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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「バーニング」ユ・アイン&イ・チャンドン

2019-08-09 08:03:18 | 映画(韓国映画 2019年以前)


映画「バーニング」は2018年の韓国映画


映画「バーニング」村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作としている。イ・チャンドン監督「シークレットサンシャイン」、「ペパーミントキャンディ」の名作を残してきた。玄人筋の評価は高い。原作は読了しているが、記憶にない。映画を見た後で再読した。もともと同郷の幼馴染だった男女が再会して仲良くなったあとで、得体のしれない金持ちの男性が出現する。ある時男性が主人公に秘密の趣味の告白をする。その告白のあと動揺する主人公の姿を描く。

村上春樹の短編は謎めいたものが多い。舞台を韓国に移したこの作品は原作の重要ワードをそのまま残すが、話を広げ独自の解釈をする。不思議な味わいをもつ映画である。

運送業のアルバイトをしながら小説家を目指すイ・ジョンス(ユ・アイン)は、デパートの店頭で幼馴染のシン・ヘミ(チョン・ジョンソ)に声をかけられる。2人で酒を酌み交わした後に急接近して肉体関係を持つ。そのあとヘミはアフリカ旅行に行く。旅行中、飼い猫の世話を頼まれたジョンスは、ヘミのマンションを時折訪れるが、猫は一度も姿を見せなかった。

半月後に帰国したヘミは、ナイロビ空港で出会ったという青年ベン(スティーブン・ユァン)を連れていた。ヘミに誘われてベンの自宅に行くと、仕事をせずに高級マンションに暮らし、高級車を乗り回しているようだ。ヘミはベンに急接近している。そのあと、ベンとヘミがジョンスの実家に遊びにきた。その時、ベンはジョンスに「ビニールハウスを焼くのが趣味だ」ということを打ち明ける。その日を境にヘミがジョンスの前から姿を消すのであるが。。。


1.納屋を焼く
原作では「納屋を焼く」ことになっているが、ここではビニールハウスだ。それ自体は同値のようなものである。ジョンスの古くなった実家で3人は大麻を吸ってハイになっている。へミは上半身裸になって踊りだす。疲れ切ってへミが寝て二人きりになった時ベンが「ビニールハウスを焼くのが趣味」と告白する。ジョンスはあぜんとする。近々にこの近所で焼くと聞いたジョンスは気になって仕方がない。ふだん乗っているトラックで近所をくまなく走り回る。でも焼かれたビニールハウスはどこにもない。これはどういうことなんだろうとジョンスは動揺する。


2.姿を消すヒロイン
久々出会った2人がへミの部屋でメイクラブする。ベットの下からスキンを出して、使ってという。男慣れしていることを示すのであろうか、脱ぎっぷりもよく韓国映画では珍しい大胆さである。夕焼け空をバックに、マイルス・デイヴィスのトランペットに合わせて、へミが上半身裸になって踊るシーンがある。バストに整形大国韓国を思わせるものを感じる。


村上春樹の小説では、ヒロインとなる女性が突然姿を消すことが多い。行方不明になること自体は「スプートニクの恋人」などで読んだことがあるので、また来たかという感触である。彼女は金を持っていませんよとベンが話しているので、高利貸しの追い込みから逃げているのかと自分は一瞬感じた。でもへミは現れない。自室にはもう住んでいないようだ。ジョンスはベンを尾行するようになる。初めてベンの「ビニールハウスを焼く」というのが「殺人」につながるということに気づく。

村上春樹の原作では余韻を残すように終わっている。読者に想像させる。ハードなエンディングではない。誰かが突然姿を消すことが日常茶飯事にあるので、最初に読んだとき何も考えなかったかもしれない。黒沢明監督の映画「羅生門」は、芥川龍之介の「藪の中」を題材にしている。小説では事件の当事者2人と殺された男の死霊の3つの証言が語られるだけである。映画「羅生門」では目撃者が見たままを語るシーンを加える。黒澤明の新解釈だ。韓国の名監督イ・チャンドンが映画の中で自分なりに解釈する。へミの家族、ジョンスの母親など登場人物も加えて証言を増やす。もともとの短編小説を深みのあるものとしている。そして衝撃のシーンにつなげる。

バーニング


螢・納屋を焼く
村上 春樹

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映画「悪女」

2018-07-18 17:43:20 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「悪女」は2017年日本公開の韓国映画


韓国得意のクライムアクションだ。小さい頃から格闘の訓練を受けてきた女が、犯罪組織から国家の秘密警察へ立ち位置を変えながら、敵味方入り乱れる争いに巻き込まれる話である。スタントもいるであろうが、主人公はスタミナのいる格闘シーンをこなす。悪女というと、一連の「ゆりかご」や「蜘蛛女」のレナオリンのような女を思い浮かべる。この映画は違う。強い女だけど、悪い女ではない。

犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親ジュンサン(シン・ハギュン)にいつしか恋心を抱き、結婚する。甘い新婚生活に胸躍らせていた矢先、ジュンサンは敵対組織に無残に殺害されてしまい、逆上したスクヒは復讐を実行。しかしその後、国家組織に拘束されてしまい、政府直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて新たに運命の男性に出会い幸せを誓うが、結婚式の日に新たなミッションが降りかかり――(作品情報引用)


いきなり格闘シーンから始まる。カメラは大勢いる相手のみを映す。ゾンビのように次から次へと敵が現れるが、バッタバッタと倒していく。これは強いな!と思わせるシーンで観客の目を引かせる。ようやく女が映像の中に姿を現すのはしばらく経ってからだ。ゴツイ難敵と戦う場面となる。猛獣のような相手だ。それでも徹底的にやり尽くした後で階下に降りる。そこには警察官が大勢で待っていた。さすがに身柄を拘束される。


時間軸を前後に軽く振る。いくつかの回想シーンを交える。最初の格闘が何であったか?ということを説明するかのように。元々ある犯罪組織で格闘訓練された女だ。小さい頃に親が刺客の襲撃を受け、一人ぼっちになり、怪しい組織の中で育つ。そして育ての親が敵対組織にやられた後で、復讐のためヤクザ組織に乗り込むのだ。スタートはそのシーンだ。


結局警察に捕まる。懸命に留置所からの脱出を試みるが追手に捕まる。できる女と見込まれ、国家の秘密組織で訓練を受ける。女だけの組織だと意地悪な奴もいる。それもかわしながら、プロとしての力を蓄える。そして、これを終えたらシャバに戻してやると言われ、射的を定めると、そこには見慣れた男の顔があった。


アクションシーンが凄い。全速力で映画の間中駆け抜けるキム・オクビンは魅力的な女だけど、それを演出する監督の腕も大したものだ。
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映画「密偵」 ソン・ガンホ&鶴見辰吾

2017-11-23 17:50:05 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「密偵」を映画館で観てきました。


1910年の日韓併合以降における日本占領下の朝鮮を描いた映画作品が増えている。今年は「お嬢さん」も上映された。しかも、トップスターソン・ガンホが独立運動の首謀者を取り締まる日本警察の朝鮮人幹部を演じるとならば、おもしろそうだ。日本からは朝鮮総督府の幹部ととして鶴見辰吾が登場する。

結果、期待ほどではなかったかな?という感じだが、日本警察の幹部となったソン・ガンホが朝鮮人を取り締まる時、朝鮮人民としての心の矛盾をうまく描いている。本人は日本上映時に自分の日本語を聞かれるのを不安がったという日本語には字幕もついていたが、結構上手だった。

朝鮮人でありながら日本の警察に所属するイ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)は、義烈団を監視しろ、 と部長のヒガシ(鶴見辰吾)から特命を受ける。


