60歳からの視覚能力

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眉毛の役割

2006-06-09 23:03:02 | 眼と脳の働き
 A.D.ブレストの実験で、ガラススクリーンの上に鳥の餌になる虫をおき、シジュウカラなどが近づいて餌をついばもうとしたとき、下からライトをつけ、右のような図形を映します。
 a,b,cのような図形の場合は鳥は逃げ出さないのに、dやeのように眼の形の場合は逃避しようとしたといいます。
 とくにgの場合はにらまれたように強く反応するといいます。
 gのような目玉模様を見ると鳥だけでなくサルや人間もギョッとして引く感じになりますからたいていの動物共通の反応です。
 多くの動物はぎょろりとした眼で見られると、攻撃や敵意を感じて警戒したり、逃げようとします。
 ジッと見つめる眼には圧迫感を感じたりするので回避しようとするのです。
 ジッと見る場合でもサルや人間の母子のようにお互いに見つめあうのは親密感をあらわすものですから、そこに眼の表情の違いがあります。

 とくに人間の場合は表情の種類が多く、複雑なのですが、眼それ自体も表現力を多く持てる構造になっています。
 たとえば人間の眼は またサルやチンパンジーなどとちがって、横長でまた白目が多く、目玉の動きが目立つようにできています。
 さらに顔面に毛がなくなっているのに眉毛が残っていて、眼が目立つようにできています。
 眉毛は何のためにあるかといわれれば、「さて、なんの役に立つのかな」と思いますが眼を目立たせて表情を読みやすくすることで、人間同士の意思の伝達に役立っています。
 眼の表情を読みやすくすることで複雑な社会関係を調整することに寄与しているのです。
  
 ところが、社会関係のありようでは表情の見せ合うことが回避されるときもあります。
 日本の公家が眉を剃って額に丸眉を書いたり、後に武士の既婚女性が眉を落としたのは、表情を読み取られまいとしたのでしょう。
 日本では、昔は権力者の前では下位のものは頭を上げることできないようになっていましたが、上位のものは表情を読まれるのを嫌っていたのでしょう。
 いまでも目上の人間に対して眼を見るのは非礼とされていますが、日本の権力者は目の力で下位のものを圧倒する習慣や自信がないのかもしれません。