
北野武監督による映画作品は、これまですべて観て来た。
そしてもちろん濃淡はあるけれど、どれもが素晴らしい映画で、これまで一度も期待を裏切られたことはない。
時代劇でもバイオレンスでもコメディでもシリアス系でも、いい意味で観る側を上手に裏切ってくれたし、どの映画も凄みがあった。

監督第一作目となる1989年の「その男、凶暴につき」に始まって、「3-4X10月」(1990)、「あの夏、いちばん静かな海」(1991)、「ソナチネ」(1993)、「みんな~やってるか!」(1995)、「キッズ・リターン」(1996)、「HANA-BI」(1997)、「菊次郎の夏」(1999)、「BROTHER」(2001)、それから賛否両論だった「Dolls」(ドールズ)(2002) だって、個人的には好きな映画の一本だ。

それから、2010年代に突入してから北野武監督が造り上げる映画も、どれも何がしかのツイストがあって衝撃的で、いつもワクワク感があった。
「座頭市」(2003年)は衝撃的な時代劇だったし、「TAKESHIS'」(2005年)や「監督・ばんざい!」(2007年)、「アキレスと亀」(2008年)だって嫌いじゃない。


そして、あの「アウトレイジ」(2010年)、「アウトレイジ ビヨンド」(2012年)、途中で「龍三と七人の子分たち」(2015年)を挟んでの「アウトレイジ 最終章」(2017年)・・・。
2023年に発表した「首」も、本人が書いた小説の「首」はちょっとイマイチだったけれど、映画のほうは北野節全開で、これまた好きな映画の一本である。

そんな、ご贔屓監督である北野武が、監督・脚本・主演を務め、浅野忠信、大森南朋、中村獅童、白竜らが共演した、「Amazon Original」映画「Broken Rage」が昨日(2月14日金曜日)ついに配信された。
これは観ないわけにはいかない。
ということで、夜、飲み会があったのだけれど、9時には引き上げ、早速配信された「Amazon prime」で視聴した。
この作品、「暴力映画におけるお笑い」をテーマに製作したということで、前半が、お得意の裏社会を舞台にした、殺し屋(北野武)が主人公のクールなクライムアクション。そして後半が、前半と同じ物語をそのまま進行させるものの、180度装いを変え、コメディタッチのパロディになっていた。
つまり、同じテーマの「2本立て」という構成だ。時間も約60分程度とかなり短い。
で、観た後の感想だけど、これはちょっと辛かった。
後半のパートで何度か笑ってしまったけれど、大半は笑いのパターンが平凡で、結構滑っていたし、前半もいつものあのクールな切れ味はほとんどなかった。
確かにこれはこれで意欲作であり、観る側への北野武的挑戦状ではあるのだろうが。
うーん・・・でも最後まで観続けるには、やっぱりキツかった。
残念。