映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

4ヶ月、3週と2日

2008年11月30日 | 映画(や行)
4ヶ月、3週と2日 デラックス版 [DVD]

ジェネオン エンタテインメント

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オティリアの緊迫した長い一日
                      
               * * * * * * * *

ルーマニアの映画・・・というのも珍しいです。
これは1987年、チャウシェスク政権下のルーマニアが舞台。
大学生オティリアが、ルームメイトであるガビツァの違法妊娠中絶を手伝うというストーリー。
中絶がご法度、というのはそう珍しくない話です。
欧米では主に宗教上の理由でそういうことが多いですね。
ちょっと「ヴェラ・ドレイク」を思い出したりします。
しかし、この映画ではもっと厳しい実態があって、
この頃のルーマニアでは、政治・経済、思想、教育、また、個人生活にまで国家のコントロールが及んでいて、
出産が奨励され、中絶は絶対に禁止されていた。
それなので、これは今私たちが思う以上に危険な行為であるわけです。
しかしこの映画は、当時のチャウシェスク独裁政治を糾弾するための作品ではありません。

4ヶ月、3週と2日とは、ガビツァの妊娠経過日数のことなのです。
大学の寮の狭い一室で、この二人がなにやら緊迫して準備をしているシーンから始まります。
片言の会話から、今日何か秘密のことをしようとしているらしいとわかる。
でも、何かわからない。
ワンシーンワンカット。
セリフのないところも、カメラが俳優の表情や行動を執拗に追います。

一番圧巻だったのは、オティリアがボーイフレンドの家族のディナーに招かれ、
心ならずも、大人たちの歓談に付き合うハメになったシーン。
ここは、実はガビツァの容態が心配で、
一刻も早く戻りたいという内心の焦りを表すシーンです。
静止したカメラが、取り留めのない会話に表情をなくしたオティリアを11分間捕り続けます。
観客も見事にじれてきます。

オティリアはこの日、ガビツァのために非常に危ない橋を渡り、神経をすりへらし、
また、かなりショッキングな事態にも遭遇するというのに、
ガビツァのほうは意外と無神経で悪びれる様子も見られない。
そんなところにもイライラさせられるオティリアの感情も良く表わされています。
とにもかくにも、何とか緊迫の長い一日が過ぎてゆく・・・。
見ようによっては退屈な映画かも知れませんが、私はかなり見入ってしまいました。

ここには結局、ガビツァの妊娠の相手は出てきませんよね。
いつも割を食うのは女ばかり・・・。
でも、これをやり遂げるオティリアのたくましさにも目を見張る。
特にこういう時代で生き抜くには、自分だけが頼りなのだろうと、そういう気もします。ものすごく友人のためを思っている、というよりは、
一度、友人を助けると自分が決めたのだから、自分がやり遂げるしかない。
そういう一本の芯が感じられるのですね。

終始、静かで緊迫感の漂う作品だったのですが、
エンディングテーマ曲の妙な明るさに、拍子抜けでした。

2007年/ルーマニア/113分
監督:クリスティアン・ムンジウ
出演:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ

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「悩む力」 姜尚中

2008年11月29日 | 本(解説)
悩む力 (集英社新書 444C)
姜尚中
集英社

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情報ネットワークや市場経済の拡大。
世界のありようが大きく変わってきています。
こんな中で多くの人々は何を信じていいのかわからず、大変なストレスの中にいる。
この本では悩みを解消するというよりは、
「中途半端でなく、とことん悩んで突き抜けろ」といっています。


今、身の回りにあふれかえる様々な情報。
私たちはお金さえあれば何でも手に入るし、自由。
確かに、私たちはそう思っています。
しかし、昔はそうではなかった。
宗教や身分、親から受け継ぐ職業・・・そういうものにがんじがらめで、
その中で何とか生きていくほかなかったんですね。
でも、今は、そういった縛りから解き放たれ、「自由」。
でも、この自由というのが曲者で、
まるで、広い野原の真ん中に1人で放り出されたよう。
どっちへ行ってもいいよって、一体どっちへいけばいいの???となってしまう。
だから悩んで悩んで、方向を決めればいい。
むしろ、悩まない方が変だとすら思えてきますね。
・・・ちょっと、能天気な自分を反省したりもします。


『何のために「働く」のか』という章にはこんなことが書いてありました。
何のために働くのか。
もちろんお金を得て生活するため、ではあるのですが、
自分が生きている意味を確かめるため、そんな意味もあるようです。
人は、他者とのつながりの中で始めて生きていけるんですね。
人と何のつながりもない、何の役にも立っていない、という思いは、
ひどく孤独感や無力感を生みます。
働くことで、人と人とのつながりができ、ほんのちょっとでも誰かの役に立っている、
そういう実感が持てたら、生きていく張り合いになる。
だから働く。
・・・なんだかとても納得できます。

また、悩みぬいて、老いたなら、
今度はうんと横着になって、夢を果たせといっています。
「最高の人生の見つけかた」という映画は、
ガンを宣告され、残されたわずかの時間で、やりたいことをするという話でしたが、
この本では、老いを生きるために、
夢を持ってやりたいことをしよう、というのです。
なんだか、勇気がわきます。
年をとるのがちょっぴり楽しみになってきますね。


