映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ポスター犬20

2013年07月30日 | 工房『たんぽぽ』
アルパカ



アルパカの親子です。



「許されざる者」は
ハリウッドでも制作されておりまして、
私はクリント・イーストウッド版を見ています。
今度は日本バージョンで、
「世界のワタナベ」が主役ですから、
これは、海外でも通用する大作になりそうですね。
公開が楽しみです。





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「パスタマシーンの幽霊」 川上弘美

2013年07月29日 | 本(恋愛)
女達の不可思議な恋の物語

パスタマシーンの幽霊 (新潮文庫)
川上 弘美
新潮社

 
* * * * * * * * *

恋をしたとき、女の準備は千差万別。
海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、
OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。
おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、
不実な男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。
掌小説集『ざらざら』からさらに。
女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。


* * * * * * * * *

この本には22篇のショートストーリーが収められていますが、
どれもほんのり余韻に満ちた作品です。



表題の「パスタマシーンの幽霊」
風変わりの題名に興味を惹かれますね。
「あたし」はあるとき、恋人隆司の部屋にパスタマシーンを見つけます。
「あたし」は料理がニガテでそんなものは使うはずもなく、
そして独身男子の隆司が使うとも思えない。
そこで「あたし」は、他の女の存在を感じてしまうわけです。
料理が得意でスペイン料理かなんかをぱぱっと作ってしまう「パエリア女」。
しかし、隆司は、これは亡くなった「ばあちゃん」のもので、
その亡くなったばあちゃんが時々現れてパスタを打っていたなどという・・・。
その後、隆司とは会わなくなった「あたし」だが・・・。
不思議なオチのあるストーリーなのですが、
きっぱりとした起承転結にならないのが、ここのストーリーたちのいいところ。
本作、題名は「ケチャップごはん」でもいいような気がしますが、
やっぱり「パスタマシーン」のほうが、ひと目を引きましょうか。
私的にはケチャップご飯はパス。
そもそもケチャップはあまり好きではない・・・。
バターを使うなら、絶対お醤油ですよ!
(どうでもいい話でした・・・)


「お別れだね、しっぽ」
「あたし」にはしっぽがある・・・。
それは犬のようなあのしっぽではなくて、影とか分身のようなもの。
時折人生の分岐点になりそうなところへ現れて、
「あたし」の進むべき方向を示唆してくれる。SFかオカルトっぽい設定ですが、
そんなことはなくて、「あたし」はごく普通の人生を歩んでいきます。
でもふと思う。
「あたし」はしっぽに導かれてここまで生きてきたけれど、
これでいいのだろうか。
しっぽに従わなかった人生もアリなのでは・・・? 
もしかすると「しっぽ」というのは、社会的規範とか、一般的に正しいあり方のことなのか・・・と思ったりもしますが、
まあ、そこまではあえて考えないほうがいいのかも。
まあ、時にはしっぽに居てほしい気がすることがあります。

「パスタマシーンの幽霊」川上弘美 新潮文庫
満足度★★★★☆
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偽りの人生

2013年07月28日 | 映画(あ行)
どちらが“偽り”なのか



* * * * * * * * * *


アルゼンチン作品ですが、なぜビゴ・モーテンセンかといえば、
氏は子供の頃アルゼンチンに住んでいたことがあるそうなのです。
それで、スペイン語も話せるということで抜擢されたそうなのですが、
これがもう、バッチリの配役でした。



アルゼンチン首都ブエノスアイレスの医師アグスティン(ビゴ・モーテンセン)は
裕福で社会的地位も手にしていながら、
生きることに虚しさを感じています。
妻ともうまく心を通わせられなくなってしまっています。
そんなとき、長く離れていた一卵性双生児の兄ペドロ(ビゴ・モーテンセン、二役)が訪ねてきます。
ペドロは末期ガンに侵されており、
自分を殺してくれとアグスティンに頼みます。
当惑するアグスティンですが、ふとしたきっかけで、兄を殺害してしまう。
そして、思うのです。
これは新たに人生をやり直すチャンスなのではないか、と。
兄は二人の故郷ティグレで養蜂業を営んでおり、
いかにも気楽な商売とアグスティンは思ったのでしょうね。
確かに都会人が憧れそうな・・・。
そこで、アグスティンはペドロになりすまし、ティグレを訪れますが、
そこで、兄が関わっていた犯罪に巻き込まれて行きます。


 

アグスティンは様々な困難に遭遇するわけですが、
始めは“ペドロ”の模倣。
けれども次第にその“ペドロ”は
アグスティン側に引き寄せられていきますね。
「偽りの人生」それは、アグスティンが手に入れたニセの人生のことだと思って見始めたわけですが、
今、それは違うように思われてきました。
都会の中で、自分を押し殺し、人々の期待する方へ、模範的な生き方を続けていたアグスティン。
彼の中で、これは本当の自分ではない。
これは偽りの人生だ・・・とそういう思いがあって、
生きる意欲をなくしていたのではないでしょうか。

彼は本当の人生を手に入れるために故郷へ帰ってきた、
そう観るほうが自然であるような気がします。



双子の二人がそれぞれに同じ本を愛読していた、というのがいいですね。
性格が全く違う兄弟だというのに。
ビゴ・モーテンセンが、この二人をさり気なく演じ分けているのはさすがでした。
決してわざとらしくなく、微妙に、というところがミソです。
また、さほど気持ちがあっていない夫婦でありながら、
奥さんの感の鋭さはスゴイ。
たちまちニセペドロの正体を見抜きますね。
女は怖いですよ、男性の皆様。

 

さて、ついでながら、本作の上映館でクリアーファイルをいただきました!! 
ビゴ・モーテンセンの写真入り!! 
これがブラピとかレオ様の写真なら、そんなもの要らないわ・・・というところなのですが、
ビゴ・モーテンセンですからね。
無頼でもインテリでも似合うなあ・・・
私的には極めてラッキー!!


