ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

平成23年度文教・科学技術予算案についての私感(その2)

2011年01月01日 | 日記

みなさん、あけましておめでとうございます。

前回のブログでも書かせていただきましたが、平成23年度の文教・科学技術予算案は、大学や科学技術関係者の深刻な懸念が現実のものとならずに、政策決定者によりかなりの配慮がなされたことは、たいへん良かったと感じています。

公表された平成23年度予算の政府案(http://www.mof.go.jp/seifuan23/yosan.htm)によれば、国立大学の運営費交付金の削減率は0.5%であり、これは法人化後の運営費交付金の削減率0.79~1.91%に比較して最も低い削減率に留めたとのことです。

従来の運営費交付金削減のかなりの部分は附属病院運営費交付金の削減でまかなわれていたのですが、そのために附属病院の機能が損なわれ、医学論文数の減少や地域医療の崩壊に拍車がかかったことは、私どもが法人化後間もなくの時期から主張し続けてきたことです。大学病院の窮状について政府関係者の理解が進み、ある程度の配慮がなされるようになりましたが、私が最も心配していたことは、附属病院を救おうとすると、他の大学部門の予算の削減がその分だけ増やされることでしたが、今回そうならなかったことは幸いでした。ただし、削減が続くことに変わりがないことは認識しておく必要があります。

また、施設整備関係の予算についても、「大学教育研究特別整備費」が新設され、運営費交付金の削減額相当の58億円が計上されています。その結果、「国立大学施設費等」は538億円と、前年度に比較して9億円の減(1.6%減)にとどまっており、従来の施設費削減に比較して緩和されています。ただし、現在の国立大学の施設を維持するにはほど遠い金額であることに変わりないことに留意する必要があります。

今回、文教・科学技術予算の削減は最小に留めていただいたようですが、その代わり「大学改革について文部科学省と以下の合意がなされた」という一文が書かれています。

「時代の要請に応える人材育成及び限られた資源を効率的に活用し、全体として質の高い教育を実施するため、大学における機能別分化・連携の推進、教育の質保証、組織の見直しを含めた大学改革を強力に推し進めることとし、そのための方策を1年以内を目途として検討し、打ち出すこと」

つまり、今回は大目に見たが、23年度にはっきりと目に見える大学改革案を打ち出さなければ、次回は予算を大幅に削減するぞ、ということでしょうね。

今年が国立大学および附属病院にとっての本当の正念場になりそうですね。

私個人にとっては、昨年は公募で国立大学財務・経営センターの理事長に選ばれたとたんに事業仕分けの洗礼を受け、また、年末には心房細動の治療で入院し、一部に三重県知事選挙出馬の要請があったのですが、それをお断りするなど、激動の1年でした。

事業仕分けの結果、財務・経営センターは大きく機能が削がれますが、平成23年の正念場の年に、国立大学と附属病院が少しでも国民にとり、同時に大学関係者にとって良い方向に向かうように、少しでも貢献したいと決意を新たにしたところです。







 

コメント (1)
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