TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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心に残るギャラリスト・・②海画廊・軽井沢現代美術館の故谷川憲正氏のこと

2015年05月01日 | モダンアート
尊敬する画商谷川憲正さんが亡くなって1年以上経つ。
海画廊のことは以前より知ってはいたが、初心者向き版画を扱う画廊と思い込んでいたので、初めて覘いたのはコレクションを始めて20年くらい経ってからのことであった。しかし、そのお人柄や単に絵を商うだけでない生き方、絵の初心者に優しいコンセプトを知ってから時々立ち寄るようになった。お寄りすると近くの冨山房ビルの喫茶室フォリオにお誘いいただき、珈琲を飲みながら美術談義に耽ったものである。取り扱っている作品も三省堂フロアの画廊での展示以外にレベルの高い収蔵品があり、オークションなど海外取引にも力を入れている。私も流政之の彫刻やアレキサンダー・カルダー、山田正亮などの作品を頂戴した。

我が「ルオーサロン」にもお寄りいただき、美術談義

谷川さんは元々美術雑誌の編集者で、執筆文章も知的で味わい深いものであった。その夢は大きく、コレクション作品を展示する美術館を作ることだという。この美術館のことを熱っぽく語る谷川さんの嬉しそうな顔が忘れられない。しかも、単なる夢物語でなく既に軽井沢にある某鉄道会社の寮であった物件の購入を検討中であるとのこと。こうしてこの計画は着々と進められ、海外で評価の高い作家、草間彌生や奈良美智、荒川修作などの作品を展示する「軽井沢現代美術館」として実現した。
軽井沢現代美術館展示風景

谷川さんの画廊経営コンセプトは、絵を購入する人の立場に寄り添ったものである。それも資産家やプロ化したコレクター向けではなく、絵を買ったことがない初心者に絵を所有する喜びを与えようというもので、まずは絵に接してもらうためリーズナブルな価格で入門的な作品を提供する。そして、この絵に満足したら下取りの相談にも応じながら中級レベルのものを薦めるといった具合であった。当時私は市民派アート活動を進めていたが、この活動と❝版画に市民権を❞という画廊コンセプトには共通するものがあると評価していただき、我々の小冊子『アート市民たち』にも素晴らしい文章を寄稿いただいた。

そんな訳で、突然のご逝去はとても残念である。ただ嬉しいことに、谷川さんが築き挙げた軽井沢現代美術館については、奥様が引き継いで行かれるとのこと。嬉しい限りである。多くの困難があるとは思うが、谷川さんの夢と意志をより大きなものに発展させていただきたい。


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