60歳からの視覚能力

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原因がひとつとは限らない

2006-06-02 22:55:29 | 眼と脳の働き

 図Aはポンゾの錯視というもので、斜めの線が遠近感を感じさせるので、上の横線のほうが長く見えるというものです。 遠近感ということであれば、斜めの線の開き方が大きいほうが距離を感じさせるはずです。 

Bのように斜めの線の開き方が少なければ、上下の横線の距離は少なく感じられるはずで、上の線は下の線よりあまり長く見えないはずです。 ところが予想に反して、B図のほうが上の線と下の線の差が大きく感じられらます。 いったいどうしてこんなことになるのでしょうか。  

A図とB図の違いはどこにあるかというと、斜めの線の開き方のほかに、横の線と両サイドの斜めの線との距離の違いがあります。 B図では上の線は斜めの線に接近していますが、A図では離れています。 B図では上の線の線端が外側の斜めの線のほうに伸びて見えるのです。 つまり上の線の場合は、両サイドの斜めの線が接近しているために線の輪郭が外側に意識されるために長く見えるのです。  ためしに下の線に線端の外側に小さな線を描いてみます。 C図はA図について線を加えてみたものですが、こうすると下の線はうえの線と同じか、むしろより長く見えるようになっています。 遠近法の観点からは、考えられないことなのですが、線の外側に刺激が加わることで下側の線が長く見えるためです。 

同じようにC図にも線を加えてみると、下の線はB図の場合ほど短くは見えません。 下のほうがやや短いかなという感じですが、B図の場合に比べると差は少なく見えるのです。 こうしてみると、斜めの線で遠近感を感じるので、上の線のほうが長く感じるのではありますが、上の線が方がはっきり長く感じられるのは、両サイドの線に外側に接近している場合だということが分かります。 遠近法だけによって起きている錯視はあまり強烈なものではなく、両サイドの線が接近している度合いによって強烈になるということがわかります。  

ポンゾの錯視については、遠近法で説明している場合が多いのですが、図を90度回転させても狭いほうに位置する線が長く見えるので、遠近法が原因とは限らないとする意見もあります。

遠近法以外の要素もあると分かれば、やはりそうかということになるでしょう。 原因がいつもひとつだけとは限らないのですから、ほかの要因もあるのではないかと考えてみるべきだったのです。