映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ストックホルムでワルツを

2015年01月26日 | 映画(さ行)
父と娘の物語



* * * * * * * * * *

スウェーデンの世界的ジャズシンガー、
モニカ・ゼタールンドの半生を描きます。



スウェーデンの田舎町で、両親と5歳の娘と暮らす、シングルマザーのモニカ。
電話交換手をしながら、ジャズクラブで歌っています。
歌手としての成功を夢見ていますが、父親からは認められていません。
ある時、ジャズの聖地ニューヨークのステージに立つチャンスがあったのですが、
失敗。
それは歌がまずかったわけではなく、
黒人ミュージシャンと同じステージに立ったのが、
反感を買ったらしいのです。
黒人をジャズの優秀な担い手と認識しながらも尚、
差別意識が根強くあった時代ならでは、です・・・。
スウェーデンでジャズのレコードを聞き、
彼らの大ファンであったモニカには
全く差別意識がなかった、というのも皮肉です。



当時のスウェーデンではジャズは英語で歌うのが当たり前。
でも彼女は憧れの黒人歌手フィッツジェラルドに
自分の気持ちを歌わなくてはダメと言われたことから、
自国、スウェーデン語で歌うようになります。
確かに、肌の透き通るように白いスウェーデン人が
ニューオリンズの歌を歌っても気持ちがこもりません。
自分の言葉で、自分の風土が育んだ自分の心を唄えばこそ、
人々の胸を打つ。
そしてさらに、様々な苦労を乗り越え、
経験を積んだ後であればなおさらに。
カフェでスウェーデン人の詩をテイクファイブの曲に乗せて、
一人口ずさんでしまうモニカのシーンがステキでした。



本作は、一人のシンガーのサクセスストーリーと言うよりは、
一人の女性が父親に認められ自己肯定するまでの過程を描いた物語のような気がします。
そしてまた、なんともじれったいラブストーリーでもあります。
いつも木のてっぺんまで登らないと気のすまない子だった、
と父はモニカのことを言います。
危険だから他の子は途中まで登って諦めるのに・・・と。
もっと安全で堅実な道を歩んでほしいと思うのは、
まあ親としては当然のこととも思えるのですが。
父に認められて初めて
自分のままでいていいのだと納得できる、
これも一つの父と娘の物語。



本年は実のモニカ・ゼタールンド没後10年に当たります。
Wikipediaで、同年代の写真を拝見すると、
本作のエッダ・マグナソンがそっくり!!なのでした。

「ストックホルムでワルツを」

2014年/スウェーデン/111分
監督:ペール・フライ
出演:エッダ・マグナソン、スベリル・グドナソン、シェル・ベリィクビスト
ジャズのお楽しみ度★★★★☆
満足度★★★★☆