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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「大統領暗殺裁判 16日間の真実」イ・ソンギュン&チョ・ジョンソク

2025-08-23 08:00:44 | 韓国映画(2020年以降)

映画「大統領暗殺裁判 16日間の真実」を映画館で観てきました。

映画「大統領暗殺裁判 16日間の真実」は、1979年の朴正熙大統領暗殺事件の後、暗殺に関与した秘書官である軍人の裁判を描いたチュ・チャンミン監督の作品である。1988年のソウルオリンピック前の国内騒動を描いた映画「南山の部長たち」「ソウルの春」の間にあたる数週間を描く。これらはいずれも傑作で今回も期待できる。日本と違って韓国では現代の暗闇のような権力闘争が映画化されている。裁かれる秘書官を演じるのは惜しくも2023年末に自死で亡くなったイ・ソンギュンである。本当に残念だった。

1979年10月26日、韓国の独裁者であった朴正熙大統領はキム・ジェギュ中央情報部長が首謀者となって暗殺された。国家が混乱に陥る中で、暗殺に関与したとされる情報部長の秘書官パク(イ・ソンギュン)は軍人の身分なので軍法裁判にかけられる。

パクの弁護を引き受けたチョン・インフ弁護士(チョ・ジョンソク)は「上官命令に従ったにすぎない」と無罪を主張するが、証拠は乏しい。軍部内部の権力闘争もあり合同捜査団長チョン・サンドゥ(ユ・ジェミョン)が裁判を覆い隠す。それでも弁護士は粘って無謀にも権力の中枢である参謀総長からの証言獲得を目指すが容易ではない。

現代韓国史に迫る緊迫感のあるすばらしい映画だった。

韓国現代史を描いた作品はやはり面白いという満足感がある。独裁者朴正熙大統領が亡くなった1979年の不安定な韓国の姿を、軍部の動きや社会の風景を通じて生々しく映し出す。緊迫感がずっと続き、まったく飽きずに観れる。

⒈軍人としての威厳と軍法裁判

大統領暗殺事件は首謀者であるキム中央情報部長のもと実行される。中央情報部長の秘書官パクは軍人の身分である。1人だけ軍法裁判を受けるのだ。普通の裁判は三審なのに軍法裁判は一審で判決が下される。弁護を請けたチョン弁護士はこれはおかしいと裁判官に訴える。しかし、パク秘書官は軍人としての威厳を保ち、軍法裁判でよいとあっさり受け入れる。

「軍人だから軍事裁判でよい」の言葉は軍人としての誇りを示していると感じる。演じるイソンギュンも表情をまったく崩さない。余計なことは言わない。朝鮮戦争はいまだ終結しない。徴兵制もある。根強い軍隊文化がにじむ韓国社会では身近なリアリティを持って一般に受け止められるのではないかと自分は推測する。

⒉上官の命令に従うか

「上官の命令に従うか」が裁判の論点である。実行される30分前にパク秘書官は中央情報部長にターゲットは大統領と命じられる。あくまで秘書官は命令に従ったに過ぎないとチョン弁護士は訴える。命令であれば関係のない同僚も殺せるのか?などと被告は検察官から追及されて弁護士は懸命に反論する。弁護士は有罪ありきの望み薄裁判で必死に意図的ではないという立証を試みる。

映画を観ていてドイツナチスで大量のユダヤ人惨殺を実行したナチス幹部アイヒマン裁判を連想した。自分は単に命令を受けて実行したというアイヒマンを見て、哲学者ハンナアーレント「悪の凡庸」という感想をもって論争となる。その「アイヒマン裁判」の問題意識とも通じ合う印象をもった。ただ、アイヒマンの場合はかばうレベルは超えていると感じる。

⒊弁護士の粘り

チョン弁護士「上官の命令に従っただけ」という一点を武器に、勝ち目の薄い軍法裁判に挑む。弁護士は軍法裁判で裁くことの否定から入り、上官の命令に過ぎないという論点を強く主張する。加えて意図的に殺害したかどうかの判断だ。

数少ない証拠や証言を必死にかき集める弁護士の奮闘努力が映画の見どころの一つだ。弁護士が参謀総長に証言を求めて通い続ける場面が印象に残る。街で出会ったトレーニング中の女性ボクサーに意識を鼓舞されて一緒にパンチを下したり、粘って参謀総長に会おうと検問を突破しようとする情熱むき出しのシーンもいい。でも結局崩れていく落差にも引き寄せられる。何者かによって拉致もされる。葛藤の連続で強い熱量を生み出しておもしろさを増す。

⒋軍内部の権力闘争

裁判自体が作品の中心でありながら、並行して描かれるのは大統領暗殺後の軍内部の権力闘争である。この部分は映画「ソウルの春」とかぶる。表では形式的な裁判が進み、裏では次の支配者をめぐる駆け引きが行われている。のちの全斗煥大統領をモデルにしたチョン・サンドゥと参謀総長の対立も緊張感を生む。

軍内部の権力争いが軽く絡むことで作品に奥行きが生まれている。人間ドラマを残しつつ、歴史の大きな流れを背景に置いたバランスが秀逸である。「ソウルの春」ではファン・ジョンミン全斗煥を演じた。いかにもファンジョンミンらしくはしゃぎまわっていた。一方で今回演じるユ・ジェミョン冷静沈着で陰険である。対照的だけどこれはこれでいい。

⒌時代感の演出の巧みさ

「統治者不在の不安定な時期」を描く映像は当時の時代感を丹念に再現する。最近の韓国はハングルオンリーであるが、ハングルに漢字が混じる事務所内の掲示や新聞記事、看板に加えて統治下時代からの日本語の名残が時代を感じさせる。

男たちだけが酒を飲み交わし取っ組み合いのケンカをするボロい居酒屋の風景も名作「殺人の記憶」のワンシーンも連想させる 「男だけの世界」だ。1979年といえば日本ではディスコブームが続き、普通の女の子も酒場にはいた。一方で戒厳令下の韓国では女性は家庭にとどまり酩酊する女性が数多くでてくる現代の韓国映画との対比が鮮明である。

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映画「秘顔-ひがん-」パクジヒョン

2025-06-27 08:38:21 | 韓国映画(2020年以降)

映画「秘顔-ひがん-」を映画館で観てきました。

映画『秘顔-ひがん-』は韓国映画のR18+指定のサスペンス・スリラーである。暴力描写が強烈でドロドロしたイメージが強い韓国サスペンスでも、エロティックな描写はなぜか抑え気味な作品が多い。映倫の基準がきびしいようだ。予告編での雰囲気はこれまでの韓国映画とは一味違う大胆さが感じられるので関心を持つ。ストーリーのディテールの予備知識はなく映画館に向かう。

指揮者ソンジン(ソン・スンホン)は、公演を前にしてオーケストラのチェリストでもある婚約者のスヨン(チョ・ヨジョン)が突然失踪し途方に暮れる。「あなたと過ごせて幸せだった」というビデオメッセージのみパソコンに残して消える。

そんな喪失感の中で、ソンジンのもとに公演のために代役のチェリストであるミジュ(パク・ジヒョン)が面接にくる。スヨンの代わりはいないと考えていたソンジンなのに結局ミジュを採用する。知り合ううちに彼女の魅力に惹かれていく。そして、ミジュと食事をともにする大雨の夜、ソンジンとミジュはスヨンのいない自宅の寝室で性愛を交わす。ところが、失踪したはずのスヨンが2人の様子を隣の密室でのぞいていたのだ。