この本では、100年前、夏目漱石やマックス・ウェーバーが、
今の私たちと同じ壁にぶつかっていたとして、
この二人の著書などにも触れています。
マックス・ウェーバーはともかく、夏目漱石は、名前だけは馴染み深いですが、
恥ずかしながら、いい年をして私はあまり読んでいません。
学校の国語の授業のおかげで、「文学」に拒否感。
で、もっぱらB級(?)読書の道を歩んでしまったんで。
でも、ちょっと今回読んでみたい気になりました。
最後に年表があって、これを見ると夏目漱石は慶応3年の生まれ。
って、つまり江戸時代ですね! 
意外な気がしますが、別に意外でもなんでもない。
そのすぐ後に明治維新なんですから。
確かに、それは激動の時代でありましょう。
また、ロンドン留学までした知識人ですから、
世の中のいろいろなことが見えすぎてしまって、
本当に生き辛かったのだろうなあ・・・と、思うわけです。
時代が変わっても、人の悩みは変わらないのですね・・・。
むしろ悩みのタネは現代の方が格段に多い・・・。

若いときは悩んで悩みぬいて、そして穏やかで楽しい老後。
・・・と、書きながらつい思ってしまったのですが、
生活費用の面でいうと、
若いときは働いて働きぬいて、そして貧乏で切ない老後。
これが現実だったりして・・・。
余計な話でした・・・・・・・・・・・・・・・・・


満足度★★★★☆

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ヤング@ハート

2008年11月28日 | 映画(や行)

私は、虹に腰掛けて見てるよ 

                 * * * * * * * *

文字通り、「気持ちは若い」平均年齢80歳のコーラスグループのドキュメンタリー。
米マサチューセッツ州の小さな町、ノーサンプトンで活動している”ヤング@ハート”
驚くことに、彼らのレパートリーはロックにR&B。
イギリスの取材チームがコンサート前6週間、彼らに密着し、
リハーサルの様子やプライベートを追っています。

彼ら一人ひとりに聞くと、
意外にも、好きな音楽はクラシックやオペラというんですね。
指導者のボブが新曲のCDを流してみれば、
そのやかましさに、顔をしかめたり、耳をふさいだりしてる。
歌詞はなかなか覚えられないし、どうもリズムにも乗れない。
でもなぜロックなのか。
それは楽しいから、そのことに尽きると思います。
これは歌う方が楽しいだけじゃなくて、聞く方も、老若男女楽しめてしまう、
ここがいいのだと思います。

実際ロックに親しんでいるのはもう少し後の年代ですね。
日本で言えば団塊の世代・・・、ちょうど今60歳くらいあたりかな? 
だから、これからは世界中のお年寄りたちが平気でロックをやりますよ。
多分ちっとも珍しいことではなくなるでしょう。
今でも、もとロッカーの”おじさんバンド”は、結構ありますしね。

まあ、それはさておき、このお年寄りたちのパワーは圧倒的。
彼らには「生活」しなければならない、ということから離れたゆとりがあるような気がします。
そして、これまでの経験による人生の厚みがある。
だから、多分技術的なことをいえば、
そんなにレベルは高くないのだろうと思うのですが、
言葉一つ一つにこめられた感情に、感動させられるのです。
老いも若いも関係なし。
楽しくて好きなことをやればいい。
若者には若者なりのよさ、
そしてお年寄りにはまた別のよさがあるんですねえ。
気持ちの上でのゆとりと深み。
ここが、若者の及ばないところなのかもしれません。

この撮影中の6週間で二人ものメンバーが亡くなってしまいました。
とにかく生きているぎりぎりのところまで彼らは歌い続けるので、
こんなこともめずらしくはないようなのです。
グループの最高齢の女性は言います。
「もし、私が舞台でたおれたら、舞台のすそによけて、歌い続けて欲しい。
私は、空の虹に腰掛けて見てる」と。

刑務所で行われたライヴでは、友を送る意味をこめた歌に、
受刑者たちも涙を流します。
もちろん、私も・・・。

以前、札幌で行われたニューヨークのゴスペルグループのコンサートで、
かなりお年を召したと思われる黒人の女性が1人、
イスに腰掛けたままで歌っていたんです。
本当に、日常の一部として楽しくて歌っているんだろうなあ、と感じられ、
すごくいいなあ・・・と思いました。
今、なかなか時間のゆとりがなくてやめているんですが、
やっぱりまたゴスペルを歌いにいきたいなあ・・・と思います。

身内の話ですが、こんなグループもあります・・・。
札幌シルバリー男性合唱団

2007年/イギリス/108分
監督:スティーヴン・ウォーカー
出演:アイリーン・ホール、スタン・ゴールドマン、フレッド・ニトル、ドラ・モロー

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世界最速のインディアン

2008年11月27日 | 映画(さ行)
世界最速のインディアン スタンダード・エディション

ハピネット・ピクチャーズ

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挑戦しない人間は野菜と同じ

                 * * * * * * *

この映画はちょっと食わず嫌いでした。
スピード狂の老人の話?というだけで、パスしてしまっていたですが、
このたび、認識を改めました。
まず、これは実話を元にしているので重みがあります。
そうと知っていなかったら、単なる絵空事?、と思えるような話です。

