左上の図形はカニッツァの三角形といういわゆる主観的な輪郭の代表例です。
三つのパックマンに囲まれた部分は、正三角形に見えます。
この白い三角形は描かれたものではなく、パックマンの配置によって見えてきたいわば仮想の図形です。
実際には存在しない三角形なのですが、周りよりも白く光って見え、浮き出て見えます。
心理学ではこの輪郭を主観的輪郭と呼び、主観的輪郭によって囲まれた部分は面のように感じられ、白く浮き上がって見えると説明します。
主観的輪郭というのは奇妙な表現で、この三角形は誰にでも三角形に見えるので、その意味では客観的です。
ひとによって見え方が違うのなら主観的ということになりますが、誰にでも同じように見えるのですから、実際になくてもあるように見える機構が眼かあるいは脳にあるはずです。
右の図形は左の図形の背景を青に、パックマンを赤にかえていますが、この場合は余程注意を集中しないと三角形は見えてきません。
三角形をみえるように注意を向けて、三角形の輪郭をイメージしても、その三角形が浮き上がって見えるとか、光って見えるということはありません。
なぜ左の場合は輪郭が見え、輪郭で囲まれた部分が浮き上がって白く見えて、右の図形ではそうならないのでしょうか。
左の場合は背景が白で、パックマンが黒なので、明暗の差がはっきりとありますが、右の場合は明暗の差はありません。
見え方の違いは図形の色ではなく、明暗の差の有無だったです。
左の場合はパックマンに挟まれた三つの白い部分はより白く見えるので浮き出て見えます。
そのため三つの白い部分をあわせた三角形がひとつのものと感じられ、その結果輪郭が見えるようになるのです。
輪郭が見えるので三角形が意識され、白く浮き出て見えるのではないのです。
右の図のように明暗差がないと三角形がひとまとまりのものとして見えないので、浮き出て見えることはなく、輪郭も見えてきません、
パックマンの形から輪郭が見え、その結果三角形が浮き出て見えるという説明は違っていたのです。
下の図のように形があいまいな場合でも、パックマンによって、囲まれた部分は白く浮き上がって見えます。
右の図は囲まれた部分が浮き上がって見えることはなく、パックマンに囲まれた部分絵はなく赤いパックマン自体が目立ってしまっています。
輪郭を見るうえで色の情報より、明暗差の方法のほうが優先しているのです。
色を見るのは網膜の中心部分で大部分は明暗しか分からないのですから、形や運動を検知するのは明暗差によるのが自然なのです。