「偽りの人生」
2012年/アルゼンチン・スペイン・ドイツ/117分
監督:アナ・ピターバーグ
出演:ビゴ・モーテンセン、ソレダ・ビジャミル、ダニエル・ファネゴ、ハビエル・ゴディーノ、ソフィア・ガラ・カスティリオーネ

ビゴ・モーテンセンの魅力度★★★★★
満足度★★★★☆
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さあ帰ろう、ペダルをこいで

2013年07月26日 | 映画(さ行)
世界は広く、救いの手はすぐそこにある



* * * * * * * * * *

アレックスは幼少期に、
両親とともに共産党政権下のブルガリアからドイツへと亡命して来ました。
それから25年を経て、東欧諸国は民主化が進み、
行き来は自由になっています。
そんな歴史的背景が大きなバックボーンの一つ。


ということは、アレックスは30歳くらいということになりましょうか。
立派なオトナではありますが、結婚もまだ。
自活はしていますが、わびしい人生・・・という雰囲気。
そんな矢先、両親とともに車に乗っていた彼は事故に遭遇し、
両親は死亡。
そして本人は記憶を失ってしまいます。
彼らの故郷のブルガリアには祖父母が住み続けています。
事故のことを聴き、祖父のバイ・ダンがアレックスを迎えに来ました。
幼い頃には一緒に住んでいた祖父。
けれどアレックスにとっては、ただの見知らぬ老人。
生きる意欲も無くし病院に閉じこもりっきりのアレックスを
無理やり引っ張りだして、
バイ・ダンはタンデム自転車で孫と欧州横断、
ブルガリアの我が家を目指します。



今作はこの祖父、バイ・ダンの反骨精神と強くて大きな心がすべてといってもいい。
彼は抑圧された共産党政権下でも、
自らの考えを貫き通していたことが伺えます。
息子の一家が亡命した時には、それを知りながら見逃した罪で投獄までされているのですが、
そういう苦労を少しも感じさせません。
孫を連れて帰るのにも、列車ではなく自転車というのが又スゴイではありませんか。
じっくりと二人で心を通わせながら、
自分の力で故郷に帰ろうというのですね。


アレックスの父も又、共産党政権下で生きる道が閉ざされてしまい、
やむなく亡命に踏み切ったわけですが、
それも決して平坦な道ではなかったのです。
今作でも重要なポイントとなっていましたが、
イタリアにこのような難民を一時的に収容する施設があったのですね。
それがほとんど罪人を扱うようなひどい待遇で、
いつそこから出られるかもわからないという悲惨な状況だったのです。
こういう知られざる歴史の暗部を扱っているという面でも
一見の価値があります。


それから、バイ・ダンの愛するゲーム、バックギャモン。
これも本作では大きな位置を占めています。
特に、ラストの祖父と孫との対決は見ものですよ!!
私は、バックギャモンの事はよくわからないのですが、
双六(すごろく)盤とも呼ばれるそうで、
世界中で、かなり昔から親しまれているゲームなのだとか。
それで、ふと思い出したのです。
昨年のNHK大河ドラマ「平清盛」でよく、
「すごろく」のシーンがあって、清盛がサイコロを振っていたのですね。
私には「すごろく」は、
あの「振り出し」から、「上がり」までコマを進めていく遊びのイメージがあって、
清盛がやっているのは一体何なのか、わかっていなかった。
つまり、バックギャモンをやっていたのですね!!
いやはや、今頃になって疑問が一つ解けました。

歴史、ロードムービー、人生、家族、
どの切り口をとっても素晴らしい作品だと思います。
特マルのオススメです。

さあ帰ろう、ペダルをこいで [DVD]
ミキ・マイノロヴィッチ,カルロ・リューベック,フリスト・ムタフチェク,アナ・パパドプル
エスピーオー


「さあ帰ろう、ペダルをこいで」
2008年/ブルガリア・ドイツ・ハンガリー、スロベニア、セルビア/105分
監督:ステファン・コマンダレフ
原作:イリヤ・トロヤノフ
出演:ミキ・マノイロビッチ、カルロ・リューベック、フリスト・ムタフチェフ、アナ・パパドプル

歴史発掘度★★★★☆
祖父の生きる力★★★★★
満足度★★★★★
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「銀の匙8」荒川弘

2013年07月25日 | コミックス
厳しい現実を捉えながら未来を夢見る。う~ん、青春だっ!!