ニュージーランドの小さな町に住むバート・マンロー、68歳。
彼は若い頃から、自らのバイク、インディアンに改良を加え、
数々のスピード国内記録をもっています。
しかし、夢はアメリカのユタ州ボンヌヴィルで行われる大会で
世界記録に挑戦すること。
地元の人の温かい資金援助もあって、とうとう、彼は単身アメリカへ旅立ちます。

アンソニー・ホプキンス演じるバート・マンローは、
車の乗り降りも「よっこらしょ」という風で、これで大丈夫なの?と思わせます。
しかし、長年培った技術と度胸があれば、あと必要なのはその心意気のみ!
こういうふうに何かに一生懸命な人を、回りもほおって置けなくなるのかも知れません。
バートの隣人は、早朝からの爆音や雑草だらけの庭に迷惑しながら、
それでも彼を気にかけ、応援している。
隣家の少年に熱く夢を語るバート。
それを目を輝かせて聞き入る少年も、ステキでした。
そんな中のバートの言葉なんですが、
「挑戦しない人間は野菜と同じ。」
まさに、彼の信念ですね。

さて、船でいよいよアメリカ、ロザンゼルスに到着。
ここから目的地までは、良い出会いのあるロードムービーとなります。
何しろ、お金がないバート。
いろいろな人に出会い、夢を語りながら、貧乏旅行が続きます。
どこにでも、親切な人がいるもんですよね。
もっとも、これは彼の人徳なのかも知れませんが。
何十年来の夢を果たそうと、はるばるニュージーランドからやってきた老人。
誰でも、手を貸したくなるに違いありません。


夢はあきらめた時が終り。
そんな言葉が思い出されました。
お金がないから・・・。
心臓が悪いから・・・。
車が壊れたから・・・。
受付の締め切りは過ぎているから・・・。
このような数々の困難があったにもかかわらず、
それを理由にそこであきらめなかったからこそ、夢を果たすことができた。
あきらめなかったからこそ、
人々の手助けや、次の幸運な状況を呼んだのだなあ・・・と思うのです。
うんと落ち込んだりしたときには、思い出してみたいことですね。

私は正直バイクには興味もないし、良くわからないのですが、
この映画にはそういうことはあまり関係ないのですね。
人生、いつまでも夢を持って生きなくては。
それを教えてくれます。
周りの豪華な装備のバイクに比べて、なんて、シンプルかつポンコツなインディアン号。
お金をかければいいというものじゃない。
それを実証してくれました。

真っ白い塩の平原。
不思議な場所です。
バイクの話し抜きでも、一度は行ってみたい・・・。

2005年/ニュージーランド・アメリカ/127分
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ダイアン・ラッド、ポール・ロドリゲス、アーロン・マーフィー

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「天国で君に逢えたら」 飯島直樹 

2008年11月25日 | 本(その他)
天国で君に逢えたら (新潮文庫)
飯島 夏樹
新潮社

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この物語には素敵な「手紙屋」さんが登場します。
がんセンターの19階、オープンエアのエントランス。
ここに、本物のヨットが置いてあって、そこがこの手紙屋、純一のオフィス。
手紙屋さん?
実は精神科のドクターなのですが、
ガンで余命○ヶ月と宣告され、悩み苦しむがん患者たちの思いを受け止めて、
「手紙」という形に整理し、手渡す役目を受けもっています。
そこに訪れた人々の思いを綴る、物語。

すごく気持ちが優しくて、
だからこそ、いまいち要領が悪くてなんだか情けない純一さんなのですが、
この「手紙屋」の仕事はぴったり。
とにかくあるがままに人の気持ちを受け止めるって、
しんどいけれど、大事なことかも知れません。

この、オフィスがいいですよねー。
海の上じゃないのは残念ですが、
そこには露天の檜風呂まであったりする、癒しの空間なのです。
公立の病院も、こんなところにお金をかけてくれるなら、すごくいいのですが・・・。
このストーリーでは、とても物分り良く、豪快なお金持ち(!)のおじいさんが登場しまして、
ポンとその費用や段取りを付けてくれる。
う~む、実際にはこんな人、いそうもありません。
いればいいなあ・・・・という願望ですね。

何で、よりによって自分が、こんな病に侵されなければならないのか・・・、
それぞれ、登場人物はみなこんな思いを胸の底にたぎらせています。
だから本当はすごく悲惨でつらいストーリーになりそうなのに、
なんだか気持ちがホンワカと、温かくなってくる。
愛と勇気にあふれた素敵なストーリーなんですね。

さて、この著者なんですが、実はもうすでにこの世の人ではありません。
8年間ワールドカップに出場し続けた世界的プロウインドサーファー。
この、健康の塊のような方が、ガンに侵され、余命宣告を受けてしまう。
そして突然病床で書き始めたのがこの小説、とのこと。
「これまでの人生すべてが、この物語のための取材だったのかな」
と、本人は語ったそうですが、
奇跡のように、わずか3週間で、この物語を書き上げたのだという。
自ら、目前の死を見据えながら、こんな明るいストーリーをかけるというのは、
本当に精神が強い方なのだろうと思います。
生を生き抜いた、とでもいいましょうか・・・。

