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●有期雇用契約に関する法律規定(その3)●

2013年02月04日 17時43分17秒 | 労働法

 労働契約法19条2号は、有期雇用契約の形式を外見上整えていたとしても、雇用継続に「合理的な期待」がある場合には、雇止め法理の適用がある旨を規定したものです。
 この合理的な期待について、通達では次のように書かれています。
「…合理的な期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案される…
  したがって、いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、当該有期雇用契約の契約期間の満了前に
  使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに」雇止め法理の適用が否定されることにはならない…
 有期雇用契約であっても長期にわたってその契約が反復更新された場合には、期間満了のみを理由に雇止めすることが認められないことへの対応として、雇止めの30日前の契約終了告知ではなく、直前の更新時に「次回更新がない」旨のいわゆる不更新条項つきの更新契約を結んだとしても、それのみをもって、更新拒否が無条件に認められるわけではない、と言うことです。
 ここでのポイントは、「合理的期待」の存否であって、その不更新条項つきの更新契約が労使双方のきちんとした合意の上でのものであれば、その不更新契約は適法に成立するものです。
 しかしこの不更新条項付きの契約について、これに同意しなければ次回の更新は無い、とか、これは形式的なものだから、などという発言がある場合には、合意成立プロセスが問題となる可能性が高くなります。 


●有期雇用契約に関する法律規定(その3)●

2013年02月02日 11時23分24秒 | 労働法

 労働契約法19条では、「雇止め法理(解雇権濫用法理の類推)」の適用を受ける有期労働契約の二つのケースを規定しています。一つは、期間満了で契約を終了させることが、解雇することとニアリーイコールである場合、更新手続がルーズで、更新契約書面を事後的に取り交わしたり、契約が更新されることが当たり前のような状況になっている場合です。
 もう一つは、更新手続きがきちんと行われているケースでも、雇止め法理の適用を受ける場合です。それが労働契約法19条2号に規定されています。その内容は、
 「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること」とあります。
 つまり形式上有期契約として更新手続きなどを行っていたとしても、その有期契約で就労する労働者を取り巻く状況などから、契約更新が期待される状況であれば、雇止め法理が適用されるというものです。
 この考え方の基となったのは、日立メディコ事件という判例で、その内容は次のようなものです。
 期間2ヶ月の臨時員を5回更新後に雇止めしたもので、更新に際しては1週間前に本人の意思を確認し、雇用契約書を取り交わし、本人の押印もされていた。契約の更新は期間満了の都度、合意の上で新たな契約を締結することによって行われてきていた。
 判決では、この臨時員は、「季節的労務や特定物の製作のような臨時的な作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度継続が期待されていたものであり…5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され」るとして、合理的理由の無い雇止めについては、「期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる」としています。


●有期雇用契約に関する法律規定(その2)●

2013年01月31日 11時09分02秒 | 労働法

 労働契約法19条では、「雇止め法理」の適用を受ける有期労働契約の二つのケースを規定しています。その一つは、
「当該労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めの無い労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること」としています。
 つまり、期間満了で契約を終了させることが、解雇することとニアリーイコールである場合を指しています。この考え方の基となった判例は、東芝柳町工場事件ですが、その内容は次のようなものです。
 期間2ヶ月の契約を反復更新してきた臨時工を期間満了を理由に雇い止めしたもので、裁判では、更新手続がルーズで、自動更新のような状況になっていたとして、期間満了による更新拒否は解雇と同様に考える必要がある、とするものです。
 このように更新手続がルーズで、更新契約書面を事後的に取り交わしたり、契約が更新されることが当たり前のような状況になっているような場合には、この労働契約法19条1号の規定によって、雇止め法理の適用を受けることになります。
 しかし、この判決の後に、期間契約の労働者に対しては、更新手続きを厳格に行うことが重要であるという認識が拡がり、現在では更新手続がないというケースはほとんど無いと思われますが、更新手続きがきちんと行われているケースでも、雇止め法理の適用を受ける場合があります。それが労働契約法19条2号に規定されています。これがもう一つのケースです。