義烈団のリーダーであるキム・ウジン(コン・ユ)に近づき、 ウジンと懇意になるジョンチュル。しかしそれは、義烈団の団長チョン・チェサン(イ・ビョンホン)が イ・ジョンチュルを“義烈団”へ引き込むための餌だった。 義烈団と日本警察の情報戦が展開する中、義烈団は上海から京城(現ソウル)へ向かう 列車に日本の主要施設を標的にした大量の爆弾を積み込むことに成功。敵か味方か、 密偵は誰なのか、互いに探り合いながら爆弾を積んだ列車は国境を越えて京城へ向かうが、 そこで待っていたのは・・・。 (作品情報より)

ワーナーブラザーズ制作となっているので、予算はかけられたのであろう。1920年代を再現したというセットはよくできている。しかも、ソン・ガンホの日本語がまともなので、日本人が見ても不自然さは感じない。

クライムアクションは韓国が最も得意とする分野だ。ただ、これは歴史もの。時代背景的には日本の軍部も強く、映画の結末に独立とかにはならないはずなので、どういう持って生き方をするのかと思っていた。若い人はあまり関係ないだろうなあと思うんだけど、最近とみに反日の雰囲気がただよわせる韓国世論を満足させる結末が必要なはずだ。まあこんなところだろうなあ。


韓国映画いつもながらの残虐シーンは用意されている。鶴見辰吾演じる日本人上司に命じられソン・ガンホが独立運動の特殊組織に属する女(ハン・ジミン)を拷問するシーンは目をそむけざるを得ない相変わらずのえげつなさだ。あとは、列車内でのソン・ガンホと同じ日本警察の男橋本との格闘シ-ンもその前の密偵を探る緊迫感のある攻防を含めてなかなか迫力ある。でも、そのくらいかな?それでも一応は楽しめる。イ・ビョンホンはここではあまり存在感はない。
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韓国映画「わたしたち」

2017-10-04 19:15:02 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「わたしたち」を映画館で観てきました。


「わたしたち」はいじめが題材の映画のようだ。韓国映画では狂気に迫るクライムサスペンスを見ることが多い。気になるテーマなので、恵比寿ガーデンプレイスに向かう。まだ幼い出演者のナチュラルな演技に好感が持てる。ストーリー作りの上手な韓国映画のなかでもグイッと引き付けられる要素がある。

友達がいないのでいつも一人でいる小学4年生の女の子が、同じクラスになるという転校生と知り合う。ちょうど夏休みに入るところで、ようやく友達ができて喜び夏休みの間遊ぶ。でも、転校生は塾で新しい友達と知り合う。それは主人公をいつも仲間外れにする同じクラスの女の子だ。学期が始まり、友人関係がごちゃごちゃになってしまうという話である。

普通の小学校でよくありがちな話だ。目線を自分の少年時代に落としてみると、小さい頃の思い出が次から次へと脳裏に浮かぶ。むろん、イヤな思い出も少なくない。スクールカーストなんて言葉がはやる現代であるが、日本も韓国もクラス内の構図は昔から変わらないのではないか。イケていないクラスで目立たない女の子が友人と群れられず、つまはじきにされるという設定である。

新人監督としてはなかなかの出来である。これは必見!


学校でいつもひとりぼっちだった11歳の小学生の少女ソンは、転校生のジアと親しくなり、友情を築いていくが、新学期になると2人の関係に変化が訪れる。また、共働きの両親を持つソンと、裕福だが問題を抱えるジアの家庭の事情の違いからも、2人は次第に疎遠になってしまう。ソンはジアとの関係を回復しようと努めるが、些細なことからジアの秘密をばらしてしまい……。(作品情報より)

新人女流監督が女の子の陰湿な部分をここぞとばかり浮き彫りにする。本当にイヤだよね、女って。まさに女のいやなところは愚痴と嫉妬でこの映画では全面に出る。逆に幼い弟の友人関係の話はあるけど、男の子に関する描写は少ない。

いじめ体験のない人って少ないと思う。子供の時になかったとしても、中学高校大学で友人に露骨に攻撃をうけたり、無視される経験をもったりする。また、大人になっても職場でいじめにあうことは、大概の人が経験しているのではないだろうか?せっかく仲良くできた友人に突然無視されるのは本当につらいよね。

新学期に入り、正式にクラス内で転校生として紹介される。主人公は壇上に立つ転校生のジアに小さく手を振るが無視。逆に塾で一緒になったいじめっ子に手を振る。転校生の誕生日にプレゼントを持って訪問するが、受け取りを拒否させる。なんで??と嘆く主人公だ。まあ、徹底的に主人公を友達地獄に陥らせる。



あとはここでも出てくるけど、ネタミ。自分よりいい成績をとっているだけで、友人からつまはじきにするシーンは本当にむかつく。転校生ジアの成績がいいので、もともとはクラスの優等生だったいじめっ子が面白くないのだ。ここでもう一つの葛藤が生まれる。あと、ここで取り上げられるのはこっそり話した内輪話が大げさになってしまうということ。こういうのもよくあるよね。

女のイヤな部分をこれでもかと見せて、見ている我々の腹をたたせる。これがうまい。
そして、最後は何かを連想させる形で終わる。
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映画「お嬢さん」 ハ・ジョンウ&キム・ミニ

2017-04-12 20:24:21 | 映画(韓国映画 2019年以前)
韓国映画「お嬢さん」を映画館で観てきました。


日韓併合以降の朝鮮を舞台にした映画だという。なかなかチャンスに恵まれなかったが、ようやく観れる。監督は「JSA」「オールドボーイ」と韓国映画の傑作を作ってから「イノセントガーデン」でハリウッドデビューをしたパク・チャヌクであり、「チェイサー」「ベルリンファイル」ハ・ジョンウ宮部みゆき原作の韓国版「火車」「泣く男」キム・ミニの共演である。

映画賞をかなりとっている作品を全く先入観なしで観てみた。超満員で立ち見ならぬ座り見ができるすごい状況だ。ハングルでなく第一話という文字がでる。戦前の朝鮮のドツボ地帯に、ハ・ジョンウ演じる1人の詐欺師が相棒を連れ出そうとしているシーンからスタートする。狙いを定めるのは日本人大富豪お嬢さんである。淡々とストーリーに身を任せる。素朴な侍女がお嬢さんのお世話をするうちにもともとの考えと違う動きをし始める。キム・ミニがやさしい小ぶりのバストトップをさらすだけで進むが、ちょっとした逆転があり、へえそうなのかと話が進むところで第二話に移る。

実はそこからが見ものなのだ。単なる結婚詐欺の話が複雑に入り組んでくるのである。しかも、エロティックな匂いをプンプンさせながら。


1939年、日本統治下の朝鮮。スラム街で詐欺グループに育てられた少女スッキ(キム・テリ)は、藤原伯爵と呼ばれる詐欺師(ハ・ジョンウ)から、ある計画を持ちかけられる。それは、莫大な財産の相続権を持つ令嬢・秀子(キム・ミニ)を誘惑して結婚した後、精神病院に入れて財産を奪い取ろうというものだった。計画に加担することにしたスッキは、人里離れた土地に建つ屋敷で、日本文化に傾倒した支配的な叔父の上月(チョ・ジヌン)と暮らす秀子のもとで、珠子という名のメイドとして働きはじめる。

しかし、献身的なスッキに秀子が少しずつ心を開くようになり、スッキもまた、だます相手のはずの秀子に心惹かれていく。。。(作品情報より)

日本占領下の朝鮮を描いた映画がここのところよく目につく。その中でもいちばんきわどい映画かもしれない。あえて言えばエロティックサスペンスといってもいいだろうか?日本でいうと石井隆、若松孝二といった監督がつくる映画のテイストである。