銀の匙 Silver Spoon 8 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


* * * * * * * * * *

何やら忙しい毎日の中でも、すっかりエゾノーに馴染んだ八軒。
さてところが、友人の駒場が学校にこない。
なんと、彼の実家の農場が倒産。
農場を売却し、駒場も働かねばならないという厳しい現実を知ります。
今作、ここまでは酪農は大変だけれどやりがいのある仕事、
そのようなイメージで進んできたような気がします。
けれど、さすが地元で現実を見続けた著者。
厳しい現実を突きつけます。
この期に及んで、こんな深まり方をするとは思わなかった・・・。
荒川弘、恐るべし。


他の皆は、駒場に同情はするけれど、
仕方ないこと、どうにもならないこととして受け止めます。
しか~し!八軒は違う。
何とかならないのか、
自分にできることは何かないのか、
必死に考え、行動しようとします。
ここまで来ると、お人好しも筋金入り。
彼のことだから、何かやりそうな気がしてしまいますね・・・。


また、将来馬関係の仕事をしてみたいと思っていたアキは、
家を嗣ぐのが当然と思っていた家族に、
ついに本心を明かします。


みんな、しっかりしているようでもまだ高校生。
農業という厳しい現実を見据えながらも、
それぞれの将来について、夢も馳せるのです。
ううん、これぞ青春ですねえ!
八軒は、どんな方向に自分の進路を見出すのでしょうか。
ますますこの先が楽しみです。


それから今回意外に思ったのは、
例の勘違いタカビー娘の南九条あやめさん。
この本の中では非常に普通でマトモなのです。
こんな表情をすることもあったんだー。
でもマトモすぎるとムダに美人なのでちょっとこわいくらいです・・・ハイ。


「銀の匙を持って生まれた子供は生涯食うのに困らない」
という外国の言い伝えがあり、
だから子供が生まれた時には銀の匙をおくり、
その子が一生食べるのに困らないように願う、という話。
それがエゾノーの食堂入口に飾ってある「銀の匙」の意味でした。
まったく、この学校の生徒たちも皆、
好きな仕事について、豊かに暮らしてほしいものだ・・・と願ってしまいますね。


「銀の匙8」荒川弘 少年サンデーコミックス
満足度★★★★★
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ある海辺の詩人ー小さなヴェニスでー

2013年07月24日 | 映画(あ行)
見たことのないイタリア



* * * * * * * * * *

小さなヴェニスとも呼ばれるイタリアの港町キオッジャが舞台です。
派手な観光地ではなく、
地元の人が昔ながらの生活を送ってきた場所。
そして、ラグーナ(潟)にあるこの土地の風景は、
人々の生活に馴染んでいて、とても風情があります。
いつも太陽が輝いている陽気な観光地・・・という
イタリアのイメージとは全然違うのがまた新鮮。
へえ、これもイタリアなんだ・・・と
新しい発見をしたような気持ちになりました。



この町の酒場(オステリア)で、
いつか、中国に残してきた息子を呼び寄せようと願っている
シュン・リーが働くことになりました。
彼女は、そこの常連の一人でスラブ系移民の老人ベーピと知り合います。
ベーピは妻を亡くして一人住まい。
今は漁師の仕事もリタイアして、孤独な日々。
この二人は互いの孤独をわかちあうように打ち解けていくのですが、
この小さな町で、二人のことが良くない噂となって広まってしまいます・・・。



生まれ育ったふるさとから遠く離れている、
ということで、二人には共通点があるのです。
そしてベーピは時折詩のように韻を踏んだ言葉を発するので、
皆に「詩人」と呼ばれたりしています。
シュン・リーも古の中国の詩人を大切に思っています。
ただ時折話をして、それだけで慰められていた二人なのですが・・・。



始めはベーピのほうが、
貧しく言葉もよくわかっていないシュン・リーを慰めているように思えたのですね。
けれど互いの交流を心の拠り所としていたのは、
ベーピの方だったわけです。
確かにシュン・リーのほうが若いし、
子供を待つという希望も持っています。
何より女の方が精神的にたくましいというのは世の常・・・。
いつも店に来て威張り散らしている大男のデヴィス。
全くいけ好かない奴なんですが、
あるとき奥さんが乗り込んできて
「またこんなとこで遊んでるっ!! 
たまには子供の面倒を見なさいよ!!」
とがなりたて、子供を押し付けて去っていってしまう。
彼は何も言い返せずタジタジ
・・・というシーンが妙におかしくて笑ってしまいました。
ほら、やっぱり女は強いですよね!



それはさておき、運河に浮かべた燈明が、物悲しく美しい・・・。
東洋と西洋の融合ですね。
ふるさとを喪失した二人ですが、
実はここが新たなるふるさとと出来ればとても良かったのですけれど・・・。
でも結局、安住の地とはなり難かった、というのも悲しい・・・。


大潮の満潮の時には、運河から路上にまで水が溢れだし、
店の中も水浸し。
けれどそれが普通の生活のようなのです。
遠い昔から変わらずにいて、時も止まったような町。
でも少しずつの変化は確かにあるのです。
ある者は現役を退いて、年金生活に入り
またある者は、この地を去っていく。
変わらぬ自然や風景のなかで、
人々は己の小さな変化に心揺らめく。



見知らぬ街に郷愁を感じる、不思議な感覚の作品でした。
私達とは明らかに異なる文化のイタリア。
そこに中国人が住まうことで
ちょっぴり東洋に近づいたのかもしれません。


「ある海辺の詩人ー小さなヴェニスでー」
2011年/イタリア・フランス/98分
監督・脚本:アンドレア・セグレ
出演:チャオ・タオ、ラデ・シェルベッジア、マルコ・パオリーニ、ロベルト・シトラン、ジュゼッペ・バッティストン
郷愁度:★★★★☆
満足度★★★★★
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ストロベリーナイト