しんみりとするけれども、涙はなし。
愛と優しさと、ちょっぴりの勇気で、案外幸せ。
著者は天国から、そのようなメッセージを送ってくれているようです。

満足度★★★★☆

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ブラインドネス

2008年11月24日 | 映画(は行)

頬の暖かさで炎を感じる時

               * * * * * * * *

ある日突然、1人の男が目の前が真っ白になり失明。
それはたちまち人から人へ感染し、多くの人々が収容所に隔離されてしまう。
閉鎖された極限の状況で、問われる人間性。

この映画は単にパニック物かと思ったら、それだけではないのでした。
人間性、というか人と人とのつながりというものが問われていたように思います。
人間性といえば、感染者は勝手に自滅せよ、とでも言わんばかりに、
収容所へ放り込む人々の人間性のほうが問題なような気がしますが・・・。

すべての人が盲目と化したら・・・。
ありえないことかも知れませんが、想像すると本当に怖ろしいですよ。
これまで築いてきた人類の文明が、一瞬にして水泡に帰す。
パソコン、車、道路・・・、全く意味を成しません。
見えないことの不安は、不便というだけでなく、「孤独」にもあるのではないでしょうか。
触れ合ったり、声を聞いたりしなければ、
この世に自分がたった一人のような気がしてしまうのでは・・・。
だから、盲目の彼らは、お互いより添って温もりを確かめ合いながら生活する。
多分たった一人で生きていくことはとても難しい。
なんだか、これって、原始の人間が生活を始めた頃の原点のような気がします。
お互い助け合い温もりを感じながら、小さなグループで一体となって生きていく。
でも、それは他のグループとの争いを予感してもいるのですが。
なんだかこの物語は、そういう家族に限らない人と人とのつながりの原点を振り返ってみよう・・・、
そんなことを言っているように私には感じられました。
それなので、ここは人種も、年齢も、職業もバラバラの人たちが家族のようになっていきます。

たった一人、目が見えるジュリアン・ムーアの役どころは、さまよい惑う人々の母。
やっぱり優しさと強さを持つ女性のイメージですね、彼女は。
しかし、そういう立場はまた孤独でもあるわけです。
時には先頭に立って自ら闘うことも辞さない。

目が見えないと、他のいろいろな感覚が敏感になってくるようです。
目が見える彼女が食料を持ち運んでいると、
その音やにおいで食料品を運んでいるとかぎつけ、襲ってくる盲人たち。
まるでゾンビの群れのよう。
感覚だけが怖ろしく鋭いって、ちょっと怖い。
しかし、日本人夫が、炎を明るさでなく頬に当たる熱気で感じる、
そんなシーンでは、目が見えないことのリアルな感覚が実感として感じられました。


ガエル・ガルシア・ベルナルは、あんな役でもかっこよかったです・・・。
日本人夫婦の日本語の会話にも字幕が出ていたのが、ちょっと楽しかった・・・。

2008年/日本、ブラジル、カナダ/121分
監督:フェルナンド・メイレレス、
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介、木村佳乃、ガエル・ガルシア・ベルナル

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チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

2008年11月23日 | 映画(た行)
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

UPJ/ジェネオン エンタテインメント

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「いずれわかる」・・・うんと先まで見通す大切さ

               * * * * * * * *

これは、予告編で見ていたイメージとちょっと違いました。
もっと、コミカルなものかと思っていたのですが、意外と真剣。
といいますか、これは実話に基づく物語なので、シリアスで当たり前のところを、
コミカルな味付けをしてある、と理解した方がいいですね。

テキサス州選出の米下院議員、チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)。
酒と女に目がないおちゃらけ議員と思いきや、
意外にもやり手で、中東情勢を気にしている。
79年、ソ連のアフガン進行。
彼はアフガンのゲリラ組織支援の予算を2倍にする。
彼の後押しをするのが、テキサスの大富豪夫人、ジョアン(ジュリア・ロバーツ)と、
怪しげなCIA局員。

どこまでも続く難民キャンプのテント・・・。
アフガンに赴き、この情景を見て、
チャーリーはジョアンの色仕掛け抜きでもやる気を出すのです。

アメリカがアフガン支援を堂々とやると、
これはもう、ソ連との「冷戦」じゃなくて、直接対戦になってしまうということで、
目立たないようにやるのが眼目なんだそうで・・・。
結局、元の軍事支援予算が500万ドルだったのが、結果的には10億ドルを費やしたというのですが・・・。
軍事予算なら、どんどんつぎ込んじゃう。
これがアメリカなんですよね・・・。

しかしです、彼は最後にアフガン再建のために、
学校を建てよう提案とするのですが、これについては却下されてしまう。
もし、ここで、学校を建ててしっかり民主教育をしておけば、
アメリカと中東の関係も今とは少しは違っていたかもしれない・・と。

