あいらしく、りりしい野生の雪だるまの女の子雪子ちゃんの毎日には生きることのよろこびがあふれています。著者が長年あたためてきた初めての長編童話にオールカラーの銅版画を添えた宝物のような1冊。
江國香織&山本容子。何て素敵なコラボレーション。
装丁もご機嫌です。児童文学も。こうでなくっちゃ~。大人な感性を育くみます。
デュークもこのステキだったけど。お二人とも私の憧れの女性だ。生き方も、感性。私は、真似できっこないけど(そうするつもりはもともとないわけだが)女性の素敵な部分。女性にもある。ピュアな内面。どろどろしたものではなく。大人になっても忘れない、妖精のような。鉱物の輝きのような。そういった感性が好きだ。そういうものを、文章で表現するのか版画の世界で表現するのか。あるいは、音楽、写真。料理。手芸。陶芸。染織。様々なジャンルで、何かしら。表現することは可能だと思う。
そういう部類に属する。貴重な方々です。自分の好きを追求する。感性を育む。とても影響を受けたい女性。です。お二人とも。
そういった、お二人が。児童文学の童話。の分野で。作品を創り上げた。といった方がわかりやすいかも知れません。
時に、現実をはなれ、お話の世界。に心を置くことは、大人になっても、いや、大人だからこそ。私にとって大切な心のエッセンス。かな。
野性の雪だるまは、そもそもみんなひとりでこの世に生まれてくるのですが、両親は記憶の中にいます。心の中だけにいる家族。
お父さんはいう「こわがるのは、いいことだよ。注意深い方が不注意よりもずっといいだろ?でもね、雪だるまにとって、こわいからといって凍りつくのは致命的なことだ。いのちにかかわるくらい危険だってこと」
「こわいと思ったら、力いっぱいにらみなさい。にらんで、それがどの程度危険なものなのか、推し量るんだ。それが野生動物のやり方だからね。おちついて、強い気持ちでにらみつける。だいじょうぶ、りっぱにやれるさ。お前には野性の雪だるまの血がながれているんだから」
「雪子はこわがりなわけじゃなく、慎重なだけだよ」お父さんがそう言ってくれるのを聞くと、いつもほっとしたものです。
闇の中に白く浮かびあがる。滝というより切り立った崖。雪と氷でできたお城のようでもあるし。広がったすそのは、真っ白なドレス。しぶきが凍っているのです「深遠な気持ち。深くて遠いっていうこと」さびしいというのとは少し違う
本というのはたいていみんな、ひらかれるのが好きなものです。静かな部屋のなかに、ぱらり、という音がひびくとき、本がうれしがってため息をついているように思われるのでした。
きっぱりとした子供というものは、いつだっておおげさな言葉づかいをするべきなのでした。すーごくさびしいとか、とってもさびしくてたまらない、とか。
夏の間の永い眠りから目覚めた雪子。ザブンざわわ。…。きょうも波が高く、海水はにごった土色。つめたい風邪。サブンざわわ。音を聞いているだけで力が湧き、自分が波の一部になった気持ちがします。大きな、つめたい、力づよい波。サブンざわわ。水はやわらかく、くだけてもまたもとにもどります。雪子ちゃんからくすくす笑いがもれだします。くふふ、うくく、ははは、あはは、ザブンざわわ。あははははは。声が風景の一部になって、すっかりその場所にとけこむ…。
記憶のお父さんの言葉。が何でも興味関心があってどんどん、前に進む野性の雪だるまの雪子ちゃんを勇気づけます。
雪子ちゃんを見守る。画家の百合子さん。人間のおともだち。野生動物たち。みんな優しく溶け込んで。すてきな世界が広がります。