イケメンの侍さんも
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同心、岡っ引きから、寺子屋の師匠まで……
江戸の難事件はおまかせあれ
傑作揃いの時代ミステリアンソロジー
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時代ミステリのアンソロジーです。
収録作品は
梶よう子「雪花菜(きらず)」
麻宮好「庚申待」
浮穴みみ「寿限無」
近藤史恵「だんまり」
西條奈加「抜けずの刀」
「庚申待」(麻宮 好)
連続して少女がかどわかされて殺される事件が発生。
岡っ引きの吾一と、子分である勇吉が下手人を追うが、
勇吉には“死を覚悟した者が見える”という力が現れ……。
「庚申待(こうしんまち)」とは・・・庚申の日に神仏を祀って徹夜をする行事のこと。
古くから人間の体の中には3種類の悪い虫(三尸)が棲んでいて、
庚申の日には、寝ている間にその者の悪事を天帝に報告に行くと言われています。
ならば、ということで、「庚申の日の夜は眠らない」という風習が生まれました。
本作は、この「庚申待」の夜に起こった出来事が描かれています。
人々は近所の人同士、夜通し飲み明かしたり、おしゃべりをして笑い倒したり。
なかなかに賑やかな夜なのですが、それに加わらない男がいて・・・。
なんとも切ない事情が隠されているのです。
胸にしみます・・・。
「抜けずの刀」(西條奈加)
浪人の新九郎が、人殺しの罪でお縄になった。
濡れ衣だと信じる長屋の住人たちは、彼の無実を証明するため、
それぞれの特技を生かして奔走し……。
浪人の新九郎について、こんな風に描かれています。
「すっきりとした頬の線に涼やかな二重の目。
月代と髭をきれいにあたり、こざっぱりとした羽織袴を身につけている。」
そうなのです、イケメンでカッコ良くて、モテモテ。
どこへ行っても若い娘の視線をあびる。
私などつい目黒蓮くんを思い浮かべてしまったくらい。
ところがこのモテモテ具合が災いして、人殺しの罪の疑いをかけられてお縄になってしまった・・・。
もちろん、濡れ衣です。
ですが色々あった後に、真犯人が新九郎を切りつけようとする!
けれど、なぜか切りつけようとしたその刀が、鞘から抜けないのです。
それこそが、この男が真犯人である証拠であるという。
なんと、運命の皮肉。
ナイスでした。
このPHP文芸文庫には、他にもいろいろなテーマのアンソロジーがあって、
なんだかハマってしまいそうです・・・。
「とりもの <謎>時代小説傑作選」細谷正充編 PHP文芸文庫
満足度★★★★☆