淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「ボクシング映画に駄作無しというけれど、映画『ケイコ 目を澄ませて』はそれとはまた少し異質な感覚だ」。【37日後の春へ】

2023年01月24日 | Weblog
 朝から雪が降り続く。
 出勤時、車を運転していて、猛吹雪で前方がよく見えなかった。
 いよいよ「10年に一度の大寒波」がやって来たようだ。今日からずーっと真冬日が連続して続いてゆく。気温もマイナス10度近くになる日があった。今冬、最期の頑張りどころだろう(たぶん)。

 映画を観た。
 「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督による、岸井ゆきの主演、耳が聞こえない女性ボクサーの実話をもとにした、「ケイコ 目を澄ませて」だ。
 原作は、元プロボクサーだった小笠原恵子の自伝「負けないで!」だそうだけれど、この本は読んでないし、主演(好演!)の岸井ゆきのも知らない役者だった。



 とにかく、各映画誌で大絶賛。「キネマ旬報」の中の3人の評論家による映画評も、ほぼ★★★★★だった。
 都内でも何件かの映画館で上映されていて、時間の関係上、観たのは渋谷「ユーロスペース」。上映時間ギリギリだったので、大混雑していた道玄坂を走って駆けつけた。

 これまで作られた外国映画も日本映画も、ボクシングを扱ったジャンルの映画で「これは面白くなかった」という類いのものは一本もなかった。もちろん優劣はあるけれど、そのどれもがそれなりの水準を超えていた。
 日本映画だけでみても、「アンダードッグ」、「あゝ、荒野」、「ボクサー」、「どついたるねん」、「キッズ・リターン」、そして「百円の恋」と・・・たくさんある。

 そして今回。傑作との呼び声が高い「ケイコ 目を澄ませて」には、観る前から期待が大きく膨らんだ。
 同じ三宅唱監督の「きみの鳥はうたえる」もいい映画だったし。



 ケイコは、生まれつきの聴覚障がい者で両耳が聞こえない。
 それでも彼女はホテルの客室清掃係をしながら、下町の一角にある小さなうらびれたボクシングジムで、プロボクサーとしてのリングに立っている。
 そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることをジムの会長(三浦友和)から突然告げられる・・・。

 この映画には、ほとんど山場となるようなシーンが存在しない。
 最後まで徹底して、ケイコがストイックなボクシングの練習に明け暮れる場面や、静かに暮れゆく下町の河川敷や、会長やトレーナーたちとの淡々とした交流シーンだけが流れてゆく。

 だから普通ならボクシング映画の定番となるべき、ラストの壮絶なリングでのドラマティックな戦いも、内に秘めた熱い闘志が観る側をも燃え滾らせるようなシーンもない。
 リング上での対戦はあくまで醒めた視点で描かれるし、ことのほか主人公に深く入り込むこともしない。あくまで、寡黙で静謐な流れだけが、この映画を支配し続けてゆく。



 こういうトーンで終始するボクシング映画もまた珍しい。
 そんなところが、評論家たちにも受け入れられ、高い評価へと繋がったのではないかとは思う。
 でも正直に言っちゃえば、個人的には、主人公が奈落の底から這い上がり、最期には孤独のリングの中で(たとえ試合には負けたとしても)何かを奪い取り、観ている側へ勇気と希望を与えてくれる、そんな熱い映画が本当は観たかった・・・。

 確かに、この映画のラストにおける「河川敷」シーン、悪くはなかったですが・・・。





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