淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「こころの冬」④

2020年12月28日 | Weblog
 スポーツジムのスタジオに入って、午後2時から始まる「ターゲット・アブス」のエクササイズを座って待っている間、スタジオの窓から見える久しぶりの青い空をちらちらと眺めていた。日曜日の午後だった。

 ジムで汗を掻き、身体を鍛え、熱い湯船に浸かり、それなりの充実感を得る。数十年間勤めた組織を辞め、そこから新しい職を見つけ、学生たちに教えるという喜びを覚え、それなりの達成感を得る。特に重い病気に苦しめられることもなく、亡くなった友人も何人かいる中で、フルマラソンを走ったりジムに通って、それなりの健康体を得る。飢えることもなく、寒さを防ぐ家もあり、友人や同僚にも恵まれ、音楽を聴き、本を読み、映画を観て、本も2冊出版し、書いた小説は何篇か書籍化され、それなりの満足感を得る・・・。
 それでもまだ、何処かに辿り着いたというような、何かを掴み取ったというような、そんな清々しい気分になれない。

 六本木のヒルズに住んだら、ニューヨークのマンハッタンに住んだら、それで一切治まるのか。小説が権威ある賞を獲ったら、ベストセラー作家になったら、それで一切治まるのか。絶世の美女に囲まれ、彼女たちと世界中を豪遊し、億単位の金が毎年入ってきたら、それで一切治まるのか。いつまでも歳を取らず、腹筋が割れて絞った躯体を維持することが出来たなら、それで一切治まるのか。

 そういう生活を送ることが出来たのなら、夜になったらすとんと眠りに落ち、真夜中目覚めることもなく、一切の不満や不平が無くなり、雨の日も豪雪の日も心は常に穏やかで、悩み事など綺麗さっぱり消え去ってくれるのだろうか・・・。

 45分間の「ターゲット・アブス」が終わり、ジムのお風呂に入る。
 風呂場の時計は午後の3時ちょうどを示している。久しぶりに、淡い太陽の光が湯船に優しく差し込んでいた。

 気持ちはいい。確かにちょっとした充実感もある。熱いお湯に浸かっていると確かに気分は落ち着く。
 でも、その隙間を縫うようにして、小さな何かがこころの中で蠢いている。まだ俺は完全に復活してない気がする。

 着替えてジムの外に出た。
 寒空に雲が流れている。夕暮れ前の弱い冬の日差しが、広い駐車場に降り注ぎ、積もった雪を溶かしている。

 丸坊主にしようか、また。
 それとも完全断食してみようか。
 凍てつく夜の街を年末年始毎晩10キロ走ることにしようか。
 しっかし。そんなことしたって、単なる付け焼刃に過ぎない。自分自身を根本から変えなきゃ、何の意味もない。また、いつか必ずあの、焦燥感と寂寥感と空虚感が混ざった圧倒的な闇が襲って来るに違いない。

 じゃあ、どうやって、ここから脱出する? じゃあ、どうやって、前向きでポジティブな自分自身を掴み取る?

 やっぱ、敵は強いわ。
 ・・・って、オレ自身か。







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