中国の、とある老師の教えにあるそうなんですよ。
目先のことばかり考えず、何年先、何十年先を考えて行動する大切さ。
それをあらわすのが、「いずれわかる」。
最後の、この話をしたいがための、
いまさらの「ソ連アフガン侵攻」の題材だったのです。
完璧、ネタバレになっちゃいましたが、
この話をしないとこの映画では語るべきところがないような・・・。
すみません・・・。

しかし、どうも私はこういう、政治ネタで、
セリフで説明することの多い作品って、苦手です。
多分、字幕は相当省略が入っていると思うのですが、
それすらも、理解しきれないうちにストーリーが進んでしまいます。
ちょっとつらいです。
ジュリア・ロバーツのどぎついお化粧顔をあきれながら見ているうちに、
肝心の話が終わっちゃいますから・・・。

2007年/アメリカ/101分
監督:マイク・ニコルズ
出演:トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス

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「ジェシカが駆け抜けた七年間について」 歌野晶午

2008年11月22日 | 本(ミステリ)
ジェシカが駆け抜けた七年間について (角川文庫 う 14-5)
歌野 晶午
角川グループパブリッシング

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さすが、歌野晶午という感じの、良く練られたミステリです。
ジェシカはエチオピア出身のマラソンランナーなんですが、
米国の長距離専門の陸上競技クラブNMACに所属している。
こういう主人公って、かなり異色ですね。
なぜエチオピア人なのか。
これはこのミステリの大きな要なのであります。
エチオピアでは、変わった時間の数え方をする。
一日が始まるのが朝6時。通常の12時はエチオピア時間では6時という具合。
また、暦の数え方も、かなり独自なもののようなのですが・・・。
こんなことから、このミステリは何か時間のトリックを用いたものなのかなあ・・・
と想像されるのです・・・。


同じクラブに所属しているハラダ・アユミ。
彼女は夜な夜な部屋を抜け出して、いわゆる丑の刻参りをしている。
それをジェシカが目撃してしまう。
また、アユミは、「自分の分身が欲しくないか」などという。
そうすれば、自分はここにいながら、人を殺すこともできる・・・と。
こんなところからは、何かオカルトめいたにおいがします。

このような予感があるところでは裏切られ、あるところは予想通り・・・、
とはいえ、私たちは著者の仕掛けた罠にうまくはめられてしまうのです。
読者はあるところで必ず「えっ?!」と、混乱するはずです。

しかし、この、驚天動地のミステリ仕掛けもさることながら、
このアスリート、ジェシカも、とても魅力的に描かれています。
スポーツ小説としても楽しめて2倍お得なこのストーリー、
ぜひお楽しみあれ。

満足度★★★★☆

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彼が二度愛したS

2008年11月20日 | 映画(か行)

Aer you free tonight?

                 * * * * * * * *

官能とスリルが交錯する恋愛サスペンス。
どこかで見かけたこの映画の紹介文・・・意味不明ながら、言い得て妙かも。

会計士のジョナサン・マコーリー(ユアン・マクレガー)は退屈で孤独な毎日を送っています。
そこへ現れたのが弁護士ワイアット・ボース(ヒュー・ジャックマン)。
彼のおかげで、ジョナサンは、ある会員制の秘密クラブのことを知る。
それは、お互いに名を明かさず、一夜限りの情事を楽しむ、という秘密のクラブ。
合言葉は”Aer you free tonight?”
今晩おひま?というわけです。

ワイアットのおこぼれに預かって、
ジョナサンも、甘美でスリリングな逢瀬を何度か体験。
ある日の相手は、以前駅で見かけたことのある気になる美人。
彼女の名前を聞き出すことはできなかったけれども、
「S」で始まる名前、ということだけがわかった。

・・・ここまでは、一見普通のラブストーリーなんですけれども。
ここから、だんだん歯車が狂ってくるのです。
「S」がホテルから血痕を残して突然姿を消す。
ワイアットに連絡を取ろうと思っても、事務所にはそんな人物はいないといわれる。
一体、どうしてこんなことが起ったのか・・・。
「S」のなぞめいた美しさには、確かに惹かれます。
しかし、えてしてこういうものには罠がある。

ユアン・マクレガーがあまりぱっとしない、小心者っぽい男性像を演じていますが、
私は、こういうの、嫌いじゃないですね。
めがねを取ったら実はすごい美形でいい体・・・(?)
なんて、これは少女マンガの読みすぎか・・・。
が、最後には頭脳の冴をみせて、観客をも欺く展開。
っていうのも、カッコイイ。

が、実は私は読めちゃいました。
私程度に見破られるようではダメじゃないですか。
二大男優のセクシー度満開、なのはいいけど、
ちょっと内容的には物足りなかったかなあ・・・、というところです。
ベッドシーンはたっぷりありますが、それほどいやらしい感じはしない。
スタイリッシュなセックスシーン
・・・ああ、また意味不明になってきました。

2007年/アメリカ/108分

監督:マーセル・ランゲネッガー
出演:ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー、ミシェル・ウィリアムズ、シャーロット・ランプリング、マギーQ

 