●有期雇用契約に関する法律規定●

2013年01月29日 12時14分54秒 | 労働法

 期間の定めの無い正社員に対して、雇用期間の定めのある、いわゆる契約社員については、その期間が満了するときに、契約を終了するのか、更新するのか、を決定することになります。しかし大半の有期雇用契約は、契約期間満了によって契約が終了することを想定していないため、引き続き契約を更新するようになっています。
 このように契約期間と業務の継続する期間が一致していないことが多く、期間契約は柔軟に人材を活用できるようにするための契約形態となっているのが実態です。こうした契約にメリットもありますが、一方で労働者にとっては、契約期間が満了する度に、更新か、雇い止めか、の判断にさらされることになります。
 期間契約であっても、その契約が反復更新され、その後も契約が更新されるだろうという期待が生まれることが通常想定される場合には、期間が満了したことのみを持って雇い止めが認められるものではなく、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」でなければならないという、解雇に準じた考え方(いわゆる(雇止め法理)が適用されることになります。
 労働契約法19条は「有期労働契約であって…契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。」と規定しています。
 この労働契約法19条は平成24年8月10に施行した新しい規定ですが、その考え方はこれまでの裁判での考え方をトレースしたもので、判例法理を法律として明文化したものです。ですから、この規定の考え方を理解するためには、その基となった判例を検討することが大切になってきます。


●紹介予定派遣について●

2013年01月24日 11時26分28秒 | 労働法

 紹介予定派遣は、労働者派遣法2条に規定されています。その内容は、派遣会社が派遣先に「職業紹介」をするもの、としています。ここでいう職業紹介は、職業安定法4条に「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立のあっせんをすること」と定義しています。
 ちなみにこの職業紹介を行う場合には許可が必要です。派遣事業を行う場合にも許可が必要ですから、紹介予定派遣を行う派遣元は、派遣事業者であり、職業紹介事業者でもあって、それぞれ所定の許可を受けている必要があります。
 この紹介予定派遣は、職業紹介をすることが目的ですから、派遣労働の期間は6ヶ月以内とされています。そしてその派遣期間終了後あるいは派遣期間の途中で、派遣先が直接雇用するかどうかを判断することになります。
 もし派遣先が直接雇用をしない場合には、「派遣元会社の求めに応じ」て、雇用しなかった理由を明示することとしています。
 この紹介予定派遣によって派遣先に雇用された場合には、派遣先はここで雇用した労働者については試用期間を設けてはいけないこととなっています。紹介予定派遣の6ヶ月は、対象となる労働者の能力を見極めるための期間だからです。
 また6ヶ月の派遣期間満了前に直接雇用することとした場合には、これは派遣期間満了後の直接雇用の採用内定ということになります。
 紹介予定派遣は職業紹介ですから、通常労働者派遣で禁止されている派遣労働者を特定することも一定の条件の下で許容されています。それは通常労働者の募集に当たって、年齢制限についての制約や男女雇用機会均等法に規定されている諸条件を満たさなければならないことと同様です。


●テレワークのリスク●

2013年01月18日 12時23分36秒 | 労働法

 労働時間を柔軟に活用できるテレワークはそのメリットともに様々なデメリットもあります。労働者の視点で考えると、公私のけじめをどのようにつけるか、という点が大きな課題でしょう。とくに在宅勤務の場合、その点が曖昧になります。
 ここで大切なことは、その労働時間が何時間になるのか、ということです。テレワークの場合、通常みなし労働時間制を適用していると思いますが、そのみなされた時間が果たして適当なものなのか、判断が難しいでしょう。会社からみた労務管理の視点からも、労働時間をきちんと管理することが求められます。
 この場合、みなされた時間が8時間以下である場合には割増賃金は発生しません。しかしその労働時間が深夜に及んだ場合には深夜割増賃金が発生する可能性があります。こうした意味でも時間管理は重要です。
 テレワークでは、通常パソコンによる作業が想定されていますから、そのセキュリティー管理が問題となります。情報の取扱については、会社による一定のルールがあるはずで、それを遵守することが重要です。もしそうしたルールが徹底されずになんらかのトラブルを起こした場合には、就業規則所定の懲戒処分の可能性があります。


