淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「こころの冬」③

2020年12月27日 | Weblog
 クリスマス・イヴの夜は心が揺れなかった。乱れなかった。
 スポーツジムに行って汗を流そうかとも考えたけれど、思い直し、部屋で竹内まりやのブルーレイ「souvenir the movie ~MARIYA TAKEUCHI Theater Live~ (Special Edition)」を聴いて(観て)過ごした。
 年末年始、数年に一度だという大寒波が日本列島を襲うとTVのニュースが流れている。やれやれ。次から次へと・・・。

 25日も、それなりに心は穏やかだった。
 夕方、青森商工会議所の相談役会に出席して、17時前には終わったので、凍えるような夜道を、肩をすぼめて歩いて家までの道を歩いた。
 途中、「ボクシング・ジム」の前を通って硝子越しに中を覗く。リングで馴染みの二人が激しいスパーリングをしていた。サンドバッグに何発も重いパンチを打ち込んでいる男性もいた。
 そういえば、ボクシング・ジムからハガキが来ていたな。「早くボクシングやりに来てください」って書いてあった。

 街はクリスマス。
 みんな楽しそうだ。
 でも、クリスマス・ケーキを買えない家庭だってあるんだ。年越し出来るか出来ないか、そんな瀬戸際に追い込まれている家族だっているはずだ。コロナで離職を余儀なくされた人間もたくさんいる。今この時間、空腹にのた打ち回り、寒さに震えながら寝床を確保しようと必死のホームレスだっているだろう。

 ちくしょう。
 なんでこうも世界は理不尽で不寛容で残酷なんだ。
 そしてこの俺もまた、傍から見たらどうでもいいような寂しさに塗れて、12月の師走のなかで右往左往している情けない男に成り下がっている。
 ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。

 家に帰って夜をやり過ごす。
 12時過ぎにはなんとか眠れたものの、明け方、目が覚める。それでも、あの圧倒的な喪失感のような感情は湧き上がってこなかった。
 そこからまた眠気が訪れ、知らず知らずのうち眠ってしまった。

 26日土曜日。
 朝起きて、下の階に降りると、床が水浸しになっているではないか。
 なんなんだ?
 天井からまるでシャワーみたいに水が漏れている。慌ててバケツを持ってきて、雑巾で床を拭くも、漏れてくる水が半端な量じゃない。すぐに業者に電話した。
 なんで、年末になってこういうことが起こるんだ?
 やれやれ。次から次へと・・・。

 結局、来てもらった業者いわく、「年末年始は材料屋が休みに入るので今日は応急処置しかできない。来年の5日以降の工事になるので、それまでお湯は一切出ないのでなんとか耐えてください」。
 そうかあ。ということは、風呂にも入れないし、食器も洗えないということね。それも今日から10日間以上も!
 でも、家を無くして途方に暮れている人間だって世の中にはいる。それに比べたらどうってことはない。
 それにしても。
 やれやれ。次から次へと・・・。

 仕方がないので、スポーツジムへ行く。
 外はいつもの暗雲が覆っていて、時々吹雪いている。今日もまた憂鬱な冬の空だ。
 この街に青空なんてないのかよ!

 午後2時15分からの「ボクシング」のエクササイズをやった。
 きつかった。汗が滴り落ちて止まらない。
 家では風呂に入れないので、ジムのお風呂にゆっくり浸かった。でも、ジム自体、年末年始は休みときてる。こんな時に限って・・・。

 髪を洗おうとシャワー室に入ろうとした瞬間、あの数日前の悪夢が蘇って一瞬入るのを躊躇った。どうしよう、シャワーを浴びた瞬間、またあの圧倒的な「真っ黒な塊」が沸き上がってきたら・・・。
 恐る恐る、シャワーのノズルを捻って熱いお湯を浴びてみた。ああ、何もなかった。よかったー。

 しっかし。
 だんだんと腹が立ってきた。もちろん自分自身に対してだ。
 自分自身の不甲斐無さに。このどうしようもない心の弱さに。心底楽しめない悲観主義者の権化に。
 自分自身の最大最強の敵、それはまさに自分自身だ。その言葉を何度も心の中で繰り返して自分を鼓舞した。

 ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。
 俺はアンダードッグなんかじゃねえぞ。このままじゃ終わんねえぞ。
 俺が幸せになれずに、他人を幸せになんかできるわけ、ねえだろ絶対。








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