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悪党たちは千里を走る

2008年11月19日 | 本(ミステリ)
悪党たちは千里を走る (集英社文庫 ぬ 1-3)
貫井 徳郎
集英社

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「悪党たちは千里を走る」 貫井徳郎 集英社文庫

トントンとテンポもよく、キャラクターも魅力的なコメディ仕立てのコン・ストーリー。
高杉と園部はしょぼい仕事で暮らしを立てる詐欺師コンビ。
ある日、徳川氏の埋蔵金の話を持ち込んだ先で、
これまた別の美人詐欺師、菜摘子と出会う。
この3人がなぜか手を組み、ある資産家の飼い犬の誘拐を企てた。
ところが、なぜかそこにその家の息子巧が現れ、
犬なんかより、僕を誘拐してくれと言う。

巧は生意気な小学生なんですが、彼らでも舌をまく頭の良さ。
この四人の会話は辛らつでありながら、ほんわかしてくる、いい感じです。
なんだかんだといいながらも、次第に信頼感ができてくるんですね。
でも、まあ、ここまではありそうな話。
狂言誘拐。
ところがここにはさらに意外な展開が待ち受けていまして、
彼らがその狂言誘拐を開始するより先に、
巧が何者かによって、本当に誘拐されてしまった!

普通こういうストーリーでは、
真犯人はそれ以前のストーリーの中に必ず登場しているんですね。
いきなり、全く知らない第3者を犯人に仕立てるというのは、あまりない。
それで、これってやっぱり、はじめから巧君が仕掛けた罠???とも思えたり。
でも、それにしては巧君はいい感じすぎて、そういうワルにはやはり見えないし、
そうであって欲しくない、という気持ちが強くなってきます。
心配するうちに、巧君の視点の描写が始まり、
とにかく、未知の犯人に本当に誘拐されてしまったことがわかり、ほっとする。
(ほっとしてる場合じゃないって!)

しかーし、さらに読み進めばやはり、定石どおり。
真犯人はすでに登場していた!!
ほとんど忘れ去っていた人物ではあるのですが、
いわれてみれば、そう不自然でもない。

いや~、実に面白い!
そして、ヘタレに見えた高杉は、
最後に巧のために必死に頭を回転させ、アクションする! 
痛快です。
普段あまりミステリを読まない方にもこれはお勧めできます。
死体は出てきませんし・・・。

満足度★★★★★

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譜めくりの女

2008年11月18日 | 映画(は行)
譜めくりの女 デラックス版

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漂う緊張感、胸の奥底の悪意
                 
                 * * * * * * * *

この作品には終始緊張感が漂います。
ピアニストを目指す、少女メラニー。
彼女は肉屋の娘なんですね。
冒頭、彼女のピアノの練習シーンと交互して、
父親が肉の塊を切り分けるシーンが映し出される。
かなりの違和感なのですが、
なにやら、この先の不穏を予感させるシーンでもあります。

音楽学校の入学試験。
彼女があこがれる人気ピアニスト、アリアーヌが審査員の1人なのですが、
彼女の無神経な行動に、メラニーは動揺し、試験に失敗してしまう。

さて、数年後、メラニーはアリアーヌの息子の子守として現れ、
そしてまた、彼女のピアノ演奏の譜めくりの役を務めることになるのですが・・・。

もちろん、アリアーヌはメラニーのことなど、覚えてもいません。
表面上は、実に気の利く良い子守であり、アリアーヌは徐々に信頼を寄せていく。
そしてまた、メラニーは譜めくりとしても、
次第にアリアーヌにはなくてはならない存在となっていき、
果てには、信頼というよりも「愛情」で、アリアーヌをとりこにしてゆく。

メラニーはそっけないほどの無表情。
始めのほうは何を考えているのか、実のところ見ている側も良くわからず、
そこがまた、ミステリアスなのです。
しかし、次第に彼女の胸の奥底の悪意が徐々に見えてくる。
ところが、それに相反して、アリアーヌはどんどんと深みにはまり、
彼女に絡め捕られていくのです。

映画中に流れる静かでやわらかいピアノ曲に反して、終始ある緊張感。
一体どのような展開を見せるのかと、ドキドキしてきます。
結局、肉の切り分けシーンで思い起こされるような流血事件はないのですが・・・。

ここまでの悪意をあのように静かに持ち続け、計算づくで相手を追い詰めるとは。
怖いですね~。
ほんとに、女は怖いですよ。
多分、男性が見たら余計怖く感じると思います。
これ、最後までアリアーヌはなぜメラニーからこんな仕打ちを受けるのか、
全然わからないです。
実際身の回りでこんなことがあったりしたら・・・。
くわばら、くわばら・・・。

2006年/フランス/85分
監督:ドゥニ・デルクール
出演:カトリーヌ・フロ、デボラ・フランソワ、パスカル・グレゴリー

 

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「ニューヨークのとけない魔法」 岡田光世

2008年11月17日 | 本(エッセイ)
ニューヨークのとけない魔法 (文春文庫 お 41-1)
岡田 光世
文藝春秋

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著者は1985年よりニューヨーク在住。
読売新聞米現地記者を経て、現在は作家、エッセイストとして、東京とニューヨークを行き来しているそうで、ニューヨークの人々の生活についての著作、多数。