騙そうとして侍女となった女の子が、お嬢さんに一気に魅かれていく。お互いの肌を見せるようになった後戯れる。そのあたりは第2話で詳細となるが、この2人のレズビアンシーンはなかなか見れない興に入ったものである。リズミカルな抱き合いは本気に戯れているような妖艶さをもつ。キムミニの官能的なヌードも美しいし、新人キム・テリもそのしなやかな身体にまとわりつく。これは観ていて股間にも刺激を与える。


日本語はちょっとという感じかもしれない。これは即席なんで仕方ないかな?訓練したというが、ハ・ジョンウなんかはもう一歩だ。戦前日本語教育を受けた朝鮮人たちはもう少しうまく話せたのかもしれない。金大中元大統領がかなり流暢な日本語を話していたのを聞いたことがある。一般人もそうだっただろう。それにしても春画も随分ときわどいものを見せるし、韓国人がみるからそう思わないかもしれないが、マ〇コ、チ✖コの連発には驚く。
ここでの室内美術はなかなかのものだし、日本ロケも一部あったようなので、リアル感はある気がする。きわどさと話の逆転を楽しむ映画だ。


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韓国映画「アシュラ」 

2017-03-22 21:48:44 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「アシュラ」を映画館で観てきました。

「アシュラ」は韓国得意のクライムアクションで何か面白そうだ。「コクソン」の主演2人クァク・ドウォンとファン・ジョンミンが同じように活躍するのであるが、いかにも汚職大国韓国らしい市長、検事、警察をとりまく裏の陰謀がうずまく。「コクソン」もすごい迫力であったが、残虐さはこの映画のほうが上回る。というよりハチャメチャだ。


アンナム市の刑事ドギョン(チョン・ウソン)は、街の利権を牛耳る市長ソンベ(ファン・ジョンミン)のために裏の仕事を引き受けてきた。しかし市長の逮捕に燃える検事チャイン(クァク・ドウォン)がドギョンを脅し、市長の不正の証拠を掴もうと画策。事態はドギョンを慕う刑事ソンモ(チュ・ジフン)をも巻き込み、生き残りを賭けた欲と憎悪が剥き出しの闘争へとなだれ込んでいく── (作品情報より)

ともかく血が全編に流れている。それも残虐な描写だ。何度も目をそむけたくなるような場面が繰り返し続いている。それに加えてのカーチェイス場面がハチャメチャだ。これを撮るのはなかなか大変だ。

1.市長と刑事
この市長はまさにワル、訴訟を受けて市長の座が危なくなると、手下に入った刑事をつかって法廷に承認が出られないように工作する。主人公である刑事ドギョンは妻が難病にかかってお金がいるので、市長の裏の仕事を請け負っている。でもちょっとしたことで、検事に弱みを握られる。

でもここでの見どころは途中で凶暴に変貌する主人公の弟分ソンモである。市長にかかわるいやな敵たちを次から次へと始末する。そのやり方は残虐そのものだ。まさに特攻隊的な動きを見せる。

2.検事と刑事
市長の不正を糾弾したくて仕方ない検事たちは、法廷に証人が出られなかったことを悔やむ。そして、市長の裏仕事を請け負っているとにらんだ刑事に近づく。この検事を演じるクァク・ドウォン「コラソン」「弁護人」その他の映画で嫌味たっぷりな役を演じている。見るからに気色悪い。

刑事は自分の班長ともめて、誤って殺してしまっている。刑事はそれを情報屋のせいにしようとしているが、検察は証拠を握っている。でもそれを取り上げない代わりに市長の悪さの証拠をだせと刑事に迫る。刑事は市長と検事のはざまで立ち回るが、次第に面倒なことになってくる。


最後に向けては、修羅場もいいところだ。
市長、検事、刑事の三者が入り乱れてぐちゃぐちゃだ。ここまでいくとやりすぎの感もあるくらいだ。
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映画「哭声 コクソン」 ナ・ホンジン&國村隼

2017-03-20 20:44:23 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「哭声 コクソン」を映画館で観てきました。

これはもう凄すぎる。
スリラー、クライムサスペンス、ホラーといったジャンルを超越した映画である。自分から見て韓国映画最強のクライムサスペンス映画「チェイサー」でデビューして、我々の度肝を抜いたナ・ホンジン監督が朝鮮族の悲劇を描いた「哀しき獣」を発表した後に、「哭声 コクソン」でまた我々を驚かしてくれた。


ソウルの坂を走りまくる「チェイサー」や執拗な暴力がド迫力の「哀しき獣」とは違うスタイルだ。悪霊に取りつかれるといった人智を超えた世界を織り交ぜて、我々を錯乱させる。今回は國村隼が重要な役割を演じる。セリフは少ないが、存在感は重い。韓国クライムサスペンスの常連、クァク・ドウォンやファン・ジョンミンも好演で、何よりすごいのが警察官の主人公ジョング娘役の少女キム・ファニがちょっと凄すぎの怪演だ。この怪演を観るだけでも映画館に向かう価値はある。

韓国の静かな村で、村人が自身の家族を虐殺する事件が連続して起こる。殺人を犯した者は皆、目が濁り、体中が湿疹で爛れ、言葉を発することができない状態で発見される。


村人は、山中に住み着いていた日本人(國村隼)が来てから事件が起きていると噂をしている。村の警察官ジョング(クァク・ドウォン)が事件の起きた家を捜索すると、そこには事件の目撃者を名乗る女ムミョン(チョン・ウヒ)が現れる。相棒と山奥に向かい日本人の棲み処を令状なく捜索すると部屋の中は怪しい雰囲気が立ち込めており、相棒は飼い犬に危うく襲われそうになる。

そのころから幼い娘の動きが奇怪になっていた。娘の足を見るとは殺人者たちと同じ湿疹でただれ始めていた。家族は娘に悪霊が取り付いていると祈祷師(ファン・ジョンミン)に除霊を依頼する。ジョングは娘を救いたい一心で友人たちと日本人の住処を襲撃するが。。。




1.山間部の村で起きる事件
場所は全く特定されないが、山間部の村が舞台だ。かつては日本の領土だったわけであるから、日本の田舎と風景はほとんど変わらない。建物は瓦葺の平屋が立ち並び、そこで次々事件が起きていく。今から40年近く前、横溝正史原作の映画が大人気だったが、あの時に見る風景と同じだ。しかも、一連の横溝作品もよそ者が村に入って次から次へと事件が相次いで起きる。「本陣殺人事件」の三本指の男や「悪魔の手毬唄」の気味の悪い老婆や流れ者の男と同じように、一人の日本人のよそ者が村に近づいてからおかしなことが起こるというパターンである。


でも、ナ・ホンジン監督作品である。映画「チェイサー」では我々の予想を裏切って、残酷な結末に持っていく。まったくハッピーエンドにはならなかった。あの衝撃が残っているので、大塚英志がいうような「物語の原則」をまったく外してくる可能性が高い。ドッキリ度は映画の時間が経過するごとに高まっていくのに、次に来るシーンの予想が立たないので、映画を見ている間最後まで息が抜けない。それがいい。

2.祈祷師
「新しき世界」や「国際市場で会いましょう」などでおなじみのファン・ジョンミンが車に乗ってさっそうと村に入り込む。祈祷師である。さっそく、主人公である警官の家でつけている醤油の中にカラスの死体が潜り込んでいるのを見つけて、家族の信頼を得る。そして祈祷を始める。このパフォーマンスがすごい。悪霊が入り込んでいるという娘が祈祷師が動き回るたびに悶える。この対比をうまく映像化する。



日韓併合前1894年~1897年にかけて当時の朝鮮本土を旅行した英国人イザベラバードの名著「朝鮮紀行」という本がある。この映画をみてとっさにこの本を思い出した。この本は日本人でも朝鮮人でもない公平な立場で、当時の朝鮮の姿を正確に描いている貴重な資料である。

