淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

伊坂幸太郎の同名小説を化した映画「重力ピエロ」。及第点は取っているけれど・・・。

2009年06月20日 | Weblog
 冒頭のシーンがいい。
 そして、それがラストシーンと鮮やかに絡んで来るのだけれど。

 映画「重力ピエロ」は、重い主題を扱っている。
 その息苦しいほどのテーマを、監督である森淳一は深刻ぶらずに、瑞々しい青春映画の匂いを漂わせながら描いてゆく。
 そこは確かに正解だと思う。

 仙台の街で、次々と連続放火事件が起こる。
 テレビ取材が駆けつけるなか、不思議なことに、放火現場の近くには必ず奇妙なグラフィティアートが描かれていた。

 その仙台市内で、公務員の父親と暮らしている泉水と春という二人の兄弟がいた。
 兄は気弱で何事にも消極的だったが、遺伝子を取り扱う企業の研究室に勤務していて、もう一方の弟の春は高校生で、活発で正義感が強く、異常なほど女性にもてる。

 春は、悪戯で誰かが書き殴るグラフィティアートを消すアルバイトをしているうちに、アートと放火が繋がっている事を突き止め、兄と2人、警察には頼らず連続放火犯を捕まえようと試みるのだが・・・。

 映画は、徐々に、優しい父親と2人の兄弟に秘められた謎を明らかにしてゆく。
 父親は癌を宣告されていて、亡くなった母親には辛く悲しい過去があった。それらの悲劇が、現在の放火事件と交互にわたしたちへ提示されるのである。

 兄の加瀬亮もいいけれど、弟役の岡田将生もいい。
 それから、心優しい父親役の小日向文世、母を演じる鈴木京香、ストーカー役を演じる吉高由里子。
 みんな、それぞれにいい味を出している。

 それにしても、渡部篤郎、この人は一体どうしてしまったんだ? あの「スワロウテイル」の頃のかっこよさは何処に消えてしまったのだろう。残念だ。
 今回は、美味しい役回りだったと思うんだけどなあ。

 深刻で重い内容なのに、何処か明るさが漂うのは、ひとえに監督の手腕かも知れない。
 ただ、イマイチ乗り切れないのは何故だろう。
 及第点はあげられるのだが、全体的に淡白なのだ。
 小説自体を読んでいないので何とも明言は出来ないけれど、錯綜するストーリー展開をもうちょっと焦点を絞って濃淡を付けたら良かったのかも。
 最後の大団円も、感動とまではいかなかったし・・・。

 でも、伊坂幸太郎の描く物語って、ほんと独特の世界観がある。
 「ゴールデン・スランバー」なんて、凄く面白い小説だった。
 出来れば「「ゴールデン・スランバー」、是非映画にして欲しい。
 これは、絶対、観てみたい。




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