徒然草Ⅱ

「アッ!」「イイねえ!」「ウッソー!」「エーッ!」「オおぉ!」ということを書きたい!?
(読書日記備忘録を中心として)

那須雪崩事故の真相 銀嶺の破断

2019年07月15日 | ノンフィクション


書名   那須雪崩事故の真相 銀嶺の破断
著者   阿部 幹雄
発行社 山と渓谷社
発行年  2019年6月15日
頁     302
価格   1,600円 + 税

なぜ、雪崩の危険性が高い急斜面を登ったのか。
雪崩は自然発生か人為発生か。
真実を知りたいと願う遺族たちは不満を募らせたままだ。
生存生徒たちへの聞き取り調査から、
私がたどり着いた結論は「雪崩は人為的に発生した」
というものだった。
(本文から)

高校生ら8名が死亡、40名が重軽傷を負った那須雪崩事故を徹底的、かつ多角的に検証した渾身のノンフィクション。

2017年3月27日、那須温泉ファミリースキー場周辺でラッセル訓練を行なっていた高校生らに雪崩が襲いかかり、
栃木県立大田原高校山岳部部員7名と顧問の教員1名が死亡した。
彼らは、栃木県高体連登山専門部が主催していた「春山安全登山講習会」に参加、雪崩に巻き込まれた事故だった。

一瞬のうちに悲劇のどん底に突き落とされる雪崩事故は、あとを絶たないが、
今回の事故は、雪崩注意報が出されていたにもかかわらず、
雪崩の起きそうな斜面に生徒を誘導した、起きるべくして起きた雪崩故だった。

著者の阿部幹雄氏が雪崩事故の発生の経緯からその原因を丹念に追跡し、長く困難な取材の末にたどりついた結論とは。

(内容)
第一章 十四人の隊列
第二章 消えた痕跡
第三章 真実を知りたい
第四章 隠された雪崩事故
第五章 弱層は板状結晶
第六章 雪崩発生
第七章 救えなかった命
第八章 生存生徒の証言
第九章 銀嶺の破断
第十章 親の願い、少年の夢

出版社からのコメント

(「あとがき」より)
真実を知りたいとこの二年、那須雪崩事故の取材を続けた。
雪崩は人為発生というのが、私がたどりついた結論だ。
しかし、科学的な裏付けが必要だ。研究者の新たな検証を待ちたい。
検証には、二班真岡高校の渡辺前委員長と生徒たちの証言が重要になる。
私は今まで、多くの雪崩事故を取材してきた。
雪崩発生のとき異変を感じ、前兆現象を見た人が多い。
しかし、二班九人は異変や前兆現象について何も語っていない。

人が斜面に入ったため雪崩が発生したと考えるなら、
一班大田原高校が誘発したのか。二班真岡高校が誘発したのか。新たな疑問が生じる。
吹き溜まり斜面へ十四名が入っていった一班大田原高校。
吹き溜まり斜面下方を九名がトラバースした二班真岡高校。
雪崩を誘発した班を特定することより、雪崩の危険性が高い斜面へ登った講習会のあり方が問題なのだ。
『那須岳雪崩事故の真相』という番組を北海道テレビ放送(HTB)で制作し、テレビ朝日系列で放送した。
私は本とテレビという二つの手段で、より多くの人に那須雪崩事故を伝えたいと考えている。

防災科学技術研究所が無人飛行機で撮影した高解像度の写真。
この写真を画像処理するとラッセル痕跡や破断面の痕跡が浮かび上がった。
テレビでは動きがあるCGを使って説明した。
本はカラーではなくモノクロ写真のため、痕跡が鮮明に見えない。
工夫をしたつもりだが、読者はいまひとつ理解できないかもしれない。
けれどもこの写真から、私は真相にたどり着くことができた。
現地調査、気象の解析はじめ、防災科学技術研究所の研究者たちの努力と協力に深く感謝したい。

真相へ迫ることができたもう一つの理由は、生き残った大田原高校の五人の生徒が誠実に話をしてくれたからだ。
雪崩に流されて埋没、低体温症に陥り、負傷。彼らは亡くなった仲間の最期の姿を見ている。
生きていることを責め、自分たちの無知を責め、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいる。
それでも語ってくれた。
彼らは那須雪崩事故が人々の記憶に留まり、雪崩事故防止を願っている。
私は彼らの勇気を称え、彼らの協力に感謝する。

・「春山登山安全講習会に参加した高校山岳部」

  ・県立 大田原高校

  ・県立 真岡高校

  ・県立 宇都宮高校

  ・県立 那須清峰高校

  ・県立 矢板東高校

  ・私立 矢板中央高校

  ・県立 真岡女子高校

・山における自己責任とは、生きて還ることだ。



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