2013年07月22日 | 西島秀俊
ストロベリー騎士団



* * * * * * * * * *

あれ、この作品「西島秀俊」カテゴリでいいんですか?
いいんですよ。そのつながりで見たわけだから。
そういうことにしましょう!
劇場公開時に見たいなあと思いつつ見逃していて、
ようやく待ちに待ったレンタル解禁!
誉田哲也、姫川玲子シリーズ第4作「インビジブルレイン」を映画化したものです。
ある連続殺人事件の捜査に加わることになった姫川班。
ヤクザの内部抗争のように思われたのですが・・・。

姫川(竹内結子)が「犯人は柳井健斗」というタレコミ電話を受けてしまう。
しかし、上層部から柳井健斗には触れるなという不可解な指示が降りる。
納得できず単独で捜査を始める姫川は、牧田(大沢たかお)という男と出会う・・・。


ふっと目と目が合うこの二人の出会いのシーン、
悔しいけど印象的ではあります。
何かの予感。う~ん、物語だねえ・・・。
「警察組織と個人」という厄介な問題をバックボーンに、
突っ走る姫川、やっぱりかっこいいよねえ。
この真っ直ぐさは、やはり女ならではなんだなあ。
その彼女を助け、守ろうとする姫川班の面々の心意気が又、気持ちいいのさ!
ストロベリーナイトのナイトは「騎士」のナイトってことにしちゃってもいいのでは?
いや惜しい。それだとナイツでしょうけど。
「ストロベリー騎士団」か、それいいよね。
まあ、実は「ストロベリーナイト」の意味は第一作目に答えがあって、
決してその名のように甘いモノではないんだけどね・・・。
えーと、確か猟奇殺人犯のサイトの名前だったっけ?
ストロベリーというのは血の「赤」を表しているんだったと思う。





さてさて、私的本題は、それよりも本作における菊田(西島秀俊)のなんとも切ない立場であります。
牧田と同乗したタクシーから降りてくる姫川を目撃した、なんていうのは序の口で、
まさにその“現場”を見てしまうわけでね・・・。
わ~ん、切なすぎる・・・
激しい姫川には菊田は優しすぎるんだな・・・
やっぱり、オスカルとアンドレかあ・・・



本作、全編雨だよねえ・・・
洪水になるのでは心配になるくらい、毎日毎日雨が降り続く。

こりゃ、菊田の心象風景?
でもラストがスッキリした青空で、一応の事件の解決を映し込んでいるわけだけれど、
これが又妙に眩しくてもの寂しかったりするよね。
空は晴れても心は闇・・・。
ど、どーするの菊田? これからなにを支えに生きていくんだっ!!
そこまで心配するこたぁないと思うけど・・・
一見優男でも、中身はスゴイんだよ!
姫川も一度彼のシャワーシーンでも見てみればいい。
まあ、でもさ、仮にこの二人がハッピーな結末になったりしたらさ、
全然つまらないと思うよ。
それもそうですね・・・。そんなもの見たくもないわ!
永遠の片思い。それこそが“美”なのです!

ストロベリーナイト DVDスタンダード・エディション
竹内結子,西島秀俊,大沢たかお,小出恵介
ポニーキャニオン


ストロベリーナイト Blu-rayスタンダード・エディション
竹内結子,西島秀俊,大沢たかお,小出恵介
ポニーキャニオン


2013年/日本/127分
監督:佐藤祐市
出演:竹内結子、西島秀俊、大沢たかお、小出恵介、宇梶剛士、丸山隆平

大人の恋愛度★★★★★
満足度★★★★☆
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「この話、続けてもいいですか。」西加奈子

2013年07月21日 | 本(エッセイ)
どうぞ、もっと続けて

この話、続けてもいいですか。 (ちくま文庫)
西 加奈子
筑摩書房


* * * * * * * * *

テヘランで生まれカイロと大阪で育った著者が、
小説の舞台となった大阪のこと、
いろんな人との関わり、
日々の生活で思ったこと、
こだわること、
などを縦横無尽に語る。
『ミッキーかしまし』『ミッキーたくまし』をテーマ別に整理しなおし
1冊にまとめた、著者唯一のエッセイ集。
世界とのかかわり方、楽しみ方、その存在の強度が圧巻。
小説の根っこが顔を覗かせる。


* * * * * * * * *


さてと、楽しそうなのでつい読んでしまったこの本、
でも私、この方の小説を読んだことがあったのだったっけ?
・・・と、思い出そうと思ったのですが、
やっぱり読んだことがない!! 
代表作「さくら」「通天閣」「きいろいゾウ」。
ああ、「きいろいゾウ」は映画化もされて、
読んでみようかな?と思いつつ結局読んでいないのでした。


エッセイは好きなのですが、実はこういうのはルール違反ですよね。
好きな作家の日常生活や基本的な感性を知りたくて、エッセイを読む。
そういうのが本当のような気がする。
いきなりエッセイにいってはいけない・・・。
でももう手遅れです。
読んで、そして笑ってしまいましたよ~、思い切り。
著者はかなりのビール好きで酒豪のようです。
飲んだ時の話がなかなかスゴイ。
かなり個性的でいらっしゃるようで、
ユニークな言動に笑ってしまいます。
でもこの著者の描くストーリーは全然イメージが別(らしい)ので、
やはり先に本を読んでおくべきだったと思うのでした。