●裁量労働制の労働時間管理●

2013年01月16日 09時12分06秒 | 労働法

 裁量労働制は、高度に専門的な業務などで、業務遂行について逐一会社からの指示が必要とされず、大幅に労働者の裁量によって業務を遂行することができる場合に適用できるものです。このため労働時間の管理も労働者個人の裁量の任されているため、自己管理の問題があります。
 労働者の裁量によって具体的な労働時間も決定できるため、実際の労働時間に関わらず、所定の時間労働したものとみなされることになります。例えば1日のみなし労働時間が8時間である場合には、実際の労働時間が10時間でも、6時間でも、8時間労働したものとして労働時間が計算されます。
 こうした裁量労働制を適用する目的は、成果によって賃金を決定しようとする成果主義的な制度の導入にあります。裁量労働制が適用される業務は、労働時間よりもその成果によって賃金を決定するほうが合理的と考えられるものだからです。
 この裁量労働制の適用を受ける労働者は、労働時間の決定がいくら自由であると言っても、欠勤の自由までは認められていません。必ず出社する義務があります。と言っても理屈の上では、1時間でも出社すれば欠勤とはなりませんので、ややもすると時間管理がかなりルーズになるおそれがあります。
 時間管理がルーズになりがちな労働者対策として、所定の時間に出社することを求めることができるかという点が問題になってきます。そもそも裁量労働制は労働時間を労働者の裁量に任せることが必要ですから、その意味では出社を命じることはできません。しかし裁量労働制を適用を受ける労働者といっても、他の労働者との意思疎通を図る必要は当然にあるわけで、また必要な会議などに出席を求めることもできないようでは、業務に支障をきたすことも考えられます。
 そのため実際には、出社命令という形をとらずに、労働者が自発的に会社の求めに応じて出社するという形を取らざるを得ません。ですので、もしその所定の時刻に遅刻したとしてもペナルティーを与えることはできません。
 裁量労働制は、労働時間に対してではなく、成果に対して賃金を決定するものですから、遅刻に対するペナルティーは課せられなくても、結果としての成果に応じて賃金に影響させることになります。
 ちなみに、あまりに時間管理がルーズな労働者に対しては、そのために業務に支障をきたすなどの事実があれば、裁量労働制の適用を除外することも認められる余地はありますが、実際の労働時間がみなし労働時間よりも短いことを理由に適用を除外することはできません。


●複数事業場で就労する場合●

2013年01月14日 12時13分38秒 | 労働法

 労基法38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」としています。例えば正社員として8時間就労したあとで、他の会社でアルバイトをするような場合には、アルバイトの労働時間は時間外労働となり、割増賃金の支払義務があります。
 こうした場合に、通常時給で計算されるアルバイトの賃金に対する割増賃金を別途請求できるかどうかについては、実際には難しい問題もあります。
 まずアルバイトをする会社で、それが兼業であることを知らないときには、時間外労働となることを把握できません。また、アルバイトとしての採用時に、他の会社の就労の有無の確認に対して、労働者が兼業の事実を告げなかった場合には、あるいは虚偽の事実を告げた場合には、経歴詐称の懲戒事由のを根拠に、解雇も可能とする余地もあります。
 ただ会社が兼業についての事実関係を何ら確認していないような場合には、あえて労働者がそれを告げなかったことを理由に何らかの処分をすることを困難です。
 また割増賃金を請求できる場合に、時給に割増賃金部分が含まれているかどうかは、当初の労働条件として明示されていたかどうかによりますが、割増賃金が含まれていると明示されていない場合には、通常労働条件として示される時給賃金に割増賃金が含まれていると解釈することはできません。
 会社は労働者から割増賃金の請求をされた場合に、それが副業であって時間外労働に当たるとは知らなかったことを理由に割増賃金の支払義務を免れるものではありません。
 しかし正社員として就労する会社で変形労働時間制が採用されている場合など、時間外労働の判断が事実上困難であることもあり、具体的な金額の算定は不可能とも考えられます。
 もっともたいていの会社で兼業などが禁止されていたり、少なくとも制約があることも事実で、兼業アルバイトをする労働者はそれを承知の上ですから、こうした割増賃金がトラブルとなる可能性は極めて低いものでしょう。