変態映画に見えるが奥が深い。数々の映画にアナロジーを感じる。

いわゆるエロティックサスペンスだ。ソン・スンホンとパク・ジヒョンの絡みは韓国映画にしては大胆な演技である。しかも、清楚な雰囲気をもつパクジヒョンが惜しげもなく美しい乳首を露わにするので男性にはたまらない

ストーリーではチェリストの補充できたミジュはまったくの第三者に思えてしまうのだが、実はミジュとスヨンは音楽の学生時代だった頃からレズビアンの関係だったのだ。その関係が映画のストーリーをさかのぼりながら判明していく。当然婚約者である指揮者は何も知らない。

密室にスヨンが閉じ込められたわけではない。失踪することにしたミジュがスヨンと共謀して密室に入ったのだ。女どうしの愛を交わしていたのに、スヨンが結婚することになり感情がもつれたのだ。そのお仕置きでいったん身を隠すために密室に潜んだスヨンが出られないようにする。しかも、密室から部屋がのぞけて、意図的に自分たちが性愛をかわすのをミジュはスヨンに見せつけるのだ

⒈ファムファタールと悪女映画の色彩

この映画でのパク・ジヒョンの存在は映画の展開とともに変化していく。最初は しとやかな女性、中盤では 情熱的で官能的な恋人、終盤にかけては 計算と狂気を宿した人物になるのだ。

これって往年のフィルムノワール映画でいえば、パク・ジヒョン演じるミジュはファムファタールだ。すなわち「運命の女」で男の人生を狂わせるほどの魅力と魔性をもった女性だ。要はこの映画はミステリアスで危うい悪女映画なのだ。一般に魅了する → 依存させる → 破滅させるという構図である。でも、男は破滅しない。単なる媒介だ。この映画は男がだまされる話ではない。

監禁されたソヨンも実は悪女でもともと悪さを企てる天才的才能を持っていたが、ハマってしまう。しかし、それでは収まらない。結局は悪女対悪女の応酬になる。そう考えると、この映画は奥が深い。

⒉密室空間

ソンジンとスヨンの新居には本棚の裏に密室があった。ソンジンはその存在を知らない。本来スヨンは自ら入ったはずなのに閉じ込められてしまった。この密室を見て、映画「パラサイト」の舞台になる富豪の邸宅にある地下室の空間とのアナロジーを感じた。邸宅の主人が知らない密室空間に元家政婦の夫が密かに住んでいた。あの密閉空間を思わず連想する。

韓国は朝鮮戦争から続く南北の対立やその後の軍事政権による戒厳政治で不安定な状態が続いていた。防空壕的な感覚でこんな部屋が秘密裏にできてもおかしくない。この家を譲ったおばあさんから戦前の731部隊出身者の話も出ていた。そんな密室空間にスヨンは遊び感覚で入ったのに、結局閉じ込められる。いったいどうなってしまうのか映画の終盤まで観ている観客に謎を与える

⒊女の掟と日活ポルノのSM映画とのアナロジー(ネタバレあり注意)

どうなってしまうだろうと観客に思わせて、結局スヨンは救出される。普通の映画であれば、捜索願いを出していた警察がそこにやってきて一件落着の展開となる。でもそうならない。ここがこの映画のミソだ。

あえて警察には言わずに逆にミジュを監禁する。そしてこの密室で女どうしの性愛の境地を極めようとするのだ。そこには男は介在しない。法で裁くのではなく、自分のやり方=女の掟で裁く。女の論理と支配でケリをつけるのだ。これってヤクザが警察に言わずに裏社会の論理で裁くのと同じようなものだ。仁義の世界にも近い女の掟をテーマとするとますます奥が深い。

結局女だけ残る。昭和に遡って同じような映画を日活ポルノで谷ナオミ主演のSM映画で観たことがある気がする。ここにも強いアナロジーを感じる。なんだこれは女どうしの快楽の物語だったんだ。欲望と支配が女の間だけで閉じる構図。これから迎える快楽を目の前にして女の儀式を行いながらエンディングに持ち込む構図に改めて女の怖さを感じる。

 

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映画「脱走」

2025-06-23 08:27:01 | 韓国映画(2020年以降)

映画「脱走」を映画館で観てきました。

映画「脱走」は韓国映画。南北の軍事境界線を超えて、北朝鮮の兵士が韓国に脱出する姿を描く。名作「JSA」は板門店での南北兵士の友情を描いた作品であるが、ここでは韓国兵士の存在はない。国境線付近の警備に従事して韓国のラジオ放送を聴きながら自由を求める兵士の話だ。国境の非武装エリアには地雷が数多く埋め込まれていて、脱出は不可能に近い。脱出しようとする兵士はどこに地雷があるかを事前に調査して脱北に試みている。興味深いので映画館に向かう。

軍事境界線を警備する北朝鮮の部隊。まもなく兵役を終える軍曹ギュナム(イ・ジェフン)は、自由を求め韓国への脱走を計画。ついに決行しようとするが、下級兵士ドンヒョク(ホン・サビン)が先に脱走を実行する。そばにいたギョナムは首謀者と疑われて取調べを受ける。

ところが、運良くギュナムの幼馴染で保衛部少佐のヒョンサン(ク・ギョファン)が脱走の顛末を確認に来て、逆に脱走兵を捕まえた英雄としてギュナムを祭り上げてくれる。しかも、兵役終了間際のギョナムを前線からピョンヤンへと異動させようとする。異動すると脱出はできない。タイムリミットが迫りギュナムはヒョンサンの目を盗み、再び軍事境界線を目指して決死の脱出を試みるのだ。

映画としては普通、スリリングだが出来過ぎのストーリー展開。理不尽な北朝鮮の軍隊を皮肉っているのはわかるが都合良すぎの印象を受ける。

これまで脱北を試みた人たちのドキュメンタリーはTVなどで何度か見たことがある。中国国境の鴨緑江や豆満江などの川を渡った後で、ブローカーの誘導されるままにタイやラオス経由で遠回りに韓国に入国する。多額の費用がかかりだろう。実際には現実の脱北の大半は「北朝鮮 → 中国」ルートのはずだ。

この映画はむしろ不可能に近い軍事境界線からの脱出だ。DMZ(南北軍事境界線)付近には地雷が大量に埋められており、撤去されていない。しかも、24時間体制の監視塔・赤外線センサー・自動火器網もあり映画でもそれが示される。脱走兵すなわち国家反逆罪で捕まれば公開処刑だ。成功事例も少ないようだ。それだけに映画になるのかもしれない。

兵役義務を終えて民間で働くことになっている主人公は平壌への栄転の内示も受けている。北朝鮮では最高の栄誉を得るチャンスではなかろうか?それでも脱出を本当に試みるのであろうか?との疑問は残る。脱出にあたっては、拷問のように暴力を振るわれし、銃弾も受けている。普通だったら死んでもおかしくない。でも死なない。出来過ぎというのはそんなところだ。北朝鮮将校たちのダンスパーティなど興味深いシーンもあった。娯楽として観る分にはいいだろう。

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映画「スンブ 2人の棋士」イ・ビョンホン&ユ・アイン

2025-06-05 18:13:37 | 韓国映画(2020年以降)