朝鮮は日本に攻め込まれたこともきっかけになり、仏教と縁遠くなっていた。
仏教は李王朝が始まる以前、千年にわたり大衆に好まれた宗教だったが、16世紀以来「廃止」されており、聖職者に対して過酷な法律が制定されるなど、実質的に禁止されてしまった。禁止の理由は、300年前に秀吉の日本軍が侵略してきたとき、日本人が仏教僧に変装してソウル入城の許可をもらい、守備隊を虐殺したからだという。その真偽はともかく、朝鮮ではよほど探さなければ仏教の形跡は見つけられない。。。。朝鮮人にとって私たちの宗教の代わりとなるものは、祖先崇拝と、大自然の力をびくびくと恐れる鬼神信仰である。(イザベラバード 朝鮮紀行 pp.85-86)

それでも原始的な祈祷師によるシャーマニズムが残る。
300年前にソウル城内で仏教が廃止され僧侶の入城が禁じられた時点で、国家的信仰というものは一切朝鮮から消えてしまったのだが、それでも上述のように霊界に関するなんらかの認識は存続した。その認識とは、どの民族にも共通の祖先崇拝を別にすれば、おもに中層・下層階級が信仰した一種のシャーマニズムを通してであったと私は思う。
 おもに辺境で信仰されている無知な迷信をともなった仏教と、孔子廟に対して厳粛にあらわされる敬意はさておき、一般の民間信仰は朝鮮人の空想の産物であり、主として自然の不思議な力への恐怖から生まれたしきたりで成り立っている。(同p89)


こういった呪術師や風水師は家を建てるときや墓を建てるときは必ず雇われる。時ならぬ災難に遭ったり病気になったり、誕生、結婚、土地の購入時などにも頼りとされる。シャーマンのおもな機能は、儀式や呪術をして鬼神を感化すること、供物で鬼神をなだめること、託宣をすることである。その際、踊り、身振り、恍惚状態に入ることがシャーマンの重要な役割である。(同 引用)


この映画で描かれる祈祷師は元来、李氏朝鮮時代の朝鮮社会から根付いていたといえよう。日韓併合前のイザベルバードの著述からも明らかである。
この映画の2人の祈祷合戦と少女が苦しむシーンは見ものだ。

3.かく乱する主人公の娘
ヒョジン(キム・ファニ)が凄すぎる。エクソシストを連想させる娘のかく乱は一世一代の名演技だし、演出したナ・ホンジン監督もあっぱれだ。

最初はあどけない少女だったのに、次第に異変を感じさせる。その変化が極度に高まる時、観ている我々を一体どうなってしまうんだろうと思わせる。


eiga.comのインタビューを引用すると
強烈なインパクトを放つヒョジン役のキムに対しては、「大人の役者さんだと思ってアプローチした」(ナ監督)。「この映画が成功するか失敗するか、そういった可能性があるとすればこの役だと思ったので、子どもという子どもをすべてオーディションしました。彼女は、肉体的にも精神的にも、今までに経験したことのないような“ラインを越える”ことになる。そのためにまず、6カ月かけて振り付けのトレーニングを受けてもらい、さらに宗教に救いを求めてほしかったので、宗教的な話をたくさんしました」と全面バックアップしたという。

お見事しかいいようにない。二時間半以上まったくだれない。

でもこの映画いくつか謎を残す。ヒントは充満しているのであるが、はっきりさせない。
観客に推理をさせる楽しみを与えているかのようだ。ファン・ジョンミンが持っている写真が何を意味するのだろうか?

朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期
1894年から1897年に旅した英国女性


チェイサー
ナホンジン監督の度肝を抜くデビュー作


哭声/コクソン
凄すぎるクライムサスペンス
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映画「オフィス 檻の中の群狼」 

2017-02-18 20:41:00 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「オフィス檻の中の群狼」は韓国のスリラーサスペンス映画


韓国のクライムサスペンスのレベルは日本映画をはるかに超越する。よくできている数ある作品でも自分はスピード感、極度の残虐性、脚本の意外性から「チェイサー」がいちばん度肝を抜く作品だと思っている。その脚本家が監督で作った作品となれば、思わずDVDの棚からピックアップする。

予備知識はほぼゼロに近い形で見た。その他の作品でもよく見るぺ・ソンウが呆然としながら自宅に帰り、母親、妻、子供の3人が仲良くテレビを見ているときに訳もなくハンマーを振りかざそうとしている。そしていきなり殺してしまう。何これ??


そのあと、彼が勤めていたオフィスが映し出される。刑事が来てもみんなこそこそ話をしている。我関せずとばかりに、課長が何でそんなことをしたのかわからないという。その中でインターンで働いている女の子をクローズアップする。このあたりは手探りでストーリーが進んでいく感じだけど、途中からテンポがあがっていく。いかにも韓国クライムサスペンス風だが、スリラーの様相も呈してくる。なんかドキドキしてくる。ハラハラ系の映画だ。

ある日、勤勉なキム・ビョングク課長(ぺ・ソンウ)は、帰宅後、家族を殺害して姿をくらます。翌朝、刑事ジョンフン(パク・ソンウン)は、キム課長の勤めていた会社に聞き込み調査をするが、上司の部長や同僚をはじめ誰も多くを語ろうとせず、特にキム課長と仲の良かったインターンのイ・ミレ(コ・アソン)は何かを隠しているようだった。


刑事は事件の直後、キム課長が会社に戻ってきた映像を捉えた防犯カメラを入手するが、その後、彼の足取りがつかめず、事件は迷宮入りをする。キム課長が捕まらず同僚たちが不安がる中、オフィス内で視線を感じたり、彼のパソコンが勝手に起動するなど奇妙な出来事が起きる。そして、彼の存在に気づいた時、同僚たちが次々と事件にまきこまれていく。

1.恐怖感の高まり
観客をビックリさせようとするサービス精神が監督にあるかどうかで見ていて楽しいかどうか分かれる。ブライアンパルマ監督は観客を驚かせるのが大好きな1人である。ホンウォンチャン監督が脚本を書いた映画「チェイサー」もこう次くるのかと思わせる場面が多かったが、ここでは途中でスリラーの色彩が強くなり、現実と虚実の境目をはっきりさせず、ホラー映画と思わせてしまう展開にする。のけぞる場面も多いけど、怖いもの見たさで目を伏せながら見てしまう。



2.有名シーンの抜き取り
殺す側とやられる側がオフィスの中をまさぐりあう展開はいかにもヒッチコック流だし、トイレの中の殺人は「サイコ」の有名なシャワーシーンのパクリだね。上からナイフを指す刺し方もジャネットリーが刺されるのと同じだ。殺された人間が下に駐車してある車に落下して行くシーンは、トムクルーズが殺し屋を演じた「コラテラル」を連想させる。ジェイミーフォックスが上から落ちた死体におののくシーンにつながる。本を読んでいるときに「〇▲引用」と書いてあるみたいな感じだ。


3.インターンの女の子
韓国では過酷といわれる学歴社会を勝ち抜いた一部のステイタス以外はいい就職にたどりつけないといわれる。正社員への道はなかなか険しいもののようだ。現状有効求人倍率が1.3の日本よりははるかに厳しいだろう。3か月たって判断するというのに、この主人公は何も告げられない。まわりからはいじめられ、外国の大学を出た美人のインターンまで入ってくる。やってられないよという感じの彼女が怒りを爆発ということだが、さすがにやり過ぎ。


でも、このオフィスにいる連中嫌な奴らばかりなので、思わずスッとする気分にはなれる。

オフィス 檻の中の群狼
オフィス内スリラー
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映画「フィッシュマンの涙」 

2017-01-22 20:28:02 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「フィッシュマンの涙」を映画館で見てきました。