●雇い止めの基本的な考え方●

2013年01月12日 08時08分58秒 | 労働法

 雇い止めとは、有期雇用契約によって就労している労働者が、所定の期間満了時に契約の更新を拒否されることです。もっとも雇用期間が一定の期間と定められているのですから、その所定の期間が経過すれば契約は終了することは、契約を形式的に見れば当然のことです。
 しかし有期契約でも通常は、契約期間満了時に契約が更新されることが想定されていますから、契約期間が満了したからといって、それを理由に契約が終了するとは当然には考えられない場合が多いと思われます。
 例えばこれまで契約社員は例外なく更新されてきているとか、面接のときに長く努めて欲しいと言われたり、実際に契約更新を繰り返しているなど、契約の更新への期待が当然と思われるような状況があれば、契約期間満了を理由に契約を終了することはできず、解雇に準じた合理的な理由が無ければならないと考えられています。
 しかし期間の定めの無い正社員に対する解雇と、期間契約社員に対する雇い止めの当否については、その考え方は微妙に異なります。それば正規社員に比べれば、契約社員のほうが採用手続が簡易であったり、実際の業務も正社員の業務を補助するような内容であれば、例えばリストラなどの際に、正社員に先立ってその対象となることに合理性ありとする判例もあります。
 しかし業務内容や業務に対する責任の大きさなどに正社員と比較して差異が無ければ、同様の待遇をすべきとする労働契約法の規定を考慮すれば、こうした場合の雇い止めに関して、正社員と同様の解雇に対する判断が求められることになると思われます。
 ちなみにこの雇い止めについて解雇に準じた判断が求められるのは、契約更新に合理的な期待がある場合ですので、労働者本人にすでに契約更新への期待がなくなっていると判断できる状況では、雇い止めの当否の判断の余地は無くなることになります。


●請負と派遣の微妙な関係●

2013年01月10日 16時34分41秒 | 労働法

 請負契約にしても派遣契約にしても、会社間の契約であって、そこで実際に働く労働者は関与しませんが、会社が業務をアウトソーシングしようとする場合、請負とするのか、派遣とするのかは極めて重要な問題です。それは請負契約であれば、民法の契約法の範疇で締結できるのに対して、派遣契約となれば、派遣法上の厳格な要件を満たす必要があるからです。
 かといって易々と請負契約にすることはできません。請負契約とするためには、請負会社の労働者がもし同じ会社内で就労するとしても、自社の従業員と一緒に業務をさせたり、ましてや請負会社の従業員に対して業務指示などはできないことになるからです。請負契約の場合には、あくまでも請負わせる業務を請負会社に丸投げするものであって、業務の遂行責任は、業務指示も含めて請負会社が行うものです。
 請負契約では、業務命令系統が、きちんと分離されている必要があるのです。ですので、もし委託会社から請負会社の従業員に対して何らかの指示をしたい場合には、まず請負会社に契約内容の変更をする必要があります。そして請負会社の責任者が、その変更された契約に従って、業務指示を行う、という手順になります。しかしその指示内容もあまりに細かなものであるなど、事実上委託会社が業務指示を行っている実態があれば、請負契約とは言えなくなります。
 ちなみに、請負契約の実態判断には、こうした労務管理上の独立性以外にも、請負会社が実態として委託先会社から独立した事業運営を行う会社であるかどうかも問題となります。
 それではあまりにも融通が利かない、同じ会社内で仕事をする以上、何らかの業務指示の必要性も出てきます。これを合法的に行うためには、やはり派遣契約でなければなりません。それでは、派遣契約にすればOKか、というと、労働者派遣には、専門業務以外の業務の場合には、派遣可能期間の制約があります。つまり単発的な仕事しか派遣労働を活用できない仕組みになっています。
 ということは、専門業務であれば派遣可能機関の制約がなく、いつまでも派遣労働者を自らの業務指示の下で業務に従事させることができます。これはアウトソーシングする業務が、派遣法上の専門業務に該当する場合です。
 ただこの場合でも、その専門業務外の業務をさせるときには、派遣期間の制約の問題がでてきます。
 このように本来であれば直接雇用する従業員によって従事させる業務をアウトソーシングすることには、大きな制約があるわけで、結局直接雇用する方が、はるかに合理的となるように法律は作られているわけです。しかし実態はどうでしょうか…


