蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話学第4巻「裸の男」続き 3

2020年03月12日 | 小説
(2020年3月12日)
Yana族などアビ女神話を読むにつけ、その展開の方向性を探ると;
文化を創造するとの前向き思考が見えない。全て方向で破壊、反文化である。例を挙げると;
近親姦、太陽軌道の攪乱、火による村落破壊(火を本来手段、料理に用いない)、殺害と孤立(生き残りは遠方で生き埋め)、弓矢を狩猟として使わない(アビを狩る)、反肉(アビは食せない)、反同盟…

ボロロ族など南米神話では近親姦、異種婚、社会制度への反逆が前段に記されるが、こうした禁忌犯しが次の段階(文化創造)の起爆となる。しかしアビ女の神話ではタブー犯しで始まり逆上、反体制で終わる。アビ女神話に関しては南神話とは思考も伝言も正反対との感を抑えられない。

そしてレヴィストロースは新大陸南北のこれら神話群はこの図(神話システムの内訳図、Armature du systeme)を理解すれば、同じ系統であると理解に至ると曰う。

神話システムの内訳図 (再々掲)

この図を解釈して正反対内容の両半球神話を解析すると試みよう。

つぶさに見ると上下に三角形を配置する。垂直に垂れた矢印は上から下への移動を示す。すると上の三角形が下のそれに表現されていると思える。「上部構造」「下部構造」なのか。思いつきながらこの解釈で進展出来そうだ。なぜなら上部三角とはSで埋まる。Sはシステムである。

ここで「構造主義」の出番がでてくる。

システムこと上部三角は「ideologie、思想」である。
下部三角は「形式」となる。

注:思想(頭の中)と形式(世にある実体)の対峙を本質と説く認知論が構造主義である。

この論点から二重三角を解析する。

上掲載図を解析するために2重三角形を分離した。上が思考(メタ神話)、下が神話。以下は本手書きに沿ったの解説である。

1 上三角はS、システム。それは思想であり、神話学ではメタ神話とも言える。
2 S1は文化の発端を示す。あたかも「ビッグバン」のごとく、ある日ある刻、文化が爆発した。その契機を「火」の取得とする。火は竈に燃える火であり、人が制御出来る火である。
3 火の文化の展開がS2=>S3と進む。その工程はまず手段が確保されて目的を捕らえる。手段なしの目的という思考手順は(どんな人類にも)持てない。肉塊を前にして火とナイフを持たないオーストピテクスはそれが食べる「目的」であるに気付かない。

(南北神話の近似性とメタ神話について;
南から北へ「伝言リレー」的に伝播する仕組みではこのほどの長さにおいて、同一性は保持できないとした。神話を統合するメタ神話なる理念があったはずだと小筆は推測した。生と調理1(ブログでは2017年9月13日投稿、ホームサイトでは2019年6月15日掲載に詳しい。ホームサイトWWW.tribesman.asiaに入って「部族民サイト内検索」をクリックして、グーグルカスタム窓にメタ神話を入れて検索できる。このメタ神話なる概念はレヴィストロースが本図に組み込んだ上部三角形に他ならない)

4 下三角形は形式です。神話と登場人物をここに割り当てます。S1に対応するは手段としての料理(竈の火と弓矢道具)
5 手段を確保して目的(Viande肉)を見つける。
6 肉が手段となってタバコを見つける(神話M16,生と調理93頁など)
7 タバコは同時に肉を創造する手段でもある(上神話)、ここで手段>目的の連鎖が閉じる。
8 左の水による文化形成にも7と同様の進展と回帰が認められる。

かく、南米神話ではこの図が適合する。しかしアビ女には…(続く)

(構造主義を巡り、世のあまた学者は「構造」が社会の性格を決めるなど呑気な解釈を流しているが、それらは「構造機能論」にしか過ぎない。この論面では「高崎山猿構造の非情」「山口組構造の人為性」など名著が多い(いずれも絶版)。あるいは「タテ社会の日本、中根著」も構造機能論の端くれである。しかし「主義」と「機能説明」は別水準の思考である。構造主義はその濫觴をデカルトに発する「思考」と「存在」の二重性を無神論で説く認識論哲学である。
おっと、すこしだけ、気合いが入りすぎたかな。仏哲学者デリダを紹介する著作を読み、当然レヴィストロースにも言及されているのだが、まさに構造機能論で解説している文言には、教授ともあろうが、アビ女にも負けずに猛り狂ってしまった。許せ)

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