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冠詞と日本語の助詞

2006-06-20 23:25:47 | 言葉とイメージ
 英語の冠詞 a と the は日本語の助詞「が」と「は」に対応しているという説があって、納得している人が結構いるらしいです。
 たとえば図の上のような例では一行目の a に対応して日本語訳は「男が」と「が」をつけ、二行目の場合は the に対応して「男は」と「は」をつけるので、「が」と「は」が英語の冠詞と同じ役割を果たしているといいます。
 この説明はもっともらしいのですが、不審な点があります。
 一行目では英語では man は主語ではないのに、日本語では「男」が主語になっています。
 また一行目の is は存在を表していますが、二行目の is は関係を表していますから、同じ言葉が使われていても機能は違います。
 また、一行目の a は「一人の」という数を表していますが、二行目の a は「~というもの」と概念をあらわしています。
 本来なら日本語訳のほうは(一人の)男がいる。(その)男は学生である。として、 a
は(ひとりの)、 the は(その)に対応していると見るべきです。
 助詞の「が」と「は」は冠詞とは何の関係もないのです。
 
 二行目の例は鈴木寛次「英文法の仕組みを解く」にある例ですが、この場合の a は(ひとりの)という意味ではなく、(~というもの)と概念を表しています。
 こうした場合 a という冠詞をつけるのは英語だけで、フランス語やドイツ語ではつけ内装で、英語だけが異常なのだそうです。
 中国語でも独仏と同じなので、やはり英語が特殊ということになれば、日本語と英語とを無理やり関連付けることはないのですが、どうしても英語が普遍的な言語だという先入観みたいなものが学者の中にはあるのかもしれません。
 この本では英語の場合も She is student. という例が新聞英語の中にもあり、いずれこのような場合の a は使われなくなると予測しています。
 そうであれば、日本語の「が」を英吾の a に結び付けようとしても、相手が消えてしまっているという滑稽な事態にもなりかねません。