韓国のコメディ映画である。変身願望はだれにもあり、突然若返ったりする映画であれば気分よく見れるが、これはどぎつい。なんと魚に変身してしまうのだ。CGたっぷりのスリラーよりも昭和40年代前半の「忍者ハットリクン」や「ブースカ」のようなタッチの魚君だ。なんと8キロのマスクをして演じているという演技者に思わず感心してしまう。

今も大統領の汚職問題で韓国国内は異様にドタバタしているようだ。この映画に流れるのもそれと似たようなギスギスした欲の塊のような韓国的匂いを感じる。

テレビ局の記者を目指しているサンウォン(イ・チョニ)は、就職面接官の部長から仕事ぶりを見たいという理由で、最近ネットを賑わせている事件を極秘取材することになった。 「恋人が魚の姿になってしまった」と投稿していた女性ジンは、ネットが炎上していてもメゲない強靭なメンタルを持ち、あの日の出来事をサンウォンに語り始める──。


どこにでもいるごく平凡なフリーター青年パク・グ(イ・グァンス)は、新薬を飲んで寝ているだけで30万ウォンの謝礼が出るというカンミ製薬会社の臨床実験に参加。ところが翌朝、謎の副作用で「魚人間」に突然変異してしまう。

臨床実験の責任者だったピョン博士は「体内でタンパク質を無限に供給し、食糧難を解決する実験をおこなっていた」と弁明するが、製薬会社の非道な実態を知った国民の怒りは爆発。


その一方で、魚人間パクを通して明らかになる若年層の過酷な現実にも注目が集まり、就職難で困窮する若者たちのヒーローとなったパクは、社会に対して不満や不信を募らせる多くの人々の象徴と化し、追っかけファンの出現やグッズ発売などの爆発的シンドロームを次々と巻き起こしていく。だが実は、パクの体はますます魚化が進行し、もはや数分おきに大量の水分を補給しないと身がもたない状態に陥っていた…。

一夜限りの関係を持った女友達ジン、熱血漢の新米テレビ局記者サンウォン、息子の為に賠償金獲得を狙う父親、人権派弁護士たちは、それぞれの事情を背負いながらも私欲にまみれた製薬会社に対して真実を明るみに出すべく動き出すのだった――。 (作品情報より)

まあ普通の映画だけど、最後に向けてだけエレジー的な感じがしていいんだよなあ。
「およげタイやきくん」の歌詞を連想し、思わずジーンとしてしまう場面もあり、最後まで目が離せない。
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韓国映画「弁護人」 ソン・ガンホ

2016-12-11 18:02:51 | 映画(韓国映画 2019年以前)
韓国映画「弁護人」を映画館で見てきました。


「殺人の記憶」「大統領の料理人」などの韓国の名優ソン・ガンホが弁護士役を演じるという。お世話になっているある弁護士もこの映画を推薦していて、見てみようかと思う。ノ・ムヒヨン(盧武鉉)元大統領の若き日の姿がモデルのようだ。

主題となる事件の前にこの弁護士の物語が割と長めに語られる。裁判官をやめて弁護士になったあと、本来司法書士がやるべき不動産登記業務を請け負い仕事を増やしていく様子が語られる。その後、他の弁護士もまねて登記業務をやることになり仕事が減ってしまった時も、商業高校出身で帳簿系の知識をいかして税務専門の弁護士になり、ますます仕事を増やす姿などを映しだす。そういう生活力旺盛の苦労話もソン・ガンホがうまく演じる。

でも昔からのなじみの店の店主の息子が公安に「アカ」の疑いで引っ張られ、拷問を受けていることがわかると正義の心がめばえて豹変する。ここからの法廷話はなかなか見ごたえある。公安当局の男を演じるクァク・ドウォンがうまく、判決に向けての対決が見ものである。

高卒で司法試験に受かり判事になったが、学歴社会の法曹界では差別が多く、弁護士に転身したソン・ウソク(ソン・ガンホ)。学歴もコネもないウソクは、まだ誰も手を付けていなかった不動産登記業務に目を付け、釜山一の税務弁護士へとのし上がっていく。ある日、馴染みのクッパ屋の息子・ジヌ(イム・シワン)が公安当局に突然逮捕されたと知る。自分の担当分野ではなかったが、ジヌの母親・スネ(キム・ヨンエ)からの懇願を受け、拘置所へ向かうが面会すらできない。


ようやく会えたジヌは、すっかり痩せ細り、顔や身体には無数の痣がある衝撃的な姿だった。ウソクは拘置所での取り調べに不信感を抱き、ジヌの無実を証明しようと立ち上がるが―。(作品情報引用)

1.元大統領の若き日の物語
映画情報によれば、韓国では大ヒットだったという。最近日本で石原慎太郎の著書がきっかけで田中角栄人気が再燃しているのと同様に、たたき上げで大統領になったノ・ムヒョンも人気があるのであろうか?ただ、この人も汚職疑惑で自殺して死んでいる。韓国の大統領はものすごい権力をもつと言われるが、次から次へと退任後失脚しているし、パク・クネ大統領に至っては弾劾されてしまった。まあ、ものすごい国だ。

フィクションとはいえ、この映画の前半をつかってノ・ムヒョン半生記を語っていると言ってもおかしくない。弁護士資格をもっているとはいえ、それだけではメシは食えない。至るところで名刺を配りまくる営業的な部分は好感が持てる。弁護士になるために勉強している時に、釜山港沖を見渡すマンションの工事にバイトの建設作業員として加わっていた。そしてリッチになり、このマンションの一室をむりやり購入しようとする姿は立身出世物語ともいえるのだ。


そうやっていながら、結局正義の道を歩もうとする。そこからは1962年のアカデミー賞主演賞作品グレゴリーペックの「アラバマ物語」の世界である。グレゴリーペックが冤罪の黒人を弁護する話に似た匂いを見ながら感じた。

2.学歴社会への反発
弁護士になって釜山の弁護士会に出席すると、目の前で別の弁護士が今度弁護士になった奴は高卒で不動産時の業務をやるとバカにしている。それだけでなく、裁判に臨んだときに検事と別の弁護士と判事が同じ大学の先輩後輩で「今度はお手柔らかに」なんて話もしている。そういう逸話で、韓国の法曹界の学歴社会を皮肉る。でも主人公はそれはさておいて生活力満点のパフォーマンスを発揮していく。


(ネタバレ注意)
ところが、公安当局に単なる読書会をやっただけで連行されたメシ屋の息子を助けようと奮闘する姿が続いていく。読書会で読まれていた本はEHカーの「歴史とは何か」で、検事や裁判長に向かって、これはあなたたちが出た大学の課題本ですよ。という法廷場面はなかなか痛快だ。

最初はバカにしていた釜山の弁護士会の面々も正義感を発揮する主人公の姿に共感をもつようになる。最後に向けての弁護士会の面々が仲間になり助けてくれる逸話はなかなかいい感じであった。

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映画「コインロッカーの女」キム・ゴウン

2016-05-01 18:04:21 | 映画(韓国映画 2019年以前)
韓国映画「コインロッカーの女」は2015年の韓国得意のクライムサスペンス映画だ。


ブラックに近いグレーな韓国の下層社会を描いた映画は数多い。日本のクライム映画でもどっちが敵か味方かわからなくなる映画は多いが、この映画は身内同士が殺し合うかなりえげつない映画である。

原題は「チャイナタウン」で仁川の中華街で闇金融を営む女社長がコインロッカーで拾った子供を引き取る。女社長は同じような境遇の子供を引き取り、兄弟のように育て、取り立て屋に仕立て上げるのだ。
常に冷徹に取り立てをしている主人公イリョンが、借金したまま返さない父親の子供である同世代の男になぜか惹かれてしまう。そして父親がダメなら息子をなんとかせいと指示する女社長の意向に反して彼をとり逃がそうとするところから話は複雑になっていくのだ。もっとえげつない韓国映画はたくさんあるけど、逆らった主人公がいったいどうなっていくのか気になったまま最後まで目が離せなくなる。


