「あのパーティー会場にいた」という一言で、牧野を完全に無視することができなかった。それは、一年前に島がボディガードを務めていたシンルー(ニッキー・シエ)という女性が不審死を遂げたパーティーのことだった。彼女の死を引きずる島にとって、事件の真相を知っていることをほのめかす牧野は放っておけなかった。


島は、追手から逃れるため牧野を連れて台北から花蓮へ車で向かう。花蓮にたどり着いた二人の前に、シャオエン(ニッキー・シエ)という女性が現れる。シンルーそっくりの容姿に、島は衝撃を受ける。牧野と島は、大きな屋敷に一人で暮らしているシャオエンの家に泊まることになる。この運命の出会いによって、二人の逃避行は楽園を探す旅に変わっていく一方、台北に謎の男346(カイザー・チュアン)が現れ、やがて花蓮にまで迫っていた。 (作品情報より引用)


こうやって作品情報を元にストーリーを書くと筋が明確になるが、途中は訳がわからない場面が多い。牧野を殺せと依頼されるが、なんで頼まれたのか?スキはいくらでもあるのに何で島は殺さないのか?よくわからない。ニッキー・シエが一人二役であることに気づくけど、この先どう進んでいくだろうと思いながら映像を追う。

途中ではハッピーな雰囲気を持つシーンも多い。台湾の女性ニッキーが可愛い。美女と奇妙な2人とのロードムービーといっても良いが清潔感がないエリアをひたすら郊外に向かい台湾独特の猥雑さに包まれる。

ここでは出演者の顔立ちがいかにも裏社会的だ。いずれも殺人鬼の香りを漂わせる。豊川悦司も同様である。「ラストレター」でも感じたが、得体の知れない男がよく似合う。


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映画「火口のふたり」 荒井晴彦&柄本佑&瀧内公美

2020-02-09 14:56:47 | 映画(日本 2019年以降主演男性)

映画「火口のふたり」は脚本家荒井晴彦がメガホンもとった作品である。sex描写が激しいという前評判である。


見てみると、意外にセリフは多い。映像で何かを想像させるという映画ではない。セリフの中で2人の人となりが次第にわかってくる。ほとんど2人のみで成り立つ映画である。柄本佑、瀧内公美2人とも好演であるが、際どいシーンに挑戦した瀧内公美の心意気に敢闘賞を与えたい。

東京に住むプータローの賢治(柄本佑)の元に秋田にいる父親から電話が入る。親戚の直子(瀧本公美)が結婚するので出席するかという確認だ。直子とは以前恋愛関係にあった。賢治が秋田に帰郷したら、早速直子がやって来た。家電量販店にむりやり付き合わせた後に、直子の家に向かうと昔のアルバムを出してきた。そこには裸で絡み合う賢治と直子の写真が貼ってあった。

しかし、それは昔のことだと賢治が帰ろうとすると、直子の方からアプローチをかけて来た。今夜だけよということで交わる2人である。しかし、一度火がつくと収まらない。朝立ちしてしまった賢治が直子の家に直行する。自衛官である直子の婚約者が出張から5日後に戻ってくるのでその時までということで2人は常に一緒にいるようになるのであるが。。。

⒈2人の関係
親戚であることは間違いない。セリフに出てくるだけでは関係がよくわからない。お互い子供の頃から知っている。賢治が25才、直子が20才の時に燃えるような交わりがあった。直子はその時の自撮りの写真をアルバムに残していた。


賢治には離婚歴がある。直子と別れてから付き合った女のようだ。直子は子宮筋腫であることがわかり、早く結婚して子供が産みたいという思いで結婚を急いだ。相手は自衛官で鍛えているから鉄板のような身体付きというセリフがある。ここでは登場しない。

⒉絡み合う2人
もっとくっつき合う映画かと思ったが、そこまででもない。だらだら絡みだけが続くわけでもない。最初は女性が発情するが、すぐさま男性も盛り上がる。どちらかというと柄本佑が早漏気味なのであっという間に次のシーンに移る。手を変え品を変えありとあらゆるsexシーンを映し出す。瀧内公美は前貼りなしでヘアを映し出す。フェラシーンがあるけど、柄本佑は前貼りしているんだろうか?気になったのはそれだな。


荒井晴彦の脚本だけあって、原発問題や自衛隊の派遣についての左巻きのセリフもある。なんか嫌味っぽいが、それが主流ではない。富士山噴火なんて凄い話がある。休火山であるから江戸時代以来の噴火があってもおかしくはない。このあたリはギャグだ。


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