七つの文字を一度に瞬間的に表示して消した場合に、どれだけ記憶できるかテストしてみたとします。
ローマ字(大文字)、ひらがな、漢字、算用数字でやってみると、最も覚えやすいのが数字で、漢字が一番覚えにくでしょう。
では、なぜ漢字の方が記憶しにくいのでしょうか。
視覚情報処理は右脳が担当し、右脳の情報処理量は言語情報を処理する左脳の情報処理量を担当する左脳の数十万倍もあるというような説がありますが、それならたった7文字程度の漢字を記憶するのはたやすいはずです。
7つの漢字を記憶できないということから、視覚情報の処理といっても、見たものをそのまま見たとおりに記憶できるというわけではないということがわかります。
漢字は複雑な形をしているので、記憶しにくいのだというふうにも考えられますが、ローマ字の場合とひらがなの場合を比べると、ひらがなの方が複雑な形をしているのに覚えやすいので、形の複雑さだけが原因であるとはいえません。
一番考えられるのは、ここで示されている漢字はたくさんある漢字の中でも比較的になじみの少ない漢字で、記憶から引き出しにくいものであるということです。
算用数字は0カから9までの10種類しかないのに漢字は数千種類あり、見る時間は同じでも脳内の記憶とすぐに結びつきません。
想起に手間取っているうちに文字が消えてしまうので、記憶できないものが多くなってしまうと考えられます。
文字を記憶しようとするとき、純粋に視覚情報として記憶するのであれば、ひらがなよりローマ字のほうが記憶しやすいはずです。
ローマ字はひらがなより単純で、数も26と少ないのですが、ひらがなよりも馴染みが薄いから記憶しにくいともいえます。
しかし、数字は10種類で形も簡単で、馴染みもあるのでひらがなよりはるかに記憶しやすいかというとほとんど差はありません。
それではなぜひらがなが記憶しやすいかというと、イメージを記憶しようとしているだけでなく、言語情報化して記憶しようとしてしまうためです。
ひらがなの読みはローマ字の読みや数字の読みに比べ短いので、音声言語に変換すれば短くなるので記憶負担が少なく処理しやすいのです。
実際に音声化できないほどの短い時間の表示でも、記憶負担が少ないため自動処理しやすいので処理成績がよくなるのです。
ただし、ひらがなは漢字と比べ、はるかに処理時間がすくなくてすむので、カナばかりの文章にすれば効率がよいかというと、カナだけでは表現力がないので読みやすい文章となるとは限りません。