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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「リライト」 池田エライザ&橋本愛

2025-06-16 09:47:25 | 映画(自分好みベスト100)

映画「リライト」を映画館で観てきました。

映画「リライト」法条遥の原作を松居大悟監督と脚本家・上田誠が組んで映画化した青春ファンタジーだ。原作は未読。原作者法条遥の名前は初めて知った。早川書房の出版によるSF小説だ。主演は池田エライザ「地面師」の刑事役の印象が強い。松居大悟監督「ちょっと思い出しただけ」は大好きな作品だ。日活ポルノの「手」も観た。脚本の上田誠「前田建設ファンタジー営業部」などで観ている。SF系の脚本が得意のようだ。

300年も未来からやってきた少年が題材らしい。正直SF系は得意ではない。でも、尾道が舞台の設定にノスタルジーを感じて映画館に向かう。

高校3年の夏、美雪(池田エライザ)のクラスに保彦(阿達慶)が転校してきた。ちょっとしたきっかけで美雪は保彦が300年後からタイムリープしてきた未来人だとわかる。美雪は保彦と秘密を共有して二人は恋に落ちデートするようになる。

そして、7月21日、運命が大きく動く。保彦からもらった薬で美雪は10年後にタイムリープする。自宅に帰ると10年後の美雪が現れて、今の美雪に1冊の本を見せ「あなたはこの小説を書く」と告げる。それは保彦が未来で読んで、この世界にやってくるきっかけの本だった。そして未来に帰る彼を見送る。この夏の彼と私の物語を書き、必ず時間のループを完成させるという約束を交わす。

その後大学生になった美雪は懸命に執筆活動に励み、念願が叶って小説家として作品を数冊出版した。いよいよ10年後になり、美雪が書いた保彦との物語が出版される見込みがたった。本を手に帰省して高校生の美雪に会おうと自宅で待っていたのだが。。。

既視感のないストーリーでおもしろかった。ピカイチの青春ミステリーだ。これこそはネタバレ厳禁で、途中からの展開はまったく予想を超える。

この映画のすごいのは、散りばめられた伏線を最後に向けてほぼ回収していくということ。300年も未来から来たことに関しては意外とあっさりで、美雪と保彦の青春ストーリーにすぐ転換する。2人が尾道の町で過ごした出来事のディテールがすべて意味があることがわかっていくのである。最終に向けては思わずうなってしまう

おもしろいストーリーには謎がある。ここでも、ストーリーの転換期に謎ができる。小説家になって認められた美雪が念願の物語をようやく出版することができるようになった時に、他の出版社でストーリーがほぼ同じの本が出版されることがわかる。盗作騒ぎまである。編集者は大慌てである。観客のこちらも「何でそうなるの?」と思ってしまう。そんな疑問があるキッカケで解決に向かうけど、ネタバレ厳禁だ。既視感がない映画の行き先を楽しめる。

⒈原作からの変更

 原作者法条遥プライベートは公表していないらしい。他の作家と異なり作品の制作裏話や個人的な感想を積極的に語るタイプではないようだ。ちょうど今月日経新聞私の履歴書の欄は早川書房の社長である。先輩でもあり、毎日読んでいるがSFミステリーの大御所の出版社に認められるのは容易ではないだろう。認められるまでの苦労もストーリーには軽くにじむ。

原作では中学2年生とその10年後らしい。ここでは高校3年生と27から28才位の10年のギャップにしている。今回は同じ俳優が2つの世代を演じている。違和感はない。中学生とその10年後だとむずかしいだろう。設定変更は正解だ。それだけでなく、結末にも変更を加えているらしい。年齢の設定を変えたり舞台を尾道にするだけでなく、結末を変えるにあたっては脚本家と監督の手腕が効いてくる。これだけおもしろい映画になったのは松居大悟と上田誠の貢献が大きい。上田誠には脚色賞をあげたい。

⒉尾道のロケ

尾道といえば大林宣彦監督作品である。映画を観ていて池田エライザの母親役が大林映画で名を上げた石田ひかりなので妙にうれしくなってしまった。何といっても海というか海峡の尾道水道を高台から臨む景色が美しい。歩いても上がれるが、映画にも映るロープウェイで上がった時にある千光寺は自分も妻や娘と行ったのですぐわかる。寺の境内で池田エライザと阿達慶が風鈴が鳴る中でたたずむシーンが素敵だ。

夏祭りで花火を見るために御袖天満宮に行くシーンもいいなあ。高校が実在の瀬戸田高校で撮影されたようだ。海が見える高校って最高だよね。自分からするとありえない。もし通っていたら人生変わったかもしれない。

この映画では夜に尾道水道の海岸で撮ったシーンも目立つ。これまで尾道を舞台にした映画は昼の尾道を映し出していたことが多い。2年前の「高野豆腐店の春」も尾道が舞台だった。昼に藤竜也が妙齢の女性と海岸でたたずむシーンがあった。もちろんそれでもいいけど、違った視点で今回はよく見えた。全面的に尾道市がこの映画を応援しているのはよくわかる。

⒊池田エライザと橋本愛

池田エライザの存在はNetflix「地面師」で知った。地面師を追う新米刑事役だ。先輩刑事のリリーフランキーが亡くなった後に正義感を持って地面師を追う姿でカッコいい子だなと感じた。彼女の履歴では観ている映画は割とあるけど全然記憶にない。今回は高校生の恋のトキメキと大人になってからの騒動への戸惑いをそれぞれ巧みに演じて良かった。今後も追っていきたい女優だ。

後半に向けて存在感を増したのは橋本愛だ。CMや主演ドラマでチヤホヤされる時期は過ぎたかもしれない。でも大河ドラマでは主演の横浜流星の妻役だ。高校の同級生役で東京居住で今回クラスの同窓会があって故郷に戻ってきた。謎めいた雰囲気を持ち、今までの橋本愛の役柄と違うタイプだけど上手い。見直した悪女を演じさせてもこなす素養があると感じる。

結果的に原作から年齢の設定を変えたおかげで池田エライザと橋本愛の好演に出会えて良かった。いい映画がつづくなあ!

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映画「親友かよ」

2025-06-15 07:54:04 | 映画(自分好みベスト100)

映画「親友かよ」を映画館で観てきました。

映画「親友かよ」はタイ映画。カンニングが題材の「バッド・ジーニアス」バズ・プーンピリヤ監督がプロデュースした青春映画だ。「バッドジーニアス」は初めて見たタイ映画だったが,むちゃくちゃ面白かった。映像を観ながらひと時代前に比べてタイが近代化されていることに驚いた。そのチームが製作するなら面白いだろうと思っていた。また日経新聞の映画評で時代劇研究家の春日太一が五つ星で絶賛していたのも気になる。プロデューサーがMVやCM作品を見て、その才能を高く評価し推薦した映画初監督のアッター・ヘムワディーが脚本監督をつとめる。

高校3年生のペー(アンソニー・ブイサレート)は転校先で隣席になった(ジョーピシットポン・エークポンピシット)と知り合う。初対面で「友達になりたい」と言う人懐っこいジョーに対し、「もうすぐ卒業だから」と会話に乗り気になれないペー。そんな矢先、ジョーは不慮の事故で亡くなってしまう。ぺーはジョーが書いたエッセイを見つけ、それが実はコンテストで受賞していたことを知る。

ある日、短編映画のコンテストに入賞すると試験免除で大学の映画学科に入学できると知ったペー。父親から大学受験に失敗したら家業の製粉工場で働くように言われていたペーは、その呪縛から逃れるためにジョーの“親友”だと嘘をつき、彼のエッセイを利用した短編映画を撮ることを画策。

そこに、唯一ペーの嘘を知るジョーの本当の親友・ボーケー(ティティヤー・ジラポーンシン)や、撮影のために準備されたiMacに目が眩んだ映画オタクたちが現れ、学校全体を巻き込んでの映画撮影が始まる。新しくできた仲間との創意工夫に満ちた楽しい撮影が進むにつれ、ジョーの思いもよらない秘密を知ることになる 。(作品情報引用)

おもしろかった。ここまで予測のつかない展開の青春映画はめずらしい。タイ映画のレベルの高さを実感した。

単純に進んでいくストーリーではないので、ネタバレ厳禁だけどなあ。ギリギリの線でたどる。物語は一度は美談的なハッピーエンドを迎えそうになるもそうならない。手が込んでいる。

登場人物はそれなりにいても、主要人物は主役のペーと映画スタッフで撮影を担当するボーケーと亡くなったジョーの3人だ。そこに加えて重要人物である第三の男を映画に放つ。この使い方がうまかった。そのおかげで二転三転のストーリーが生まれる。

自分の年代だとタイはどうしても発展途上国に思えてしまう。でも今は違う。教育も含めて何もかも近代化されているようだ。そんな現代タイの高校生事情もわかる。出演者のルックスのレベルも高い。女の子は日本や韓国の美人女優にも見えてくる。バックを包む音楽もストーリーに合っている。横で女性が涙を流していた。自分とは感涙する場面が違っていたけど、人それぞれだろう。

⒈何で映画を撮るの?

