マクロ経済そして自然環境

経済的諸問題及び自然環境問題に感想、意見を書く事です。基本はどうしたら住みやすくなるかです。皆さんのご意見歓迎です。

近未来の出来事 秘密法が出来たら原発調査なんて危険極まりない。

2013-11-30 15:25:13 | Weblog

以下毎日新聞電子版より引用(弁護士以外は全て仮名)

 

◆ケース<1> 原発の津波対策を調べる住民

 ◇「そそのかし」で有罪

 原子力発電所から3キロほど離れた集落で、自動車修理業を営む自治会長の加藤拓郎(57)は、住民のために原発事故対策を再確認したいと考えた。再稼働が迫っていたからだ。

 福島では、地下の非常用ディーゼル発電機が津波で水没して大事故を招いた。「ここではどこにあるのだろう」。電力会社に問い合わせたが「セキュリティー上の理由」で教えてもらえず、県や市の担当者も「電力会社に聞いてほしい」と言うばかりだった。

 話が進まない中、高校時代の剣道部の後輩で、地元警察署長に着任したばかりの佐川淳彦(55)の顔が浮かんだ。仕事上、警察との付き合いはある。あいさつに行った時、栄転に高揚した表情の佐川は「原発テロ対策が大変ですよ」と話していた。加藤は佐川の携帯電話を鳴らした。

 「原発の非常用発電機は津波にやられない場所にあるのかな」

 「……それね、言えないんですよ」

 「どうして?」

 「ほら、新しくできた法律がありますよね。特定秘密の。警備の関係で微妙なところもありまして……」

 納得いかない加藤は、支援する市議や面識のあった地元紙の鈴木幸恵記者(38)に問い合わせ、市民団体の勉強会にも参加して情報収集に努めた。しかし、非常用発電機の位置については分からないまま。

 一方、鈴木記者は加藤の奮闘を記事にして問題提起しようと考えた。だが、取材の壁も厚かった。旧知の市幹部は「それはほら、これになったから」と、口にチャックする仕草をしてみせた。

 加藤は佐川署長を居酒屋に呼び出し、再び切り込んだ。

 「どうして住民が知らされないんだ。真っ先に危なくなるのは俺たちだ。おかしいだろう。教えろ」

 気持ちが高ぶった加藤は思わずバン、とテーブルをたたいた。ビールのコップが床に落ちて割れた。

 「おっしゃる通りです。でも、私の立場も分かってください」。佐川はしばらく沈黙した後、こう付け加えた。「加藤さん、反原発の集会に出たりしてませんか。気をつけたほうがいいですよ」

 加藤がテロ防止に関する特定秘密の漏えいを「そそのかした」として、特定秘密保護法違反(教唆)容疑で逮捕されたのは、その数日後だった。県警本部の公安部門が加藤の行動を監視していたのだった。家宅捜索で携帯電話やパソコンを押収され、送受信記録の残っていた市議、市民団体幹部らも軒並み事情聴取を受けた。佐川は不定期異動で署長を外され依願退職した。

 鈴木記者も「念のため」と事情聴取され、捜査員に「加藤と共謀したのでは」と繰り返し尋ねられた。立件はされなかったが、夫と息子が心配する様子を見て、再び同じような取材をする気になれないでいる。

 加藤は起訴され、無罪を主張した。地元弁護士会が弁護団を組んで地裁での公判に臨んだものの、冒頭から水掛け論になった。

 検察官「被告人は特定秘密に指定されたテロリズムの防止に関する事項の入手を企図し、特定秘密取扱者に対し、先輩・後輩の関係を利用して威圧するなど、個人の人格を著しくじゅうりんする態様によってその漏えいを教唆したものである」

 弁護人「被告人が入手しようとした事項とは何ですか」

 検察官「特定秘密に指定されており、明らかにできません」

 弁護人「中身が何か分からなければ、被告人の行為を罰すべきかどうか裁判所が判断できませんよ」

 検察官「特定秘密に指定された情報であるから違法です」

 かみ合わないやり取りのまま結審し、判決は懲役1年6月、執行猶予3年の有罪。裁判長は「当該情報は、外形立証により実質的な秘密であると推認できる」と述べた。

 「外形立証」とは、情報の内容を明かさず、それが秘密として保護に値することを証明する手法だ。秘密指定の手続きが正当であることなどを立証すればいいとされる。

 控訴はしたい。だが、逮捕で収入は激減、人間関係にもひびが入り、加藤は途方に暮れるしかなかった。(毎日新聞)

    ◇

 

 

 

 

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