ニューヨークといえば東京と同じく、孤独な大都会・・・と思えるのですが、
思いのほか人々はフレンドリー。
彼らは不快感をあらわすにも、遠慮がないのですが、
好感を表すのはそれ以上に積極的。
おせっかいで、おしゃべりで図々しくて・・・。そして憎めない。
そういうことのようです。
この本では、著者がNYで出会った多くの人とのエピソードが綴られていますが、
そのなかに、心に残るネイティブならではの英語の言い回しも、紹介されています。

何か人に親切にしてもらい、お礼を言ったときに返ってくる言葉。
My pleasure.
どういたしまして・・・ということですが、いい言葉ですね。

役所などに電話をすると、やたらと電話のたらいまわしに会うそうな。
そこで、いつも彼らが口にする言葉は・・・
Try this number.
この番号にかけてみて。

You made my day.
人と会って別れる時に。・・・おかげで、とてもいい日になったよ。

時にはイライラすることもある。
I can't stand it!
もう耐えられないわ!

今まで気付かなかったことに気付かされた時
It was eye-opener for me.
目からウロコが落ちたわ。

You must be kidding.
冗談でしょ。


親切も押し売りはダメ
Thanks a lot.
余計なお世話なんですけど。

脈絡もなく拾ってみましたが、映画の中のセリフなんかに出てきそうな感じですね。
こんな言葉がふと口に出るようになればいいんですけどねえ・・・。

最後に、もう一つ。

New York City can grow on you.
ニューヨークって次第に虜にされる街だよ。
・・・なるほど、娘が帰ってきたがらないわけだ・・・。

アメリカの一般的な行事、ハロウィンとかサンクスギビングの紹介などもありまして、誠におしゃれな一冊です。

満足度★★★★☆

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ぜんぶ、フィデルのせい

2008年11月16日 | 映画(さ行)
ぜんぶ、フィデルのせい

ギャガ・コミュニケーションズ

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ふくれっつらの女の子の言い分

               * * * * * * * *

1970年代。パリ。
9歳の少女アンナは、弁護士のお父さんと雑誌記者のお母さん、
そしてやんちゃな弟の4人家族。
まあ、ほどほどの上流家庭で満ち足りた毎日を過ごしていました。

ところが、ある日突然、両親が共産主義に目覚めてしまったのです!
それまでの庭付きの広い家を出て、狭い家に引越し。
なんだかわけのわからない、大勢の人々がいつも家を出入りしている。
学校は何とか移らないで住んだけれども、
大好きな宗教の授業は受けてはダメと親に言われ・・・。

こんなことになってしまったのは、全部、あのフィデルのせい!
と、アンナは怒るのです。
フィデルというのは、かの革命家、フィデル・カストロ。
共産主義なんて大嫌い!!と、彼女は不満を募らせる。
「まったく、子どもって大人の都合に振り回されるばかりで、
ほんとにソンなんだから・・・」
と、彼女の心の声が聞こえてくるようです。
この、いつも仏頂面のアンナがとてもかわいいのです。
悪いけれど、そのふくれっつらを見ているこちらは、つい、苦笑してしまう。


この映画は、別にイデオロギーがどうこう、という作品ではないのだと思います。
まだ、自分のことしか考えられない本当の子どもが、
少しずつ、自分を取り巻く大人たちや社会を認識し、理解していく。
そうして、1人の自我を持った大人へと成長していく過程を描いたものなんですね。
それは、長い人生からすると、
ほとんど一瞬といってもいいくらいのわずかな期間に起るもののような気がします。
このアンナの成長の姿には、胸がほんわかさせられます。
こういう風に、成長を促す周りの大人たちも、素敵ですよね。

この両親は、実に思い切りがよく、自分の信じることに一生懸命。
思想はあっても、普通は自分の豊かな生活を捨ててまでは、なかなか思い切れないですよ。
実は、両親のここのところがすごいと思うのですが、
映画の中では、アンナの視点なので、
突然親が狂った、としか思えない。
この辺のギャップがおもしろいところです。
両親二人とも忙しくて、子どもは外国人のお手伝いに預けっぱなし。
確かに、理想的な両親とはいえないと思うのです。
しかし、なんだかんだといいながら、
こういう姿勢は結局のところ、子どもにとってはいい刺激になるのではないでしょうか。
子どもは親の後姿を見て育つ、と。
親もぼやぼやしていてはいけません。

2006年/フランス/99分
監督:ジュリー・ガヴラス
出演:ニナ・ケルヴェル、ジュリー・ドパルデュー、ステファノ・アコルシ

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「孔雀狂想曲」 北森 鴻

2008年11月15日 | 本(ミステリ)
孔雀狂想曲 (集英社文庫)
北森 鴻
集英社

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この物語の主人公は趣味・骨董の店、雅蘭堂(がらんどう)の店主である越名。
いつも眠っているように目が細いけれども、
実はそのまなざしはとても鋭いのであります。
骨董の世界は奥が深いですね。
この本に出てくるだけでも、
ライター、カメラ、古九谷焼、鉱石、江戸切子、油彩絵画、根付、ビスクドール、
と様々な題材があふれています。