映画「スンブ2人の棋士」をNetflixで観ました。

映画「スンブ 2人の棋士」は、韓国を代表する2人の囲碁棋士の師弟関係を超越したライバル物語である。「スンブ」とは韓国語で「勝負」の意味だそうだ。主演は韓国を代表するトップスターのイ・ビョンホン。Netflixドラマ「イカゲーム」の続編では突如他の貧困者に混じってゲームに参加してきて驚いた。

「スンブ」もNetflixのラインナップに入ってきた新作なのにNetflixオリジナルではない。こんな映画が公開されたかなと考えていると,2021年に撮影を終えた後で弟子を演じるユ・アインが薬物で問題を起こしてこの作品が公開延期になっていたようだ。「バーニング」「国家が破産する時」などで存在感を示してきたユ・アイン「声もなく」で良い演技を見せてくれた。それなのにもったいない。よくオクラ入りしなかったのかと思ってしまう。

韓国囲碁界の実力がかなりレベルアップしている事は聞いている。 曺薫鉉(チョ・フニョン)と李昌鎬(イ・チャンホ)2人の棋士の名前は知らない。それでも韓国囲碁界でトップを張っている2人らしい。将棋や囲碁では衣食住をともにする内弟子制度がある。日経新聞の「私の履歴書」を読んでもそんな棋士たちの師弟関係をよく見る。弟子のレベルが上がった時の複雑さがこの映画では描かれる。

韓国囲碁界のトップに君臨するチョ・フニョン(イ・ビョンホン)が、囲碁の腕自慢の10歳の少年イ・チャンホを町で見かける。特別な才能があると認めた上で、イ・チャンホを内弟子にして指導を始める。イチャンホ(ユ・アイン)は伸び悩む時期もあり、師匠から厳しい叱責を受けていた。やがて、実力をつけて挑戦者を決めるトーナメントで勝ち抜き、師匠と対決するチャンスを得るようになる。

そして壮絶な戦いの末、弟子に軍配があがる。すると、師匠のチョがスランプに陥ってしまうのだ。

勝負の世界を描いた映画はおもしろい。

師弟関係がやがてライバルになる。勝負には私情は無用で、強くなった弟子も容赦ない。いい感じだ。イ・チャンホの年齢からすると、映画のスタートは1985年ごろだろう。時代考証はきちんとしていて服装などが今よりは鈍臭い感じだ。ハングル文字のなかに漢字がかなり目立っている。ソウルオリンピックに向けて韓国が急成長している時期だ。

師匠は攻撃型で、弟子の方が守りが堅固と対照的な打ち方だ。韓国人によくいる怒りっぽい性格の師匠は自分の思い通りに弟子が打たないと機嫌が悪くなり罵倒する。嫌なやつだなと見ていて思う。ところが、弟子が追い抜いていくと、一気に勝てなくなるのだ。スランプに陥って対局を欠席してしまうくらいだ。そんな落胆する姿も見せて人間味があふれる。

当初は対局中もタバコをプカプカ吸い貧乏ゆすりをするイビョンホン演じる師匠を見て、韓国の対局ではタバコOKなんだと見ていて思っていた。ところが、スランプになり、這いあがろうともがく時になって師匠は禁煙するのだ。そして復活する。弟子もタバコ吸わなくなったので良かったのではといい切る。おもしろいもんだと映像に見入る。感動するほどではないが、囲碁を知らなくても楽しめる作品である。

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映画「ケナは韓国が嫌い」

2025-03-08 17:43:39 | 韓国映画(2020年以降)

映画「ケナは韓国が嫌い」を映画館で観てきました。

映画「ケナは韓国が嫌いで」は日本の右翼系嫌韓者の人が喜びそうな題名だが、20代の普通の女の子の視点で描く小説「韓国が嫌いで」の映画化である。監督・脚本はチャン・ゴンジェ。韓国映画は社会問題を巧みに取り上げることが多い。ストーリーのアップダウンが激しいのは魅力で好きな作品も多い。でも直近は、「満ち足りた家族」のような傑作はあっても以前よりはハズレ映画が多くなった。その一方でごく普通の韓国女子の気持ちに焦点をあてる映画だと感じて、同世代の娘がいる自分は観たい気になる。

ソウル郊外団地で両親と妹と共に暮らす28歳のケナ(コ・アソン)は大学を卒業後、正社員として働く3年目の会社員だった。毎日片道2時間かけてソウル市内の会社に通勤している。上司とはそりが合わない。大学時代から交際して7年になる恋人のジミョン(キム・ウギョム)は、ピントのずれた話をしがちでケナはいらだつ。ケナは恋人の家族とつきあうにも居心地の悪さを感じていた。

ケナが家族と暮らす団地は老朽化が進む再開発地区にあり、数年すれば新しいマンションに移れる。求愛する恋人の実家とはそりが合わない。家族が結婚を急かすのは困る。ケナは韓国を抜けだしてニュージーランド移住を決意する。

久々韓国のどぎつくない映画を観た。

韓国映画は極端な格差問題を扱うが、それほどでもない。極悪な奴らや黒社会は一切出てこない。7年付き合っている彼氏はやさしい。主人公ケナはクイっと酒を飲んで大酒飲みで喫煙者よくいる韓国の若い女の子だ。彼氏の実家の方がいい家でという話はあっても格差を問うような話ではない。若者の自殺率が先進国1位など主人公が韓国を嫌がる面は多々言葉にでてくる。それでも現状に不満足なのは自分にはぜいたくに見える。それでも思い切って海外に渡航してしまうのだ。

ただ、時間軸を数年単位で前後に飛ばしていくので映画としてはわかりづらい。突然変わるのでそのシーンがいつのことなのか見えづらい。技巧にはしりすぎと感じる。それでも主演のコ・アソンは若者らしいチャレンジャースピリットがあって好感がもてる。

⒈上司からの叱責と反発のシーン

取引業者のランクを評価する会社の審査基準ががあって、その通りにケナが処理しているのに上司から文句を言われる。あの会社は取引があるんだからうまくやってよと。まじめな女性社員が会社のルール通りに物事を進めるのは日本も韓国も同じだろう。女子社員はルールを逸脱しない。ある意味融通が利かないのはよくありがちなことだけど、言われる方も困るよね。

ケナは反発して会社を辞めますと言いだす。すると、上司は辞められると困ると大慌てで次回異動させるから待ってと言う。部下を辞めさせると上司の評価が下がるようなのだ。日本も基本的には同じだけど、最近の日本は若手の転職が異様に多くなってきたのでサジ加減が変わったかも。

⒉ニュージーランドでの格付け

ニュージーランドに行ったら、掛け持ちでいくつものバイトをして生計の補助にする。そこでおもしろい話題が出た。ニュージーランドの韓国人はランク付けが好きでこんな感じで自分を格付けしているらしい。

米国>日本、韓国>中国>東南アジア

韓国人留学生はいくつもバイトしていて元々一般家庭の出身だという。まさにケナのことだ。本当に金持ちな韓国人だったら米国に行く。ニュージーランドで金持ちの出身なのは東南アジアの留学生なんだよというセリフがあった。なるほどわかる。先に観た中国映画でもオセアニアの話題が多かった。米国の物価も上がりすぎて避けられているんだろう。

⒊開発って賃貸もあり?

