キアヌ・リーヴスって映画のイメージと違って、結構、脱力系というか、一風変わった人間らしい。
と書くと、なんか批判的に言っているようにとられるかもしれないけれど、これは僕にとって最大級の褒め言葉である。
昔、なんかの雑誌でパパラッチされていたのは、キアヌ・リーヴスが突如路上に座り込み、近くにいた見知らぬホームレスと買ってきたお酒の瓶をかざして和気あいあいと宴会している隠し撮りの写真だった。
ハリウッド・スターが、何の躊躇いもなく、ホームレスと酒を酌み交わしているのだ。凄い。
そして僕が次に見た写真は、これもまたパパラッチされたもので、ニューヨークか何処かの公園のベンチにキアヌ・リーヴスが独りぽつんと腰掛け、独りぼっちでランチを摂っているというものだった。
いいよ、いい。凄くいいよ、キアヌ・リーヴス!
気さくだとか、人懐こいだとか、庶民的だとか(この庶民的って言葉、大嫌い。なんなんだ、庶民的って)、そういう表層的な評価ではなく、もっと深い部分で心通じるものがあるんだなあ。
そんなキアヌ・リーヴスの新作映画が出た。
クライム・サスペンス映画「フェイク・クライム」である。
クライム・サスペンスに、コメディというフレーズを付けている映画雑誌もあった。
物語の概略はこうだ。
平凡な男ヘンリーは、高速道路の料金所で働いている。
今日も徹夜明けで自宅へと戻り、美しい妻が作った手料理を黙々と食べ、妻が何気なく呟く「子どもを作りたい」の言葉にも、感情を出さずに生返事を繰り返している。
そこに突然チャイムが鳴り高校時代の悪友が現れる。
野球の試合に出て欲しいと嘆願され、連れて行かれた場所はなんと銀行だった。彼は騙され、知らぬ間に銀行強盗の片棒をかつがされたのである。そして彼だけが捕まってしまう。
それから1年後。
仮出所したヘンリーは、捕まった銀行の前でぼんやり佇んでいると車にはねられ、運転していた舞台女優のジュリーと知り合うことに。
彼女は偶然、銀行の隣の小さな劇場でチェーホフの「桜の園」の稽古中だったのである。ふとしたことから、一度捕まった銀行とその劇場が古いトンネルで繋がっていることを知ったヘンリーは、無実で服役した無駄な刑期を取り返そうと、銀行から金を奪うことを決意する。
そして彼は大胆にも、服役していた刑務所で知り合った老詐欺師マックスを仲間に引き入れ、自分自身も劇団員となって劇場に紛れ込み、大金強奪を目論むのだが・・・。
監督はこれが長編2作目となる(らしい)マルコム・ヴェンヴィルというひと。
ごめんなさい。この監督も初めてだ。
いやあ。
導入部から、一瞬でこの独特の雰囲気を持つ映画の中に引き摺りこまれてしまった。
冒頭述べた、実際のキアヌ・リーヴスの素行と同じく、この映画のキアヌ・リーヴスもまた、脱力っぽい、虚無的ともいえる人間を見事に演じているのである。
どんより、寒々とした天気の下を、黙々と歩くキアヌ・リーヴス。服役中、妻から突然「好きなひとができたの」という三下り半にも、ほとんど顔色を変えずに祝福するキアヌ・リーヴス。捕まった銀行の前で車にはねられ、運転していた舞台女優のジュリーと知り合った際の、脱力っぽい、女性に対して何の興味もないような無表情を浮かべるキアヌ・リーヴス・・・。
この映画、もしかしたら最近観た洋画の中で、傑作となりうる映画かも。
マルコム・ヴェンヴィルっていう監督、意外と凄いかも。
そんなことを思い、期待に胸は膨らんでゆく・・・。
ところがである。
中盤、ヘンリーが舞台女優のジュリーと恋に落ちる辺りから、単なるステレオタイプな、平凡な人物設定へと変わってしまうのだ。
ラストも、何らかのひとひねりや、ちょっとしたどんでん返しがあるのだろうかと、こちらも密かに期待したけれど、予定調和なエンディングに落ち着いてしまう。
それにしても、前半の奇妙な空気に包まれた世界だけは素晴らしかった。
それが中盤からの失速感があまりに激し過ぎて、結局、どっちつかずの映画で終わってしまったようだ。
あーあ。
と書くと、なんか批判的に言っているようにとられるかもしれないけれど、これは僕にとって最大級の褒め言葉である。
昔、なんかの雑誌でパパラッチされていたのは、キアヌ・リーヴスが突如路上に座り込み、近くにいた見知らぬホームレスと買ってきたお酒の瓶をかざして和気あいあいと宴会している隠し撮りの写真だった。
ハリウッド・スターが、何の躊躇いもなく、ホームレスと酒を酌み交わしているのだ。凄い。
そして僕が次に見た写真は、これもまたパパラッチされたもので、ニューヨークか何処かの公園のベンチにキアヌ・リーヴスが独りぽつんと腰掛け、独りぼっちでランチを摂っているというものだった。
いいよ、いい。凄くいいよ、キアヌ・リーヴス!
