2021年11月21日に「木の実くさの実たねしらべ」という子供向けの観察会をしました。
参加者の感想は こちら
今年は果実が少ないので、ちょっと難しいかもしれないという気持ちがありましたが、それなりに楽しくやろうと思っていました。
コンビニの駐車場に集合しました。少し寒く感じました。前回の反省として、子供に走らないこと、柵を超えないことを伝えました。
歩き出すと早速子供が果実を見つけました。ネズミモチでした。
「小さい果実をネズミのお餅みたいだというわけです」
「えー、ネズミのもちなんて食べたくない」と男の子。
その後すぐにナンテンが見つかりました。
「ナンテンは南天と書きます。きれいなので庭にも植えられますが、野生植物です。果実の周りに果実を支える軸があります。これは鳥が食べてしまった残りで、少し前にはもっとたくさん実が付いていたんです」
「ヘェ〜」
あまりないと思っていましたが、ムラサキシキブ、ヘクソカズラ、スイカズラなどが見つかりました。
ムラサキシキブの果実
「ヘクソカズラなんてひどい名前だよねえ。ヘってオナラだし、クソはウンチだもんね」
「スイカズラは忍冬と書きます」
「え、そうなんだ。読めないよね」
「冬になると葉っぱが落ちて、草は枯れてしまうけど、これは冬遅くまで頑張って葉をつけているので冬を耐えるってことね」
そうしてゆっくり歩きました。
「まだ50メートルも歩いていません」
果実が少ないとはいえ、説明しながらですから、なかなか進みません。でも早く進むことが目的ではないのだからそれでいいのです。
果実の説明をする
コナラの切り株がありました。
「今年はこの辺りのコナラの木がナラ枯れになりました。カシノナガキクイムシという小さなムシのせいです。驚いたことに、メスは背中にくぼみがあって、そこにキノコのような菌類を入れて、木の中にあけたトンネルの中でこのキノコを栽培し、それを幼虫が食べるのだそうです」
「ヘェ〜」
「オスは春になると木から出て、他の木に行き、フェロモンを出して他のオスを呼び寄せてトンネルを掘ります。そのために、樹液が流れなくなって木が枯れます」
「この切り株はナラ枯れが起きたために伐採されました。木が生きているのは樹木の外側だけで、内側は死骸なんです。夏に育って冬に休むから年輪ができます。これが2020年、2019年、・・・・、この辺で生まれた人もいます」
笑い
「お父さん、お母さんはこの辺、私はこの木と同じくらいです」
あるお母さんが聞きました。
年輪を調べる
「年輪が狭いところがあるみたいですが・・・」
「はい、木も若い時は背が低いので、林の下の暗いところで少しずつ育ちます。その時は年輪幅は狭いです」
「この部分が張り出しています。これはこの木が育つ間に、こちら側で周りの木が倒れるなどの出来事があり、枝を伸ばし葉がたくさん生えたために成長が良くなって年輪幅が広くなったのです」
「はあー」
「年輪をこの高さだけでなく、木の違う高さでとって調べると、高さによって年輪幅や向きが違うので、何が起きたかがわかります。この木の履歴書のようなものです」
「私は先週鹿児島に行きましたが、飛行場にヤクスギを切った円盤が置いてありました。直径は1メートルを遥かに超えていて、細かい年輪がぎっしり詰まっていました。なんと年齢は2400年だそうです。キリストよりずっと前です」
「すごーい!」
「熱帯の木は年輪がないんですよね?」
「はい、冬がないから木は休みなく太るので年輪はできません。熱帯では同じ木が花を咲かせるのと、果実がなるのが共存します」
とどんどん盛り上がっていきましたが、
「ねえ、もっと木の実を探そうよ」
と男の子が言ったので、
「そうだね、では切り株の話をしているとキリがないのでこのくらいで・・・」
その後、いくつか見つけた果実も追加し、鷹野橋の近くにきたときに、子供がアオツヅラフジを見つけました。
「あ、いいものを見つけたね。このタネはとても面白い形をしているので、取り出してみてください」
「あ、ほんとだ」
「私にはアンモナイトに見えます」
アオツヅラフジを見つけた
アオツヅラフジの果実と種子
それからうさぎ橋を渡って中央公園に達しましたが、時間が経ったので津田塾大学公民館に行くのは諦めて公園で作業をすることにしました。私は公園の駐車場に教材類を置いていたので、とりに行き、その間にドングリを拾ってもらいました。
ドングリを拾う
公園にはドーム状の丘があるので、その上で説明と作業をすることにしました。
丘の落ち葉
