肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ラスト、コーション』、観ました。

2008-09-29 21:53:08 | 映画(ら・わ行)





監督:アン・リー
出演:トニー・レオン、タン・ウェイ

 『ラスト、コーション』、観ました。
1942年の上海。日本軍の占領下にある傀儡政府スパイのイーは、かつて香港で
出会った女性ワンと再会する。ごく普通の女子大生だったワンは、抗日運動に
燃える仲間たちに触発され、イーの暗殺計画に加わっていた。イーが上海に戻り、
計画は実行されなかったが、組織は再びワンにイー暗殺計画への協力を求める。
任務を請け負ったワンはイーに近づき、彼の愛人になるのだが…。
 台湾の監督が撮った、中国を舞台にした映画なのに、ちっとも東洋らしくない。
西洋風で品の良い室内装飾、オシャレなカフェテリアの佇(たたず)まい、チャイナ
服に代表されるモダンなファッションの数々‥‥、それは普段から我々が“中国を
イメージ”するのとは掛け離れ、そこにはおよそ中国らしからぬ(?)“洗練された
空間”が広がっている。まぁ、それが“真の中国の姿”かという議論はさておいて、
ここではアン・リーの作り出す“映像美”の方に酔いしれたい。特に“戦争の
リアリズム”に主観を置いた映画でもあるまいし、これはこれでアリだと思うよ。
 一方、内容の方はといえば、その美化され過ぎた映像とは対照的に、激しい
性の描写と、ドロドロした男女の愛憎とがネチッこく展開される。これまたアン・
リー監督らしいところだろう。過去のアン・リー作品を振り返ってみても、前作の
『ブロークバック・マウンテン』は、今にも増してホモセクシュアルに対する偏見が
横行し、閉鎖的だった時代に展開される、男同士の愛の行く末が――、そして、
この『ラスト、コーション』では、戦争で敵と味方に分かれた男女の間に芽生える
禁断の愛が描かれている。両者に共通するのは、その背景にある“時代”に
翻弄され、その時代の大きな波に“2人の小さな愛”が飲み込まれていってしまう
“残酷な現実”にある。本作に限ってみると、男は周囲の誰も信用できない
“孤独”を――、女は愛する男性の願う大義のために我が身が穢れていく“哀しみ”を
抱かえている。やがてスクリーンでは、普段の紳士を装う男からは想像出来ない
“獣のような愛し方”、それに屈辱を感じながらも徐々に受け入れていく女の姿――。
ひとつ間違えると単なるエロ描写になってしまうのだが、両者の蓄積された“心の
空虚が爆発するが如く、激しく求め合う様は、観ていて息が苦しくなる。それと、
この映画では人物の発するセリフ以上に、様々な場面のシチュエーションや身に
付けた道具のひとつひとつから行間を読む作業が必要になってくる日本料理店で
女が歌う中国の歌に遠い故郷を想い、涙する男の姿――。又、愛の終わりと共に、
贈り主の元へ返された高価な指輪――、行き先を失った指輪が放つ“5カラットの
輝き”が男の目にはどう映ったことか。そのことに想いをはせ、流れゆくエンドロールを
眺めながら、ボクの脳裏に男の言ったある言葉が思い出される、「わたしは指輪には
興味がない。その指輪をはめるキミが見たいんだ」と。



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