もともとソウル郊外の古い団地に住んでいた。ソウルの会社までバスと電車乗り継いで2時間だ。開発エリアに入っていて建て替えるらしい。賃料が話題なので賃貸なんだね。次に住むのは18坪か24坪かなんていうセリフがあって建て替えても住めるみたい。へえそうなんだ。日本だとむずかしいのでは?

⒋ニュージーランド脱出

ニュージーランドでの現地人や同じ留学生との出会いを描く。色んな出会いがあって成長していく姿を見るのは悪くない。ケナと同じFラン大学出のチャラい韓国出身者と付き合ったり、インドネシアの男に誘われて一緒に住もうとと口説かれる。ファッション系のお店に勤めていて、他の女性店員に「あんたの靴はこの店に似合わない」と言われても、代わりに抗弁してかばってくれる同僚もいる。人生勉強をしていくのだ。

そんな変化を見るのもいいんじゃないかな。大学の時から付き合って渡航時にふった出版社にようやく勤めた元彼氏と帰国時に再会する。一緒になろうと口説かれ体を合わせても本質的になびかないニュージーランドに戻っていくのだ。日本の若者にも通じる話が多く、嫌韓の日本人が喜びそうな映画ではなかった。加えてケナの破天荒な妹役がよく見えた。

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映画「対外秘」チョジヌン

2024-11-20 22:12:01 | 韓国映画(2020年以降)
映画「対外秘」を映画館で観てきました。


映画「対外秘」は90年代初頭の韓国釜山を舞台にした国会議員候補選出に伴う裏話がベースとなる映画である。韓国映画界の人気俳優チョ・ジヌン、イ・ソンミンの2人に加えてキム・ムヨルが加わる。監督は「悪人伝」のイ・ウォンテである。韓国の政界の暗闇にメスを入れた作品は、どれもこれも面白い。しかも,日経新聞映画評で時代劇評論家の春日太一が満点をつけている。わりと韓国映画に評価が甘い評価者だが、思わず期待して映画館に向かう。

1992年、釜山。党の公認候補を約束されたヘウン(チョ・ジヌン)は、国会議員選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテ(イ・ソンミン)が、公認候補を自分の言いなりになる男に変える。激怒したヘウンは、スンテが富と権力を意のままにするために作成した〈極秘文書〉を手に入れ、チームを組んだギャングのピルド(キム・ムヨル)から選挙資金を得て無所属で出馬する。地元の人々からの絶大な人気を誇るヘウンは圧倒的有利に見えたが、スンテが戦慄の逆襲を仕掛ける。だが、この選挙は、国を揺るがす壮絶な権力闘争の始まりに過ぎなかったーー。(作品情報 引用)


期待したほどではなかった。
釜山は日本人にとってはソウルと並んでなじみ深い街だ。九州から船でも行き来できる場所で映画にもずいぶんと取り上げられる。直近はタワマンだらけになったようだ。漁業従事者が多かっただけに利権も絡んだだろう。

そんな釜山のマル秘開発計画がこの映画のキーポイントだけど、時代が90年代前半だとそこまで開発が進んでいないかもしれない。映画ではあまり突っ込んだセリフがないので、マル秘文書に関わるプラスマイナスが自分にはよく理解できなかった。開発となれば、その場所の土地を買っておけばものすごく儲かるというよくある話だ。

国会議員になるためにまともに何か動くのでなく、主人公ヘウンが高利貸しのヤクザと組んでムチャクチャをさせる構図だ。最近はどうかわからないが、ひと時代前の韓国政界にはこんな構図があったのだろう。。途中から敵味方逆転させることが多くなっても、それが不自然に感じイマイチのれない作品だった。


主演の2人の作品はこれまで数多く見ている。特にチョ・ジヌンが日本でもリメイクされた「最後まで行く」で演じた悪役は最強で最も怖い悪役刑事だった。それ以来、注目している俳優である。最近チョジヌン主演の名義貸しの韓国映画を見たが,あまり面白くなかった。予告編でチョジヌンの演説姿が出てきて盛り上がるように見えたけど、理解しづらい裏話だらけだった。

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映画「シングル・イン・ソウル」

2024-11-08 21:12:58 | 韓国映画(2020年以降)
映画「シングルインソウル」を映画館で観てきました。


映画「シングルインソウル」ソウル居住の独身男女の物語である。映画「建築学概論」が好きで、そのスタッフが製作に関わったというコメントが気になる。平穏な映画が観たいという欲求とソウルの街中が楽しめそうという観点で選んだ作品だ。監督はキム・ボムス、脚本は『KCIA 南山の部長たち』『密偵』のイ・ジミンだ。

ソロ活好きで気ままなシングルライフを楽しむ、カリスマ塾講師で人気インフルエンサーのヨンホ(イ・ドンウク)。出版社の有能な編集長だけれどひとりでいる事が苦手で恋愛に関しては妄想癖のあるヒョンジン(イム・スジョン)。

シングルライフと観光地がテーマのエッセイ「シングル・イン・ザ・シティ」シリーズの作家と編集者として出会ったふたりは、ライフスタイルも価値観も何もかもが違い、本をめぐって事あるごとに対立するが、企画が進むにつれ一緒に過ごす時間も悪くないと思い始める。(作品情報 引用)


大きな緩急がなく平穏に流れる韓国映画では珍しい展開だ。
韓国映画特有のドロドロした雰囲気は皆無のラブコメで、今まで数多くの韓国映画のどれかで見たことあるなあというソウルの街角風景が映し出される。

カリスマ塾講師を演じるイ・ドンウクは日本で言えば井ノ原快彦になんとなく似ていて、「今でしょ」の林修講師のような感じで塾で小論文を教える。自分の講義をマスターしたらソウル大学でもどこでも入れると自信満々だ。いくつかの恋に失敗して、グルメに洋服に自分のためにカネを使うと決心する都市部のシングルだ。ソウル中心部を流れる漢江を見渡せる夜景がキレイなマンションでシンプルなインテリアの部屋に住む。


小さな出版社の編集長を演じるイム・スジョンは髪にクシも通さずオシャレに気を使わない。乗ってるクルマも洗車すらせずに汚い。仕事一本槍の雰囲気だ。部下の信頼は厚い。編集者としては優秀で、作家にピッタリ寄り添う。自分が編集に携わった本を誰かが立ち読みしているのを見て感激して仕事を頑張っているという。韓国の女性はみんな酒が強い上方漫才のような女子社員たちとみんなで飲みに行った時のパフォーマンスが楽しい。


そもそも合わない2人は徐々に接近する。
塾講師ヨンホのホテルバイトでの初恋話を聞きながら、徐々に盛り上がっていく。そこで出てくる初恋の相手がイ・ソムでビックリする。「愛のタリオ」は割とエロティックな場面が抑え気味の韓国映画の中では珍しく、イソムが乳首丸出しの絡みを披露する。アレ?本当にやっているんじゃないだろうか?と思わせる。それから彼女が出てくるたびにドキッとする。


初恋話に絡むのが村上春樹「ノルウェイの森」だ。自分は昭和の頃に読んだこの作品を韓国映画の登場人物が劇中で読むのに驚く。他の映画でも取り上げられているし、どうやら韓国でも村上春樹は人気があるようだ。
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映画「消された男 DEADMAN」チョ・ジヌン

