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淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

村上龍の長編小説「半島を出よ!」上下巻を読む。

2005年07月24日 | Weblog
 実は村上龍の「半島を出よ!」。発売直後からすぐに読み始めていた。でも途中で長い中断があって、今回やっと分厚い上下巻を読み終えた。
 村上龍の処女作、「限りなく透明に近いブルー」を初めて読んだ時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。
 僕は芥川賞が掲載された「文藝春秋」を買って、その日のうちに読み終えた。ドアーズとかドラッグとかが出てくる小説はとても新鮮だった。
 次の「海の向こうで戦争が始まる」は少しガッカリしたけれど、「コインロッカー・ベイビーズ」でまたまた強い衝撃を受けた。
 そして今度は、村上春樹が群像文学新人賞を取る。「風の歌を聴け」である。
 2人の対談集「ウォーク・ドント・ラン」も、勿論すぐに買って読んだ。
 つまり、村上龍と村上春樹は、そのほとんど全ての作品を僕は読んでいるということになる。

 村上龍の小説は、ある文芸評論家も述べているように、素晴らしい傑作を書いたかと思うと、次は物凄い駄作を仕上げるというように、作品自体に極端なムラがある。
 それから彼の監督する映画。これがまた映画評で酷評され続けている。
 僕も観ているけれど、まあまあ標準点を付けられる映画は「だいじょうぶマイフレンド」ぐらいか。
 兎に角、全身全霊を傾けて書き上げたかと思うと、手を抜いたとしか思えない作品だったりと、濃淡があるのだ。

 今作。かなり話題に上った。
 近未来の日本を舞台にした、「五分後の世界」を彷彿さる作品だし、北朝鮮問題や国際的な政治情況の不透明さから、各新聞の書評にも取り上げられ、作品の評価も概ね高かったように思える。
 北朝鮮の現政権に反旗を翻したと叫ぶ同国のメンバーが、密かに博多に潜入し、福岡ドームを観客ごと占拠する。
 呆然とする日本政府。しかし何の対策も取る事が出来ずに、ただオロオロと右往左往するだけ。それを村上龍は克明に綴ってゆく。
 それと同時並列で、心に闇を持った若者たち、所謂、犯罪や殺人やトラウマを抱えた若者たちをも詳細に描く。そしてそれらは絡まりながら、全て最後で交錯する。
 しかし全編を読んで思うのは、「コインロッカー・ベイビーズ」や「五分後の世界」や「イン・ザ・ミソスープ」や「トパーズ」や「テニスボーイの憂鬱」や「2日間で4人の女とセックスする方法」のような衝撃はない。
 各章ごと、それそれの違った視点、人物によって物語を語らせるのだけれど、そうするとその章の緊張感や進行自体の面白さが、次の章でまたぶつんと切り取られてしまうのだ。
 だから、ラストの大攻防戦が上手く活きてこない。

 決して悪くはないんだけど・・・。
 
 

 
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