地下鉄駅のコインロッカーに、へその緒がついたままの赤子が捨てられていた。入っていたコインロッカーの番号が10 番であることから、赤子は10という意味のイリョンと名付けられた。イリョン(キム・ゴウン)は、仁川のチャイナタウンで闇金業を営み母さんと呼ばれる女(キム・ヘス)のもとで成長。やがて彼女の右腕となり、生きるために何でもするようになった。


ある日、父親が残した多額の借金を背負う青年ソッキョンのもとに取り立てに行ったイリョンは、不幸でもすれない彼の純粋な心に触れ、惹かれていく。しかし借金の返済の目途がつかず、母さんはイリョンに、ソッキョンの臓器を売るために彼を殺すよう命じる。(作品情報より引用)

1.韓国の取り立て映画
すぐさま連想するのが「息もできない」と「嘆きのピエタ」である。いずれも凶暴な取り立て男の物語だ。そこで繰り広げられるのはまったく容赦ない非情の世界だ。ここでも同様である。借金を返さないときには、目や内臓をくりとって金にするのである。ちゃんと医者とも組んでいる。


日本では貸金業法が厳しくなって、勤務中や夜中に取り立てに行ったりするのはご法度ということになっている。もちろん度を越した債務者にはそれなりに対応するのであろうが、取り立てに対する世間の目は数年前とは違う。一方韓国ではどうなのであろうか?こういった闇金融からの取り立てに関わる映画がいくつも公開されているのを見ると、日本とは状況が違うようだ。臓器売買に向けて売られていく女の子を描いたのは韓国映画「バービー」だ。ここでも医者と組んで債務者の臓器をえぐり取って売買で金にしていく。いかにも韓国らしい世界だ。

2.身内同士の殺し合い
むかしの中国で、権力を維持するために兄弟親子が殺し合うのは日常茶飯事だったと聞く。源氏の源義経、頼朝兄弟のように異母兄弟も多かったのかもしれないが、殺し合うまで憎み合うのは浮世離れしている。
ここでは血がつながっていない幼いころから身寄りのないまま引き取られた同士である。下手をすると血がつながっているよりも絆が強いようにも感じるがそうはならない。この面々の血を血で洗うえげつない世界が最後まで続く。一種ホラー映画を見ているような衝撃である。


3.いくつか疑問だけど(注:ネタバレあり)
1)追手に追われた少女イリョンが懸命に逃げる。ところが四方を囲まれて絶体絶命になり、海に飛び込む。誰も追わない。海の中から飛び出しているようにも見えない。でも飛び込む前と同じように乾いたスタジアムジャンバーを着て、平然としている。おいおいどうやって助かったんだよ。

2)イリョンの兄弟分二人がお互いに武器を持ちあう中、ぶっ倒れる。イリョンだけ助かるが後方から何者かに頭を強打される。そしてむかしの回想場面になり、気がつくと自分を強打した男を離れた場所でぶったしている。おいおい、この間どうなっているの??

3)イリョンはサバイバルの殺し合いを勝ち抜く。最終的にはイリョン自らナイフを持って刺している。でも捕まっていない。今まで暮らしたところでそのまま生活ができている。警察に捕まらないなんて、こんなことってあるのかしら?

とかとか疑問は多いけど、いつもながら韓国クライムサスペンスのスリル感は抜群だ。



コインロッカーの女
闇の女に育てられた捨て子
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映画「ビューティ・インサイド」 ハン・ヒョジュ&上野樹里

2016-01-24 17:37:45 | 映画(韓国映画 2019年以前)
韓国映画「ビューティ・インサイド」を映画館で見てきました。


これはおもしろい。
上野樹里が出ているということで足を運んだが、想像以上によくできている映画である。

ファンタジー恋愛ものであるが、既視感のない奇抜な発想でたのしい映画である。一人二役、三役というものは何度も見ているが、主役が数十人いるというのはあり得ない。結局主人公ウジンを演じる俳優はなんと123人、主だったウジンだけでも21人という前代未聞の主人公である。

朝起きると、別人になっているというのはカフカの「変身」だ。でもこの主人公は毎日違う他人の容姿になってしまうのである。そんな主人公が一人の女性を好きになる。逢引きした後朝もう一度会おうとしたら、顔がハゲ親父になっている。待ち合わせ場所に彼女が来ているのに出ていけない。そういう間抜けな場面と正統派に恋愛を楽しむシーンと交互に出てきて、次はどういう展開なのかと期待してしまう。しかも、最後に向けてはジーンとくるシーンもあってちょっと泣けてきてしまう。おすすめの映画です。

29歳の男性、ウジン(キム・デミョン)が目をさます。小太りで、大きな顔のウジンがつぶやく。「昨日は手のひらより顔が小さかった、今日は手のひらの2倍」と。そう、ウジンは、18歳のある日、目覚めたときに、本来の自分ではない人物になってしまう。この日から、毎日、目覚めるたびに、別の人間に変身する。ウジンの秘密を知るのは、母親(ムン・スク)のほかに、小さいころからの友人、サンベク(イ・ドンフィ)だけである。


ウジンは、家具のデザイナーでインターネットだけで仕事をこなしている。今日のウジン(イ・ボムス)は、アンティークの家具専門店で、ひとりの女性を見初める。彼女の名が、イス(ハン・ヒョジュ)と分かる。ウジンは、さまざまな姿で、連日、イスの店に通う。

ある日、ハンサムの容姿になったウジン(パク・ソジュン)は、イスにアタックして、イスはデートの誘いを受ける。2人はすぐに意気投合して、ウジンは自分の工房にイスを案内し、ウジンは決心する。「寝なければ、同じ姿でいられる」。そして3日目の夜、ウジンはイスに言う。「明日、朝ごはんを食べよう」と。眠らないように頑張るウジンだが、うっかり寝てしまう。朝、目覚めたウジン(キム・サンホ)は、髪の薄い、中年男になっている。ウジンは、待ち合わせの場所に行くが、とてもイスに話しかけられない。

ある日、イスの店に、チェギョンと名乗る新人の女性が研修に参加してくる。チェギョンは、イスに真実を告げようと決心したウジン(チョン・ウヒ)である。女性になったウジンが、自宅にイスを招き「僕がウジンです」と告白する。ウジンは、スマートホンに記録した映像を見せるが、ただただ、驚くばかりのイス。イスは、逃げ出すようにウジンの自宅から去っていくのであるが。。。


それでもイスはウジンのことが気になる。翌日思い切って自宅へ訪問すると出てくるウジンが上野樹里である。そして意気投合したあとはさまざまなウジンとデートするのである。



1.現代韓国事情
キムギドク監督の映画や韓国得意のクライムサスペンスばかり見ていると、極端なくらいの韓国下層社会が浮かび上がるが、この映画は普通の韓国の世相が見えていい感じである。電車の中で座席でみんなスマホを手にしているシーンやクラブや若者がよくいくような飲み屋のシーンを見ると日本と似たようなものなんだなと思う。これでもかというくらい若手男優を登場させるが、韓流好みのおばさまにはたまらないんじゃないの?