2024-10-21 20:17:51 | 韓国映画(2020年以降)
映画「消された男 DEADMAN」を映画館で観てきました。


映画「消された男 DEAD MAN」は韓国サスペンス映画で人気俳優のチョジヌンの主演だ。「お嬢さん」「毒戦」などの代表作ははあるが、日本でもリメイクされた「最後まで行く」悪役が不気味な恐ろしさで怖かった。チョジヌンはその時々で違った顔を見せる。彼の出演作なので今回マークする。単なる名前貸しのつもりが陰謀に巻き込まれ、死んだことにさせられてしまう男を演じる。

妻に離婚を迫られたり窮地に陥るイ・マンジェ(チョ・ジヌン)は「名義貸し」の雇われ社長としてスポーツ業界の会社に勤める。言われるままに身を隠すように言われてマカオに行くと、TVで自分に1000億ウォン横領の疑いがかけられてそのまま行方不明になっているニュースを見て驚く。

気がつくと、何者かに拉致されて中国の私設刑務所に閉じ込められてしまう。そこで苦役の生活をする間にすでに死亡していたことになっていた。2年半過ぎた時、謎の女性シム女史が現れ、彼を救い出す。彼女は大統領選に絡む政治コンサルタントだった。マンジェは刑務所を脱出できたがシム女史は彼を利用して政界工作を企てていた。

残念ながら期待外れだった。
定評のある韓国クライムサスペンスでここまでつまらないのはかなり珍しい。話自体が訳がわからず、展開も微妙で眠気を呼んでしまう。大金が絡んでもスリリングでない。韓国映画の詐欺がらみはおもしろい映画多いけどね。。。


仕事探しに廃車が大量に置いてあるところへ行き、「深く考えすぎると稼げない」名前を貸すと金になるよと言われる。韓国っぽい古い建物で印鑑を作ったりする場面の後普通に仕事をする。雇われ社長は日本のサラリーマン社会でもよくある話で、オーナー社長の代わりに実務をやる訳だが、今回は単に名前を貸すだけ。一応出社して個室を持って承認の印は押す。ただ、陰謀にハマってから後のストーリーがよく理解できない。刑務所を脱出後の大統領選に絡んでの両陣営の策略も映像を追ってもちんぷんかんだ。韓国の人ならわかるのかなあ?せっかくのチョ・ジヌンの登場だけど、見どころも少なく気がつくと終わってしまう。


楽そうに見える名義貸しだけど、ハマると怖いなあと言うことだけは教訓となる。確かに借金が絡むと個人財産まで持っていかれるもんね。それだけわからせてくれる映画にすぎなくて韓国クライムサスペンスにしては残念選択ミスもたまにはあるだろう。
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映画「ソウルの春」 ファン・ジョンミン&チョン・ウソン

2024-08-24 18:06:23 | 韓国映画(2020年以降)
映画「ソウルの春」を映画館で観てきました。


映画「ソウルの春」朴大統領暗殺後に軍部主体の政権となるきっかけの粛軍クーデターという実話に基づく韓国映画だ。ソウルオリンピック前の韓国の重要場面の真相に迫る。キム・ソンス監督がスケールの大きい作品に取り組む。

当時KCIAによる金大中拉致事件以来日本では韓国に対して得体の知れない怖さをもつようになった。同時に全斗煥大統領(チョン・ドゥファン)による政権は軍部主体のイメージが強く、学生だった自分から見ても不気味な存在だった。映画でも全斗煥が鎮圧した光州事件など圧政が何度も取り上げられている。粛軍クーデターの真相を知るのは初めてで、隣国の歴史を知る意味でも価値のある作品だ。現代韓国史の重要場面を描いた作品はどれもこれもおもしろい

1979年10月26日、朴正熙大統領が自らの側近により暗殺された。世間では民主化を期待する一方で、陸軍では暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)を中心に粛清を図っていた。陸軍内の派閥“ハナ会”の将校と徒党を組んでいることを参謀総長チョンサンホ(イ・ソンミン)はよく思っていない。東部の司令官に左遷する噂も立っていることに反発してチョンはクーデターの策略を練る。


1979年12月12日、ノ・テゴン(パク・へジュン)らのハナ会の仲間と念入りにつくったシナリオに基づき首都ソウルでクーデターを決行する。まずは参謀総長が逮捕拉致される。一方で、参謀総長の推挙で首都警備司令官に昇進したイ・テシン(チョン・ウソン)は途中でクーデターを察知して司令部に戻り指揮を取る。前線の軍隊がソウル市内に入るのを食い止めるべく各方面に指示する。 

電圧の高い映画で、ビリビリとした体感を感じたままラストまで緊張感を保つ。
現代韓国史の真相に迫る実録モノ映画が次々公開されている。いずれも傑作だ。しがらみでつくれない日本と違うところだ。全斗煥がその後大統領になることは既知の事実である。結末がわかっていてもこの映画がおもしろいのは、クーデターに成功するまでの過程がすんなり行かないからだ。韓国で大ヒットしたのは、この歴史上の事実と同世代に生きた人たちが大勢存命だからだろう。現在のようにハングル文字ばかりの表記でなく漢字表記もまだ残っている時代だ。

TVや新聞に映るクーデターシーンは街の中を軍部の戦車が占拠する完成形だ。結末はわかっても、軍事クーデターってどのように進んでいくのか?われわれは知らない。もともとは軍部を統括する既存勢力による支配をよく思っていない連中による暴力的な反発だ。画面分割の手法を多用して、同時進行している動きを緊迫感あるように見せてくれる。

戦前の日本には五一五、ニニ六と若手将校による政界の大物を殺害するクーデターがあったが、戦後はない。映画には複雑な人間関係と軍部内の上下関係が根底に流れる。詳細をいろんなシーンで見せてくれる。

⒈ハナ会(ハナファ)と全斗煥
ハナ会はセリフにも次から次へと出てくる組織名だ。陸軍士官学校OBによる私的組織で、朴正熙大統領時代から存在した。司令部や前線の各部隊の要職にハナ会のメンバーがいて、全斗煥が彼らと組んで参謀総長率いる既存勢力から権力奪還を目論んだのだ。結局、クーデターで軍部内での権力を握った後はハナ会メンバーで要職を固めたという。


⒉大統領閣下
この映画を観るまで、朴大統領の後の大統領は全斗煥だと思い込んでいた。任期が短い崔圭夏大統領という存在を知らなかった。1979年に朴大統領が暗殺される前の1975年に首相となり、暗殺後大統領代行を経て12月6日に大統領に就任している。このクーデターのすぐ前だ。全斗煥が参謀総長も朴大統領暗殺時に犯人のそばにいたので逮捕する許認可を得るためにクーデターの間何度も大統領の元へ行く。この映画では何度もそのシーンがある。崔圭夏は当然許諾しない。全斗煥はクーデターを成功させ、国防大臣を味方に入れて追認を許容させる。

⒊ファンジョンミン
ハゲのカツラをかぶっていつもながらの派手なパフォーマンスだ。たまたまNetflixで最新作「クロスミッション」を見たばかりだ。アクの強い役柄が得意で正義の味方というより悪の親玉のキャラクターが似合う。全斗煥はこのクーデターで軍部内の権力を奪いとり、最終的には翌年大統領となって独裁者となる。どう見ても、正統なやり方ではない。そこには激しい銃撃戦も絡むし、死亡者も多数でている。前線軍の出動もある。ここまでアクの強い役柄ができるのはファンジョンミン「人には強いものに導かれたい願望がある」と自分の周囲に取り込むチョンを演じる。


