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映画とライフデザイン

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映画「桐島です」 毎熊克哉&高橋伴明

2025-07-07 08:51:22 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)

映画「桐島です」を映画館で観てきました。

映画「桐島です」は過激派による爆弾事件で長きにわたり指名手配されていた桐島聡の物語である。桐島聡の指名手配のポスターは誰もが見たことがあったであろう。高橋伴明監督がメガホンをとり毎熊克哉が主演で桐島聡を演じる。自分は学生運動世代の後の世代だけに活動家は学生時代から嫌いな人種である。現在でもリベラルという名で金儲けする左翼人はひたすら嫌い。それなのに指名手配にも関わらず長い間逃げ切っていた桐島聡に強い関心を持っている。

今年3月に足立正生監督古舘寛治主演で「逃走」と言う作品が作られ鑑賞した。どちらも「逃走中の真実は完全には分からない」ことを前提に、証言や想像で空白を埋める。映画館には70代前後と思しき男性が大半で、思ったよりも観客は多い。その中で夫婦で来ているカップルの女性は元活動家のような鋭角的風貌の顔つきだった。同じ桐島聡を巡って2作連続で映画ができた。前作も観ているので、比較をしながら映像を追う。

(作品情報を引用して桐島聡の末路を確認)

2024年1月26日、衝撃的なニュースが日本を駆け巡った。1970年代の連続企業爆破事件で指名手配中の「東アジア反日武装戦線」メンバー、桐島聡容疑者(70)とみられる人物が、末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明した。

男は数十年前から「ウチダヒロシ」と名乗り、神奈川県藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていた。入院時にもこの名前を使用していたが、健康保険証などの身分証は提示しておらず、男は「最期は本名で迎えたい」と語った。報道の3日後の29日に亡くなり、約半世紀にわたる逃亡生活に幕を下ろした。

桐島聡は、1975年4月19日に東京・銀座の「韓国産業経済研究所」ビルに爆弾を仕掛け、爆発させた事件に関与したとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に指名手配されていた。最終的に被疑者死亡のため、不起訴処分となっている。

桐島聡の人間味に焦点を合わせる作品だった。

女性の梶原阿貴との共同脚本だったせいか元活動家の高橋伴明が作るにしては足立正生監督作品に比較して思想的な肌合いは抑えられる。いきなり「実話に基づく」という文字が映る。逃走中の空白期間と孤独を描くために、80年代〜90年代〜2010年代と細かく時代を追う。空白を断片的な証言によるショットで埋めていく。女性目線が入ることで観客層が男中心でも男の論理に閉じなかった構造になる。工務店時代や宇賀神証言の小さなエピソードが人間の優しさを醸しだす。

⒈連続爆破のきっかけ

1974年9月の三菱重工爆破事件の負傷者を搬送する実録フィルムがいきなり映る。大道寺将司を始めとした連続爆破事件の首謀者たちが喫茶店でダベリ合うシーンに移っていく。大道寺はここまで死亡者をだす酷いことになると思っていなかったという。強烈な違和感を感じながらその会話を聞く。その中の1人が桐島聡と相棒宇賀神寿一(奥野瑛太)の親玉黒川芳正だ。

黒川の首謀で鹿島建設の作業所を狙った後に間組本社と大宮工場の爆破を計画し実行した。映画のセリフによると、理由は戦時中の中国での建設会社の土木作業員への扱いについてだ。戦後30年経って経営幹部はとっくに切り替わっている。なんでまた戦前の話を持ち返すのか、鋭角的に話をする首謀者黒川の話は聞いていて、ひたすらむかついてしまう。

それにしても、学生運動をやってた連中はなんてクズなんだろう。自分の同世代に近い佐藤優や百田尚樹の本を読むと、当時同志社ではまだ学生運動が残っていたようだが、我が母校ではその気配はほぼなかった。

⒉桐島の思想に関する中途半端さ

「逃走」足立正生監督自身の学生運動の経験を踏まえた強い思想性が感じられる。逆に同じ題材なのに、桐島の思想の薄さと戻れたはずの道を選ばなかった不器用さを感じさせる。結局、桐島は「思想が強かったから逃げ切った」のではなく、むしろ思想の空白と中途半端さがあったからこそ逃げ切れたと自分は感じる。 

ただ、桐島聡が亡くなった時元の盟友宇賀神「桐島は公安に勝った」と言った。高橋伴明監督も宇賀神が古い思想の物差しを最後まで持っていた人物とする。刑を受け出所した宇賀神のこれからの居場所を確保するかのように当時の行為を完全に否定しない。謎の女を演じる高橋恵子がのたまう言葉も似たような余韻を残すものだった。



⒊桐島がライブバーで知り合った女性像
桐島聡がライブバーに通っていたという証言をもとに両作品で親しくなった女性が出てくる。「逃走」では謎めいた優しさをもった美女だ。桐島の正体を知っていると匂わせるセリフがあった。結果的に結婚詐欺の常習犯だったと伝えられる。「桐島です」ではギターで「時代遅れ」を弾き語りをする女性ミュージシャンのキーナ(北香那)だ。ミュージシャンのキーナは桐島に惹かれるが、桐島が自ら繋がりを断つ。彼女は桐島の正体を知らない。周囲にこんな女性がいたのであろうか?

⒋女性目線の入った脚本

女性脚本家梶原阿貴の視点で「ささやかな人間味」をひろっているのがいい。思想と優しさが同居する人物像には女性脚本家の視点が生きている。桐島聡が大学時代の恋人(高橋伴明恵子の孫)からふられるシーン「あなたは時代遅れよ。私は普通に上場企業に就職したい」という現実の声がでてくる。そこで桐島は「労働者の搾取を救う」と一応言うが、実質言い返せないのだ。こんな場面は「逃走」ではなかった。

一時期行動をともにした仲間の宇賀神寿一の証言を引き出す。2人が離れる前に金欠の宇賀神に桐島が仕送りの一部を引きだして渡した優しさあふれるエピソードだ。また工務店生活での逸話も生活者としての桐島を強調するものだ。いい奴だったんだなと自分に思わせてくれるのは良かった。キネマ旬報によると梶原阿貴活動家の娘だったらしい。桐島聡の指名手配の写真の隣に父の顔があったと知ると驚く。この映画には適切な起用だったと感じる。


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