ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

法人化後の国立大学の学術論文数の推移とその要因の分析(その1)

2014年03月10日 | 高等教育

昨年、国立大学協会から「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」というお題を頂戴して、なかなか時間が取れない中で、一人だけでぼちぼちと分析を続けてきました。その分析結果のプレゼンを2月6日に国大協でさせていただいたのですが、不十分な箇所があり、引き続いて今日まで分析を継続していました。

データの分析というのは、実際自分でやってみるとほんとにたいへんな仕事だということを実感します。今、”ビッグデータ”と言葉がマスコミ等でもさかんに取り上げられていますが、その課題として、分析の専門家が不足しているということが言われていますね。僕の分析しているデータはビッグデータには当たりませんが、データの適切な分析は、それなりの能力をもった人しかできないと感じました。僕に、その能力があるのかどうかは、自分ではよくわからないのですが、分析結果を見ていただいて、皆さんにご判断をいただくということでしょうね。

データの最後の詰めの分析にけっこう難渋していたのですが、いよいよ、報告の締切日の3月末が近づき、お尻に火がついてきたので、報告書の作成に着手しないといけません。でも、ずいぶんとほったらかしにしてあるブログも書かないといけませんね。

そこで、二兎を追うために、報告書の草稿を書きつつ、それを同時にブログに載せていくということを試みてみます。ただし、このようなことをすることに少しばかり不安もあります。

報告書の文体は固い文体になるので、ブログとして適切なのかどうか?

ブログはあくまで報告書の「草案」であり、完成した「報告書」とは違ってくるが、そのような段階のものを公表してもいいのかどうか?

でも、報告書や論文と違う形で、その前段階の草案を、修正すべき個所があることを承知の上で公表できるというのは、「ブログ」という媒体のメリットかもしれないとも思います。行政においても、草案段階でウェブ上で公開してパブコメを求めるということは、今では当たり前のように行われていますしね。

また、けっこう大部の報告書になりそうなので、適宜、論文数以外のブログも織り交ぜていくことにりましょう。

さて、まずは報告書のタイトルですが、国大協から拝命した「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」のサブタイトルとして

「学術論文データベースに基づいた法人化後の国立大学の学術論文数の推移とその要因の分析」

を付け加えようと思います。僕が分析したのは、運営費交付金削減によるさまざまな影響のうち、論文数(研究力の一つの指標)についてだけですからね。ただ、論文数に対する影響がもっとも顕著に表れたと考えています。

報告書や論文の最初には「要約」が掲げられるのが普通ですが、一応、全文を書き上げてから、「要約」の執筆にもどることにしましょう。

報告書本文の最初には、まず、「はじめに」を書かないといけませんね。「緒言」というタイトルでもいいし、何も書かなくてもいいのですが、一応「はじめに」としておきます。「はじめに」には、今回の分析をした背景や目的を書かないといけません。背景として国立大学法人化についても簡単に説明しないといけないので、やや長めになってしまうことはやむを得ないところだと思います。

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はじめに

2004年から実施された国立大学法人化は、わが国における第二次世界大戦後の大学改革以来の大きな制度改革であるとされている。各大学には文部科学大臣が定めた中期目標を達成するための中期計画・年度計画の策定が求められ、その達成度が評価されることになった。予算面については中期目標期間(6年間)内については年度を超えた繰り越しが認められ、運営費交付金の学内配分が各大学の裁量で可能となった。また、ガバナンスの面では、学長と役員会の権限が強化されるとともに、経営協議会が設けられて外部委員が参画することとなり、監事制度も導入された。会計面では、民間の会計制度を参考にした国立大学法人会計制度が導入された。

ただし、運営費交付金については効率化係数がかけられ、総体としては年約1%程度の率で削減されることとなった。なお、法人化と交付金の削減は、制度上は必ずしも連動するものではないと説明されているが、現在までのところ国立大学法人の運営費交付金は削減され続けている。また、附属病院建設に伴う債務償還の補てんという意味合いを持つ“附属病院運営費交付金”については、法人化第1期において経営改善係数により急速に削減された。なお、法人化第2期には“附属病院運営費交付金”という区分は無くなった。

また、運営費交付金の種別については、主として職員の人件費や経常的な運営費等に使われる基盤的な運営費交付金が削減される一方で、国の定めるプロジェクトを競争的に獲得する運営費交付金が確保され、また、高等教育予算の中に国公私立大学が競争的に獲得する教育研究資金が確保された。

法人化によって、目標設定と評価によるマネジメント、競争原理の導入、ある程度の現場への裁量権の付与と民間的経営手法の導入、学長の権限強化と監視機構の導入等といった制度改革がなされ、それに伴い、各大学において様々な教学および経営面での改善・改革がなされ、今日に至っている。

法人化の大きな目的の一つは、国立大学の機能強化を図ることであると考えられるが、一方、経営の効率化も同時に求められている。基盤的な運営費交付金の削減は、この効率化に対応する政策であると考えられる。

しかし、運営費交付金の削減が、各大学の経営効率化の努力によってカバーできる範囲であれば大学の機能は低下しないが、その範囲を超えると機能が低下する。現在、少なくとも国立大学の研究機能については、運営費交付金の削減が、法人化によって期待される効率化を超えて“機能低下”を招いている状況であると推測される。

国立大学は、わが国の学術論文数の生産において大きな割合を占めているセグメントであり、その機能低下がわが国全体の学術論文数の停滞~低下を招き、その結果、世界の主要国が学術論文数を増やしている中で、わが国の研究面での国際競争力の急速な低下を招いているものと推測される。

この報告書は、研究力を反映すると考えられる指標の一つである学術論文数の国立大学における推移とその変動の要因を分析することにより、運営費交付金削減の大学機能に及ぼす影響、特に研究機能およびその国際競争力への影響を評価しようとするものである。

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どうでしょうか。だいたい、こんなふうに書こうかなと思っています。

「はじめに」にいろいろなことを書きましたが、この分析で証明したい仮説としては

 運営費交付金の削減 ⇒ 教員人件費の削減 ⇒ 教員数の減少 ⇒ 論文数の減少

という、すこぶる単純なことです。でも、実際にデータ的に証明しようとすると、なかなか難しいものなんです。


次は、報告書の目次、というか構成ですね。

1.要約

2.はじめに

3.方法

(1)分析に使用したデータ

(2)分析方法

4.結果

(1)日本の学術論文数の国際比較

(2)日本の学術論文数の大学群間比較

(3)国立大学の学術論文数の大学間比較とその差異を生じる要因

(4)法人化後の国立大学の学術論文数の推移とその要因

5.考察

6.提言

 
とりあえず、このような目次にして報告書の草案を書いていくことにします。書いていく途中で変わることもあるかもしれませんが・・・。
 
この目次で、もっとも重要な箇所は「法人化後の国立大学の学術論文数の推移とその要因」ですね。これは、サブタイトルと同じです。ここで、はたして仮説が検証できるかどうかが決まります。

次のブログは「方法」です。
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

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