蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話「蜜から灰へ」を構造主義で分析する 10 

2018年07月03日 | 小説
(7月3日)
神話(M241)はHaburiの冒険譚、人の嘆きの物語です。
人の祖先はHaburi、その父はジャガーの領分に踏み込み、殺された。殺した男の姿を乗っ取り妻達(姉妹)のキャンプ地に入り込んだジャガー、夕餉までの一時に、魚を先に食べなさいと誠実な夫、Haburiを抱いてあやす優しい父親を演じた。これが自然側が文化に企む同盟と理解できます。その上、義務(肉の提供、prestation)をかくも、保証するのなら婿として、申し分無いではないか。しかし妻達はこの同盟を拒否した。偽装してもジャガーの地が出てしまっていびきが隣村まで聞こえた。これは許す。しかし、殺した男の本名を呟いてしまった。たとえ寝言の上としても、これだけは聞き捨てならない。(禁忌破り)
これが前回まで。

この神話の語り手はWarrau族です。他の神話とあわせて読めば、嘆きの程度がよく分かる。
人がMaba(蜜の精、Maba神話はWarrauに隣接するArawak族から採取)の子孫だったら夕餉の卓には、蜂蜜酒(hydromel)た呑み尽くせないほどの用意された筈なのに。Simo(蜂の若者)の末裔、Adaba(カエルの若者)の流れだったら、狩に出て戻る婿殿その背には獲物が幾匹、肉と魚で連夜の饗宴が持てる筈だった。しかしSimoは義妹の悪戯により身体が焼け付き、蜂の姿に戻って空に逃げた。腕の穢れを拭い、宙に矢を放つ狩を義兄に教えたAbadaは妻の一言で森に戻った。
今の世、人が生きるに厳しすぎる。一勺の蜜をすくうに野豚の一匹を仕留めるに、婿は山泊まりの幾夜経ても、背の軽さ虚しく坊主で帰る(bredouille)。蜜酒、肉がいつも足りない。なぜって人は人の子人の親、蜂もカエルもジャガーも祖先に持たない。

母はHaburiをジャガーから取りあげ、腕に抱き妹と共に逃避行。気付いたジャガー、許さじと追いかけるその足の速さに女足、4本揃えてもかなわない。咆吼がすぐの後ろに聞こえたとき、巨木の幹に洞を見つけた。カエルWau-utaの住まいと知る、戸をどんと叩く。
Elles frappent enfin a la porte de Wau-uta <<Qui est la? C’est nous deux soeurs>> Mais Wau-uta refusa d’ouvrir. Alors la mere pinca les oreilles de Haburi pour qu’il pleure. Interessee, Wau-uta s’informa : <>
訳;誰なの?と戸の内から、Wau-uta (メスカエル、自然の女王)である。私たちを助けて、二人の姉妹よ。Wau-utaは断る。母がHaburiの耳をつねった、泣かせるためである。子の泣きにWau-utaが反応した。「子は女の子、それとも男」。息せき切った返事は「この子Haburiは男の子」。戸が開き三人は、すんでの所でジャガーの牙を逃れた>>

取り置きの蜜を用いた奸計でWau-utaはジャガーを殺す。
翌朝、Wau-utaは姉妹に森に出てマニオックを採取せよと命じる。いざ出ようとHaburiを抱く母にWau-uta「子の世話は私が受ける」、Haburiを置いて姉妹が出た。
Pendant que les soeurs etaient aux champs, Wau-uta fit grandir l’enfant magiquement jusqu’ a ce qu’il devint un adolescent. Elle lui donna une flute et des fleches. Sur chemin qui les ramenait de la plantation , les femmes entendirent la musique et s’etonnerent, car elles ne se souvenaient pas qu’il y eut a la maison>>
Wau-utaは魔法でHaburiを妙齢の若者に成長させ、笛と弓矢を与えた。

注:笛と弓矢、この用具は少年が若者となった徴。成人の儀礼(initiation)を通過して(祖父から) 贈られる。弓矢を持てば狩に参加する。獲物の野豚の分け前の脚一本でもとればいっぱしの男になれる。笛を吹くのは求愛の道具、気に入った娘の屋の前で幾夜も愛の曲を演じる。沐浴で娘が若者に水を掛けたら、愛を受け入れるとの徴。若者は結婚できる。


オオハシはWarrau族の好んで狩猟する鳥である。図はレヴィストロースの著作から。

マニオックを背に戻る姉妹は笛の音に驚く。Wau-uta住まいの前から聞こえるその曲は求愛の調べ、ならば奏者は若者、そんな者がカエルの住まいに居たと知らなかった。妙なる節回しに耳を奪われ、見知らぬ姿に目を奪われた。姉妹は心を奪われたのである(訳注:本文は簡潔なので「奪われた}まで描写はされていない)
Mais ou etait donc Haburi? Haburiはどこに?

Wau-utaの説明は「お前達が出てすぐにHaburiが追いかけていった。ずーと一緒だったのでなかったか」
Haburiを捜しに森に入り、願いかなわず帰る姉妹の日々が続いた。
さてWau-utaがHaburiに与えた矢は魔法の矢です。
Haburi etait un tireur d’elite : il ne manquait pa un oiseau.Wau-uta exigea qu’il lui remit les gors oiseauxqu’il tuerait et qu’il donnat les plus petits auz deuz femmes ares les avoir pollies et souilles. Elle esperait que la mere et la tante de Haburi, blessees et humiliees, finiraient pa s’en aller. Mais au lieu de partir , elles s’obtinerent a chercher l’enfant disparu.
訳;Haburiは手練れの猟師となった。一羽の鳥も見逃さない。Wau-utaはHaburiが持ち帰る大きな鳥すべてを取り、姉妹に小さな鳥を泥まみれに汚して与えた。姉妹を辱め、屈辱を与えて、彼女らが去るをWau-utaが待ったが、姉妹は消えた子Haburiを捜すを諦めず、Wau-utaの仕打ちに耐えた。
カワウソの忠告が事態に変化をもたらした。

11に続きます。 神話「蜜から灰へ」を構造主義で分析する 10 の了

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