おもしろコラム

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黒田家三代(池田平太郎)

2011-01-13 16:34:24 | 読後通信簿
・当コラムでおなじみの池田平太郎の最新作。
・秀吉に恐れられた軍師・官兵衛が、礎を築いた福岡藩・黒田家。代々同じ葛藤が当主を苦しめる。才人たちが陥った深い闇が起こす、苦悩の顛末を描いた歴史長編。
・作者自身、家業が代々大工の棟梁であり、自身も家業である建設・不動産業に従事していることから、後継者問題について、自信の経験も重ねての黒田家の葛藤を解明かす展開が特に面白い。
・この小説を書くきっかけは、作者自身、福岡出身で現在も福岡侍従という、地元の歴史ということもあるが、少年時代父に連れられて見た「大坂夏の陣図屏風」に触発されたのだという。
< なぜ、今頃になって長政という人物についてる、いて書こうと思ったのかというと、きっかけは、一枚の屏風絵(大阪城天守閣に所蔵されている「大坂夏の陣図屏風」)の存在であった。
 この屏風絵は、別名、「元和服ゲルニカ」と呼ばれているとも聞くが、確かに、普通、こういった戦国絵巻は自家の功績を称えるために描かれたものが大半であるのに対し、この屏風絵、特に、戦いの終盤を描いた左隻については、戦争というものの裏で起こる民衆の悲劇というものを生々しく描い
ているという点で極めて異彩を放っている。白眉であるとさえ言ってよいであろうか。
 大坂城落城後、城下に居住する民衆に対し、勝利した徳川方の兵士らは一斉に襲いかかった。
 そこには、戦闘員、非戦闘員の区別などあろうはずもなく、大坂夏の陣図屏風の左隻には、勝ち誇った兵士らが手当たり次第に、略奪、陵辱、誘拐はもとより、民衆の首を獲って敵兵の首と偽り恩賞を得ようとする「偽首」と呼ばれる虐殺行為に励む様子や、さらに、それら地獄絵図を逃れて川までた
どり着いた民衆が追い立てられて溺死する様子、ようやく川を渡り切ろうとする民衆に対し、対岸で銃を向ける徳川軍の姿、果ては、ようやく生きて脱出出来た民衆の身ぐるみを剥ごうとする追い剥ぎまでが克明に描かれている。
 その、「大坂夏の陣図屏風」において、戦国というものの……、いや、現代にも通じる戦争というものの肺俯をえぐるような真実の姿を後世に書き残そうとした者、それこそが黒田長政その人であったのである。>
・惜しむらくは、この「大坂夏の陣図屏風」写真を扉に挿入していただきたかった。
・ともあれ、今回の小説は二足の草鞋から脱して、小説家として立つ渾身の傑作である。


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