そもそも高校3年生の卒業間際に転校は普通だとありえない。要は主人公ペーは不祥事で前の高校を退学させられたのである。運良く拾ってもらった高校に行き、席に着くと、隣の席のジョーから話しかけられる。愛想がないペーだったのに、なんとジョーは交通事故で亡くなってしまうのだ。

主人公はまともに行けば大学には行けない。大学に入れなかったら実家で仕事しろと言われている。それだけは避けたいと思っていたときに,短編映画が認められたら試験免除で大学に入れることがわかる。これしかないと思う。

⒉見破られる嘘と元同級生

主人公は映画を撮ったことがない。題材もどうしていいかわからない。その時ジョーの追悼映画を作ると良いのではと直感で思う。転校してきたばかりなのに、周囲には親友と言い張るわけである。

ペーが映画製作に取り組むことがわかり、ペーのもとにクラスの違う同期の女の子ボーケーが、母親が撮影のプロで撮影器具をもっているので協力させてくれと来る。何でジョーと親友になったのとボーケーが聞くと、中学の時同級生だったからと言った途端、「中学の時、席の隣は私よ。」嘘を見破り怒る。父親が警察官だというボーケーは潔癖症だ。

ところが、学校の集会でペーが映画製作の発表をするのは決まっていた。ジョーの映画はやめてとボーケーに言われていたが、思わず「ジョーが書いて賞の受賞も決まっていた短編を映画化します。」と言ってしまうのだ。会場は大喝采。協力者もでてきて、結局ボーケーも加わる。

この後の映画製作に向けての過程はよくある青春モノのパターンだ。主人公は映画化しようと完成に向けて奮闘する。「テネット」の逆走を真似るところなんて最高だ。遊園地のシーンも感動的。これで無事映画ができるだけで普通は完結する。1時間枠のTVドラマならそうだろう。でもそうならない。

⒊第三の男の存在(半分ネタバレ)

いわゆる卒業記念の集合写真を撮ろうとした時、突如見知らぬ男子学生がペーの隣にくる。不治の病で休学していたので久々の登校だ。ペーと同じようにジョーの隣の席にいたようだ。その後、自宅に快気祝いでペーが招待される。クラスの他のメンバーもいたし、ボーケーも同席した。そこでとんでもない事実がわかるのだ。

この第三の男がいなければ、ここまで複雑で予想外の展開にはならなかった。人間ドラマとして深みを与えている。

以下少しだけネタバレ(未見の方は読まないでください)

実は休学していた男子学生も短編小説を書いていた。たまたま朗読した内容はジョーが発表してコンテストに選ばれた小説と同じではないか。ジョーが休学中の同級生の短編小説を自分のものとして発表したことがわかりボーケーとともにあぜんとする。果たしてこの短編に基づいてつくった映画を発表して良いのか?潔癖症のボーケーはペーを責める。

そんな感じで進み、はたまた二転三転するのだ。これからの展開は言わない。

当然プロデューサーも関わったと思うけど、いい感じでまとめている。その節目に予想外の進み方をして読みをはずすのは上手い!十分に堪能できた。

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映画「国宝」 吉沢亮&横浜流星

2025-06-10 05:13:59 | 映画(自分好みベスト100)

映画「国宝」を映画館で観てきました。

映画「国宝」は任侠人の息子に生まれた男が歌舞伎の世界に入り、女形として身を立てようとする道筋を描いた吉田修一の原作を映画化。吉田修一は黒装束の裏方として歌舞伎界に3年身を置いていたようだ。名脚本家の奥寺佐渡子が脚色して監督は「悪人」李相日だ。相当な準備期間を経て製作された前評判の高い映画である。

とにかく豪華キャストだ。主演の吉沢亮のライバルになる師匠の息子が現在の大河ドラマの主役横浜流星で,国際派俳優の渡辺謙が師匠役だ。その妻を梨園出身の寺島しのぶが演じる。上映時間が約3時間と長いけど、作品の出来を期待して映画館に向かう。

長崎で任侠の頭である立花権五郎(永瀬正敏)の宴会に歌舞伎役者花井半二郎(渡辺謙)が訪れる。そこでは組長の息子立花喜久雄が女形の芸を披露していた。ところがその場に敵対する組が押し寄せ立花組長は殺される。

喜久雄は父の復讐に燃えていたが果たせず、上方歌舞伎の丹波屋・花井半二郎の元で預かってもらう。半二郎の息子俊介とともにで芸の稽古に励むことになる。稽古は厳しいながらも、半二郎から花井東一郎の名を与えられようやく重要な役を掴むようになる。

その後半ニ郎の負傷で図らずも十八番「曽根崎心中」の代役が回ってきた。当然、息子の俊介(横浜流星)が演じるべき話と誰もが思ったのに、半二郎が指名をしたのは喜久雄(吉沢亮)だった。そこで葛藤が生まれ俊介は喜久雄を追って長崎から移り住む春江(高畑充希)と一緒に暮らすようになり歌舞伎界を一旦離れる

すばらしい作品だ。当然のごとく日本映画の今年ナンバーワンになるであろう。

最初に長崎での襲撃場面で一気に観客の心をつかむ。その後も高いレベルで観る自分を刺激するシーンが続く。歌舞伎の舞台だけでなく、芸者のいるお座敷での和のショットもいい。撮影も適切なアングルだ。原作を読んでいないので、次の展開はどうなるんだろうと思わせて物語は進むので長時間でも飽きない

自分は歌舞伎には詳しくないが、各俳優が演じる歌舞伎のシーンは呆れるほどすばらしい。出演するたびに毎回強い存在感を示す田中泯(女形の小野川万菊)がここでも怪優ぶりを発揮した。

吉沢亮演じる外様の歌舞伎役者と血統を受け継ぐ横浜流星ライバル物語である。高校生の時、長崎から引き取られた喜久雄は稽古に精進して、師匠の息子俊介と肩を並べる。ともに成長していけばよいが、長期間にわたって交互に片方が浮上すると片方は低迷する。ある時期にそれぞれが歌舞伎界から遠のく状態になってしまうのだ。

ここで強調されるのが血統だ。周囲はもちろん花井半二郎の妻(寺島しのぶ)はずっと息子の俊介の活躍にこだわる。

⒈吉沢亮

この映画を観て吉沢亮は本当に運が良かったと思う。昨年末飲み過ぎでうっかりマンションの隣室に入ってしまうという問題を起こした。日本人特有の「過度な足の引っ張り症候群」にやられなかったのはラッキーだ。もし失脚したら、我々はこのすばらしい映画に巡り合うことができなかった。

代役が演技しているわけでなく、このレベルの歌舞伎の立ち回りができるようになるまでかなりの鍛錬が必要だったはずだ。お見事だ。横浜流星と組んだ「二人道成寺」に驚き、「曾根崎心中」では男役と女役の両方をこなす。特に最後の紙吹雪が舞い上がる中での場面には身震いした。3時間を長いと感じさせない。

⒉血統と歌舞伎界

歌舞伎役者の世襲が延々と続くのは仕方ないと思う。それこそ、小学校に入学する前から歌舞伎の道に入るための英才教育を受けている訳だ。タニマチ筋のようなスポンサーもいるだろう。梨園の世界はカネがかかるとその筋の方から聞いたこともある。後ろ盾がない普通の役者が追い抜いていくのは容易ではない。血筋と関係ない片岡愛之助超レアだ。

この映画では主人公の立花喜久雄が高校在学の頃から花井半二郎の門に入る設定だ。まだまだ成長期の頃に超一流の師匠から教えを受けるのなら現実的にはあり得る感じもする。師匠を通じての後ろ盾だってあるからだ。歌舞伎の興行を担う会社の社員(三浦貴大)から世襲でないのにうまくいくわけがないと言われケンカする場面がある。うーんと思いながら見ていたが、三浦友和と山口百恵のセガレがいう言葉なので妙な感じがした。

 

⒊歌舞伎

架空の歌舞伎の劇場として西の浪速座と京座、東の日乃本座の名前が使われていた。実際に撮影した歌舞伎劇場ってどこなんだろうと映画を観ながら思っていた。いわゆる東西の歌舞伎の殿堂である東京の歌舞伎座と京都の南座は使われたのかな?

