気ままにフィギュアスケート!

男子シングルが好きです。

ロミオ疾走

2008-03-13 22:09:47 | 高橋大輔プログラム
大ちゃんの今期のプログラムについて書くのもようやく最後。FSのロミオとジュリエットについてです。

昨シーズンからのファンである私は、新しいプログラムが発表されたときの興奮を今シーズンしか知らない。その中でバチェラレットとSwan Lakeが最初から好評でもって迎えられたのに対し、ロミオとジュリエットには少々手厳しい意見もあった。オペラ座の怪人と似ているというものだ。
初披露の日米対抗のとき、私もそう感じた。翌日のEXで披露されたSwan Lakeを見て、SPに革新的なものをもってきたから保険としてFSに王道のクラシックを持ってきたのだろうと思ったが、2年連続して似たようなストーリーものにしなくても、クラシックでも音楽そのものを表現するような曲にしたほうが良かったのではとしばらくの間思っていた。
しかもファントムとロミオでは人間としての厚み、ドラマとしての葛藤に差がありすぎる。表現という面ではファントムの次にロミオを演じるのは厳しいのではないかと感じた。
風当たりの強い中、模索し続け振付は何度も変わる。ファンに評判の良かった、ストレートラインステップ前の、納骨堂の扉を開け横たわるジュリエットを見て嘆き、ひざまずいて抱き上げる振付は、NHK杯からはなくなる。
ロマンティックな振付で残るのはサーキュラーステップ後のスローパート。そっと手と手を合わせ恋人たちは束の間の愛の喜びに浸るが、すでに悲劇が忍び寄るかのように狂おしく切なげだ。
インタビューによれば本人はさわやかに10代の恋を演じたかったようだが、チャイコフスキーの重厚な音楽で演じられるのは、ドラマティックな物語。紫に包んだ衣装、毒薬で死んだはずのロミオのハートが剣で貫かれているのは、ジュリエットとの恋が剣で刺し貫かれたように、逃れようのない運命だったことを暗示しているのだろうかと感じた。
スケートアメリカ、NHK杯と評価が高まってきたが、GPFでランビエールにPCSの差で負けたことで再び振付が非難される。全日本、四大陸で4回転2回を成功させ、大きなミスなく滑りきったことで高いPCSを叩き出した後は、そんな意見も聞かなくなった。
四大陸では魂のこもった圧巻の演技。誰も文句の付けようがない、そんなプログラムに成長したのだと思う。さらに変更を加えてくるらしいから、世界選手権での完成形が楽しみだ。

実は私がこのプログラムを本当にいいと思ったのは、かなり遅めでNHK杯。緊迫した首位争いの中、冒頭の4回転を失敗したことで却って緊張が高まり、後半のコンビネーションジャンプを次々と成功させ、満場の手拍子を受けてストレートラインステップを踏む姿に、ロミオというよりは自分自身の大きな目標に向かって疾走する彼自身の姿を見た。
その時、モロゾフコーチがこの曲を選んだわけが理解できたような気がした。息詰まるような緊張感の中、ジャンプを成功させ激しくステップを踏むと、曲の持つ緊張感と相まって劇的な効果が生まれるのだ。
反対に中途半端な演技では曲を生かせず、盛り下がってしまう。MOIでオーケストラの生演奏と共に「チャンピオンの音楽」と紹介されたが、まさしくチャンピオンのみが演ずることのできる曲なのだ。
付け足せば、スポーティなプログラムと言われたけれど、余りロマンティックを解さない私にこのプログラムはまさしくそれ。大きな声では言えないが、私の中でこのプログラムはひたすらジャンプの出来が気になる「大輔4回転跳べ跳べプログラム」になってしまっている。

このプログラムについてやっと書けました。四大陸前に書く予定だったのがずるずると遅くなり、世界選手権に何とか間に合ってほっとしました。
皆様のこのプログラムに対する思い入れなど、聞かせて頂けたら嬉しいです。