1943年の徴兵検査のときに行われた「壮丁教育調査」の問題例で、「ウタヲウタイナガラ ススミマシタ」の「イ」の部分を指定して間違っている仮名遣いを正せとしたところ、正答率は22%に過ぎなかったそうです。
戦前派旧仮名遣いで教育されていましたから、「ウタイ」は「ウタヒ」が正解ですが、徴兵検査を受ける年齢で正解者が22%というのは低すぎます。
旧仮名遣いというのが教育によっても、定着しにくかったということが分ります。
もし現代で「ウタヲウタヒナガラ ススミマシタ」の「ヒ」の部分を指定して、仮名遣いの間違いを正せとすれば、ほとんどの若者が「ウタイ」と正解するでしょう。
現代仮名遣いは発音に近いので自然に正解できるという点で、身につけやすいからです。
仮名の「お」と「を」は発音で「オ]と「ウォ」に対応しているように見えますが、現在では両方とも「オ」と発音されると見なされています。
現代仮名遣いでは助詞の「を」を除いては「オ」も「ウォ」もすべて、「お」で表示しています。
旧仮名遣いで「お」と「を」で使い分けていた表示を、助詞の「を」を除いて「お」にしてしまっています。
旧仮名遣いでは「お」と「を」を書き分けていたのですが、これは結構難しいものです。
上の図にあげている例は、いわゆる和語なのですが、普通は漢字で書かれているため「お」を使うのか「を」を使うのか表面化していません。
漢字で書かれていると「お」であっても「を」であっても発音は「お」で同じなので「お」か「を」か意識しないで読めます。
しかし、いざ旧仮名遣いでは「お」か「を」かと問われると、結構旧仮名遣いに慣れている人でも迷うのではないでしょうか。
読みではいずれも現代では「オ」ですから、発音を頼りに書き分けることはできません。
それぞれについて「お」か「を」かを習い覚えるしかないのですが、漢字で「小」は「を」と書くというふうに、漢字を手がかりに覚えるという方法もあります。
漢字の訓読みで「お」に対応するものと「を」に対応するものと分けられるとして、覚えるのが便法なのですが、中には例外があります。
たとえば「大」は「おほ」と訓読みするので「大」を使った言葉は「お」となると考え、「大神」は「おほかみ」として正解ですが、「大蛇」は「おろち」でなく「をろち」が正解というのですから厄介です。
「乙女」は「をとめ」ですが、同じように「乙」を使っているからといって「乙姫」は「をとひめ」かというと「おとひめ」です。
こういうのは例外で大体は漢字に対応するので、漢字との対応で覚えればよいのですが、覚えて間違えないようにするのは大変です。
しかも苦労して覚えてもメリットがあるかというと、現在では疑問です。
ほとんどの人は旧仮名遣いで「を」であったものが「お」に変えられた状態になれてしまっていて、「を」でかかれると戸惑うというのが現状です。
「小川」は旧仮名遣いでは「をがは」ですが、全国の小川さんのほとんどは、「おがわ」と書かれてあれば自分のことと思っても「をがは」と書かれていれば、すぐに自分のこととは思わないのではないでしょうか。