初めに今日見た果実のリストをあげ、赤と黒の果実が多く、大体が直径5-10 mmの大きさであることを確認して、それが鳥に食べてもらうためであること、動物は美味しい果実を食べたと思っているが、果実が美味しいの植物が種子を運ぶためで、植物に使われているのだという話をしました。
鳥に食べられて種子を広げる果実を説明する。
次に、持参していた3種の風散布種子を紹介しました。まずシナノキです。羽のついた果実です。
オオモクゲンジ(楕円形)とシナノキ(こげ茶色の細長いもの)の果実
オオモクゲンジの果実
オオモクゲンジの果実を分けたもの
持ってきた「タネ飛ばし棒」で飛ばすことにしました。この棒は昆虫採集用の捕虫網で伸縮式になっています。その先端にタッパーの箱の半分を切ったものをテープで留めたものです。
「タネ飛ばし棒」の先端部
これを伸ばして私が手を伸ばすと4メートル近い高さになります。
房の先のタッパーに果実を入れて・・・・伸ばすと高くなりました。
シナノキはくるくる回って落ちました。
「うまくいったね、ではこれはおみやげにするから一つずつとってね」
というとみんなが集中して取り合いになりました。
次にオオモクゲンジの果実でもデモをしたら、ヒラヒラと落ちていきました。
オオモクゲンジの果実が落ちるのを見る
オオモクゲンジの果実(3つに分けたところ)
最後にアオギリでおこなったら、やはり一番大きく、ゆっくり回転するので歓声が上がりました。
それから私が考えたアオギリ模型の作り方を説明しました。
アオギリ模型の作り方。この説明ではわかりませんが、最後のところは「スプーン」の取手の上部にあたる部分を下向きに折り曲げることで、空気抵抗を大きくするという意味です。
まず、折り紙を半分に切ります。それから片方に5cmほど切り込みを入れ、そこを合わせるように重ねて糊付けします。これでスプーンのすくう部分ができます。そして片側にクリップをつけ、上の部分を織り込んで空気抵抗を大きくします。これで完成です。これも棒に乗せてデモをしたら、うまくクルクルと回って拍手が沸きました。これは、自然界のものの原理を理解してそれを再現させるという意味で教材として優れていると思います。そして遊び要素もあるので、楽しみながら学ぶという意味でも適しています。ぜひ使ってもらいたいと思います。
さっきとったオニドコロもオオモクゲンジのような作りなので、種子を取り出してやってみると、回転しましたが、小さすぎて回転が速く、わからない人もいました。
お母さんの一人がユリノキの種子を持ってきていたのでそれで行うと、回転がよく見えて歓声が上がりました。
ここで、風散布のまとめをしました。
最後にドングリの説明をしました。
「ナンテンなどの果実は中に硬い種子を入れています。それを動物が食べて糞を出しますが、そこに種子が入っています。ドングリは種子としては飛び抜けて大きいものです。種子だから食べられたらそれでおしまいです。ボタボタと母樹から落ちて、これをリスやカケスに運んでもらい、これらの動物は「貯食」といって地面の下などに蓄えます。その後、一部を食べますが、一部を忘れるので、それが発芽します」
ドングリを使ってヤジロベエを作ることにしました。キリで穴を開け、竹ヒゴを通して完成です。人差し指で支えると左右にゆらゆらと揺れたので子供は喜んで
「僕も作りたい!」
「でも、キリは危ないから穴を開けるのは大人ね」
しばらくして「できた」「できた」と声が聞こえました。
中には真ん中のドングリを上下逆にして、尖ったところを木の枝のくぼみに入れている子もいました。
楽しく作業をしていましたが
「お腹がすいた」
という子もいたので、11時半過ぎでしたが、スケッチは省略することにし、観察会を終えることにしました。主催者のリーさんが
「はい、みんなでお礼を言いましょう、セーの・・・」
というと大声で
「ありがとうございました!」
といってくれました。それで解散としてもよかったのですが、ちょっと思いついて
「今日はありがとうございました。一つクエスチョン。先生の服にポケットがいくつあると思う?」
「ポケットはいくつかな?」
6つ、10といろいろな声がありましたが、数えると11ありました。そうしたら一人の子が私が腰につけていたカメラバッグにもポケットがあるというのでそれを数え、ジャケットの下に着ているシャツにもあるのに気づいて最終的に14個ということになりました。
「正解は14でしたぁ」
自然を楽しく学ぶという意味では良い観察会になったと思います。
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