情報によれば、どうやら南座は使われたようだ。満席のエキストラも南座が会場のようだ。ここが使えるかどうかで映画のクオリティは雲泥の差になる。びわ湖大津館の外観が東京歌舞伎座の雰囲気に近いため、映画の歌舞伎劇場「日乃本座」の外観として、また中村鴈治郎(智太郎)が出てくるロビー稽古のシーンで撮影に使用されたとのことだ。京都の撮影所では、歌舞伎特有の「せり」を再現するための大規模なセットも組まれたようだ。

吉沢亮や横浜流星が演じる以外は実際の歌舞伎役者が相当数出演しているようだし、中村鴈治郎も大物役者役で出演する。寺島しのぶはまさに人間国宝の尾上菊五郎の娘だ。歌舞伎界からは好感をもって受け入れられていると自分は理解する。

⒋女性陣と花柳界

女人禁制の歌舞伎役者の世界なので、あくまで女性は連れ合いだ。立花喜久雄(吉沢亮)には幼なじみで一緒に寄り添うと誓った春江(高畑充希)がいる。ともに背中に刺青をしている。ところが、祇園のお座敷でひいきになった芸妓の藤駒(見上愛)との間に女の子が生まれる。藤駒は結婚しなくていいと言い続ける。そのまま添い遂げるはずだった春江は俊介のもとへ行ってしまう。その後、喜久雄は大御所の歌舞伎役者の娘(森七菜)に惚れられてしまうのだ。

そんな感じで女性関係はゴチャゴチャだ。以前坂田藤十郎(今回出演した中村鴈治郎の父)が若い女性との逢引きアソコを露わにして写真雑誌にスクープされたことがあった。妻の扇千景は芸人だから仕方ないと開き直っていた。でも相当絞られたんだろうと仲間うちで苦笑したものだ。祇園は南座のそばだ。芸妓とその娘をクローズアップして花柳界の世界を垣間見せる場面もいくつかある。最後に向けて現代映画界の人気女優が娘だと名乗り出る。なかなかしびれるシーンだった。

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映画「かなさんどー」 松田るか&浅野忠信&照屋年之

2025-02-26 08:33:33 | 映画(自分好みベスト100)
映画「かなさんどー」を映画館で観てきました。


映画「かなさんどー」は沖縄の離島伊江島を舞台にした人情ドラマだ。ガレッジセール・ゴリこと照屋年之監督の長編第3作である。主演は松田るかだが、国際俳優的な存在の浅野忠信が父親役ででている。浅野忠信演じる父親の危篤の連絡に疎遠だった娘が帰郷する。このテイストだと本来はもっと暗い映画になるかもしれない。でも、逆に照屋年之の演出で明るめの香りがしてこの映画を選択する。結果的には成功だった。周囲の笑い声が絶えなかった

東京にいる美花(松田るか)のもとに沖縄の伊江島にいる父親悟(浅野忠信)が危篤で今月もたないかもしれないという連絡が入る。美花は父親と7年間疎遠だった。いやいや帰郷すると父の部下だった小早川(Kジャージ)が迎えにきて悟のもとへ行くが意識は朦朧としている。

自堕落な父親を許してきた母親町子(堀内敬子)が体調を崩していた時に、電話に出なかった父親が許せず美花は家を出た。小早川と島の人は美花を歓待するが、美花は不機嫌だ。それでも、実家の家の中を探って母親の日記を見つけると、父と母の思い出の記述を読んで感慨にふける。


好きな映画だ。人情味にあふれた展開が良かった。
ここしばらくの日本映画ではいちばんのお勧め

単純にストーリーを読むと、悲しみにあふれる感覚を持ってしまう。でも、真逆でギャグのジャブを次から次に打ってくるので観客で大笑いする人が続出である。でも、娘の両親を思う気持ちが最終局面に向けていい感じに出てきて映画を見ながらジーンと来てしまう。

照屋監督は俳優の使い方が上手である。主要の3人だけでなく、浅野忠信の元部下役であるKジョージなどが実にいい味を出して、主要3人と独特のハーモニーを出す。あまり関係のない病院のおばさん患者さんたちも笑いの渦を生むいい使い方をしている。お見事だ。


⒈いい加減なオヤジ(浅野忠信)
伊江島の建設業者の社長、親からの後継。付き合いといってはしご酒で飲み歩く。翌日は二日酔い。携帯で電話している相手も女みたい。お調子者だけど、部下はついていく。結局は体調も崩して、会社も手放した。今や酸素吸入状態で緩和治療の状態で余命宣告もでている。こんな飲んだくれオヤジを見ていると、自分も似たようなものだ。じっと注視してしまう。世界の浅野忠信もいわゆる日本のダメオヤジが上手い

⒉やさしい奥さん(堀内敬子)
もう亡くなっている。でてくるのは回想シーンだ。自堕落なオヤジに娘がイラつくけど母親がかばう「飲んでいてもお父さんは仕事なんだから仕方ない。」と父親の味方をしてあげる。家でも化粧して常にキレイでありたいと言う。ダメオヤジをかばう姿を見て昭和のお母さんなんだなと感じる。妻に頼られているのに、ダンナは携帯電話の着信を無視する。そのまま亡くなってしまい娘が縁を切ったのだ。堀内敬子は顔がふっくらして「福の相」だ。旦那へのやさしさがあふれて好感を持つ。


⒊故郷に帰った娘(松田るか)
東京にいたけど、父の元の部下に言われて最期を看取りにくるのだ。戻ってきても文句ばかりだ。それでも母親が好きだったテッポウユリの花畑を見たり、アタマもボケている父親は娘を見て母親の名前を呼ぶ。母親の日記を見て父親と母親の関係を知ったりすると気持ちが変わってくる。死ぬ前に昔の母親の姿を再現しようとするのだ。

松田るかは美形なんだけど、今まで彼女とはご縁がなかった。毎日お化粧していた母親の影響を受けてキレイに口紅を塗って目に強いメイクをする。すると、服装次第では銀座の売れっ子ホステスにも見える。この映画ではよく頑張っている。

個人的に日本全国で行ったことのない県が2つになった。沖縄に行ったことがないと言うと驚かれる。会社のコールセンターが沖縄になって、いくチャンスもあったが、観光みたいに思われるといかなかった。そろそろいかねばなるまい。その時に離島の伊江島の独特の形をした山も見てみたくなった。
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映画「ブルータリスト」 エイドリアン・ブロディ&ガイ・ピアース

2025-02-22 08:16:20 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ブルータリスト」を映画館で観てきました。


映画「ブルータリスト」エイドリアンブロディ主演でハンガリー出身のユダヤ人建築設計士の人生を描いた作品だ。ブラディ・コーベット監督は長編3作目でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞してアカデミー賞の最有力候補だ。20世紀はじめのブタペストが優秀な人材を生んだのはコンピューターの開発で名高いフォン・ノイマンの伝記を読んで自分は知っていた。上映時間215分に尻込みするが、インターミッションがあるとの情報で早めに観に行く。(ひさしぶり!助かった。)

登場人物が建設会社に勤める設定であっても、建築家が建築中の現場に関わる映画はあまり記憶にない。映画館に入る時に、映画の中で紹介される建物の小冊子をもらったので、てっきり実在の人物だと思ったらフィクションとのことで驚く。ハンガリー出身のモデルと思しき建築設計士とは履歴がちがうようだ。建築設計、移民問題、ユダヤ人問題とホロコースト、麻薬中毒とよくぞまあこの脚本にまとめたなと感心する。

第二次世界大戦後、ハンガリー系ユダヤ人の建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は、ユダヤ人への迫害から逃れて移民船でアメリカニューヨークに入国した。妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)、姪ジョーフィア(ラフィー・キャシディ)とは強制的に引き離されていた。

ペンシルヴァニアで家具屋を営む従兄弟アッティラのもとで働くことになり、富豪ハリソンの息子ハリーから豪邸の書斎を改装する仕事を依頼される。ところが、ほぼ完成する前に実業家ハリソン(ガイピアース)がこんなこと頼んだことないと憤慨して、資材の発注をしているのに報酬がなくなってしまう。結局、ラースローは家具屋を追い出されて、石炭を運ぶ人夫となっていた。

その石炭の採石場に突如ハリソンが現れる。ラースローが設計したモダンな円形の書斎が雑誌で取り上げられて賞賛されていることをはじめて知った。しかも、ハリソンはラースローのハンガリーでのモダン建築実績も調べ上げてその才能を認めて、ハリソン宅のパーティに招待する。そこで母親の名を記念した礼拝堂も兼ねたコミュニティセンターの建築設計をラースローに依頼する。ラースローの妻と姪が移住できるように弁護士を通じて手配するのだ。


ようやく同居できてラースローは喜ぶ一方で、ラースローの建築設計に対する理想と執着心が強く、トラブルが次々と発生してしまう。現場の設計変更に頑なに応じないし、資材輸送で事故が発生し計画が頓挫してしまう。

長時間飽きさせずに見せてくれる期待通りの作品だ。
インターミッションを除き約200分眠気が起きなかった。


エイドリアンブロディはほぼ出ずっぱりだ。麻薬に溺れる弱い面が常にある。才能はあるけれど自らの設計の理想とこだわりを追求するあまり周囲を戸惑わせる。そんな主人公ラースロートートのいい面、悪い面を見せてくれる。その生き様を見て映画を観ながら考えるところが多々あった。良かった。