2.上野樹里
主人公が好きになるハン・ヒョジュ演じるイスという女の子が上野樹里に似た雰囲気を醸し出しているなと思っていた。しばらくして、主人公の1人として現れる。そう、上野樹里はある1日だけの主人公ウジンとしての出演である。韓国語は一切話せない。日本語を話すのだ。この主人公は男性だけに化けるのではなく、女性にもなってしまう。2人が近づく重要な場面での上野樹里の登場はうれしい。

主演作「スウィングガール」や「亀は意外と速く泳ぐ」は傑作であるが、「陽だまりの彼女」では本当にいとおしくかわいい存在になってしまう彼女を見て、もっと好きになる。ここでの出番は少ないが、この経験を日本の次回作に活かしてもらいたい。

3.印象に残るウジン役
普通変身するとなると、同性に限られる映像作品が多いと思うけど、ここでは違う。異性である女性にも何度も変身してしまう。特におもしろかったのは、子供に変身してしまう時とおばあさんになってしまった時だ。

子供になってしまったときに、お店の人に大人に対してタメ口をきいているのでおいちょっとおかしい他人に言われたり、酒を飲んでもいつものようにはいかず、すぐ酔ってしまってイスに担がれてしまう。財布はウジンがだすが、どういう関係なんでしょうと言われ、親子だと答える場面には笑えた。

イスが勤務する家具ショップで男女同伴のパーティが開かれることになり、イスはウジンとカップルで参加することになっていた。ところが、その時に限ってウジンは白髪のおばあさんになってしまうのだ。どうしよう?祖母と言い張って行こうかとまで考えるが、とりあえず、ひと眠りしてどうなるか?ということで時間を稼ぐ。その時イスはパーティ会場でやきもきしていた。周りからも、イスの彼氏はこないのかと陰口をたたかれていたその瞬間、気がつくと隣にハンサムな男性がくる。まわりから美人美女のカップルでうらやましがられる。2時間前まではおばあさんだったよなんて場面も面白い。

ハン・ヒョジュのキュートな主演ぶりがよかった。次から次に恋人役がかわるのにはさすがに面喰ったろう。彼女は日本語もしゃべれるし、ケバイ化粧の女が多い韓国女性の中では割とあっさり目で好感が持てる。ぜひこれからも日本映画にも出演してもらいたいものだ。

最後に向けては、どういうふうに映画の決着をもっていくのか、ラスト40分くらいからずっと気になっていた。韓国映画の傑作は結末をただではすませない。ここでも展開に気分よく席をたてた。後味はよかった。

(参考作品)
陽だまりの彼女
上野樹里の純愛


ビューティー・インサイド
七変化する主人公
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映画「殺されたミンジュ」 キムギドク

2016-01-20 20:42:53 | 映画(韓国映画 2019年以前)
韓国映画「殺されたミンジュ」を映画館で見てきました。


「メビウス」以来のキムギドク監督の新作である。必ず見に行く監督の作品なので、早速に映画館に向かう。前作「メビウス」はまったくセリフがなく、息子の性器を切り取るなんて、かなりマニアックな映画だったが、逆にセリフがキムギドク監督作品の割に多い。


女子高校生を死に至らした犯行グループへの復讐という題材だが、最初は何が何だかわからない。正体不明の武装集団が1人づつ拉致して、拷問というべきリンチを加えて白状させてという構図が次から次へと映しだされる。いつもながらキムギドク監督は低所得の社会の底辺をさまよう連中をクローズアップさせる。ここでも同様のパターンだが、最後に向けてあれ?こういうふうに持っていくの??と若干疑問が残るような展開だった。それでも最後まで見るものを飽きさせないのはキムギドク監督のさすがの手腕である。

5月、ソウル市内の市場を必死に逃げ惑う女子高生、彼女を追う屈強な男たちがいた。
彼女の名はミンジュ。ミンジュは次第に追い詰められ、そして路地の片隅で顔にテープを巻かれ、叫ぶ間もなく無残に殺された。


しかし、事件から1年たった頃、平穏を装うこの街のなかで、ミンジュの死の真相を執拗に追いかける謎の集団が、暗闇の中で不気味に動き始める。ミンジュ殺害に関わったのは7人の男たち。謎の集団は、そのうちの一人を誘拐して、拷問を加え「去年の5月9日を覚えているか、その日何をした…」と執拗に問いただす。


恐怖と自責の念に襲われた容疑者は、全面的に自白して許しを請うのだった。謎の集団は変幻自在に変装して一人、また一人と誘拐して、自白を強要する。
それぞれの立場から語られる証言により、事件の背後に潜む闇が明らかになっていく…。 (作品情報より)

いきなり女子高校生が殺される。
何で殺されるのかはわからない。強姦されて殺されるのではなく、いきなり大人数に囲まれて殺される。
むごい話と思っていると、なぜか?ミリタリールックのような服を着た正体不明の集団がリンチを加えていく。さっぱりつかめない。しかし、同じようなことが繰り返され、復讐なんだなということがわかる。
でも殺されたミンジュとこの集団がどういう関係なのかは語られない。
そうしていくうちにこの集団の構成員が社会に不満を持っている連中だということが少しづつわかっていく。

1.社会の底辺で暮らす連中
キムギドク監督も苦労人で、映画監督になる前は自らが社会の底辺にいた経験を持つ。一方で海兵隊にも所属していて、軍隊の中で日常的に使われる暴力も映画でよく見せつけている。キムギドク監督の傑作「嘆きのピエタ」は借金取りの男をクローズアップしていた。ここでも同様な友人に金を騙したとられた自営業者や妻の病気で高利貸しから金を借りている男が借金取りに追いまわされている姿が印象的だ。ほかにも上司に侮辱される自動車修理工、客にバカにされるウェイター、DVに悩まされる女性などをいかにも社会の底辺を彷徨う連中として描く。ちなみにそういう不満をもつ面々が女子高生殺人事件の復讐に立ち上がったというのがこの映画の主旨だ。


2.暴力表現
韓国映画独特の暴力表現はここでもかなりきつく表現される。犯行を認めさせるために次から次へとリンチを加える。そして自分がやったということを認めさせるのだ。


犯行グループには社会的な地位が高い人たちもいて、最初はどういう権限で自分を確保したのかなんてほざいているのが、コテンパンにやられていやいや自分が何をしたのかを書いていく。でも戻っても公安に訴えるわけでもない。奥さんにも言えない。黙っているしかないのだ。でも、何でこんな高校生が殺されたんだろう?ちょっとそこだけは意味不明??

複雑な心情を抱える謎の集団のリーダーを演じたのは『悪いやつら』のマ・ドンソクでずっと暴力表現を続ける。いかにも韓国クライムサスペンスらしい顔役でなかなかうまい。DVで同棲した男に暴力をふるわれる女性を演じたアン・ジへも印象的だった。

(参考作品)
嘆きのピエタ
キムギドク監督の傑作(参考記事)
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映画「私の少女」 ぺ・ドゥナ&キム・セロン

2015-11-23 21:15:44 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「私の少女」は2015年日本公開の韓国映画


見てみると脚本、構成、映像いずれも非常によくできた映画である。キムセロン「冬の小鳥」「アジョシ」「バービー」と若干重い題材を少女ながらこなしてきた韓国の期待の星である。このブログでも出演するたび毎回取り上げている。今回はぺ・ドゥナが主演で助演の立場だが、重要な役を演じている。「空気人形」のぺ・ドゥナ主演のロードショーがあるのは気がついていたが、ひっそり上映されていたので、キムセロンの存在はうっかり見過ごしていた。

今回は訳ありで片田舎に移動してきた女性警察署長が、継父から虐待を受けている少女を保護しようとしたにもかかわらず、継父から恨みをかって逆にとんでもない訴えを受けるという話である。児童虐待、イジメ、田舎の過疎問題など韓国社会の中で蓄積してきたであろう恥部が浮き彫りにされている。

若き女性警官のヨンナム(ぺ・ドゥナ)は、ソウルから警察署長として田舎の海辺の村に赴任してきた。そこで14歳の少女ドヒ(キム・セロン)と出会う。ドヒは実の母親が蒸発し、血のつながりのない継父ヨンハ(ソン・セビョク)と、その母親である祖母と暮らしていた。酒クセの悪いヨンハから日常的に虐待されていた。若者はほとんど村を出てしまっており、老人しか住んでいなかった。それなので村に残った若いヨンハの横柄な態度を容認し、悪さも見てみぬふりをしている。ヨンナムは、ドヒへのあまりにひどい父親からの暴力虐待や学校のいじめから守っていった。