⒋チョン・ウソン
クーデターから既存勢力を守る首都警備司令官だ。イ・テシンはこの要職に就きたかった訳ではない。参謀総長からの要請を自分がその器でないと何度も断るシーンがある。ただ、いざ役職につくならしっかりやると映画の中でも要の活躍だ。結果はわかっていても次々とクーデターの勢力に対抗する手段を探るディテールが興味深い。この映画は実在人物の名前をかえている。イ・テシンにも張泰玩(チャン・テワン)というモデルがいる。Wikipediaによると、クーデターで完全に失脚した訳ではなく、その後会社の社長や国会議員にもなったと聞くと意外に思った。


イ・ジョンジェと組んだ「ハント」でも全斗煥大統領の警護活動をする役柄だった。「アシュラ」でも悪徳市長の手下になる役柄でファンジョンミンと共演している。破茶滅茶な殺し合いになった葬儀のシーンが脳裏に残る。女の復讐を描いた「愛のタリオ」は韓国らしいドロドロとした映画で、エロチックなシーンも多いけどチョンウソンが登場する。おもしろい映画だ。もともとは普通の二枚目俳優だったけど、役柄は広がった。
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Netflix映画「クロスミッション」 ファンジョンミン

2024-08-16 18:02:25 | 韓国映画(2020年以降)
Netflix映画「クロスミッション」を観ました。


Netflix映画「クロスミッション」は韓国の人気俳優ファン・ジョンミンが主演。Netflixのホームを探っていると韓国大物俳優が気になってしまう。やり手刑事の夫として主夫をしているファンジョンミンに妻に隠す特殊工作員としての過去があり、事件に巻き込まれるという話だ。

ファンジョンミンはこのブログでも何回も登場している韓国クライムサスペンスには欠かせない存在だ。泥くさいプロフィールが得意で善悪両刀使いだ。ソル・ギョング、イ・ジョンジェをはじめとしてスター級俳優がNetflixに登場するが、ファンジョンミンの映画は初めてか?興味深いので観てみると一気に観てしまう。

女性刑事のカンミソン(ヨムジョンア)は男刑事たちを従えて難事件を解決する格闘能力もあるやり手だ。家では激務のミソンに代わって主夫のパクガンム(ファンジョンミン)が家事を任されている。

夫のガンムが街に出た時、女性が暴行を受けている場面に出くわす。とっさに助けると旧知のヒジョン(チョンへジン)だった。ガンムは元特殊工作員でヒジュンと一緒に任務に加わっていた。特殊部隊にいたことは妻のミソンには言っていない

2人が一緒にいるところをたまたまミソンの警察の仲間が見つける。報告を受けたチーム長(チョンマンシク)が浮気ではないかと気にしていることがミソンにバレて、ミソンもガンムを密かに尾行する。ガンムはヒジュンの夫が行方がわからないことに犯罪組織が絡んでいると読んで足を突っ込む。

軽めの韓国クライムサスペンスが軽快だ
Netflix映画なのでカネがかかっていてメジャー俳優も揃えられる。コメディタッチな部分もあり、あきずに楽しめる。暇つぶしの娯楽にはいい感じだ。
作品情報を読み込んでいなかったので、ヘラヘラした主夫のファンジョンミンに驚く。男まさりの刑事の妻を支える役だ。いつもとファンジョンミンのイメージと違い、これは普通のドラマかと一瞬思ってしまう。すると、ファンジョンミンらしいアクションが飛び出す。ここでは刑事である妻の格闘シーンも多くW主演に近い存在感を見せる。

⒈ファン・ジョンミン
韓国一級のクライムサスペンスではファンジョンミンの個性が生きる。自分がブログで取り上げた作品でもさまざまな役をこなす。「新しき世界」では華僑犯罪組織の親分、「コクソン」では祈祷師、「アシュラ」では利権をむさぼる市長、「ただ悪より救いたまえ」では引退寸前の殺し屋などでファンジョンミンらしいアクの強さを見せる。「工作 黒金星」ではテイストが違うけど今回と同じ特殊工作員だった。それなのにどうしたんだろうと最初は思う。でも違った。

その昔は特殊工作員で今は違うという設定はリーアムニーソンやデンゼルワシントンが得意とする役柄だ。身内を助けるパターンが多いけど、ここでは刑事である奥様を助けるというか共闘する。過去の映画で見せた破茶滅茶ぶりがここでも発揮される。近日公開の次回作では全斗煥大統領を演じるらしい。楽しみだ。


⒉ヨムジョンアとおなじみの脇役たち
ヨムジョンアが大活躍だ。機関銃をぶっ放す。格闘シーンも多いし、犯人検挙後の打ち上げで酔いつぶれるシーンもある。近作「密輸1970」でも登場して、海女さんのリーダー役を演じる。この映画ではキムヘスが破茶滅茶なキャラだったのに対してまともな海女さんだ。あの映画からはこんなアクションができるようには見えない。ちょっと広末涼子に似ているなと思っていた。

韓国映画を観ていると、こいつお馴染みの顔だなあというのがいつも数人いる。今回は警察のチーム長のチョンマンシクだ。日本公開分だけでも8作を観ている。コミカルなテイストがあるので起用しやすいのであろう。ファンジョンミンとの浮気を疑われるチョンヘジンの途中からの変貌も見ものだ。彼女もいろんな作品で出会う。ふと気がついたのだが、ヨムジョンアもチョンヘジン身長170cm以上ある。韓国人女優は皆長身だ。モデル出身なんだろうか?


⒊バキュームカーでの突撃とカーチェイス
この映画での陰謀は軍の機密費に関わるものだ。行方不明の元同僚の行方を探るために、偽の通行証をつくってバキュームカーでファンジョンミン演じるガンムが軍の施設に入り込む。下水道の完備で最近日本ではバキュームカーを見なくなったので若い人わかるかなあ。

軍の施設から逃走している時に背後から追いかけられる。バキュームカーのホースで後続車を交わすのは最高。というか笑える。そこでのカーチェイスが見ものだ。一般道でこんなクルマのロケができる映画への寛容性韓国社会にあるのかなと感じる。
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映画「このろくでもない世界で」

2024-07-31 17:12:14 | 韓国映画(2020年以降)
映画「このろくでもない世界で」を映画館で観てきました。


映画「このろくでもない世界で」は韓国得意のクライムサスペンスである。お気に入りの俳優が出ているわけではないが、直感で選択する。長編デビュー作のキム・チャンフン監督の作品。原題はオランダを意味する。韓国の下層社会に生きる高校生がやむなく裏社会稼業に従事せざるをえない状況を追っていく。既視感があるストーリーとも言えるが、若くして堕ちていく主人公を追う。

継父のDVに怯える18歳のヨンギュ(ホン・サビン)は、義理の妹ハヤン(キム・ヒョンソ)を守るために暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、300万ウォンの示談金を求められる。町中華のバイトで稼ごうとするが、遠く及ばない。暴力沙汰でクビになる。