意匠的にすぐれた建物を見せるだけではない。実務的には、設計と工事の建築現場での葛藤はつきものだ。これは日米変わらない。納まりが悪いから工事が設計変更しようとすると、設計士が拒絶する。この映画でもエイドリアンブロディが現場責任者に怒る場面がある。設計図通りだと、すごい梁を作らなければならない。現場が疲弊するというセリフもある。建築現場での実情を理解した脚本と感じた。


⒈RC打ちっ放しと安藤忠雄
「ブルータリスト」の題名は建築のブルータリズムからでていると思う。RC打ちっ放しが特徴の一つだ。映画を観ていて、日本のメジャー建築家安藤忠雄の作品をすぐさま連想した。RCの打ち放しの多用も共通するし、コンクリートの中で薄日が入るのも共通する。映画を観ている時、明らかにラースローは安藤忠雄より年上なので、ラースローの影響かな?と思ったら実在の人物でないと知り驚いた。

コンクリートの中の十字架安藤忠雄の有名な建築「光の教会」に通じる。最後のエピローグでの、コンクリートの冷たい空間は強制収容所を意識したというコメントはやりすぎかと感じた。


⒉建築のパトロンとガイピアース
安藤忠雄曰く、建築家にはパトロンがつきもの。基本設計はカネがかからずできても、建築には金はかかる。そのパトロンである実業家ハリソンを演じたガイ・ピアースが上手かった。最初は自分の部屋をいじられて怒り心頭で、雑誌に掲載されると手のひら返してラースローを絶賛する。その後何があってもかばう。一度離れてもまたくっつく。

イタリアのカッラーラの大理石採石場のシーンが印象的だ。最後に向けては微妙なシーンもあったけど、よくありがちな実業家の盟友を巧みに演じた。エイドリアンブロディ同様に評価されるべきだ。


⒊ハンガリーブタペストのユダヤ人
この映画ではユダヤ人が中心だ。映画の中には丸帽子をかぶったユダヤの礼拝のシーンも多い。富豪ハリソンの顧問弁護士はいかにもユダヤ系で経済学者のミルトンフリードマンそっくりだ。アメリカで最初に頼ったいとこの家具屋はユダヤ人だったのにカトリックに改宗して奥さんもカトリックだ。アメリカになじむためこういう人もいたであろう。

ラースローは1911年生まれのハンガリー出身のユダヤ人だ。すぐさま原爆やコンピューターの開発で名高い科学者フォンノイマンを連想して、彼の伝記を自宅に帰って書棚でピックアップした。当時のハンガリーでラースローのような人物が育つ可能性があるこんな記述がある。

1870〜1914年当時ブダペストとニューヨークは,実力のあるユダヤ人が移り住むのにもってこいの街だった。1890年代,ユダヤ人が実力に見合う収入と地位を得たのは、この2か所を除いて、世界中にほとんどない。ブダペストのユダヤ人はたちまち頭角を表し,医者や弁護士のような専門職になったり,商売で成功したりした。(フォンノイマンの生涯 ノーマンマクレイ p39)

⒋ヘロイン中毒とエイドリアンブロディ
エイドリアンブロディ「戦場のピアニスト」でアカデミー賞主演男優賞を受賞した。ラストに向けてのショパンのピアノソナタの場面が脳裏にこびりつく名作だ。ユダヤ系ポーランド人を演じた。「ブルータリスト」ではより一層ユダヤ色が強い。人種以前にこだわりの強い建築家で扱いが面倒な男だ。ずっとタバコを離さないだけでなく、麻薬中毒に近い状態だ。

ニューヨークに来るや否やジャズクラブでヘロインに溺れる。その後も再三麻薬に狂うシーンが多発する。妻エルジェーベトは下半身に障がいがある。時おり強い痛みに襲われる。その発作を見て、ラースローが洗面所に隠していたヘロインを注射する。ただ、一瞬おさまった妻が泡をふき倒れるシーンがある。戦後日本でもヘロイン中毒が多発したらしい。こういう伝記映画では、天才と麻薬中毒が切れない関係にあることが多い。けっして賞賛される奴ではないのにエイドリアンブロディはなりきった。


アレ?これってどういうことなんだろう?と思うシーンはこの映画でいくつかある。あえて事実をハッキリさせないで暗示させるシーンもある。それでも十分堪能できたすばらしい映画だった。
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映画「満ち足りた家族」ソルギョング&チャンドンゴン

2025-01-21 20:07:05 | 映画(自分好みベスト100)
映画「満ち足りた家族」を映画館で観てきました。


映画「満ち足りた家族」は韓国の人気スターソル・ギョングとチャン・ドンゴンが兄弟役で共演するサスペンスタッチのドラマだ。ホ・ジノがメガホンを持つ。4人並んで食卓を囲む写真からは内容が類推できない。ここのところハズレの韓国映画を観ることが多かった。自分と相性のいいソルギョングがでているので気になり映画館に向かう。想像を超える濃厚でドロドロとした作品だった。

兄ジェワン(ソル・ギョング)は金銭を積まれたら危うい殺人者の弁護も引き受ける敏腕弁護士だ。 再婚した若き美人妻ジス(クローディア・キム)には赤ちゃんが生まれて高校生の娘とともに豪華マンションに住む。一方、弟のジェギュ(チャン・ドンゴン)は良心的な小児科医だ。 老いて認知症気味になった母と同居して年長の妻ヨンギョン(キム・ヒエ)と高校生の息子と共に住んでいる。

兄弟2人は、それぞれの妻を伴って高級レストランの個室でディナーを共にして母親のことなどを相談するが、両親不在の時に兄の娘と弟の息子が夜遊びにでて、酒を飲んでしまう。その時にホームレスの住処で起きた2人の未成年の過ちが両家族の問題になっていく。


韓国映画の久々によくできた傑作だ。
ラストでは思わず映画館の席で驚きの大きな声をあげてしまった。柔道の試合できれいな技で一本決まったような感覚を持つ。良かった。

セレブの食事会的な食卓を囲むスチール写真とは想像もつかないドロドロとした展開になる。韓国映画得意のひねりの効いた脚本は見事だ。

いきなりクルマ同士のトラブルで人が轢き殺される場面が出てくる。いかにも韓国映画らしい強烈な場面だ。主要出演者ではないようだ。結局は金持ちのボンボンが滅茶苦茶な運転をやって逮捕されて、その弁護をソルギョング演じる弁護士が引き受けるということを示すためだ。金の亡者に見せたかったのか。しかも、ソルギョングの妻がずいぶんと若くてセレブっぽい。高校生の娘がいて継母との折り合いは微妙なようだ。複雑な家庭環境だというのを示す。


弟は医師だけど、交通事故に巻き込まれて負傷した女の子の手当てをする。兄が加害者の弁護をして、弟が被害者の担当医師なんて微妙な関係だ。自宅では引きとった夫の母親が痴呆も入っているようだが、ともかく破茶滅茶で嫁の言うことを聞かない。自分の息子に怒られると少し静かになる。嫁の負担が大きい。年下の兄嫁をいびるのは、いかにも韓国らしいネチっこさを繰り返し見せつける。


こんなプロフィールを映画ではそれぞれの子どもたちも含めて掘り下げていく。キャラクターづくりに成功している。しかも、観終わってこの映画のストーリーにピッタリあったキャスティングだなあと感心する。責任感のある医師の弟が善で金のためなら誰でも弁護する兄の方が悪の立場と途中経過までは進む。事件が起きてしばらくした時点でお互い彷徨う。それぞれの妻だけでなく両方の子どももサイコスリラーにも見えるこの映画では全員主人公に近い存在感がある。

どんな話なのかの先入観を持たずに映画館で見て欲しい。


(これからはネタバレに接近)
この映画の主題は、兄の娘と弟の息子が一緒に悪さをしてしまうのだ。具体的にはダンボールで寝ているホームレスの浮浪者を悪酔いして蹴ってしまう。それが行き過ぎで浮浪者は重体だ。2人は逃げて帰る。この行為が防犯カメラに残っていて公表される。2人の行為と気づかれていない。

公表した映像を見て親たちが自分の子供がやった行為だとわかってしまう。警察に自白するべきなのかどうか?子供たちは受験戦争のど真ん中である。事件をめぐる両親4人の葛藤がこの映画のテーマだ。浮浪者は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。死んでくれた方がいい。さあどうなる?

