映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

嘆きのピエタ

2015年01月17日 | 映画(な行)
圧倒された・・・



* * * * * * * * * *

私には「泣く男」に次ぐ韓国作品。
これがまた非常に重いのですが、とても衝撃的な作品です。



債務者に重症を負わせ、その保険金で借金を返済させる
非情な取り立て屋のイ・ガンド(イ・ジョンジン)。
親の顔も知らず30年、これまで孤独に生きてきました。
いくつかその取り立てシーンがあります。
借金をしているのはどれも小さな工場(こうば)の主人。
金属加工をしているのでしょう、
そこにある機械を見ただけで何やら恐ろしげな気がしてしまうのですが、
ガンドは顔色一つ変えずに、そこの主人の腕を裁断機にかけたりしちゃいます。
そんな風に身障者となってしまったものの中には
その後の生活に困り自殺するものもいます。



さてある日、ガンドのもとに、
ガンドを捨てた母(チョ・ミンス)と名乗る謎の女が訪ねてきて、つきまとい始めます。
ガンドは戸惑い、邪険に扱い、残酷な仕打ちすらもしたのですが、
それでもひたすら無償の愛情を注ぐミソンを、次第に母親として受け入れて行きます。
しかしそうなるとおかしな具合なのです。
例えば母親が作ったしっかりした朝食を食べて、
人を傷つけるような仕事ができるでしょうか?
これまで知らなかった愛を知ってしまい、ガンドは否応なく変わっていく。
そしてとうとうガンドが取り立て屋から足を洗おうとした矢先に、
ミソンが姿を消してしまいます。



私達は中盤からミソンの真の目的を知るようになりますが、これもまた壮絶。
彼女の編むセーターは誰のものなのか。
それがすべてを物語っています。
しかし、人の心はそう単純ではない。
ミソンの固い決心すらも、
一心に自分を慕い始めるガンドの前に揺らぎが生じるのです。
すごいですね~。
この演技も最高でした。



そしてまた、ラストにも絶句させられます。
あのセーターを着ている人物B7をみて、一瞬にして彼は真実を悟ります。
しかし、一旦愛を知ってしまったガンドは、
もう元の孤独な生活に戻ることはできない。
彼の選んだ道もまた壮絶なのでした。



壮絶で残酷なストーリー。
工場にあふれる金属類が、やわな感傷など突き放す様に
怪しく重く光ります。
この効果が大きかったですね。
とにかく圧倒された・・・と言うにつきます。

嘆きのピエタ [DVD]
チョ・ミンス,イ・ジョンジン
キングレコード


「嘆きのピエタ」
2012年/韓国/104分
監督・脚本:キム・ギドク
出演:チョ・ミンス、イ・ジョンジン、ウ・ギホン、カン・ウンジン、クォン・セイン
残酷さ★★★★★
痛さ★★★★★
満足度★★★★☆