ヨンギュは、ひょんなきっかけで裏社会組織のリーダー、チゴン(ソン・ジュンギ)に助けてもらう。チゴンは同じ育ちの匂いをヨンギュに感じたのだ。ヨンギュはその後も金銭的に厳しくチゴンのもとで働かせてもらいたいとお願いする。路上駐車のバイクを盗んで裏ルートで売る仕事の手伝いをするのだ。チゴンの本業裏金融の世界でも手助けをしてヨンギュは徐々にチゴンに認められていく。ところが、難題の依頼を受けざるを得ない状況になる。

韓国の下層社会と裏社会の狭間を生きる青年の物語だ。
元々の父親を知らずにシングルマザーのもとで育った高校生が母とDVの義父と血のつながっていない妹と暮らす。生活は苦しい。いつも通りの韓国下層社会の物語で、裏社会に転落するパターンもよくありそうだ。暴力表現は韓国らしくかなりドギツイ。日本映画「あんのこと」で示す下層社会と似て家庭環境はよくない。ただ、違うのはこの映画では当事者が更生しようとするシーンがない。堕ちていくだけだ。


18歳の貧困少年ヨンギュと、裏社会の男チゴンの友情が見どころだ。韓国映画では毎度の定番のように見えるが、裏金融の取り立てのきびしい部分も映し出す。ヨンギュのことをかっているといっても、2人の関係にもかなりの紆余屈折がある。リーダーの上にいわゆるドンがいて、政治の世界も絡んだ面倒な世界だ。言うこと聞かない奴の始末にも手をつけろとドンを通じて命令が下る。共感が持てる登場人物はいないけど映画の全体レベルとしては、それなりと感じる。

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映画「密輸 1970」 キムヘス

2024-07-13 07:18:32 | 韓国映画(2020年以降)
映画「密輸1970」を映画館で観てきました

映画「密輸1970」は海に密輸品を投げ込み海女さんがそれをピックアップしてこっそり運ぶ話が題材の韓国映画だ。海女さんをこんなことで活用する発想自体に驚く。監督は「モガディシュ脱出までの14日間」で凄まじいアクションを見せてくれたリュスンワンだ。韓国では随分とヒットしたらしい。

主演のキム・ヘス「国家が破綻する日」「コインロッカーの女」などで主演を張ったベテラン女優で、出演作は割と観ている。70年代半ばのドン臭い派手な格好で立ち回る。同じく海女さんのリーダーであるヨムジョンハは広末涼子系ルックスのいい女。2人をはじめとして韓国の人気俳優を揃える。

1970年代中盤、韓国の貿易港クンチョンで海女さんのグループが、工場の汚染水の影響で獲った海産物が売り物にならず困っている。その頃、税関を通さないために海に投げ込んだ密輸品を海女さんに引き揚げてもらう話がくる。リーダーのジンスク(ヨムジョンハ)は仲間の生活を考えてやむなく引き受けてうまくいった。ところが、税関の取締りにあい逮捕されてジンスクは刑務所生活だ。

危機一髪逃げたチュンジャ(キムヘス)はソウルで裏流通で一旗あげる。2年が経ち、チュンジャは釜山で密輸ルートをおさえていたクオン(チョインソン)と知り合い、故郷クンチョンに戻ってきて以前のような密輸を再度企てる。ジンスクは反発するが、生活のためにもう一度海女さんに引き揚げを手伝わせる。それには税関も黙っていなかった。


娯楽として十分楽しめる作品だ。
夏には疾走する船が漂う海や海底が前面に映像に出る作品の方が観ていて涼しげで気分がいい。映画のバックに流れる音楽が、昭和50年(1975年)前後の東映映画やTVのアクション番組のムードを漂わせる。リズムギターの音色がまさにそうだ。韓国演歌も昭和の匂いだ。監督はかなり東映映画を観ているのではないか。


わざとやっているのだろうが、女性陣の風貌もまったく洗練されていない。チリチリパーマで服装のセンスがバタくさい。ソウルオリンピック前の貧しかった韓国の姿そのものだ。このノスタルジックな雰囲気に惹かれる人も多いだろう。亡くなった自分の父親はこの時期韓国によく遊びに行っていた。当時の韓国人は幼少時日本語教育を受けていたせいか流暢に日本語を話す人が多く、運び屋をお願いされたこともあったそうだ。日本人の自分が観ても、コンプライアンス感皆無のこの世界を見るのが楽しい。雰囲気がBC級映画のたたずまいだが、ストーリーは韓国映画らしく単純ではない。

キムヘス演じるチュンジャは幼い頃から家政婦をやっていて金儲けには貪欲だ。常に悪知恵を働かせる。危機一髪の場面をいつもすり抜ける。昨日の敵が今日の友になったり、敵味方交錯して訳がわからなくなるのも東映のヤクザ映画と似たようなものだ。密輸を絡めてチンピラと税関が通じていて、カネにめざとい奴らが悪いことをする。収賄もアリアリだ。最近の韓国はどうなんだろうか。


それにしても、この海女さんたちが海底を潜水するシーンはどうやって撮ったんだろう。全部海なのかなあ?それともプールにセットしたのか?いずれにせよ、長い時間素潜りで海底の密輸品をもあさる海女さんたちに脱帽するしかない。酸素ボンベをつけたチンピラと海女さんが海底で対決して、チンピラのボンベをはずすシーンもどうなっちゃうんだろうと思わせる。
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映画「スリープ SLEEP」 イ・ソンギュン

2024-06-30 17:31:11 | 韓国映画(2020年以降)
映画「SLEEP 」を映画館で観てきました。


映画「スリープ」は昨年末亡くなった韓国のイ・ソンギュン主演のスリラー映画だ。最近公開作がでたホン・サンス監督の「ソニはご機嫌ななめ」チョンユミイソンギュンが共演している。自由奔放なチョンユミがよかった。新人監督ユジェソンのこの作品を元の親分ポンジュノが推奨している。

昨年末のイソンギュンの自殺は実に残念だ。訳のわからない女にハマったのか?薬物所持の疑いで最後は悲惨だった。実際に何があったのだろう?これまでの活躍には敬意を表したい。金大中のずる賢い選挙参謀を演じた「キングメーカー」が特に好きだった。この作品が遺作かと思ったら、どうやらまだあるらしい。

舞台俳優ヒョンス(イソンギュン)は、コールセンターのチーム長である妻スジン(チョン・ユミ)と一緒に暮らしている。妻は身もこもっていた。ある夜突如「誰かが入ってきた」と夫が叫ぶ。その時点から急に寝付きが悪くなる。自ら顔を掻きむしって傷だらけ。病院に行くと睡眠障害と言われる。

その後も奇怪な行動が続く。夜中に突如として起き出して、冷蔵庫で生魚を食べたり,窓から飛び降りようとしたり不穏な動きが続く。夢遊病のようだ。せっかく妻は出産したのにヒョンスの様子がおかしいので妻の母親は心配して霊媒師のような巫女を呼ぶ。


残念ながら自分にはあわない映画だった。
イソンギュンとチョンユミの韓国の2大スターが共演するにはスケールが小さい
霊のような何かに取りつかれるパターンは韓国サスペンス系では比較的多い。秀吉の朝鮮出兵で16世紀に仏教禁止となった朝鮮では宗教への信仰というよりシャーマニズム信仰が朝鮮大陸の伝統だ。19世紀末に朝鮮を訪れたイザベラバード女史の名著「朝鮮紀行」でもシャーマニズム信仰が取り上げられる。ファンジョンミンが祈祷師を演じた「コクソン」もそのテイストが強い。ただ、「コクソン」のもつ迫力と怖さがない。