そんな心理描写を巧みに誘導する脚本が上手い。しかも俳優がいい。
フルボディのワインにも似た重厚感を感じる傑作だと思う。
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映画「YOLO 百元の恋」ジア・リン

2024-07-17 22:20:23 | 映画(自分好みベスト100)
映画「YOLO 百元の恋」を映画館で観てきました。


映画「YOLO 百元の恋」安藤サクラ主演「百円の恋」の恋の中国版リメイクである。なんと730億円もの興行収入の大ヒットだという。2023年の日本のランキングはスラムダンクの158億円だけにちょっとレベルが違う。「百円の恋」は自分の映画歴の中でも上位に入る好きな作品だ。自堕落な生活をしていた安藤サクラがトレーニングを始めてからシェイプアップした姿を見せるシーンには躍動感がある。

基調は同じストーリーと聞いていたが、今回主演と監督を兼ねるジア・リン(ジャー・リン)がなんと50kgの減量を成し遂げたという。残念ながら上映館は少ないが、閉館寸前の東映の映画館に向かう。気分が高揚するいい映画だ。


食品店を営む父母と暮らす32歳のドゥローイン(ジアリン)は長い間家に引きこもって、食べては寝ての繰り返しでブクブク太っている。離婚した妹が子供の小学校通学のため出戻りとなり、大げんかしてドゥは家を出ていく。一人暮らしになったドゥは居酒屋でバイトをする。そこでボクシングジムのトレーナーのハオクン(ライチャイン)と出会う。ハオクンはジムから練習生を集めるノルマを課せられていて、ドゥも引っ張られる。


成り行きでハオクンがドゥの部屋に潜り込み、ハオクンが大事な試合にでるのをバックアップする。でも、結局試合に負けたハオクンとケンカ別れしてしまう。その後もいやなことが続き、吹っ切れるためにボクシングを本格的にやりたいとジムに志願する。


最高のリメイクだ。必見である。
安藤サクラ「百円の恋」は傑作であるが、実際には低予算で作られている気がする。それを安藤サクラの超越した個人プレイでカバーしている。今回は中国のコメディアンであるジア・リンが自ら監督兼主演で大活躍する。基本ストーリーは同じでも、ボクシングジムの勧誘イベントや、TV局でのオンエア場面など原作にない場面も多い。それなりの予算がかけられている。

何せ主人公を演じるジアリン(ジャー・リン)は1年かけてやせていくのだ。映画の最後にその1年間の減量続けた軌跡が映像となっている。よくぞやせたものだ。最後に向けて、試合の控え室から廊下に颯爽と外に出る時のシェイプアップした姿はかっこいい安藤サクラも自堕落な状態からやせたがこんなレベルではない。ライザップのCMで見る体験前後の姿のようなもの。それよりもすごい。

太ると人間は老け顔になるのだろうか。元々のジアリンの顔は30代40代を飛び越えて50代ぐらいの人相である。それがやせて一気に若返るのを見ると,シェイプアップのためにボクシングをやろうとする中国人が増えるはずだ。中国ではコメディアンだというジアリンのもともとの姿を知っている人たちはアッと驚いたはずだ。


安藤サクラもそうだったが、ジアリン訓練された鋭いパンチをくり出す。一昨年岸井ゆきの「ケイコ 目を澄まして」が高い評価を受けたが、自分は過大評価と思っていた。岸井のパンチが貧弱すぎるのである。これでは相手は倒せないでしょう。もっと鍛錬してから出て欲しかった。あの映画をよく評価するやつはおかしいと思っていた。


「百円の恋」と基調のストーリーは同じである。もともと観客に高揚感を呼び起こすストーリーだ。中国人も同様に感動しただろう。シェイプアップした安藤サクラを見ていて、自分のようにワクワクさせられた日本人は多いといっても大ヒットではない

コメディ的要素は「百円の恋」よりもこの映画の方が強い。中国で興行収入730億の超大ヒットになるのは,それもあるのか。ここまで笑える中国映画って自分は観ていなかったのかもしれない。この興行収入はただ人口の多い少ないだけの要素ではないと感じる。丹念につくった観客に親切ないい映画だった。
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映画「青春18×2 君へと続く道」 清原果耶&シュー・グァンハン

2024-05-05 16:52:39 | 映画(自分好みベスト100)
映画「青春18×2 君へと続く道」を映画館で観てきました。


映画「青春18×2 君へと続く道」は日台合作のラブストーリーで台湾の男優シュー・グァンハンと清原果耶の共演である。監督は日本から「最後まで行く」藤井道人である。暗いシリアスな話ばかり観ていても疲れるので、たまにはラブストーリーと思い映画館に向かう。これが大当たりだった。

映像は18年前と現在、そして日本と台湾を行き来する。とりあえず作品情報を引用する。

始まりは18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生・ジミー(シュー・グァンハン)は、日本から来たバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうち、恋心を抱いていくジミー。しかし、突然アミが帰国することに。意気消沈するジミーに、アミはある約束を提案する。


時が経ち、現在。人生につまずき故郷に戻ってきたジミーは、かつてアミから届いた絵ハガキを再び手に取る。初恋の記憶がよみがえり、あの日の約束を果たそうと彼女が生まれ育った日本への旅を決意するジミー。東京から鎌倉・長野松本・新潟・そしてアミの故郷・福島只見へと向かう。(作品情報引用)


自分には肌が合う作品で、感動した。
ロードムービーの色彩もあるが、基調はラブストーリー
思いっきり泣けた。最後に向けては映画館内の至るところからすすり泣く声が聞こえた。直近の日本映画では一番のおすすめだ。おじさんの方が気に入るかもしれない。

主人公が18歳と36歳の時の話である。今の自分からすると、目線をずいぶんと落とすわけだけど、まったく違和感がない。ここまで自然に主人公へ感情移入できる映画は少ない。

18歳で台北の大学を目指している主人公が「神戸」という名の台南のカラオケ屋でバイトしている。その店にかわいい日本人の女の子が突然働きたいとやってくる。財布をなくしてしまい困っていたのだ。ジミーが仕事の指導をしているうちに徐々に関係は近づいてくる。ときめく主人公。

自分が同じ立場だったらこんなかわいい子がそばにいれば舞い上がってしまうだろう。気持ちが同化して映画に没頭してしまう。清原果耶が誘って2人乗りバイクで台湾の街をさまようシーンには疾走感がある。2人で見る夜景がキレイだ。


ゲーム会社の創業者社長が、役員会で追放されて実家に戻る。親に「一休みは長旅のため」と言われて、むかし出会った人の面影も追いつつ日本に向かう。それが18年後のジミーなのだ。スラムダンクの聖地と言われる江の電の鎌倉高校前の踏切に行ったり、松本に向かい現地で出会った台湾人の飲み屋の店主と松本城に行く。

その後、飯山線に乗っている時知り合った青年と行動をともにする。飯山線のトンネルから列車が外に出た時に一気に雪景色になる川端康成の「雪国」の冒頭を思わせるシーンがドラマティックだ。そこでジミーがとっさに連想するのは岩井俊二監督中山美穂主演の「ラブレター」だ。確かにあの銀世界のイメージがある雪景色だ。自分が好きな作品だけに取り上げられるのはうれしい。実は「love letter」はアミと一緒に観に行った記念すべき想い出の作品だったのだ。こんなロマンティックなシーンを連結するやり方がうますぎる。


藤井道人の作品は観ているが、今回は娯楽的な要素も含めてもっともよく見える部分的な小技も効いているし、映像のリズムもよくムダがない。シュー・グァンハンはまじめそうな理科系サラリーマン的な雰囲気をだす普通の若者だ。18歳の高校生役の演技も悪くない。清原果耶はトゲのあるセリフを発することも多いけど、いつもよりもかわいく見える


孤独のグルメ松重豊が出てきた時も驚いたが、アミの母役で黒木瞳が出てきた時はもっと驚いた。相変わらずキレイだ。そんなベテラン俳優も巧みに使う。こんな風景が日本にあったのかと思わせるロケハンに成功した風景もピアノタッチの切なさを感じさせる音楽もみんなよかった。そして、エンディングロールではミスターチルドレンの歌でまとめる。こんなにミスチルの歌が心に沁みる記憶は今までなかった。
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映画「瞳をとじて」 ビクトルエリセ

2024-02-10 18:26:24 | 映画(自分好みベスト100)
映画「瞳をとじて」を映画館で観てきました。


映画「瞳をとじて」はスペインのビクトル・エリセ監督が31年ぶりに長編映画を撮った新作である。予告編で感じるスペイン映画独特の不穏な感じが気になる。名作「ミツバチのささやき」の子役で出演したアナトレントも登場する。今年83になるビクトル・エリセ監督が長い間あたためてきた構想なんだろうと想像しながら映像を追う。見ごたえがあった。


映像は1990年に撮られた映画のワンシーンでスタートする。
ある富豪が自分の命が短いことを知り、上海にいる生き別れた娘に会いたいとある男に依頼する。

2012年マドリード、この映画を撮った監督ミゲル(マノロ・ソロ)がTVの特集番組に呼ばれる。映画の中で捜索を依頼された男を演じた俳優フリオ(ホセ・コロナド)が、海岸で靴を置いて撮影途中で失踪していたのだ。行方不明になったフリオには娘アナ(アナトレント)がいた。アナはTV出演を拒否したが,ミゲルと会う。既に諦めている様子であった。