●派遣労働者の従事業務と雇用申込義務●

2013年01月08日 08時09分29秒 | 労働法

 労働者派遣という就労形態は、派遣先会社と派遣元会社との労働者派遣契約に基づいて、派遣元会社が雇用する労働者を派遣先で就労させるという、複雑な契約関係があります。そもそも労働者派遣は労働者派遣法の施行前は、職業安定法で禁止されている「労働者供給」に当たるものでしたが、高度な専門的業務に従事する人材を柔軟に活用するために、一定の業務に限定した厳格な要件の元で、特別に認められたものでした。
 その後、こうした高度の専門的な業務のほかにも、一時的、臨時的な人材ニーズにも対応できるよう、一定の業務を除いたあらゆる業務に労働者派遣が可能となりました。ただし専門業務以外の労働者派遣については、一時的、臨時的に対応することが建前であることから、派遣期間が限定されています。
 このように派遣労働については、派遣労働者がどのような業務に従事するのかは、極めて重要です。しかし実際の就労に当たっては、予定された業務だけを行うことが困難なこともあり、専門的な業務のほかに、専門的ではないが付随的な業務が必要とされる場合もあります。こうした専門業務とその他の業務の双方を行う場合には、派遣期間の限定の問題がでてきます。
 このような派遣期間の制限のない業務と派遣期間の制限のある業務が混在する場合には、制限のある業務が労働時間の1割を超える場合には、派遣期間に制限ある場合として扱われます。逆に言えば、専門外の業務が労働時間の1割以下であれば、派遣期間に制限のない専門業務として扱われることになります。
 もし専門外の業務が労働時間の1割を超える場合で、派遣期間が3年を超えるときには、派遣先会社は、その派遣労働者に対して直接雇用の申込み義務が生じることになります。特に改正派遣法では、すでに派遣期間が3年を超えた場合には、直接雇用の申込みをしたものとみなされることになりますから、業務ごとの労働時間は極めて重要な意味を持つことになります。


●派遣労働者に対する直接雇用申込義務●

2013年01月07日 13時48分41秒 | 労働法

 労働者派遣法では、派遣可能期間経過後も継続して派遣労働者の就労をさせようとするときは、派遣先に直接雇用申込み義務が規定されています。また派遣可能期間の制限の無い専門26業種につても、3年を超えて就労させている派遣労働者がいる場合には、従業員の採用の前にその派遣労働者に直接雇用の申込みをしなければならない義務が規定されています。
 しかしこの雇用申込み義務は、派遣先がこの義務を履行しない場合に、派遣労働者が義務の履行を求めることができるのではなく、義務を履行するよう行政指導ができるのみであると解釈されています。
 なお改正法では、施行は平成27年10月1日とされているものの、派遣可能期間を超えて「就労させた」場合には、派遣先が雇用申込みをしたものとみなす、という規定が盛り込まれています。この規定に拠れば、派遣先が雇用の申込みをしない場合には、派遣可能期間を超えて就労した派遣労働者は、派遣先の直接雇用労働者となる旨の意思表示をすれば、派遣先の意志とは関係なく、直接雇用の労働者となることになります。


●パート労働者の正社員への転換措置●

2012年12月31日 14時29分25秒 | 労働法

 パート労働法では、パート労働者の待遇に関して、特に正社員との格差改善を事業主に求める内容の、労働契約法の特別法的な役割を担っています。そのため努力義務規定が多くなっていますが、中でも重要なものは、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」規定です。
 このパート労働者の中で通常の労働者≒正社員と同視できる状態とは、業務の内容や責任の程度などが、労働時間が短いこと以外に、代わりが無い状態ですから、例えばパート社員の積極活用の一環として、パート社員に一定の管理的な役割を与えるようなケースで該当する可能性が出てくるでしょう。
 この正社員と業務内容や責任の程度において、同視できると判断されれば、賃金や賞与、退職金などについて、差別的な取扱は禁止されますので、同様の処遇をする義務が会社に生じることになります。
 しかし一方で、正社員と同視でできるかどうかは、ケースバイケースであって、実際には業務の内容や責任の程度が全く同じとは微妙にいえないことも多く、この問題は、パート社員の積極活用の具体的な場面で、処遇の改善を検討すべきか、などの形で生じてくるでしょう。
 もう一つ重要な規定は、12条の正社員への転換措置の義務規定です。会社はパート労働者に対して、次のいずれかの正社員への転換措置を設けなければなりません。それは、正社員の募集をする場合にはパート社員にもそれを知らせて応募の機会を与えること、ある業務に新たに正社員を配置する場合には、パート社員に正社員として配置するよう申し出る機会を与えること、正社員への転換試験制度を設けること、の三つです。
 ただしこれらは、正社員へ転換する「機会」を与えることを会社に義務付けたものであって、正社員に転換させることを義務付けるものではありません。ですから実際に正社員に応募したとしても、採用されないことも考えられるわけです。ただ正社員への応募を受理しないなどの取扱は認められません。
 ただ実際の問題として、正社員募集にパート社員が応募したにもかかわらず、外部から新たな正社員が採用され、応募したパート社員が採用されなかった場合、このパート社員と採用された正社員の業務内容や責任権限が全く異なる場合はともかく、同じ職場で業務に従事するようなときには、問題が生じる余地も多分にあるでしょう。とくに感情的には難しい面があるからです。