夜中、ヨンナムの家にドヒが訪ねてくると同時に「老人の遺体がみつかった」と署から電話が入る。海辺に駆けつけると、崖からドヒの祖母が落ちて死亡していた。「パパとおばあさんが追いかけてきて落ちた」とドヒは涙ながらに説明する。ヨンハが現場に到着し、「クソガキのせいだ」とドヒに殴りかかる。


エスカレートしてゆくヨンハの暴力から守るために、ヨンナムはドヒを一時的に自宅に引き取り面倒をみることにする。しかし、本当は親元に帰さないとならないのに、次第にドヒはヨンナムに執着しはじめる。そんなとき、一人の女性が警察署を訪ねてきた。そこで偶然にもヨンハは衝突を繰り返していたヨンナムの過去の秘密を知りしまうのであるが。。。

舞台になるこの海辺の町自体は、日本の海辺にある漁村と似たような風景だ。日本統治だった戦前にできた村も、それから大きく変わらないのであろう。若者がいなくなっていくのは日本の過疎地の漁村も同じだ。そんな過疎地では若者が大事にされるが、ここでも酒クセが悪い若者が登場し、しかも血の繋がっていない娘を暴力でいたぶる。誰もそれを否定しない。変な光景だ。そんな話が続き、児童虐待とイジメどう解決するのかと見ていると事件が次々起きていく。
単純な話でなかった。


この作品はあまりネタバレしない方がいいだろう。
なかなかストーリーがよく考えられていて、訪ねてきた1人の女性もいったいだれなのか?ドヒの実母なのかとふと思ってしまう。軽い迷彩にひっかかる。しかし、この女性との話がこれからの話にじわっと効いてくる。

よかれと思ったことなのに、それが裏目裏目に出る。とどのつまりは、正当な行為を行ったものが逆に疑いをもたれてしまう。自分の味方である警察にまで誤解を生んでしまう。このストーリー展開は実によく練られている。うまいなあ。

ぺ・ドゥナは久々だけど、さすが上級の演技だ。キムセロンは今までの作品とはちがった動きを見せる。毎回重い題材だけど、これがいちばんヘビー級かもしれない。年輪を重ねて、もっともっといい女優になるだろう。お見事だ。

(参考作品)

冬の小鳥
韓国孤児院からフランスに渡った著者の実体験。キムセロンの出世作(参考記事)


アジョシ
韓国版レオン、キムセロンがかわいい(参考記事)


バービー
韓国人身売買の実態
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映画「鰻の男」 キムギドク&ハン・チェア

2015-09-21 18:51:34 | 映画(韓国映画 2019年以前)
映画「鰻の男」はキムギドクが脚本製作にまわった2015年日本公開の韓国映画


毎回見ているキムギドクの製作なのに公開を全く気づかなかった。新宿のシネマカルテ公開作はチェックしているだけに残念、でもすぐDVDに回ったからいいか。奇妙な題目とジャケットでまた何かやらかしたのでは?と期待する。
今回は「レッドファミリー」の製作者キムドンフが監督にまわって、パク・ギウンに中国人密航者、ハン・チェアに食品輸入の監視員を演じさせる。中国産のうなぎに水銀が含まれているという疑いで輸出を止められ打撃を受けた青年が疑いを晴らそうと、うなぎの再検査を求めて密入国する。その後、自分が育てたうなぎが市場にまわっていることを知り驚嘆するという話である。

中国でウナギの養殖業を営むチェン(パク・ギウン)は、韓国に輸出したウナギから水銀が検出され輸出差し止めで大きな打撃を受ける。中国産ウナギの安全性を証明するため、生きたうなぎを隠し持って韓国へ密入国する。しかし、食品安全庁前で再検査をするように要請しても受け付けてくれない。


玄関前で居座るチェンを見かねて食品安全庁の女性監視員ミ(ハン・チェア)がうなぎを再検査をしても結果は同様であった。ぼうぜんとする彼に同情して女性監視員ミが自宅で世話するようになる。


ミの紹介で倉庫の警備職に就いたチェンは、警備する倉庫の中から生きたウナギが飛び出してきたのを見て、衝撃的な事実を知ってしまう。倉庫の中で裏組織による違法なウナギ養殖が行われていたのだ。そのとき、安い鰻が売られることで被害を受けた連中が倉庫へ殴り込みに来る。結局追い返すが、たれ込みを怖れた幹部がうなぎごと燃やしてしまおうとするのを見て、チェンは憤慨しある行動に出る。。。

これもワルの映画だ。輸入したものを食品検査で不適格として、実際には廃棄せずに国産品として売るなんて行為はまともな人間の考えることではない。さすが韓国、まだまだコンプライアンスを超えた悪いことするんだねえ。こんな連中が多いから、わざわざ買い物をするだけのために訪日客が多いのだろう。みんな自国の製品を信頼していないのだ。

1.メイドインチャイナ
この映画の英題は「メイドインチャイナ」である。
女性監視員ミの家で主人公チェンはヒモのような生活をはじめて、ミが描いた買い物リストに基づき、スーパーで食料品を買っていく。ミが帰った後に冷蔵庫をあけると、そこにはメイドインチャイナの食品が置いてある。ミは狂ったようにその食べ物を捨てていく。
それを見てチェンは何で食べないんだと怒るのだ。ウナギ養殖が生業で韓国へ輸出しているわけだからなおさらだ。


日本でも毒入り冷凍餃子問題のあと、中国産食品の買い控えはあったが、ここまで毛嫌いする話はない。朴大統領が習主席の前では仲良さそうな顔をしているけど、実際問題こういうふうに一般韓国人は中国人および中国製品を毛嫌いしているのだ。これは知らなかった。

2.中国の朝鮮族
中国人女性がつく飲み屋にいくと、たまに朝鮮族の女の子に出くわす。ちょっと見ただけではわからない。韓国映画「哀しき獣」では韓国人ヤクザの殺人を依頼をうけたハ・ジョンウ演じる中国延吉出身の朝鮮族の男が主演である。映画の原題は「黄海」まさしく海を超えて密入国するのである。主人公が船で密入国するときに、一緒に乗船している朝鮮族の女がいる。ソウルの食堂で再会し、言葉が全く通じないミとチェンの通訳をかってでることがある女性だ。中国系朝鮮族は我々にはわからない差別を受けているのかもしれない。

3.ハン・チェア
なかなかの美人だ。キャリアを見ると、むしろテレビ出演の方が多いようだ。チェンとイタしてしまうわけだが、ほとんど肌を見せない。それだけが残念だ。こういう役柄はあっているかもしれない。そういえば誰かに似ているなあとずっと思っていたが、杉野希妃だ。お互い東洋クール美人だ。


冷静沈着な公務員かと思ったら、ワルと通じて検査で輸入食料品を差し止めする。その品はワルの手で韓国内で流通する。最低といった感じだけど、その悪さで途方に暮れている中国人がちょっとばかりいい男だから囲う。でも彼女自体が裏組織のトップの情婦なのだ。だからいいマンションにも住めるし、金には不自由しない。歴代大統領がみんな汚職で捕まるような韓国だからこんなワルがヌクヌク生きていてもおかしくない。
まあイヤな役だけど、美人だけに今度はもうちょっとまともな役やってよ。

(参考作品)
鰻の男
中国産うなぎは大丈夫?


レッド・ファミリー
キムギドクが脚本にまわった作品


哀しき獣
密入国した朝鮮族の悲哀


孤独のグルメ2
うなぎもあるでよ
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