気さくだとか、人懐こいだとか、庶民的だとか(この庶民的って言葉、大嫌い。なんなんだ、庶民的って)、そういう表層的な評価ではなく、もっと深い部分で心通じるものがあるんだなあ。
そんなキアヌ・リーヴスの新作映画が出た。
クライム・サスペンス映画「フェイク・クライム」である。
クライム・サスペンスに、コメディというフレーズを付けている映画雑誌もあった。
物語の概略はこうだ。
平凡な男ヘンリーは、高速道路の料金所で働いている。
今日も徹夜明けで自宅へと戻り、美しい妻が作った手料理を黙々と食べ、妻が何気なく呟く「子どもを作りたい」の言葉にも、感情を出さずに生返事を繰り返している。
そこに突然チャイムが鳴り高校時代の悪友が現れる。
野球の試合に出て欲しいと嘆願され、連れて行かれた場所はなんと銀行だった。彼は騙され、知らぬ間に銀行強盗の片棒をかつがされたのである。そして彼だけが捕まってしまう。
それから1年後。
仮出所したヘンリーは、捕まった銀行の前でぼんやり佇んでいると車にはねられ、運転していた舞台女優のジュリーと知り合うことに。
彼女は偶然、銀行の隣の小さな劇場でチェーホフの「桜の園」の稽古中だったのである。ふとしたことから、一度捕まった銀行とその劇場が古いトンネルで繋がっていることを知ったヘンリーは、無実で服役した無駄な刑期を取り返そうと、銀行から金を奪うことを決意する。
そして彼は大胆にも、服役していた刑務所で知り合った老詐欺師マックスを仲間に引き入れ、自分自身も劇団員となって劇場に紛れ込み、大金強奪を目論むのだが・・・。
監督はこれが長編2作目となる(らしい)マルコム・ヴェンヴィルというひと。
ごめんなさい。この監督も初めてだ。
いやあ。
導入部から、一瞬でこの独特の雰囲気を持つ映画の中に引き摺りこまれてしまった。
冒頭述べた、実際のキアヌ・リーヴスの素行と同じく、この映画のキアヌ・リーヴスもまた、脱力っぽい、虚無的ともいえる人間を見事に演じているのである。
どんより、寒々とした天気の下を、黙々と歩くキアヌ・リーヴス。服役中、妻から突然「好きなひとができたの」という三下り半にも、ほとんど顔色を変えずに祝福するキアヌ・リーヴス。捕まった銀行の前で車にはねられ、運転していた舞台女優のジュリーと知り合った際の、脱力っぽい、女性に対して何の興味もないような無表情を浮かべるキアヌ・リーヴス・・・。
この映画、もしかしたら最近観た洋画の中で、傑作となりうる映画かも。
マルコム・ヴェンヴィルっていう監督、意外と凄いかも。
そんなことを思い、期待に胸は膨らんでゆく・・・。
ところがである。
中盤、ヘンリーが舞台女優のジュリーと恋に落ちる辺りから、単なるステレオタイプな、平凡な人物設定へと変わってしまうのだ。
ラストも、何らかのひとひねりや、ちょっとしたどんでん返しがあるのだろうかと、こちらも密かに期待したけれど、予定調和なエンディングに落ち着いてしまう。
それにしても、前半の奇妙な空気に包まれた世界だけは素晴らしかった。
それが中盤からの失速感があまりに激し過ぎて、結局、どっちつかずの映画で終わってしまったようだ。
あーあ。