ミゲルは現在住む海辺の集落に戻り,TV番組を見ようとするが途中でやめた。しかし、TVを見て思わずフリオ本人ではないかと連絡をしてきた老人養護施設の職員がいた。もらった写真はたしかに似ている。思わず施設に向かうのである。


重厚感のある素晴らしい作品だった。すっかり堪能した。最後に向けては思わず涙腺を刺激されてしまう。映画館で周囲の観客がストーリーの決着を固唾をのんでみているのが実感としてよくわかった。

スペイン映画独特の不安をかき立てる音楽を絶妙なタイミングで組み込む。同じくスペインのペドロアルモドバル監督作品などと同じ不穏なムードが漂う。基調はミステリーだけど、ヒューマンドラマの要素が強い。失踪した男が見つかった時には記憶喪失になっていたなんてストーリーだけをとれば目新しさはない。そこに「映画の中の映画」の手法を用いて、真実と虚実を混在させる。

ビクトルエリセが満を持して作ったのがよくわかる映像美に優れる作品である。撮影する場所も室内セットだけでなく、マドリードの都会的なバックに加えて海上や海辺の街並みにもカメラを移す。開放感も感じられる。しかも、廃館した映画館を巧みに使う。上映時間はもう少し短くできるとも感じるが、31年温めたものをビクトルエリセが披露する機会はもうないかもしれない。仕方ないだろう。


濱口竜介監督が作品情報で『瞳をとじて』は徹頭徹尾「座っている人間にどうカメラを向けたらよいのか」を問う。絶賛している。観ている途中で自分も同じ感触を持った。小津安二郎監督得意の切り返しショットではあるが,単純に正面を映す訳ではない。切り返すたびごとに都度俳優の表情を遠近や方向を変えたショットで映し出していく。陰影にもこだわる照明設計も素晴らしい。ミゲルがフリオとともに愛した女にあった時のシーンに映画撮影の極限値を感じた。主演のマノロ・ソロの演技も安定している。あらゆる映画人の教科書になると感じた。


映画の結末に向けては、どうクローズさせるのかとドキドキしてしまった。終わり方もベストだと感じる。ピアノベースのエンディングミュージックに余韻が残ってよかった。

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映画「アンダーカレント」 真木よう子&今泉力哉

2023-10-08 06:48:05 | 映画(自分好みベスト100)
映画「アンダーカレント」を映画館で観てきました。


映画「アンダーカレント」は豊田徹也の漫画をもとにした今泉力哉監督の新作である。真木よう子が主演、相手役は井浦新で、リリーフランキー、永山瑛太、江口のりこの実力派が脇を固める。自分にとっては2013年のベスト「さよなら渓谷」での真木よう子がすばらしく、主演作をずっと観たいと思っていただけにうれしい。事前情報は最小限で映画館に向かう。

かなえ(真木よう子)は父親が営んでいた銭湯を父の死後、夫(永山瑛太)と引き継いだ。ところがある日夫が突如失踪して行方不明になる。不在の間銭湯を休んでいたが、パートの敏江(中村久美)と一緒に銭湯の営業を再開する。そこに銭湯組合の紹介で堀(井浦新)が訪れてそのまま働くことになった。

育休中のよう子(江口のりこ)と旧交を温めたかなえは、よう子から探偵の山崎(リリーフランキー)を紹介されて、夫の捜索を依頼する。山崎から報告を聞いたかなえは身寄りがないという夫に実は両親がいたことなど知らなかった事実を聞き驚く。その後、身近なところで予期もしない事件が次々と起こってくる。


情感のこもったすばらしい作品だった。
今泉力哉監督のナイスチョイスで原作に恵まれたと感じる。しかも、映画と銭湯は相性がいい。漫画は読まないので、原作は当然未読。登場人物に相応の役割を用意して、エピソードも数多く散りばめるので飽きがこない。今泉力哉監督は澤井香織とともに観客の興味をそそる脚本に仕上げた。2023年では自分のベスト上位だ。

ほぼ全部観ている今泉力哉の作品では、今回の「アンダーカレント」が1番良くできていると感じる。いつものように長回しの場面はあっても、セリフに余分なぜい肉はなくダラダラ感がないのも特徴だ。探偵の調査から秘密が判明する。不安な感情を起こさせる。加えていくつか不意に起こる事件で余分な謎をわれわれに与える。ミステリーの要素で緊張感が生まれる。グッと引きつけられておもしろくなる。その雰囲気に細野晴臣の音楽が合う。

真木よう子はすばらしい演技を我々に見せてくれた。ちょうど10年前の「さよなら渓谷」に劣らない。あの時もしっとりと間をもった演技を見せていた。銭湯のお湯に何度も浸かって揺らぐ気持ちを示す。失踪した夫の行方を探偵が捜索し、夫がウソをついていることがわかって動揺する。子どもの頃のつらい想い出にも悩まされるし、次々と身の回りに事件が起きる。とても冷静ではいられない。心の揺れを情感込めて演じていた。やはりこの人にはサブでなく主役をやらせたい。

井浦新は黙々と銭湯で仕事をする。薪を燃やしてお湯を沸かす。夫が戻ってくるまで働くと言って勤めている。余計なセリフは少ない。真木よう子の心の乱れに戸惑う。まったくの第三者的な存在だったのが、途中から知られていない新事実がわかってくる。徐々に井浦自身も心が揺れてくる。つい先日「福田村事件」での主役に引き続きナチュラルな演技がいい感じだ。


リリーフランキーはちょっと変わった探偵を演じる。只者ではないキャラで適役だ。探偵の依頼主への報告にカラオケボックスや観覧車の中を使う。周囲にバレないためと言っても珍しい設定だ。でも、きっちり聞き込みをした調査で失踪した男の秘密を暴いて主人公を驚かせる。そしてラストに向かってもう一仕事をする。今泉力哉監督の前作「ちひろさん」で風俗店の元店長を演じて、真木よう子とは「そして父になる」で夫婦役だった。


江口のりこは今泉力哉監督の「愛がなんだ」でも成田凌があこがれる個性的な女性を演じて存在感を示した。ホラー映画を除いて彼女の作品は全部観ている。いつもひょうひょうとしている。好きな女優だ。ブログでは取り上げていないけどTVシリーズの「ソロ活女子のススメ」の大ファンである。いろんなことにトライする江口のりこの独り言の声がここでも聞けてうれしい。Netflixでも見られる。そういえばソロ活で都内の古い銭湯まわりもしていたなあ。


中村久美「高野豆腐店の春」藤竜也と老いらくの恋を演じる。最近主演頻度が高く、老け役が多い。今回は今泉力哉作品常連の若葉竜也が出ていない。珍しい。この作品に関しては配役するのが困難かも。どこで撮影したのか気になったけど、エンディングロールで市川,浦安方面だとわかる。銭湯は市川で、何回も出てくる橋が浦安市堀江の橋かと連想したが、Google mapsを見たら間違いなかった。バックの鉄橋を走る電車は地下鉄東西線だ。ただ、池や海は違うなあ。いい架空の街ができた。ロケハンの賜物だ。
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映画「ロストキング 500年越しの運命」 サリー・ホーキンス

2023-09-23 18:09:22 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ロストキング 500年越しの運命」を映画館で観てきました。


映画「ロストキング 500年越しの運命」は15世紀後半の英国王リチャード3世にまつわる伝承の真相を探った女性を追う英国映画である。手堅い演出のベテラン監督スティーブン・フリアーズがメガホンをとり、サリーホーキンスが主人公を演じる。サリー・ホーキンスは好きな女優である。美人ではないが、不思議な魅力がある。異類との恋を描いた「シェイプオブウォーター」の演技には感動した。サリーホーキンス、歴史ものという2つの観点でこの作品を選択する。これは成功だ。

世界史好きな自分でも、百年戦争からテューダー朝に至る15世紀の英国に関する知識は薄い。山川の教科書を見ても、王朝家系図にリチャード3世の名前はあるが、教科書の文章に彼に関する記述はない。もっとも、シェイクスピア劇の中では「リチャード3世」は4大悲劇の次によくとりあげられる。ただ、かなり悪人に扱われているので有名だそうだ。

フィリッパ・ラングレー(サリーホーキンス)は2人の子どもを抱えて働くシングルマザーである。職場での理不尽な待遇に不満をもっている。離婚した夫とはまだ良い関係だ。息子と一緒にシェイクスピアの「リチャード3世」を観劇した際にリチャードの扱いに違和感を感じて、リチャード3世に関する書物を読むようになる。すると、フィリッパの前にリチャード3世の幻影(ハリー・ロイド)が姿を現すようになる。


