ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

法人化後の国立大学の学術論文数の推移とその要因の分析(その5.人口当り高注目度論文数の国際比較)

2014年03月27日 | 高等教育

 論文数についての国大協への報告書草案の5回目です。今日は、人口あたり高注目度論文数の国際比較についてです。例によって、このブログはあくまで草案ですので、最終的な報告書は修正される可能性があります。

 さて、入学式の式辞の準備や3月中が締め切りの依頼原稿、新年度の講義のシラバス記入などをほったらかしにして、論文数の分析を続けているのですが、いよいよ切羽詰ってきました。3月中に報告書を提出する予定だったのですが、このペースだととても間に合いません。今日にでも、国大協にその旨を連絡することにします。

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3)人口当り高注目度論文数の国際比較

 高注目度論文はイノベーションとリンクする可能性があり3)、高注目度論文数は研究機能の「質×量」を反映しうる指標であることから、各種の研究機能の指標の中でも、重要な指標であると考える。そして、イノベーションの意義が国民一人当たりのGDPを押し上げることであるとするならば、「国民一人当たりの高注目度論文数」が、key performance indicator (KPI)となりうる最も重要な指標であると考える。さらに、資源の乏しい日本においては、イノベーションの国際競争の中で、相手国よりもイノベーションの「質×量」で上回っていないことには、資源の購入が困難になると考えられることから、他国との相対的な順位が重要であると考える。

 このような観点から、科学技術指標2013のデータにもとづき人口当りのTop10%補正論文数を計算し、その国際比較を示した(図16)。日本は科学技術指標2013にあげられている主要国の中では台湾、韓国に次いで21番目となっている。欧米諸国は日本の約2~10倍産生しており、台湾は日本の1.9倍、韓国は日本の1.4倍産生している。現在、日本の論文産生が停滞~減少していることから、この格差は今後さらに拡大すると想定される。

 なお、日本の21番目という順位は、科学技術指標2013で取り上げられた国の中での順位であり、他の国も含めるとさらに低い順位である可能性もある。

 参考までに、InCites™のデータにもとづき、人口当たりの通常論文数について調べたところ、日本の順位は26番目であった(図17)。人口当りの通常論文の生産性では、日本は東欧諸国のグループに属しており、早晩30位以下になるものと想定される。

 また、GDP(購買力平価換算値、単位10億USドル)当りのTop10%補正論文数を計算したところ、科学技術指標2013で取り上げられている主要国の中では、日本はポーランドに次いで22番目であり、中国に近い値となっている(図18)。 

 

 このように、日本は先進国として、人口あるいはGDPに見合った論文数を産生しておらず、新興国と同じレベルになっている。今後、学術論文産生の停滞~減少状況が続けば、日本の順位はさらに低下し、イノベーションの「質×量」で他国を上回らなければ資源を購入できない国家としては、10~20年先の将来が危ぶまれる状況であると思われる。


文献

3)Diana Hicks, Anthony Breitzman SrKimberly Hamilton and Francis Narin:Research excellence and patented innovation. Science and Public Policy, Volume 27, Issue 5, pp310-320

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日本の学術論文数の惨憺たる状況をみなさんどうお考えになりますかね?iPS細胞で喜んでいる場合ではないんじゃないかな?オリンピックの放送と同じで、日本人の成績が良かったところだけを報道し、他の国の成績については報道しないので、国民は日本人はけっこうやるじゃないかと錯覚してしまう。もちろん、日本人に自信を持たせるために、日本人の活躍をどんどん報道することはとても大切。でも、為政者までもが、現在の政策でいいのだと勘違いしては困ります。

夜中の3時近くなり、睡眠不足になるので、続きはまた明日。

 

 

 

コメント (2)
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