上の図で枠に囲まれた太字のカタカナ語は、いずれもよく知られた単語なのですが、意味が分かるでしょうか。
これは、池谷祐二「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」に載っている例で、英語をアメリカ人に理解できるように発音した場合、発音をカタカナにするとこのような具合になると言うものです。
下にあるのは同じ単語を現在普通に使われている、日本式のカタカナ語表記です。
普通の日本人が「アビリティー」というふうに発音している言葉は、アメリカ人には意味が分からず、「アベレレ」と発音すれば理解されるというのです。
上のアメリカ人に通用するという発音のカタカナ表記と、下の日本人が使っているカタカナ表記とではかなりの差があり、一見したところではとても同じ単語を表現したものとは思えないでしょう。
たいていの日本人は、上のカタカナ表記だけを見たのでは意味が分からず、対応する単語の綴りを思い浮かべることもできないと思います。
原語のabilityの綴りを見れば、「アビリティー」のことだとは思えても「アベレレ」のことだとは思えないでしょう。
battle,better,cigaretteが「ベアロウ」、「ベロ」、「セゲレッ」なのだといわれてもピンとはこないでしょう。
しかし原語の綴りを見ないで、アメリカ人の発音を聞けば、「バトル」、「ベター」、「シガレット」よりも「ベアロウ」などのほうが近い発音であると感じるはずです。
それでは「ベアロウ」とか「ベロ」といったカタカナ表記にすればよいかというと、そうとばかりはいえません。
カナだけを見て日本人がこれを読むと、「ベ、ア、ロ、ウ」と一つづつ文字を読んでからつなげて「ベアロウ」と平たく読んでしまいがちです。
英語のbattleは母音がひとつですから、「ベアロウ」と聞こえても「ア」の部分が強く聞こえ他の「え」とか「オ」、「ウ」はそのような感じがするという程度です。
「ベ、ア、ロ、ウ」と母音を平等に発音したのではアメリカ人の発音に近い「ベアロウ」とは全く違った発音となります。
「ベアロウ」というカタカナ表記を日本式に読んだのでは、アメリカ人にも日本人にも理解できないということになりかねないのです。
これまで日本人が英語を学習するときは、文字を見ながら発音を聞いていたので、耳だけで聞けばoriginalは「アレジェノウ」というふうに聞こえたのに、「オリジナル」と聞こえていたのです。
したがって「オリジナル」という表記を見ればoriginalという綴りに結び付けることができ、またアメリカ人の「アレジェノウ」という発音に対してもorijinalと結びつけることができたのです。
ただし「アレジェノウ」というカタカナ表記とoriginalという原語表記とは結びつけるのが難しいのです。
もし今後発音に近い表記ということで、上のようなカタカナ表記が広く使われだすと、どうなるでしょうか。
カタカナ表記を読むときに多くの人が英語発音的に読めばよいのですが、日本語式の読み方をすれば日本人にも英米人にも、その他の外国人にもわからないような言葉が広がるということになりかねません。
上のようなカタカナ発音は、英語の発音を日本人が真似ようとするときの便法としてコッソリ使うべきものだろうと思います。