でもそんな中でも、彼女が小説を書いてみようと思った
きっかけとなった本のことを書いたくだりがステキです。
トニ・モスリン「青い眼がほしい」というその作品に
衝撃的な感動を得て、毎日読み、
誰かにあてた恋文のように、熱に浮かされたように、
「言葉」を紙に書き写したといいます。
普段私達が使っている言葉を、
これだけ美しく操ること、それが人の心を深く震わせること。
その凄さこそが著者を小説の道に踏み出させた原動であった・・・と。
なるほど、本好きの私もそこまでのめり込む程の「気付き」を得ることがなかった。
そこが凡人と、なるべくして小説家となった「何か」を持っている人との差というものなのでしょう。
すごく納得してしまいました。


ということで大変楽しく読んだのですが、
ただし、地元びいきかも知れませんが
我が札幌の北大路公子さんのエッセイには及びません。
まだまだ、自分を捨て足りない。
まあ、いいんですよね。
本業がマトモな小説家なのですから、そこまでバカにならなくても。


「この話、続けてもいいですか。」西加奈子 ちくま文庫
満足度★★★☆☆
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さよなら渓谷

2013年07月20日 | 映画(さ行)
幸せにならないように生きてきた



* * * * * * * * * *

吉田修一作品の映画化。
思うに彼の小説は映画向きですよね。
犯罪を描きながら、それは特別の人のことではなく、
ごく身近でふとした拍子におこってしまうこと。
そういう人の心のあやうさ、不可思議さを描くことが多いので。



本作では実の母親による幼児殺害事件がまず取り上げられます。
けれど、それはこの場合、単に一つの道具立てでしかない。
その隣家に住む尾崎(大西信満)と、
その内縁の妻・かなこ(真木よう子)に焦点が当たります。
かなこは警察に
「夫と隣の主婦が不倫関係にあった」
と通報したのです。
尾崎は取り調べのために連行されますが、
なにも語らず、しかし、ついには不倫関係を認めてしまいます。
この事件を調べていた週刊誌記者の渡辺は、
尾崎とかなこの間にあった15年前のある事件を知りますが・・・。



作品は、ひたすら寡黙で何気なさを装い、肝心なことは絶対に口にはしないという
謎めいた夫婦の生活を映し続けます。
渡辺が探りだした真実は驚愕に値しますが、
それでもなんだか納得できてしまうのですね。

愛なのか。
憎しみなのか。

一言では語れない感情の複雑さ。
真木よう子恐るべし。
そういうところを実に納得できる形で私達に見せてくれます。



彼らの夫婦の営みは、
いつも妻からの「しよ」という誘いの言葉から始まります。
その意味は後からわかってきます。
そしてそれがまたなかなか激しいのは、
そうしている間だけ、過去を忘れてただの男と女でいられるから。
・・・と、そんなふうに思いました。


「幸せにならないように」二人で生きてきたというこの男女。
う~ん、深いですね。



この渓谷のように深い、と言いたいところですが、
実はさほど奥深い山の渓谷ではなかったですが・・・。
わりと都会に近いひなびた田舎町。
そういう背景はステキでした。
見応えたっぷりの作品。
真木よう子にやられました。



「さよなら渓谷」
監督・脚本:大森立嗣
原作:吉田修一
出演:真木よう子、大西信満、鈴木杏、井浦新、新井浩文、大森南朋

人の心の不思議★★★★★
満足度★★★★☆
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アレックス・ライダー

2013年07月18日 | 映画(あ行)
うわ~い、美少年



* * * * * * * * * *

先日見た「アイ・アム・ナンバー4」で拝見した
アレックス・ペティファーつながり。
こちらが彼の映画初出演、
うわ~い、美少年!!


本作は英人気小説の映画化です。
英国諜報機関MI6の諜報員であるイアン・ライダー(ユアン・マクレガー)は、
両親を失くした甥アレックス・ライダー(アレックス・ペティファー)を引き取り育てて来ました。
ただし、自身の仕事は内密に。
けれどアレックスには、密かにスパイとしての英才教育を施していたのですね・・・。


せっかくのユアン・マクレガーなんですが、
残念ながら冒頭まもなく、敵の手に掛かって亡くなってしまいます。
叔父の死により、アレックスは初めて彼の本当の職業を知るわけですが、
彼の後を引き継ぐように、MI6のスパイとしての活動をすることになります。
アレックスは中学生なのです・・・。
いくら類まれな素質があろうとも、
チュー坊を使わねばならないとは、
MI6も余程の人材不足・・・と思わなくもないのですが。
まあ、それを言っては始まらない。


というわけで、やや対象年齢は低そうなのですが、
スリルとお笑いに満ち、
そして美少年だけ見てればいいという向きにも満足できる、
お気楽で楽しい作品となっています。
敵方組織のドンがミッキー・ローク、
MI6のちょっとアブナイ上司がビル・ナイ等
豪華メンバー。
007ばりのスパイ小道具の数々も笑えます。
その開発場所がおもちゃ屋の奥というのも。
思うに今作は「007」というよりも、
ローワン・アトキンソンの「ジョニー・イングリッシュ」の世界に近いですね。