のめり込んだフィリッパは同じような同志が集うリチャード3世協会に入会した後、リチャード3世の遺骨が実際には川に散骨されたのではなく、昔あった屋敷の敷地内に眠っているのではと思い、大学教授リチャード・バックリー(マーク・アディ)の協力を仰ごうと行動を起こす。

感動した。すばらしい!
自分にフィットした作品で歴史好きには必見である。今年の自分ベストに入る快作だ。
目標に向かって突き進む女性を描いた映画はたくさんある。その中でも目標の難易度は高い。そもそも歴史や考古学にまったく無縁の女性が、500年以上前の王室の真実を追う訳だ。歴史学的にもリチャード3世に関する定説ができている。覆すなんてことは難しい。かかる費用を捻出するべく資金集めをするために大学や役所に乗り込んで行ったり、クラウドファンディングで世界中からお金を集める。

リチャード3世にのめり込む前に会社で冷遇されて、精神的に参っている上に持病もある。それでもくじけず前に進む。そんなフィリッパを演じるサリーホーキンスがすばらしい。適役だと思う。これだけ頑張っているのに、もともと資金を出すときに渋って、否定的だった連中が急に自分の手柄だと言い出す。われわれの周囲を見回してもよくあることだ。フィリッパ頑張ったねと言ってあげたい。女王陛下から勲章をもらったと聞くと救われる。


この映画も居心地のいい映画だった。話している英語が妙にしっくりアタマにはいる。英語能力がさほどでもない自分でもわかりやすい。これは英国のベテラン監督スティーブン・フリアーズがメガホンを持っているせいかもしれない。自分が中学や高校で英語の教師に習った英語と通じるものがあるかもしれない。アメリカ映画を見るときよりも英国映画を観るときに感じることが多い。英語の恩師を思い出す。

加えて、スコットランドのエディンバラの街並みやフォース鉄道橋などの背景も趣があり、流れる音楽から美術を含めて何もかもが良かった。


幻影としてリチャード3世を演じるハリー・ロイドがお茶目だった。幻影は肝心な時に主人公のそばに来てヒントをくれる。そんなファンタジー的要素でなごませる。それもこの映画を魅力的にしているポイントだ。女性の直感の凄さも実感する。
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映画「絶唱浪曲ストーリー」港家小そめ

2023-07-08 04:53:58 | 映画(自分好みベスト100)
映画「絶唱浪曲ストーリー」を映画館で観てきました。


映画「絶唱浪曲ストーリー」浪曲師になろうと奮闘する女性の成長をドキュメンタリーにした映画である。これまで浪曲は自分には無縁の世界であった。何気なく観た予告編に心を揺さぶられて映画館に向う。


ちんどん屋稼業で渡り歩いていた港家こそめが、浪曲界の大ベテラン港家小柳の舞台に魅せられて弟子入りを志願する。しかし、港家小柳は持病が悪化し舞台に立てなくなる。こそめが名古屋にある小柳の自宅に見舞いに行く姿も映しながら、100歳直近の三味線弾きの曲師玉川祐子の元で修行する場面を追い、襲名披露の舞台に立つまでを描く。

感動しました。
本当に観てよかった。予想よりも胸に響くものがあった。

浪曲といえば、歌謡曲に転向した三波春夫や村田英雄を思い浮かべる。あとはドスの効いた声の玉川良一かな。いずれも昭和だ。全国で昔3000人いた浪曲師は今全国で100人に満たないという。実際に浪曲をまともに聞いたことがないし、行こうと思ったこともない。そんな自分でも予告編で浪曲師のお姐さんがうなる浪曲が心に響く

最初は、何人か登場人物が現れるけど、何が何だかわからない。浅草にある木馬亭で三味線をバックに先ほどまでヨタヨタしていた80すぎのおばあさんが浪曲を口演するのだ。これが素晴らしかった。港家小柳である。この凄さはぜひ映画館で体感して欲しい。文章に書けない圧倒的な迫力だ。(浪曲に字幕があったのは助かった)

女性が次々登場するわけだが、美女はいない。ごく普通の人たちである。主要登場人物は3人だ。80代と90代のおばあさんが2人いる。普段の姿は街でヨタヨタ歩く年寄りとかわらない。でも、舞台に上がった時はシャキッとするのだ。こんな長いセリフ、よく覚えているなと。それを年季の入った声で唱える。これは哲学者西田幾多郎が言う「純粋経験」の境地なのだ。

港家こそめ
女子美短大を出たあと20代からちんどん屋稼業をやっていたのに、40過ぎて港家小柳の浪曲に感動して弟子入りを志願する。


港家小柳
1928年佐賀生まれ、80歳を超えて現役の老浪曲師。大阪で修行時代を過ごし、自ら一座を率いて地方のどさ回りをしてきた。映画の前半で、舞台の上で年季の入った浪曲を口演する姿を映す。「水戸黄門尼崎の春」だ。しかし、身体にはガタが来ている。弟子のこそめも小柳が住む名古屋に見舞いに行くが、もう戻れない。


玉川祐子
1922年茨城笠間生まれ、映画の中ではもうすぐ100歳になる老曲師(三味線弾き)。故郷の奉公先の横のレコード屋から流れる浪曲に魅せられて18でこの世界に入る。もともと浪曲師を目指していたが、声質から曲師を勧められる。結婚離婚再婚と浪曲のような人生だ。名古屋に住む小柳が上京するときには玉川の家に泊まる。小柳の身体が限界に達して舞台を降りたときから、こそめの面倒をみる。(現在でも100歳超えて存命)


この作品はかなり長期にわたるドキュメンタリーだ。監督の川上アチカ港家小柳の芸に感動しなかったら、この作品は生まれていない。しかも、カメラで捉えている映像には歴代の浪曲師が信頼してきた名曲師沢村豊子 と港家小柳が組んだ圧巻の舞台だけでなく、衰えて舞台を降りるときの姿も映る。自分の行く末をさとり、病床からこそめにアドバイスを贈る。


また、港家こそめ玉川祐子の元で稽古に励む姿も映す。「たまには汚い声も出すのだ。いい声だけではダメだ。」と教える。味のある言葉だ。師弟関係を超越した心のふれあいに感動する。同時に川上アチカ監督粘り強さと、的確な編集を経て一般公開に持ち込んだ執念に感動する。拍手をおくりたい。もう一度観たい映画に久々に出あった。
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映画「ジュリア(s)」ルー・ドゥ・ラージュ

2023-05-07 18:29:12 | 映画(自分好みベスト100)
映画「ジュリア(s)」を映画館で観てきました。


映画「ジュリア(s)」フランス映画、もしちょっとした人生の選択が違っていたら別の人生の展開があったかもしれないというあるピアニストの話を映像で見せてくれる作品である。遠出をしないGWなのに、観てみたい映画に恵まれない時に選択した作品である。人生の先のことはわからないけど、「あの時こういう選択をしたら?」、「あの人に出会わなかったら?」なんて過去のことを時折考える。「人生をもしもで考えるとおもしろい。」と言ったのは小泉信三だが、ちょっとした好奇心で選択したこの映画は極めて上質な作品だった。

ピアニストを目指す17歳のジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)ベルリンの壁が崩壊するニュースを見て、音楽仲間と親に内緒で遠距離バスで一緒に行こうとする。この時、うっかりバッグから落ちたパスポートを家に忘れたかどうかで人生が分かれる。

1)パスポートを家に忘れたことに気づく
いったん外に出た後で、あわてて家に戻ると両親がいて、仲間と遠出をすることを止められてしまう。バスの時間があるので仲間はベルリンに旅立ち、ジュリアは何もなかったかのようにピアニストへの道を歩む。

2)家でパスポートに気づきベルリンに旅立つ
出発前にバッグから落ちたパスポートに気づき、そのままバスで仲間と一緒にベルリンに行き、東西の壁を壊す場面に出くわす。壁を壊している場所のそばにあるピアノを弾きはじめると、その音色の美しさに周囲はジュリアに注目して、それが新聞記事になってしまう。でも、未成年が勝手に旅立ったことに父親が憤慨、反発したジュリアは家を飛び出す


まずここで運命が分かれる。
ここからいくつもの出会いと選択でジュリアの人生の道筋が変わっていく。

本屋でたまたま出くわした男性と一緒にカフェに行って話さなかったら?
シューマンコンクールで賞をもらわなかったら?
もし運転する2人乗りのバイクが事故に遭わなかったら?