「鑑定団」のTVにも良くあるように、往々にして贋物が現れる。
これらの目利きをするにはかなりの熟練と知識、そして直感が必要なんでしょうね。
しかしまた、この物語を見ると、
それらを高く流通させるためには、裏取引やら駆け引きやら、
相当手の込んだだましをすることも・・・。
ほとんど狐と狸の化かしあい。
こんな世界で生きていくのはいかにも大変そうです。
知れば知るほど怖くて手が出せそうもありません。
しかし、良くぞこのような専門知識も必要なことで、
思わずうなってしまうような、巧妙なミステリを作り上げるものだ・・・と、
いまさらながら感心してしまいます。
どの短篇もなかなかのできばえ。
この中の作品は、結構他のアンソロジーに収納されているものが多いですね。
他で読んだことがあるものも、いくつかありました。

物語自体はこのように渋い題材がならびますが、
ここに、精彩を加えているのは高校生安積(あづみ)。
彼女は店の品を万引きしかけたところを、越名に見つかってしまったという、
全く今時の少女なのですが、
それ以来この店が気に入ってしまい、押しかけアルバイトで時々店番をする。
しかし、非常に貴重な品を二束三文で友人に売りつけようとするなど、
なかなか油断ならない。
変に「清々しく良い子」でないところが魅力です。
しかし、バカっぽっく見えても、鋭いところもある。
越名に言わせると、調子の乗るので、それは「本人には内緒」だそうで。

表題の「孔雀狂想曲」には、鉱物見本が登場します。
どこにでもあるものではないですが、欲しい人がそういるとも思えない、鉱物見本。
しかし、珍しく売れてしまったその品の行方を、しきりと知りたがる人物が登場。
ところが、その人物が後日死体となって発見される。
男は一体何のためにそのような鉱物見本を欲しいと思ったのか。
そして、殺されてしまった訳は・・・。
実はその見本の中に孔雀石が入っていたのです。
さほど貴重なものではないけれど、緑色の顔料を作るのに使われる。
どうも、最近盗難にあったK画伯の風景画と関係があるらしい・・・。
果たしてこの謎をどう解くのか・・・・。

いろいろな薀蓄のネタにもなる一冊です。

満足度★★★★☆

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ジェシー・ジェームズの暗殺

2008年11月14日 | 映画(さ行)
ジェシー・ジェームズの暗殺 特別版(2枚組)

ワーナー・ホーム・ビデオ

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ヒーローを殺した男・・・疑心暗鬼から破滅へ

                  * * * * * * * *
    
ジェシー・ジェームズというのは強盗犯ではありますが、
庶民を食い物にする鉄道会社のオーナーや銀行を狙うロビン・フッドのようなイメージを持たれ、
いわばヒーロー視されていた実在の人物です。
この伝説的英雄に起った悲劇の真相を掘り下げた作品となっています。

彼は南北戦争後、兄フランクと共に強盗集団を組んで
数々の実績(?)を揚げていくのですが、
どうも、この戦争で受けたPTSDの影響が感じられます。
感情の起伏が激しく、今笑っていたかと思えば次には激怒する。
人を信じられず、簡単に人を殺す。

1880年。
新聞や本などで、ジェシー・ジェームズ(ブラッド・ピット)にあこがれていた青年ロバート(ケイシー・アフレック)は
ある日、念願かなって、ジェシー・ジェームズの一味に加わることができました。
はじめのうちは有頂天だった彼も、
気まぐれで残忍な現実のジェシー・ジェームズを知るに連れてまた、気持ちがゆれてくる。
しかし、ジェシーが持つカリスマ的魅力にも抗えず、そこを去ることもできない。
お互い信頼できず、いつどちらが裏切って、殺されてもおかしくないような緊張感が漂い始めます。
2人の男の交わす視線、片言の言葉、沈黙・・・。

結局、耐えられず先に折れてしまったのは若いロバートの方でした。
打たれると知りつつ彼に背中を向けたジェシーに向けて、ロバートは弾丸を放つ。

この映画は非常に長いのですよ・・・。
この二人の緊張感を生んでゆく部分が特に・・・。
それで、ついにジェシーが撃たれたところでやっと終わると思ったら、
なんとそこからがまたストーリーなんです。
ここは、その後のロバートの運命もまた合わせて語られる歴史的事実なのですね。

世間的にヒーローとしてもてはやされたジェシー。
その彼を裏切り、背中から撃った卑怯者、というレッテルが彼に貼られてしまいました。
まさに皮肉な運命ですが、その果てにまた・・・。

終始、静かな色調とトーンで描かれるこの作品。
興味深くはありますが、下手をすると寝込む恐れも多分にあると思われます・・・。
この半分狂っているとも思われるジェシーを演じるブラピは、さすがに迫力。
ここは見所ですね。
ケイシー・アフレックの、はじめは能天気な青年が次第に疑心暗鬼に陥り、
ついには自らの破滅へ進んでいく、この演技も良かった。

2007年/アメリカ/160分
監督:アンドリュー・ドミニク
出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー

 

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