アレックス・ライダー [DVD]
ユアン・マクレガー,アレックス・ペティファー,ミッキー・ローク,ビル・ナイ,アリシア・シルヴァーストーン
アミューズソフトエンタテインメント


「アレックス・ライダー」
2006年/ドイツ・アメリカ・イギリス/93分
監督:ジェフリー・サックス
脚本・原作:アンソニー・ホロビッツ
出演:アレックス・ペティファー、ユアン・マクレガー、ミッキー・ローク、ビル・ナイ、ミッシー・パイル

美少年度★★★★★
お気楽度★★★★☆
満足度★★★☆☆
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「天才柳沢教授 孫・華子との生活 Special short short」山下和美

2013年07月17日 | コミックス
柳沢教授と華子の交流をオールカラーで楽しむ

朝日新聞連載版 天才 柳沢教授 孫・華子との生活 Special short short (モーニングKCDX)
山下 和美
講談社


* * * * * * * * *

2012年春、朝日新聞紙上で連載され大好評を博した
”華子と教授”のショートストーリー12編を収録!
連載したものに更に彩色を施して完成した
著者初のオールカラー本です。
連載開始から20数年、時代も日本も変わるけど、柳沢教授は変わらない。
モーニングの大人気連載『天才 柳沢教授の生活』シリーズから新たな一冊。
教授シリーズ入門編としてもオススメですが、もちろんファンの方にも。


* * * * * * * * *

この本、何度か店頭で見かけていましたが、
時々ある「傑作集」だとばかり思っていて、見過ごしておりました。
実は2012年春、朝日新聞に掲載されたもので、
単行本には未収録のもの。
しかもオールカラーという豪華版です。


柳沢本の中でも、私も華子ちゃんが登場するところが大好き。
それというのも、おじいちゃんを尊敬しきっている華子ちゃんが可愛らしく、
けれども真似しようにも全然まねできていない(当然ですが)ところが
又いっそう愛しく感じられるので。
また教授の方は、華子を子供だからとバカにせず、
いつも彼女と正面から向かい合って、
彼女とともに問題に当たろうとします。
実に、オトナの対応とはこういうことを言うのだなあ
・・・と感心してしまうのです。


笑えたのは、教授が美肌パックの実験をしてみるというところ。
もちろん自身が実験台。
蜂蜜、ヨーグルト、小麦粉を顔に塗って、
ラップをして待つこと10分。
なんと見事に教授が「ぷるぷるお肌」に・・・。
うーん、思わず真似してみたくなりました。
華子ちゃんは「こんなのおじいちゃんじゃなーい」と言って、
逃げ出してしまいましたが・・・。


また、華子が生まれる前の写真。
お父さん、お母さんとともに写っていた一匹の犬。
愛犬タローは華子が生まれる前に亡くなってしまったのです。
タローが死んだのは自分が生まれたせいなのでは?という華子に
教授は言います。
「生き物には寿命があっていつか死ぬのです。
それは誰のせいでもありません。
華子のおかげで忘れかけていたタローのことが思い出せて
私はとても嬉しいです。」
その夜、公園でタローと遊んでいる夢を見たという華子ちゃん。
そのシーンが、本作の表紙裏のカットにもなっているのですが・・・、
泣けました。
犬好きとしたら、泣けます、実に。


華子がうまく言葉に出来ない心のなかのぐちゃぐちゃした感情を、
いつも教授はうまく紐解いてくれます。
そんなことは子供の華子だけでなく、
私たちの中にも時々ありそうです。
教授みたいな人が身近にいればいいのに・・・。
そんな風に思いながら、本を閉じました。

満足度★★★★☆
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コン・ティキ

2013年07月16日 | 映画(か行)
自分を信じる強い心で



* * * * * * * * * *

1500年前と同じ材料、同じ方法で作ったいかだで
ペルーからポリネシアまで8000㎞の航海をしたというコン・ティキ号。
その記録「コン・ティキ号探検記」を私はきちんと読んだことはないのですが、
その話はあまりにも有名です。
本作はその記録の映画化。



1947年、ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールは
「ポリネシア人の祖先は南米から海を渡ってきた」という説を証明するため、
自らいかだでペルーからポリネシアまでを渡ろうとします。
5人の仲間とともに、風と波に任せた太平洋横断に出発。
引き止める妻を振り切り、彼は冒険に乗り出す。



本作の冒頭に彼の少年時代のエピソードがあるのです。
池の氷の上に飛び乗るという大冒険をして死にかけた場面。
両親は「もう決してこんな危ないことをしないと誓いなさい」というのですが、
強情な彼は決して口を開かない。
好奇心に任せ、危険を省みず行動に移さずにいられない。
つまりはそういう人なのです。
本作、もちろん結末はわかりきっています。
けれども緊張せずにいられない、映画の醍醐味がちゃんとあるのがスゴイですよね・・・。


よいよ、港を離れるコン・ティキ号、というシーンでは、
私はほとんど彼の奥さんのような気分で
「ほんっとに、男って、なんで好き好んでこんな無謀なことを・・・」
と嘆息せずにはいられませんでした。
今時、女性の冒険家もいらっしゃいますが、
やっぱりこういうことは「男」の発想のような気がします。



