男女2人組によるデュオ「ICE」は、お気に入りの音楽アーティストたちの中の一組である。
これまでに発売されたアルバムはすべて持っている。
都会的でソフィスティケートされていて、しかも黒人音楽の匂いが漂う。でもそれは、濃厚でこってりとしたテイストというより、ポップでメロディアス、どこか歌謡曲っぽい流れさえ見受けられる。
つまり端的に言えば、とても聴きやすく、素直に耳に入って来るということだ。売れない理由がない。
ところが「ICE」は、アルバムを頻繁に出す割にはセールスが伸びない。勿論、音楽評論家の受けはよく、コアな熱狂的ファンもいるようだ(雑誌の音楽評論やネットでの書き込みを読めば一目瞭然である)。
その「ICE」についてのニュースは、最近余り耳にしなくなった。僕は、もう事実上の活動停止をしてしまったか、あるいは人知れず解散でもしたのかとさえ思っていた。
絶えずアンテナを張りながら、「ICE」に関するニュースに聞き耳をたてていたのだけれど、それほどメジャーな音楽ユニットとでもないからなのか、音楽雑誌を賑わすこともないようだった。
先般、「ICE」によるベスト版「MUSIC FOR THE BEAUTIFUL DAYS」(1993/2007)と、オリジナル・ニューアルバム「SPEAK LOW」が発売されたというニュースを聞きつけ、早速アマゾンで購入した。
やっと「ICE」が再始動したのかと思った矢先、突然の訃報が飛び込んできたのである。
「ICE」の曲のほぼすべてを生み出し、アレンジまで手掛けた、ギタリストの宮内和之氏が亡くなったというニュースである。
びっくりした。
耳下腺がんで死去、まだ43歳だという。
「ICE」は、ヴォーカルの国岡真由美とギターの宮内和之との2人だけのユニットだけれど、実質的には宮内和之の音楽世界をハスキーなヴォーカリスト国岡真由美が表現するという形態を取っていて、彼個人のワンマ・ユニットだと言っていい。
以前もここで書いたことがあるけれど、僕が初めて「ICE」の音楽に触れたのは、ケーブルテレビの「スペース・シャワー・TV」におけるビデオ・クリップだった。
「HEART BEAT VOICE」である。
久しぶりの衝撃波だった。
都会の夜の、少しエロティックなイメージ。宮内和之のギターのカッティングがシャープで、しかも研ぎ澄まされたナイフの如き尖がり具合。
国岡真由美のハスキーでセクシーな声が、妙に気だるい雰囲気を醸し出している。大人の色っぽい女性という感じだ。
その後、「ICE」は続け様に素晴らしい楽曲を送り出すことになる。
「SLOW LOVE」も、またいい曲だ。
アップテンポなのにメロディ自体が聴きやすいから、すんなり溶け込める。それでいて、都会的で洗練している。
僕は、狂ったように「ICE」を追いかけた。
矢継ぎ早に、彼らもアルバムを次々と世に出していった。それでも大ブレイクするまでには中々いかない。これはしかし、今でも不可解だと思う。理解できない。
まあ確かに、いいアルバム、傑作アルバムを発表して評論家の受けも頗(すこぶ)るいいからといって、それがそのままアーティストの人気に繋がるとは限らない。意外と不運に終わった人たちだってたくさんいる。
でも、こうしてまた、一人の才能豊かな人間がこの世界から旅立ってしまった。
やがて「ICE」の素晴らしい楽曲も、世間からは忘れ去られてゆくのだろうか。まことに残念なことだ。
それにしても、残った国岡真由美はどうするのだろう。
独り、歌手としてライブハウスなんかで歌ってゆくのだろうか。才能溢れるコンポーザーを亡くし、今は茫然自失しているんだろうなあ。何ともやるせない。
人はいつか死ぬ。必ず死ぬ。誰が何と言っても死ぬ。死なない人など一人もいない。
それでも人は、その「死」という部分を忘れ、頭から振り払おうと日々を生きている・・・。
宮内和之さん。今はただ安らかに眠ってください。
