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ミュラー.リヤー錯視と遠近説

2008-03-23 23:04:20 | 視角と判断

 A図は有名なミュラー.リヤー錯視図で横線の両端に矢印がついていますが、矢印が外を向いている上の図のほうが、横線が短く見えます。
 うえの横線のほうが短く見える理由を、グレゴリーという学者は、人間の視覚が奥行きを感じるためだとしています。
 たとえばBの左図のような建物の角の線はAの上の図の形で、右図のような部屋の隅の線はAの下の図の形です。
 上の図の場合はBの左図のように出っ張って見えるので近くに感じ、下の図の場合はBの右図のように引っ込んで遠くにあるように感じるというのです。
 出っ張って見えている線は近くに感じるので、目がそのように見ようとするのですが、実際の線は近くにはないので短く見えてしまうことになります。
 同じように引っ込んで見える線は遠くにあるように感じてみようとするのに、実際の線は遠くにないので長く見えてしまうことになります。

 実際にA図を見たとき、上の図が出っ張って見え、下の図は引っ込んで見えるのかというと、そういわれればそうかなと思う反面、素直に見た場合はそうは感じないようでもあります。
 Bの左図はたしかに出っ張って見え、右図は引っ込んで見えますが、これは窓のような図が加わって四角い建物の外側と内側のように絵画的に表現されているためです。
 これから逆にA図が奥行き感を感じさせるというのは、論理的ではなく少し強引です。
 
 C図はA図と同じなのですが、横線の真ん中部分を白い棒の形にしてあります。
 もし矢印の形によって遠近感ができて、水平線が長く見えたり短く見えたりするというならば、C図の白い棒も上は短く、下は長く見えるはずです。
 ところが実際に比べてみると、白い棒は同じ長さにしか見えません。
 上の白い棒が近くに感じ、下の棒が遠くに感じるのなら、同じ長さには見えないはずなのですから、やはり上の図が近くに感じるわけではなく、下の図が遠くに感じるわけでもないのです。
 白い棒の部分が同じ長さに見えるとすれば、横線の長さ全体は上のほうが短く見えるのですから、横線のうち白い棒の先の部分が上の図と下の図では長さが違って見えるということになります。

 そう考えて白い棒の先の部分を上の図と下の図で比べてみると、やはり長さがかなり違うように見えます。
 この白い棒の部分を長くしていけばどうなるかというと、白い棒の部分は長くなっても、上下同じ長さに見えます。
 そうすると残った水平線と矢印の部分がくっついているところが残ります。
 この部分が長さの印象を決めるというのは、横線と矢印の境目がよくわからないからだということに思い至ります。
 このことはD図のように横線と矢印の接点をハッキリさせた図を作るとたやすく見て取れます。
 横線部分を矢印部分から切り離してみる能力がない幼児や視力が衰えてきている老人のほうが、青壮年層に比べ錯視量が多いということからもこのことは予想されます。