海では、嵐の大波やサメも確かに怖いのですが、
それ以上に内部の人間的感情が恐ろしく感じられました。
特にはじめの方では、うまく予定した海流に乗れなくて、
誤った方向へ進んでいたのです。
その時の疑心暗鬼の感情。
そして仲間のうち一人だけ毛色の違う、
いかにも冒険には向きそうもないヘルマンに対して、
信頼しきれない皆の感情。
イヤでも一日中顔を付き合わせていなければならない
このような凝縮された人間関係は、
思った以上に神経をすり減らす。
そんな面もうまく表現されていたと思います。



しかし、ついにある日
予定した南赤道海流に乗り、
ようやく皆の感情がほどけていきます。
ある静かな夜。
広大な海原、満天の星の下。
限りなく人間が小さく思われて
宇宙の無限さや、神の存在を考えずにいられない。
そんな時もあるのです。
・・・ああ、この感じ、「ライフ・オブ・パイ」にもありました。
このシーンだけでもIMAXシアター、3Dでみたかったですね!! 
(そんなのやってないけど。)
こんな感覚は同じ海の上でも豪華客船では味わえないのではないでしょうか。
限りなくちっぽけなボートやいかだならではのもの。


1500年前の人々も、新たなる住むべき土地を求め、
冒険心にかられて船を漕ぎだしたのでしょうか。
鳥の「渡り」について描いた梨木香歩さんのエッセイも思い出しました。
鳥たちばかりではなく、
ヒトも、時には危険を犯して果てしない旅に出る。
もしかしたらいきもののDNAに、
そういう記憶が刻み込まれているのかもしれません。



冒険とロマン、それを支えるのは自分を信じる強い心。
素敵な作品でした!


ただし、昨今はこの実証を打ち消す説が大勢を占めているとのこと。
興味が有る方は、Wikipediaなどで「トール・ヘイエルダール」を調べてみましょう!
まあ、それにしても、彼の業績は色褪せないと私は信じます。

「コン・ティキ」
2012年/イギリス・ノルウェー・デンマーク・ドイツ/113分
監督:ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ
出演:ポール・スベーレ・バルハイム・ハーゲン、アンダース・バースモー・クリスチャンセン、ヤコブ・オフテブロ、トビアス・サンテルマン
冒険心★★★★★
海の神秘★★★★☆
満足度★★★★★
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アンコール

2013年07月14日 | 映画(あ行)
これぞ、歌の力



* * * * * * * * * *

近頃老人問題がテーマの作品には食傷気味で、
本作も見なくてもいいか・・・と思っていたのです。
そもそも自分自身が老境に差しかかろうという時に、
身につまされすぎといいますか・・・、
イヤわざわざ映画でいわれなくても考えてるから
・・・と言いたくなってしまう。


しかし、この日は「真夏の方程式」とどうもうまく繋げられる作品がなくて、
やはり本作を見ることになりました。
ところが今作は、
老人が主役ではありますが、老人問題を扱ったというわけではない。
夫婦間の信頼と愛情。
そして生きていくための指針。
これらを歌の「力」と絡めて描いた感動作です。
嬉しい誤算で、本作、見逃してはならない作品でした!




アーサーとマリオンは長年連れ添った老夫婦。
奥さんのマリオンは、体調がすぐれないながら、
近所の合唱サークルで歌うのを楽しみにしています。
そこで送り迎えは夫のアーサーの役目ですが、
彼自身は全く合唱には興味がなく、
ただ練習が終わるのを窓の外で待つのみ。


アーサーはとにかく気難しくて頑固なのです。
日本にもよくいますよね、こういうお父さん・・・。
合唱なんてチャラチャラしたものできるかい、って感じ。
だからマリオンの合唱仲間にもそっけなく、
いかにも感じ悪いのです。
そして又、この頑固爺さんですから、
息子との折り合いも良くない。
父と息子の確執・・・といっても息子の方はもう40代半ばくらい?
 
こんなトシになってもまだ確執を引きずるというのは、
筋金入りですね・・・。
というわけで、この二人の仲は、マリオンが取り持っていたわけです。
マリオンは、いつも気むずかしい顔で頑固なアーサーだけれど、
本当は優しく、いつも自分を気遣っていることを知っていて、
夫を大切に思っているのです。
優しい言葉を口にするのがニガテなだけと、知っているんですね。
長く連れ添った夫婦の絆が感じられて、
なんだかいいなあ・・・と思います。



さてところが、マリオンの癌が再発・・・。
大きな悲しみが待っています。
アーサーは生きる意欲をなくし、
息子とはますますうまく行かなくなり・・・・・


このコーラスサークルはお年寄りばかりなので、
“年金ズ”と名乗りますが、
指導者のエリザベスがロックやらラップやら、
年令にこだわらず思い切りポップな選曲をするのです。
私も以前ゴスペルなど歌いに行っていた事がありまして、
その時のことを思い出しました。
みんなで心を一つに、ハーモニーを奏でるとき・・・
気持いいんですよね~。

お年寄りだからといって、
古臭くて退屈な歌をうたわなければならないなんてことはないわけで、
楽しめるのならなんでもあり。
そこがいい!! 
けれどもそんな中でやっぱり、
人生経験が豊富な方がじっくり気持ちを込めて歌う
バラード調の歌が胸に染み入るのであります。
特別上手いというわけでもないのに、
どうしてこんなに涙が出てしまうのか・・・。
これが「歌」の力なんだなあ・・・と思いました。