この映画は韓国サスペンス系では珍しく途中のリズムが悪く、眠気を誘う状態になりがちだ。部屋中に貼ってあるお札が異常で、最終に向けてチョンユミも豹変して人智を超えた世界に持ち込むがのれない。


韓流ドラマ好きが以前よりも増えている気がする。自分と同年代周辺のおばさんたちとの話題で韓流の話題が欠かせない。若い韓流スター好きもいるが、どちらかというとストーリーの予測がつきにくいことでの韓流ストーリー好きが多い。いいことだと思う。日本も見習うべきだ。映画「パラサイト」というよりドラマ「マイディアミスター」での活躍もあってかイ・ソンギュンのファンも多い。観客にも熟年女性ファンの姿が目立つ。ただ、怖いということだけでは先日観た「ターゲット」の方が恐怖感を覚えた。

イソンギュン
の次作に期待する。
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映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」キシンヘソン

2024-06-26 18:30:33 | 韓国映画(2020年以降)
映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」を映画館で観てきました。


映画「ターゲット 出品者は殺人鬼」は韓国得意のクライムサスペンス。中古品売買が盛んにネット上で行われている韓国では詐欺犯罪が多発しているらしい。解説によれば、1日あたり228件の被害届とは多い。中古品売買での犯罪をパクヒゴン監督が題材としている。以前,振り込み詐欺を題材にした2022年の韓国映画声 姿なき犯罪者年間ベスト級の面白さだった。こういう特殊犯罪の手口を題材にした韓国映画はどれもこれもおもしろい。今回もその系統かと映画館に向かう。

スヒョン(キシンヘソン)はネットで中古の洗濯機を購入する。しかし、後日壊れた洗濯機が届き、詐欺にあったことに気づく。警察に行ってもすぐ捜査してくれない。スヒョンは、出品者のアカウントに直接連絡をとり、返金を要求するが相手にされない。感情的になったスヒョンは、相手に怒りに満ちたメッセージを送りつけると、出品者から執拗な嫌がらせを受けるようになる。


予想通り緊迫感あふれるサスペンスだ。
ホラー映画を思わせる恐怖の波状攻撃で次から次へと主人公を恐怖に陥れる。観ているこちらもドッキリだ。映画を見終わると、中年女性が怖かったねえと語り合っていた。娯楽として見る価値は十分だ。

1,ネット上の恨みつらみ
ネット上の売買で中古品の起動しない洗濯機が送られてきたわけだから,購入者がクレームをつけるのは当然のことだろう。しかし,この出品者は気がつくと、IDもなくクレームがつけられない状態になっている。何とか別のサイトから見つけ出して、詐欺だと訴えていく。しかし、それが恨みを買うことになってしまった。

被害者の自宅にこれでもかとピザやチキンなどの出前が押し寄せる頼んでない食べ物を次から次にデリバリーで持ってくるのだ。それだけではない。出会い系でこの部屋で待っていると、男性が夜押し掛けてくる。なるほど,こんな仕返しがあったのか。


その辺から恨みと仕返しの応酬が続く。見るも無惨だ。警察は動かない。こんな話は日本でもあるのだろうか?やはりこの手の犯罪は、いかにも韓国っぽい感じがしてくる。

2,不死身の悪者
韓国映画の悪者はともかく強い。不死身の殺人鬼だ。そう簡単には仕留められない。しかも、ネットを駆使して徹底的な嫌がらせをするだけでない。映画が始まり、中古品売買で物品を取りに行き、出品者が殺されるシーンからしばらくの間悪者の姿が見えない。ともかく顔が見えない。それだけで不気味だ。

姿を現してからも、悪者は強さを発揮する。被害を受ける人たちが1人、2人と出てくるのだ。韓国の路地のような狭い道路でのカーチェイスはなかなかの迫力だ。そんな逃走劇があっても捕まらない。刑事との格闘場面でももうダメかと思っても生き延びる


実は被害者のスヒョンは建築会社の工事リーダーだ。格闘場面で施工中の現場が出てくる。そこで主人公が釘打ち機を武器に使用するのだ。こんなのは初めて見た。格闘場面もアイディアに満ちあふれていてスリリングだった。
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映画「貴公子」キムソンホ

2024-04-29 21:13:57 | 韓国映画(2020年以降)
映画「貴公子」を映画館で観てきました。


映画「貴公子」は韓国得意のアクションサスペンス作品で、名作「新しき世界」パクフンジョン監督がメガホンをもつ。GWに入って何気なくNetflixオリジナルの日本のアクションモノ「シティハンター」を観るが、面白くない。リカバリーで何かアクションモノを観ようとこの映画を選択する。実績のある監督だけに期待できそう。

地下格闘技の世界でボクサーをやっているフィリピン在住の青年マルコ(カンテジュ)は、母親の医療費を捻出するために略奪の一味にも加わる養護施設育ちの底辺を彷徨う男だ。そこに富豪の父親の代理人と称する弁護士が現れる。すぐさま韓国に帰国して欲しいと飛行場に急ぐ。航空機の中で友人だと名乗る不気味に笑う男(キムソンホ)に声をかけられる。


韓国で父親と称する男に会いに行こうと、弁護士と同乗していると、飛行機で出会った男が運転するベンツが幅寄せをしてきて、クルマは道路を外れて大破する。追ってきた男から懸命に逃げようとするが。


韓国アクション映画らしくレベルは高く、スリリングな場面が続く。
カーチェイスと家の屋上や塀をつたわっての逃亡劇は見ごたえ十分だ。


フィリピンと韓国の混血をコリアンフィリピーノ略して「コピノ」というらしい。これは初めて聞く。日本に大挙して出稼ぎに来たジャパユキさんが混血の子どもを産んでいたのと同じように韓国でも同じようなことがあったのであろう。施設で育った青年だ。裏社会の格闘技でキックボクシングをやって母親の治療費のために金を稼ぐが、強奪にも加わる。バクチにもカネを投入して負けている。

その混血青年マルコが富豪の息子とわかるので、てっきり彼が主人公の貴公子だと思ったら違う。徹底的に追跡する常に不気味な笑みを浮かべる男が実は貴公子なのだ。演じるキムソンホはNHKからフジTVに移った青井アナウンサーに似ているイケメンだ。

最後まで味方なのか悪役なのかよくわからない。この男だけ意図が見えない。格闘能力は高い。コピノと言われる混血少年をひたすら追い続ける。観客に恐怖心すら起こさせる。韓国クライムアクションによく登場する不死身な男だ。マルコはひたすら逃げまくる。スリラー映画での悪役みたいだけど結局主役だ。


マルコの追跡にかかわるユンジュという女や富豪の息子にあたるハンなど残忍な奴らも登場させてのカーチェイスはもの凄い迫力だ。中央分離帯のない自動車専用道路でバシバシUターンを連発する。高級車やベンツもつぶしてしまう。カメラアングルもいったいどうやって撮っているんだろうというスリリングなショットだ。

韓国映画の予算取りは日本より大きい感じがする。日本映画ではなかなかこうはいかない。東南アジアでの外国ロケの映画も目立つ。ここでも不気味なフィリピンの夜を映し出す。映像のレベルは高い。
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