●希望退職の募集と退職金の割増●

2012年12月31日 14時26分46秒 | 労働法

 整理解雇を有効と判断するための4つの要件の一つに、解雇回避努力義務の履行があります。解雇を回避するための措置として代表的なものは、希望退職者の募集です。それは、この希望退職者の募集をすることで、自発的な退職者があれば、会社からの一方的な労働契約の解除である「解雇」をしなくて済むからです。
 この希望退職者の募集の措置の実効性を上げるためには、何らかのインセンティブが必要です。その一つが退職金の割増しです。希望退職に応じた場合には、通常の退職金よりも有利な、つまり高額な退職金を支払うというものです。
 このときに退職金の上乗せがあるためには、希望退職に応じる場合の条件であって、希望退職者募集の条件に合致しない退職の場合には退職金の上乗せは無いことになります。ここでトラブルの可能性が出てきます。
 例えば希望退職者の募集人員に対して、それを越える希望退職の応募があった場合です。希望退職は募集人員をあらかじめ決めていて、その人員を超える応募があった場合の対象者の選定については、客観的な判断基準が無いと、トラブルの原因になります。
 また、特定部門の閉鎖に伴う希望退職者募集の場合に、その特定部門に所属していた従業員に対してだけ希望退職者の募集をしていたときに、他の部門で退職者には退職金の上乗せは無いことになりますが、これは公正な取扱といえるのかどうか、という問題もあります。
 これに関しては、希望退職者募集の範囲が適切かどうか、という点が問題になります。例えば、対象となった特定部門の従業員の、他の部門への配置転換が可能である場合には、他の業務部門での希望退職者募集についても解雇回避措置として実施すべきという考え方もありますが、希望退職者の募集を広く行うことによる人材流出などの問題もあり、一概に全社規模での希望退職者募集が必要かどうかの判断は困難です。
 ちなみに希望退職者の募集対象ではない従業員からの退職に対しては、裁判例でも退職金の上乗せ部分の請求は認められないと考えられています。


●特定部門の閉鎖に対する解雇回避努力義務●

2012年12月28日 08時16分40秒 | 労働法

 整理解雇は会社の一方的な都合による解雇であることから、普通解雇と比べて有効性判断が厳格になっています。具体的には、整理解雇の4要件(業務上の必要性、解雇回避努力義務、被解雇者選定の合理性、協議・説明責任)を満たしていることが必要になります。この4要件のうち、解雇回避努力について、会社はどの程度の措置をとるべきかが課題です。
 例えば、会社に複数の事業部門がある場合に、そのうちのある特定の部門を閉鎖するとしたとき、その対象となった部門に属する従業員に対しては、配置転換の検討や希望退職を募集するなどの措置が必要になります。
 このときの配置転換については、これまで人事異動などでの配置転換がどのように行われてきたのかが重要になります。例えば、人事異動によって配置転換が活発に行われてきたのであれば、配置転換ができる可能性が高いと判断できます。しかし配転先で余剰人員が発生している場合など、状況に応じて判断しなければならないでしょう。
 またこれまで配置転換が無かったとしても、業務の内容から配置転換が容易と判断できる場合には、やはり配置転換によって解雇を回避することが強く求められることになります。
 またこの場合の希望退職者の募集については、対象となった部門に属する従業員に対してだけ行えばいいのか、あるいは全社規模で行う必要があるのかが課題です。これについても配置転換と同様、対象部門と他の部門との関連性が問題となります。他部門での希望退職募集による欠員に、対象部門の従業員を配置転換させることができなければ意味が無いからです。
 しかしこの希望退職者の募集に関しては、会社として必要な人材が流出する可能性などの別の問題もあり、どこまで希望退職者の募集をすべきかは、対象部門との関連性や、リストラの緊急性の程度などが考慮されることになります。つまりリストラに経営危機などの緊急性が低い場合には、解雇回避努力義務もより強く求められることになるからです。