一週間前の土曜日、私が居候しているレイキャビクのネス教会と「ホライゾン」という文化団体が協働して「アシュラ祭」を祝いました。百三十〜五十人が集まり盛況となりました。
「ホライゾン」というのは実は主体がトルコ出身のムスリムの人たちです。ちょっと複雑なのは中心メンバーはそれでもトルコ人ではなく、デンマーク人であることです。つまりは彼らの親がトルコからデンマークに移住し、彼らはそこで生まれたということ。皆、デンマーク語もトルコ語も話すバイリンガルです。
もちろんトルコ出身の人もいます。「トルコ系」ということではアイスランドに七十人くらいいるのだそうです。日本人とトントンですね。
私は先の夏からこのホライゾンの人たちと知り合っていたのですが、「十一月にトルコでは『アシュラ』という祭りを祝うのだが、教会の人たちと共に祝うことはできないだろうか?」と持ちかけられました。
このアシュラ、イスラムでもトルコなど多数派のスンニ派とイランなどのシーア派では大分違いがあるようです。シーア派ではかなり感情的な祭儀のようで、男性は自らの背中をナイフの先などで傷つける血生臭いおどろおどろしいものなのですが、トルコではどうも大分事情が異なっているようです。
ホライゾン版の「アシュラ」Ashuraというのはノアの箱船のお話に関係しているものだということです。ノアの箱船はトルコのアララト山に到着したという伝説があります。そしてノアが洪水のあとで陸地を見つけた時、彼は箱船内に持っていたすべての食材を混ぜてプディングを作って祝ったのだそうです。
私はこの「アシュラ」、古代インドの神で後に仏教にも入り込んだ阿修羅とも関係があるのかと思ったのですが、まったく縁はないようです。
このごちゃ混ぜプディング、なぜか味は美味だったそうで、トルコではこの祭りにごちゃ混ぜプディングを作り、近所に配ってまわる習慣があるのだそうです。そして現在ではこのごちゃ混ぜのアシュラプディング、人間の多様性と同時にまとまりを表すシンボルとしても見られているとのことです。
アシュラ「ごちゃ混ぜ」プディング
以前にも書いたことがありますが、現在アイスランドではイスラム教に対する偏見と嫌悪が増加しています。レイキャビクでのモスクの建築はホットな議論の対象で、反モスクのサイトには五千人もがLikeを押しています。
問題なのはモスク反対だけではなく、「中東に核を落とせ」とか「エボラ熱はムスレムへの祝福だ」などというとんでもない言葉が飛び交ってしまっています。
そういう中で教会ももっと積極的にムスレムとの友好対話を進めるべきだ、と私や周囲の教会関係者は思っている矢先だったので、このアシュラ祭を協働して進めることになりました。
「アシュラ祭」でのスピーチ(一部英文法に誤りあり。悪しからず)
話しはトントン拍子に進み、この機会にわざわざトルコからゲストが来てくれることにもなりました。ひとりは「セーマ」という伝統的かつ宗教的なトルコの踊りを披露してくれるダンサー。男性です。しかもオッさん。修行僧のように見えるのですが、本業はなんと不動産屋さんとのこと。
セーマという踊りは非常にシンプルなのか、あるいは非常に奥が深いのか、ただグルグル回るだけなのです。一曲七、八分はあるかと思うのですが、ずっと同じ場所で回るばかり。それ用の衣装を着て舞うのですが、それなりに見栄えはします。(失礼 m(_ _)m )
セーマの踊り手は「セーマゼン」と呼ばれます。
その他にふたり、「エブル」という非常に珍しい美術を披露してくれる男性が来てくれました。このエブラは水面に絵の具のようなものを流して、それを紙に反転させる絵画でとても面白いです。
先生たちは前日の金曜日の夕方からネス教会に来てくれ、教会の若者たちにこのエブルの手ほどきをしてくれました。若者たちも喜んで習っていましたし、土曜日の本場でのデモンストレーションでもお客さんが群がっていました。
エブルの講習
完成品 水の上に絵の具を落として描いたとは!
そしてさらにホライゾン関係の女性軍が中心になって百五十人分のアシュラ「ごちゃ混ぜ」プディングと、さらにトルコのスウィーツやケーキ、クッキーなどが祭りに供され、皆大喜び。私もアシュラを初めていただきましたが、「まあ、そうだろうな」という味でした。(失礼 (^-^; )
アイスランド人はこういう機会に食すのがホントに好きです
アイスランド在住の移民の人たちもかなり参加してくれ、結果としては非常に良いものがあったと思います。私は呼びかけ人三人組のひとりだったので、ホッとしました。
祭りは終わればもちろん後片付けが続きます。朝から準備が始まって、本番は三時から五時。お客さんが帰ったのが五時半。片付けが終わったのが七時前でしたが、疲れたー。その後三日間疲れたままでした...
