映画と本の『たんぽぽ館』

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「その女アレックス」 ピエール・ルメートル 

2015年01月28日 | 本(ミステリ)
哀しきアレックス・・・

その女アレックス (文春文庫)
橘明美
文藝春秋


* * * * * * * * * *

おまえが死ぬのを見たい―
男はそう言ってアレックスを監禁した。
檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…
しかし、ここまでは序章にすぎない。
孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、
物語は大逆転を繰り返し
、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。
イギリス推理作家協会賞受賞作。


* * * * * * * * * *

2014年の海外部門における各ミステリ大賞総なめというこの作品、
いやしかし、読めば納得。
驚きの連続。
こういう読書体験に出会うために、読書を続けていると言ってもいい私には、
実に楽しめる一冊でした。
・・・楽しめると言っても、
決して「楽しい」ストーリーではありませんが。


まずは、アレックスという女性が突然見知らぬ男に拉致され、
全裸のまま身動きもままならないごく小さな檻に監禁されるという
ショッキングな場面から始まります。
衰弱しきって死を目前に、
かろうじて彼女は脱出に成功するのですが・・・


というところまでは、本の紹介文にもありますので書けるのですが、
この先のストーリーを明かすと
すなわちそれがネタばらしになってしまうので、詳しくは書けません。
しかしつまり、私達読者は著者に何度も騙されます。
当初にたっぷり私達の同情を買った彼女は、
実は・・・! 
アレックスという女性の身の上の秘密。
それこそが本作のストーリーなのです。


また、「女性が拉致された」との通報を受けた警察側に、
実に個性的な警官が揃っています。
中心となるのは、驚くほど小男のカミーユ。
逆に巨漢のル・グエン。
裕福な好青年のルイと、
貧乏でドケチのアルマン。
このチームはとても洞察力鋭く捜査を進めていくのですが、
いかんせん、アレックスの動きについていけない。
常に後手後手にまわり、責任問題にまでなりかけますが・・・。
しかし、彼らがアレックスの秘密を解き明かすのです。
翻訳物のカタカナ名前を覚えるのが苦手な私にとっては
非常にわかりやすく覚えやすい登場人物たち。
これもウレシイ。


子供のころ、時の過ぎるのを忘れて読みふけったたくさんの本たち。
そんな感覚をチョッピリ思い起こすような、
ドキドキするミステリでした。
ラストがまた効いている! 
アレックスの魂に拍手!!
まさに「ストーリー」なんですよね。


こういうのを求めている私にとって、
嫌いではなかったですが「満願」が、
やはり小粒に思えてしまうのは仕方ありません・・・。


「その女アレックス」ピエール・ルメートル 文春文庫

満足度★★★★★