60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

音声と時間的順序

2008-03-17 23:42:58 | 言葉とイメージ

 聴覚障害者は数の把握能力が劣るとか、論理力が劣るというふうにいわれることがあります。
 数とか論理とかは言葉に関係するもので、言葉は音声を基礎にしていて、音声は時間的な順序で捉えられるものなので、聴覚障害者はどうしても不利だと推測するのでしょう。
 視覚の場合は同時に目に入るので、順序を意識することがなく、そのため論理能力を発達させることはないようにみえます。

 たとえば487-6592というような番号を記憶する場合、これを言語化して「よんはちなな、ろくごきゅうに」というふうに音声に変換して覚えるのが普通です。
 そこでこの数字列を逆ならびに言うように要求すると、たいていの人はすぐには答えられません。
 上から順にたどっていって最後が「に」だということを確認して、また上から順位たどり、「に」の前が「きゅう」だと確認し、先頭から二つまでは「にきゅう」だとして覚えておいて、さらにその後を確定しようとします。
 「よんはちなな、ろくごきゅうに」と音声で覚えても逆順に数字を答えることは難しいのです。

 ところがもしこれを視覚で「487-6592」と記憶した場合は、視覚記憶を思い浮かべ右から順に読んで行けばよいということになり、そう難しいことはないと思われそうです。
 視覚の場合はアタマの中で「2956-784」というイメージを思い浮かべる必要はなく、「487-6592」というイメージのままで逆から読めばよいと考えられるからです。
 聴覚の場合は「よんはちなな、ろくごきゅうに」という音声は記憶されていても「にきゅうごろく、ななはちよん」並び替えなくてはならないのでとても難しいのです。

 しかしよく考えてみると、音声記憶のとき数字を逆称するというのは、音声を逆称している事ではなくなっています。
 音声の逆称なら「にうゅきごくろ、ななちはんよ」であるはずでこれはさらにむずかしくなります。
 もし「487-6592」を音声化するとき「よはな、むごくに」と音声化すれば音声記憶を利用して「にくごむ、なはよ」と逆称することも可能です。
 「よはな、むごくに」は7文字で何とかそのまま記憶できるのに、「よんはちなな、ろくごきゅうに」となると13文字になる上に、音声を多く並び替えをしながら答えなければならないので、はるかに難しい課題になってしまいます。
 視覚記憶の場合でも記憶したイメージを逆転するような課題になれば難しくなるので、条件を同じにしないで音声記憶とイメージ記憶を比べても意味がないのです。