ぼんくら放浪記

Blogを綴ることによって、自分のぼんくらさを自己点検しています。

ハッピーリタイアメント

2011-12-05 05:00:00 | 読書

12月に入るともう都会の繁華街はクリスマス気分一色、仏教立国したはずのこの国が、お釈迦様の誕生日は忘れても、他国の神の誕生日を何故こうまでして祝うのか、不思議がるのは何も浅田次郎氏だけではありますまい。そう、この本にはそういう件もあったのです。私から言わせれば儲けんがため、資本主義の悪弊でしょう。キリスト教徒ならクリスマスぐらいは敬虔にミサでも執り行い、讃美歌でも歌うものでしょう。

さて、リタイアメントという語を国語辞書で調べてみても、該当する語句はありませんが、変換すると“りたいあめんと”はリタイアメントに変わります。となると、その語句は認められ、使用されているということ、私もそのリタイアメントを目の当たりにしている一人なのでしょう。

ハッピーリタイアメントとなると幸せな引退後の生活なのでしょうが、果たして私はそんなハッピーなリタイアメントを迎えることが出来るのでしょうか?

浅田氏は私と同い年か、もしくは一つ上の年齢、私がそろそろリタイアすると知ってこの本を書いたのではありますまいが、私が読むには丁度いいタイミングのような内容とも思え、今置かれている境遇とを鑑みつつ読み進んだのでした。

             

財務省を早期退職した樋口慎太郎と自衛隊を早期退職した大友勉は、業務実体のない天下り機関である全国中小企業振興会(JAMS)神田分室に再就職を斡旋されました。

JAMSとは戦後GHQによって財閥解体がなされ、新たな資本主義を目指す日本国において、大蔵省が立案した新規事業者に対する無担保無保証の融資を行う機関です。そんな制度は銀行にとっても新たな資本主義にとっても考えられない制度ですから、債務不履行の場合はこのJAMSが無条件に全額を肩代わりするのです。こんな美味しい話って本当にあったのでしょうか。

着任した二人は元銀行員の立花葵のレクチャーを受け、歓迎会に臨み、この組織の不思議さを体感し、頽廃振りに呆れてしまいます。そして立花葵の指揮のもと、本来業務の債務者に借金の返済を求める仕事を始めます。不可能と思われていたこの仕事が案外にも好調に進み、数件の債務者から約3億円の取り立てに成功するのです。

この神田分室には、創設当時からいてマッカーサーにコーヒーを淹れたことがあるという山村ヒナという嘱託の老婆がいて、立花葵を励まします。この取り戻した3億円は元財務官僚、JAMSの理事であり、神田分室の実質上のボスとなっている矢島純彦には報告していません。でもこの嘱託の老婆はその3億円の存在を知っていたのでした。

借金を取り戻していることを理事の矢島に察知された葵をはじめとする三人は、この3億円を横領することは善行であると決意、山分けしたお金でハッピーリタイアメントに繋げようとするのですが・・・皆まで書けばダメですよね。決して3人がハッピーリタイアメントを迎えなかったとは言えない終末が待っています。

JAMS(All Japan M-S Companies Organization)はネットで調べても当該するような組織はありませんが、全国中小企業振興会という名の組織は東京の日本橋茅場町2丁目、神田美土代町にもあるようですが、確かに実態は明らかではありません。

ところで確かに私はまだ定年には至っていませんが、残した休暇を全て取りきっていると月にして七日の出勤で、決して多いとは言えませんが一月分の賃金、もうすぐすれば人生最後の冬期一時金、所謂ボーナスも手にしている今の生活は、この本のキャッチコピーである『最高の人生とは“たいそうな給料をもらい、テキトーに仕事をすること”である』そうで、今こそが私にとってのハッピーリタイアメントな時間なのであり、定年後はその反動が来るのではないかと、密かに恐れ慄いている次第であるのです。

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