この展開は映像で堪能してほしい。

時の流れは示しても、それぞれの人生を文字で明示をするわけではない。
最初はもっとわかりづらくなるのかと思ったが、ごく自然になり得たはずのそれぞれの人生の場面に移り行く。こんなに多くの人生があったら、長時間になってもおかしくない。編集がうまい。


むちゃくちゃよかった!今年でピカイチ
コクのあるフルボディのワインを飲むような味わいをもつ。重厚感がある。まず、映像の質が高い。ジュリアが暮らすそれぞれの街で室内外あらゆる美術のセンスに優れる。望まれない妊娠をした女の子を追った昨年屈指の傑作「あのこと」の舐めるように主人公を追うカメラワークを担当したロラン・タニーが撮影を受けもつ。被写体がよく、カメラも巧みなので大画面で観ると我が身に響く

加えて、音楽の選曲がすばらしい。どの曲も心にじんわりとくる。ピアニストが主人公なので、当然ピアノ曲が中心となる。オリヴィエ・トレイナー監督は以前「ピアノ調律師」で短編映画のセザール賞を受賞している。おそらくは音楽の素養があるのであろう。ここまでピアノ曲の選択に優れる映画に出くわしたのは初めてだ。


俳優陣は日本でメジャーとはいえないが、いくつものフランス映画の傑作で観る顔ぶれだ。22年では抜群におもしろかったフランス映画のサスペンス「ブラックボックス」で主人公の妻役を演じたルー・ドゥ・ラージュの熱演がきわだつ。髪型を変えてなり得たいくつものジュリアにそれぞれなり切る。夫役のラファエル・ペルソナは久々に見る気がする。物理を学んだ後に金融の道に進むという典型的な現代エリートの役柄だ。アランドロンばりの典型的なイケメンフレンチでクールな「黒いスーツを着た男」が印象的だった。

ちょっとした選択や出会いでこんなにも人生が変わってしまう。ジュリアのそれぞれの人生で、一見幸せそうに見えた流れが一瞬にして不幸に陥ってしまったり、不幸せのどん底から逆に結果オーライに進んだり、オリヴィエ・トレイナー監督変幻自在に変化球を投げてくれる。単純に進めないストーリー展開も良かった。そして、それぞれの幸不幸の場面を映像で演じてくれたルー・ドゥ・ラージュに敬意を表したい。母親の危篤と葬儀に直面するときの4通りのジュリアに感動した。父娘の交情にも触れる。


自分の人生を振り返るいいきっかけになったすばらしい作品だった。先日観たフランス映画「午前4時にパリの夜は明ける」より10倍良かった。メジャー俳優がいないからなのか、こんないい作品が東京で1カ所しか上映していないことに驚く。
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映画「メグレと若い女の死」 パトリス・ルコント& ジェラール・ドパルデュー

2023-03-19 18:13:46 | 映画(自分好みベスト100)
映画「メグレと若い女の死」を映画館で観てきました。


映画「メグレと若い女の死」はフランスの名匠パトリス・ルコント監督がベテラン俳優ジェラール・ドパルデューと組んだ新作だ。作家ジョルジュ・シムノンメグレ警視が謎解きをするミステリーの名作である。50年代のフランスパリの雰囲気が感じられるという解説を読みこの映画を選択、ここのところハズレが続く中では大当たりだった素敵なフランス映画である。

1950年代のパリ、身体に5カ所の刺し傷のあるフォーマルドレスを着た若い女性の死体が発見される。メグレ警視(ジェラール・ドパルデュー)が現場に駆けつけるが、身寄りを示すものは何も残っていない。高価なドレスと履いてる靴や下着は不釣り合いだ。犯人を探すために、目撃者の証言、遺留品をたどっていくと若い女性ルイーズの素性が少しづつわかっていくという話だ。


ミステリーのお手本のような作品だ。
テンポがいい。90分以内に上映時間を簡潔にまとめる。ムダがない。それなのに、大柄で太めのメグレ警視の動きはゆったりで、あせらず動く。音楽とあわせて心地が良い気分になる。蓮實重彦が常に言う映画90分論にあてはまる。昭和30年代の日本映画の刑事ものもこのくらいの長さであるが、映像につなぎ目が多く、不自然さがある。この映画ではごく自然に謎解きが流れる

子どもの頃、東京オリオンズ(のちのロッテ)に小山正明という300勝投手がいた。ムダなインターバルなく、あっという間に完投する投球を見せてくれた。「巨人の星」での星飛雄馬のように、投げるまでに10分かかるような映画が最近やたらと多いので、この映画のムダのなさがより一層体感できる。ベテランのパトリス・ルコント監督のうまさであろう。

フランス映画独特のムードの中で、陰影のバランスが上手い鮮明に見せない映像もすばらしい。古い街並みがそのまま残っているパリならではのロケもあり、クラシックな建物とインテリアもいい。ストーリー自体は、都合のいい出来すぎな設定もある。でも、変なつくり込みはせずに、手掛かり材料から周到に聞き込みをしていくメグレ警視をじっくり追っていく。コロンボ刑事を連想する。


若い美女3人も巧みに起用していた。図体だけデカイ、動きが緩慢な初老の警視とのコントラストもいい。俳優の使い方に長けている。特に良かったのが、たまたまスリの現場を見つけて、手なずけたベテイという女性(ジェドラベスト)だ。もともとは育ちがよくない女だけど美しい。低めの声がカッコいい。出来すぎな展開に彼女がうまく使われていた。


この展開自体は不自然というより好感をもって自分は観れた。奇妙な余韻も悪くない。傑作とまではいかないが、この映画が好きだ
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映画「BLUE GIANT」

2023-02-19 06:46:21 | 映画(自分好みベスト100)
映画「BLUE GIANT」を映画館で観てきました。


映画「BLUE GIANT」は以前ビックコミックに連載されていた石塚真一の同名漫画を立川譲監督でアニメ映画化したものである。恥ずかしながらこの漫画の存在自体知らない。そもそも長い間漫画雑誌はまったく読んでいない。ビッグコミックにさいとうたかをが亡くなってもまだ「ゴルゴ31」が連載されていることを知っていても、ほかに何が連載されているかも知らない。

そんな自分でも、プロのジャズミュージシャンを目指した成長物語のアニメ映画が公開されると知り気になる。今までこんな設定の作品ってあっただろうか?目の付け所がいい。しかも、映画ではアニメ映像に合わせて現役のジャズプレイヤーがバックで吹替え演奏しているとなるとアニメ映画はめったに観ない自分でも観に行きたくなる。結果、大正解だった。


高校時代からジャズプレイヤーを目指して、テナーサックスの練習をしてきた宮本大(山田裕貴)が卒業して仙台から上京する。行くあてもなく、大学に進学した玉田(岡山天音)の家に居候し、橋の下で練習を始める。ライブハウスで演奏していたピアニストの沢辺(間宮祥太朗)のプレイに惚れ込み、一緒にやろうと誘いジャズで身を立てようとする話である。

気分が高揚するすばらしい成長物語だった。
映画が始まり、いきなり、ジョンコルトレーン「インプレッションズ」の旋律が流れる。イイぞ!と興奮してくる。そこから主人公宮本大がサックスで身を立てようとする物語が始まる。大がそのピアノプレイに惚れたライブハウスで演奏している沢辺は、ピアノを4歳からやっている天才肌でプライドの高い男だ。大の演奏を聞いて一緒に組んでもイイということになる。こんなプロとしてモノになる寸前の演奏でも本物のプロのプレイヤーが吹替え演奏している。これがイカしている馬場智章のサックスソロが実にいい。


ピアノの上原ひろみを中心にオリジナルの曲を作ったのであろう。連載漫画では当たり前だが、音はない。普段漫画を読まない自分のようなジャズファンが聴いても気にいるような映画にしようとする意気込みが感じられる。登場人物が演奏する曲も練って作っている感がある。石原裕次郎時代の日活映画でジャズマンの成長物語があった気がする。でも、流れるジャズのレベルが違う。

物語の流れは比較的単純である。スポーツ根性モノ劇画のような成長物語だ。素人ドラマーの玉田がこんなにすぐうまくなるのかよと思ってしまうが、所詮はアニメ映画、いいんじゃないと受け入れる。実写でなくてよかったなとは思わせる。


元ジャズ歌手のジャズクラブの女性オーナーや無理やり出演させてもらったライブハウスのオーナー東京で一番のジャズスポットのオーナーなど登場人物も巧みに設定している。スポーツ根性劇画で甲子園出場を目指すが如く、10代のうちに「BLUE NOTE 」を意識した架空の人気ライブスポット「SO BLUE」のステージに出演しようと頑張るなんて話もいい感じだ。紆余曲折もいくつか用意して緩急をつける。実に楽しい。


コロナでジャズのライブステージができない時期もあり、酒を飲みながら楽しむジャズクラブ通いも減った。ジャズ人気に翳りが出てきている中でこの映画が公開される意義は大きい。映画館で周囲にいる若いカップルがじっと見入っている姿にジャズを知らない人たちもこれをきっかけにジャズを好んで聴くようになるのではと感じた。

大学時代から一緒にジャズクラブ通いを続けている仲間たちにも薦めたい。

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