もうあなたの新しい楽曲は、耳にすることは不可能だけど・・・。
合掌。
これまでに発売されたアルバムはすべて持っている。
都会的でソフィスティケートされていて、しかも黒人音楽の匂いが漂う。でもそれは、濃厚でこってりとしたテイストというより、ポップでメロディアス、どこか歌謡曲っぽい流れさえ見受けられる。
つまり端的に言えば、とても聴きやすく、素直に耳に入って来るということだ。売れない理由がない。
ところが「ICE」は、アルバムを頻繁に出す割にはセールスが伸びない。勿論、音楽評論家の受けはよく、コアな熱狂的ファンもいるようだ(雑誌の音楽評論やネットでの書き込みを読めば一目瞭然である)。
その「ICE」についてのニュースは、最近余り耳にしなくなった。僕は、もう事実上の活動停止をしてしまったか、あるいは人知れず解散でもしたのかとさえ思っていた。
絶えずアンテナを張りながら、「ICE」に関するニュースに聞き耳をたてていたのだけれど、それほどメジャーな音楽ユニットとでもないからなのか、音楽雑誌を賑わすこともないようだった。
先般、「ICE」によるベスト版「MUSIC FOR THE BEAUTIFUL DAYS」(1993/2007)と、オリジナル・ニューアルバム「SPEAK LOW」が発売されたというニュースを聞きつけ、早速アマゾンで購入した。
やっと「ICE」が再始動したのかと思った矢先、突然の訃報が飛び込んできたのである。
「ICE」の曲のほぼすべてを生み出し、アレンジまで手掛けた、ギタリストの宮内和之氏が亡くなったというニュースである。
びっくりした。
耳下腺がんで死去、まだ43歳だという。
「ICE」は、ヴォーカルの国岡真由美とギターの宮内和之との2人だけのユニットだけれど、実質的には宮内和之の音楽世界をハスキーなヴォーカリスト国岡真由美が表現するという形態を取っていて、彼個人のワンマ・ユニットだと言っていい。
以前もここで書いたことがあるけれど、僕が初めて「ICE」の音楽に触れたのは、ケーブルテレビの「スペース・シャワー・TV」におけるビデオ・クリップだった。
「HEART BEAT VOICE」である。
久しぶりの衝撃波だった。
都会の夜の、少しエロティックなイメージ。宮内和之のギターのカッティングがシャープで、しかも研ぎ澄まされたナイフの如き尖がり具合。
国岡真由美のハスキーでセクシーな声が、妙に気だるい雰囲気を醸し出している。大人の色っぽい女性という感じだ。
その後、「ICE」は続け様に素晴らしい楽曲を送り出すことになる。
「SLOW LOVE」も、またいい曲だ。
アップテンポなのにメロディ自体が聴きやすいから、すんなり溶け込める。それでいて、都会的で洗練している。
僕は、狂ったように「ICE」を追いかけた。
矢継ぎ早に、彼らもアルバムを次々と世に出していった。それでも大ブレイクするまでには中々いかない。これはしかし、今でも不可解だと思う。理解できない。
まあ確かに、いいアルバム、傑作アルバムを発表して評論家の受けも頗(すこぶ)るいいからといって、それがそのままアーティストの人気に繋がるとは限らない。意外と不運に終わった人たちだってたくさんいる。
でも、こうしてまた、一人の才能豊かな人間がこの世界から旅立ってしまった。
やがて「ICE」の素晴らしい楽曲も、世間からは忘れ去られてゆくのだろうか。まことに残念なことだ。
それにしても、残った国岡真由美はどうするのだろう。
独り、歌手としてライブハウスなんかで歌ってゆくのだろうか。才能溢れるコンポーザーを亡くし、今は茫然自失しているんだろうなあ。何ともやるせない。
人はいつか死ぬ。必ず死ぬ。誰が何と言っても死ぬ。死なない人など一人もいない。
それでも人は、その「死」という部分を忘れ、頭から振り払おうと日々を生きている・・・。
宮内和之さん。今はただ安らかに眠ってください。
もうあなたの新しい楽曲は、耳にすることは不可能だけど・・・。
合掌。