ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

積極的な業務改善に取り組む国立大病院(鳥取大学と島根大学の事例より、その1)

2011年01月28日 | 日記

法人化後、各国立大学はさまざまな経営の改善に取り組んでおり、法人化前に比べると雲泥の差があると感じます。特に附属病院の経営改善への取り組みはかなりのレベルに達していると思います。

財務・経営センターでは、このような各大学法人と附属病院の業務改善の取り組みを集め、その中から、他大学の参考になると思われる取り組みを取り上げて、現地ヒアリングを行って他大学に紹介させていただき、情報の共有化を図ってきました。

今回は、鳥取大学の附属病院と島根大学の附属病院を訪問して、現地ヒアリングをさせていただいたので、それをごく簡単にご紹介します。(詳細は後日公表される事例集をご覧下さい。)

まず1月24日に鳥取大病院、翌日の25日に島根大病院を訪問しました。米子空港に到着した時は雪。この地域がお正月の大雪で車が立ち往生したことは皆さんの記憶に新しいことと思いますが、この日は雪とはいってもそれほど大した降りではありませんでした。

副学長の井藤久雄さん、医学部長の井上貴央さん、病院長の豊島良太さん、病院事務部長の神村茂さんを始め、職員の方々に暖かく出迎えていただきました。

鳥取大学病院は今までにもさまざまな業務改善の取り組みを行っていますが、今回はその中から、「全職横断的なプロジェクトチームによる人材確保」と「病院情報システムへのシンクライアント端末の導入」の二つを取り上げさせていただきます。

「全職種横断的なプロジェクトチームによる人材確保」の取り組みについては、病院長特別補佐(広報戦略、患者サービス、労働環境担当)の早川幸子さんから説明していただきました。早川さんは、2年前まで看護部長をされておられた方です。

従来、病院の人材確保は職種ごとに縦割りに対応してきたが、地元の養成校のない薬剤師、診療放射線技師、臨床工学技士の確保については苦慮してきたとのこと。それを、H22年2月に病院全体で横断的な「きらり輝く人材確保プロジェクト」を立ち上げ、医師、看護師・助産師、薬剤師、臨床検査技師、臨床放射線技師、臨床工学技士の採用について横断的・一元的に募集採用活動開始。

21回のプロジェクトチームの会議を通して、欲しい人材の明確化することから始めて、「鳥大病院総力戦」と位置づけて戦略を練り、テレビを含む全国的なPRや養成校訪問などの活動を精力的に実施。昨年8月13日に合同説明会にこぎつけ、県内外から予想以上の82名が参加。報道機関席も設けていたが、誰もこないので表示を破り捨てたところ、後ろにNHKが来ていることがわかり安堵。結局テレビ3社、新聞3社が来場し、大きく報道される。

私が特に感心したのは、医師の募集もいっしょに行われたことです。医師、医療専門職(コメディカル)、事務職員がいっしょに一つのプロジェクトを遂行するというのは、実はなかなか難しいことなのですが、ここでは「教職共同」が実にすばらしく行われています。教職員の皆さんの組織全体の方針に対する協力的な姿勢とともに、プロジェクトの責任者のお一人である早川さんのご努力とお人柄も大きなファクターではないかと想像しています。

もう一つの取り組みは「病院情報システムへのシンクライアント端末の導入」

私はITは詳しくないのですが、シンクライアントとは、「情報システムにおいて、ユーザーが使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションやファイルなどの資源を管理するシステムの総称。また、そのようなシステムを実現するための、機能を絞った低価格のクライアント用コンピュータ。」とされています。

病院情報システムにシンクライアントを採用する手法には複数あるが、コスト面を考慮しserver-based computing (SBC)方式を採用。シンクライアントの実装メリットとしては、ハードディスクが不要のためにパソコンにデータが残らず、したがってセキュリティー管理が容易なこと。そして、端末の故障率が低く価格も安いことから端末管理コストが低くなること。

最近流行のクラウドコンピューティングを院内で行うという感じですかね。病院現場のユーザーは従来と何が変わったのか気づかない状況で、導入に成功したとのことです。

シンクライアントは大学病院としては鳥取大学が最初に実施し、現在数大学で検討されているとのことです。

これ以外にもすばらしい業務改善の取り組みがたくさんなされていますが、長くなりますので今日はこの辺りでやめて、次回は島根大学病院の取り組みを紹介します。













 

コメント (1)
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