「冷たい雨降る夜にー」

　仕事が終わって、冷たく激しい雨が降る中を駐車場まで駆け足で走り、濡れたままシートに腰掛けて車を出した。
　今日も疲れた。今日も色々あって忙しかった。あっという間に夜になってしまった。

　一週間前、ずっと愛用していたお気に入りの革ジャンが無くなっていることに気づいた。何処に忘れて来たのか皆目見当が付かない。大好きな黒の革ジャンだった。高かったブランド品だったのに・・・。
　いったい、どうしちまったんだ？
　ぼんやりしてるから、大切なモノまで無くすんだ。ショック・・・。
　そういえば、昨日の夜もまた、ほとんど眠れずに蒲団の中で悶々とした時間を過ごした。少し眠ったなと思って目を開けたら、窓の外はもう白々と明けていた・・・。

　悪いほう、悪いほうへと物事が動いている。そんな気がして気が滅入る。
　何をやっても裏目に出てしまう。

　でも、グッとお腹に力を込めてみる。馬鹿になろう。くよくよ悩むな。物事が悪いほうへ傾いているのなら、早いうちにそれを修正しなきゃ。もうウジウジ悩むのはやめたんだろ？
　それにしても、仕事も含めてまったく良いことがない。

　11月17日水曜日の夜も、外は激しい雨が降っている。今週はずっと雨マーク。
　激しくワイパーを揺らしながら、家路を急ぐ車の波に乗り、スピードを上げた。
　もうすぐ家に着くという、その瞬間、暗い夜道でよく見えなかった「段差プレート」の横に前輪タイヤをぶつけてしまった。ガタンという鈍い音がした。

　そのまま少し車を走らせてみた。
　真っ暗な外はまだ冷たい雨が降り続いている。

　車のタイヤがガタガタ鳴り出した。パンクだ。
　今度はパンクかよ・・・。
　車を停めて外に出る。夜気で吐く息が白い。氷雨が頬を衝く。
　寒い。本当に寒い。

　これ以上走らせたら、ホイールが駄目になる。
　こんな寒い雨降る夜に、今度はびしょ濡れになりながらタイヤ交換？

　っていうか、替えのタイヤなんて積んでないんですけど・・・。
　しっかし。
　なんなんだ？

　こう、次から次へと・・・。