本書は、新聞か何かの書評で薦めていたのを、何気なく買って読みました。『もの作り大学』設立にからんだKSD事件というのをご記憶でしょうか。当時の超大物政治家、自民党参議院のドンといわれた、村上正邦氏が証人喚問を受けた上、逮捕され、大騒ぎになりました。
村上氏と言えば、数年前、小渕当時首相が病に倒れたおり、密室で後継総裁を森氏にすることに決めたと言われる、いわゆる『5人組』の一人です。あまり評判の良い政治家ではありませんでしたが、毎朝、靖国神社に参拝するのを日課にするほどの愛国者だそうです。
村上氏は国会で、もの作り大学に関して質問をするように、KSD側の故古関氏(贈賄、有罪確定)から請託を受け、その見返りに5000万円をもらったということで逮捕されました。贈った方は認めていましたが、村上氏は逮捕当時から一貫して5000万円をもらったことは否定し続けました。もちろん世論は『どうせもらったに決まっている』となっていました。
本書はその事件の経緯をずっと追い、多くの証言の矛盾や、検察の不可解な捜査方法から『村上は白』という確信を持ち、“法廷ノンフィクション”という形で事件を描きます。取調べや裁判の証人尋問のシーンは圧巻で、時間を忘れて読みふけりました。公平中立というのではなく、検察特捜部に批判的です。
もし本書が事実だけを書いているとしたら、検察というより、国中が騒いで冤罪を作り出したことになりますから、もっと本書はさまざまなところで話題になってよいと思うのです。筆者には“お抱えご用ライター”とか“魂を売った”とかいう厳しい批判もあるようですが、そのような言葉は権力者の側に媚びている人に使うのであって、筆者のように、すでに議員でもない一被告の側に立っている人にはあまり使わないのではないでしょうか。
宮本氏がどのような方かは知りませんが、一応新聞記者として、ゼネコン汚職をスクープし、新聞協会賞まで取った経歴もあるようなので、民主党にニセメールを持ち込んだようなフリーライターとは違うのではと思っております。
佐藤優氏の『国家の罠』『国家の自縛』を読んでおりましたので、検察という組織に対して、興味があり、その分夢中になって読みました。国策捜査という言葉が頭に浮かびました。ちなみに実際の裁判では1審、2審とも勝てませんでした。
ネットでいろいろ調べようと思いましたが、KSD事件や村上氏の名前で検索してもあまり詳しい情報がありません。イヤな感じがしました。法律のことは全くわかりませんが、日歯連の1億円はどうなんでしょう。村岡氏は無罪になりましたが、青木、橋本、野中の各氏は確実に1億円もらったのに逮捕すらされてません。
http://tokkun.net/jump.htm
真実無罪―特捜検察との攻防角川学芸出版詳 細 |
タイトルは月刊「日本」20006.3月号に掲載された佐藤優氏の8ページにわたる論文のタイトルです。ここで佐藤氏は村上正邦氏について「真実無罪」の記述などを紹介しながら1ページにわたり述べています。
佐藤さんは直接村上氏の人柄に触れる機会があったとのことです。鈴木宗男氏と同じ、ヘーゲルが述べているような「歴史的個人」で、自己の信念に基づいて」一路曽野目的に突進する」タイプと書いています。
また、「月刊日本」で鷲見一雄氏が「村上元労相に逆転無罪の可能性」05/6月号、宮本雅史氏が「調書偏重の刑事裁判を糾弾する!」06/2月号で説得力に富んだ議論を展開しているので、是非参照していただきたいとのことです。
月刊日本は森田実氏のHPで知り、本屋で探してもなかたのでその顛末を私のブログで記事にしたことあります(佐藤優氏著作集第?!)が、結局私は過去にさかのぼっていろいろ見たかったので国会図書館でさがしてコピーを取った次第です。そのとき2月号の宮本氏記事も目にしました。「真実無罪」の件知っていたらコピーをとったのですが、、、またの機会ですね。
本書を読んでから、宮本氏のことが気になって、また今、別の著作を読んでおります。これからも何か情報がありましたらよろしくお願いします。