書名 ミッドナイト・バス
著者 伊吹 有喜
発行社 文藝春秋
発行年 2014年1月25日
頁数 445頁
価格 1,800円+税
東京での仕事に挫折し、故郷で深夜バスの運転手として働く利一。
あるとき乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。おだやかな筆致で描かれる、家族の再生。そして再出発。
バブル期に東京でサラリーマンだった主人公の利一が、いまは東京と新潟をつなぐ深夜バスの運転手をしている。
別れた妻、何かの事情で仕事を辞めて帰郷した息子、人気コスプレアイドルの娘、祖父、それぞれの恋人、過去に人気があったミュージシャンなど、
何かを抱えながらも必死に生きているそれぞれ登場人物が、深夜バスがひっそりと夜の町を繋いでいくように、物語の中で繋がっていく。
・「結婚より・・・離婚のほうが、はるかに大変だった。」
・親であっても立ち入ってはいけない領域がある気がした。
・母親がいたら、親がしっかりしていたら、何の屈託もなく、自由に生きられたろうか。
・ミッドナイド・ブルー
・「今、歩み寄らなければ、いつまでも溝は埋まらん」
・あのときが一番輝いていた。
・この暗がりをずっと走ってきたんですね。あなたは。
たった一人で。家族のために。
・あなたが一人で見続けた風景を二人で見にいこう。
・自分たちのせいで、子どもたちの心に傷を負わせたのだろうか。
・年って後ろ姿に出るのね。それを見たら、せつなくなってきた。悲しいけれど・・・。
・今際の際(いまわのきわ)に後悔する・・・。:死に際
・「どうして僕らは、もっと早く・・・ばらばらになる前に、うまく立ち回れなかったんだろうね。鳥でさえやれることを、どうして僕らはやれなかったのだろう」
・「どうして別れたんだろう。どうして離れてしまったのだろう」
・違う場所で、同じ分の歳月を、この人も生きていた。
・「”私の人生にあなたは、もういらない”って言われた。お前は、いらなって言われるのは、こたえるね。」
・「置いていったわけでも、逃げたわけでもない。ただ、道が分かれただけだ。
どこかで交差しようと望めば、また会える。生きてさえいれば。」
私たちの道は、二度と交わらない。
「そうだとしても、子どもたちへの道だけは、絶たないでくれ。」
・同じバスに乗り合わせ、明日へと夜を越えていく。
・たとえ今が夜のなか、先が見えない暗がりの中にいたとしても。
そんな時をいくつも越えてここまでやってきた。そして今夜も越えていく。
・走り続けたこの先には、いつだって、きれいな朝が待っている。