でも私の目的、つまりイスラム教への不当な偏見に異を唱えて(イスラム教界に問題がないといっているのではありませんよ)、きちんとした関係を築くには日頃からの努力が不可欠になります。焦らずに一歩一歩ですね。
まだまだ凄い。国営放送の火山の英語情報はこちら。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
「ホライゾン」というのは実は主体がトルコ出身のムスリムの人たちです。ちょっと複雑なのは中心メンバーはそれでもトルコ人ではなく、デンマーク人であることです。つまりは彼らの親がトルコからデンマークに移住し、彼らはそこで生まれたということ。皆、デンマーク語もトルコ語も話すバイリンガルです。
もちろんトルコ出身の人もいます。「トルコ系」ということではアイスランドに七十人くらいいるのだそうです。日本人とトントンですね。
私は先の夏からこのホライゾンの人たちと知り合っていたのですが、「十一月にトルコでは『アシュラ』という祭りを祝うのだが、教会の人たちと共に祝うことはできないだろうか?」と持ちかけられました。
このアシュラ、イスラムでもトルコなど多数派のスンニ派とイランなどのシーア派では大分違いがあるようです。シーア派ではかなり感情的な祭儀のようで、男性は自らの背中をナイフの先などで傷つける血生臭いおどろおどろしいものなのですが、トルコではどうも大分事情が異なっているようです。
ホライゾン版の「アシュラ」Ashuraというのはノアの箱船のお話に関係しているものだということです。ノアの箱船はトルコのアララト山に到着したという伝説があります。そしてノアが洪水のあとで陸地を見つけた時、彼は箱船内に持っていたすべての食材を混ぜてプディングを作って祝ったのだそうです。
私はこの「アシュラ」、古代インドの神で後に仏教にも入り込んだ阿修羅とも関係があるのかと思ったのですが、まったく縁はないようです。
このごちゃ混ぜプディング、なぜか味は美味だったそうで、トルコではこの祭りにごちゃ混ぜプディングを作り、近所に配ってまわる習慣があるのだそうです。そして現在ではこのごちゃ混ぜのアシュラプディング、人間の多様性と同時にまとまりを表すシンボルとしても見られているとのことです。
アシュラ「ごちゃ混ぜ」プディング
以前にも書いたことがありますが、現在アイスランドではイスラム教に対する偏見と嫌悪が増加しています。レイキャビクでのモスクの建築はホットな議論の対象で、反モスクのサイトには五千人もがLikeを押しています。
問題なのはモスク反対だけではなく、「中東に核を落とせ」とか「エボラ熱はムスレムへの祝福だ」などというとんでもない言葉が飛び交ってしまっています。
そういう中で教会ももっと積極的にムスレムとの友好対話を進めるべきだ、と私や周囲の教会関係者は思っている矢先だったので、このアシュラ祭を協働して進めることになりました。
「アシュラ祭」でのスピーチ(一部英文法に誤りあり。悪しからず)
話しはトントン拍子に進み、この機会にわざわざトルコからゲストが来てくれることにもなりました。ひとりは「セーマ」という伝統的かつ宗教的なトルコの踊りを披露してくれるダンサー。男性です。しかもオッさん。修行僧のように見えるのですが、本業はなんと不動産屋さんとのこと。
セーマという踊りは非常にシンプルなのか、あるいは非常に奥が深いのか、ただグルグル回るだけなのです。一曲七、八分はあるかと思うのですが、ずっと同じ場所で回るばかり。それ用の衣装を着て舞うのですが、それなりに見栄えはします。(失礼 m(_ _)m )
セーマの踊り手は「セーマゼン」と呼ばれます。
その他にふたり、「エブル」という非常に珍しい美術を披露してくれる男性が来てくれました。このエブラは水面に絵の具のようなものを流して、それを紙に反転させる絵画でとても面白いです。
先生たちは前日の金曜日の夕方からネス教会に来てくれ、教会の若者たちにこのエブルの手ほどきをしてくれました。若者たちも喜んで習っていましたし、土曜日の本場でのデモンストレーションでもお客さんが群がっていました。
エブルの講習
完成品 水の上に絵の具を落として描いたとは!
そしてさらにホライゾン関係の女性軍が中心になって百五十人分のアシュラ「ごちゃ混ぜ」プディングと、さらにトルコのスウィーツやケーキ、クッキーなどが祭りに供され、皆大喜び。私もアシュラを初めていただきましたが、「まあ、そうだろうな」という味でした。(失礼 (^-^; )
アイスランド人はこういう機会に食すのがホントに好きです
アイスランド在住の移民の人たちもかなり参加してくれ、結果としては非常に良いものがあったと思います。私は呼びかけ人三人組のひとりだったので、ホッとしました。
祭りは終わればもちろん後片付けが続きます。朝から準備が始まって、本番は三時から五時。お客さんが帰ったのが五時半。片付けが終わったのが七時前でしたが、疲れたー。その後三日間疲れたままでした...
でも私の目的、つまりイスラム教への不当な偏見に異を唱えて(イスラム教界に問題がないといっているのではありませんよ)、きちんとした関係を築くには日頃からの努力が不可欠になります。焦らずに一歩一歩ですね。
まだまだ凄い。国営放送の火山の英語情報はこちら。
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