とにかく、一見、いえ、一聞の価値ありです。


「アンコール」
2012年/イギリス・ドイツ/94分
監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
出演:テレンス・スタンプ、バネッサ・レッドグレープ、ジェマ・アータートン、クリストファー・エクルストン

夫婦の信頼★★★★☆
歌の力★★★★★
満足度★★★★★
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すべては夜から生まれる

2013年07月13日 | 西島秀俊
夜の静寂の中で・・・

すべては夜から生まれる [DVD]
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* * * * * * * * * *

う~ん、どうなんでしょう、今作。
まあ、地味ですよねー。
とにかく、ほとんど「売る」ことは考えていない。
ひたすら作り手の作りたいものをつくった、と、
そういう意気込みは感じられます。


売れない俳優の山形(西島秀俊)は、
同棲相手の優子(甲田益也子)に、撮影のためと嘘をついて、
深夜のカフェでひたすらぼ~っと、時間を潰します。
優子はきちんとした仕事を持っていて、まあ、山形はヒモ状態だね。
お互いにさしたる愛情があるとも思えないけれど、
ただ惰性でつきあっているというか、
そもそも惰性で生きてる感じ。
そのカフェで、西島が知り合ったのは画家の上原(川口潤)、
そしてその恋人の綾(水沢蛍)。
ある夜、山形と綾はホテルで一夜を共にするけれども・・・


誰もがほとんど無表情でぼそぼそと話をします。
夜と言うよりも深夜、ほとんど早朝ともいえるくらいの・・・、
そういう時間のイメージがあるね。
あまりの夜の静謐さに、つい声を潜めてしまう、みたいな・・・。
そもそもが生きているのだか死んでいるのだか、
そういう時の止まったような生き方をそれぞれがしているわけだ・・・。
おっと、この中でただ一人「生きて」いたのが、画家の上原なんだよ。
そもそも画家というのは、自らの感情をカンバスに焼き付けることを生業としているわけだからさ・・・。
彼だけは深夜のカフェでも、ぼ~っとはしていなくて、
せっせとスケッチしてたでしょう。
なるほど、まあ、一見淡々としてるけど、
彼の中では色々な感情がくすぶっているというわけか。
だからまあ、この中では彼が一番人間っぽくて、
だからこそあんな行動に出たということなんだろうな。


うん、納得しました。
それにしても、下手をすると眠りこけてしまいそうなこの作品。
いろいろな作品を見てるので、こういうのもアリだとは思いますが、
まあ、あまり好みではありません・・・。
いや、でもね、彼らがみな普通にベラベラ喋り出したら、
この作品、すご~くありきたりな話になっちゃうよ。
う~ん、それもそうか・・・

「すべては夜から生まれる」
2002年/日本/79分
監督:甲斐田祐輔
出演:西島秀俊、甲田益也子、川口潤、水沢蛍
密やかさ:★★★★☆
西島秀俊の魅力度:★★★☆☆
満足度★★☆☆☆
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「完全なる首長竜の日」 乾緑郎

2013年07月12日 | 本(その他)
現実と幻想、境界の危うさ

【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
乾 緑郎
宝島社



* * * * * * * * *

選考委員が即決した『このミス』大賞受賞作!
テレビ・雑誌各誌で話題、
その筆力を絶賛された大型新人のデビュー作、
待望の文庫化です。
少女漫画家の和淳美は、植物状態の人間と対話できる
「SCインターフェース」を通じて、
意識不明の弟と対話を続けるが、
淳美に自殺の原因を話さない。
ある日、謎の女性が弟に接触したことから、
少しずつ現実が歪みはじめる。
映画「インセプション」を超える面白さと絶賛された、謎と仕掛けに満ちた物語。


* * * * * * * * *


本作は、映画が気になっていましたが、
どうも観る時間をとれそうにないので、本を読むことにしました。
SF的に、昏睡状態の人と対話できるという
「SCインターフェース」というテクノロジーが登場します。
自分が現実と思っていることが全て、
実は夢の中のことかもしれないといった幻惑に満ちたストーリー、
プロットも優れていて、
とても新人とは思えない力量を感じました。


私が唸ってしまったのは、首長竜の模型を砂の中から掘り出すシーン。

「手の平の上に載せてみると、小さいが、かなりの重量感がある。
真鍮か何かだろうが、重さからすると、中は空洞ではなくて、
芯まで金属が詰まっているような感じだ。鋳物だろうか。」


・・・ちょっと待って、
この文章、前にも一度読んだような・・・。
一体どこでこの首長竜の模型が登場したのだったっけ・・・? 
まるでこちらの記憶まで幻惑されるような危うい気分にさせられます。
登場人物たちの不確かな現実感が、
まるで乗り移ったような、不思議な感覚でした。
また、作中何度も繰り返される、
赤い布とともに波にさらわれるイメージ。
きっとここに何かのヒントがあるに違いないと気付きはしますが・・・。
実に効果的なイメージとなっています。
窓の外を泳ぐ首長竜によって
ある一つの意識が打ち破られていく、
というシーンも美しく劇的。
「このミス」大賞選考委員4名が満場一致で大賞決定した
というのも納得の秀作です。


さて、ところで映画の方のあらすじを見てみたら、
かなり設定が変えられているようです。
こちら原作は昏睡状態なのは弟で、
それを見守っているのは姉。
でも映画は姉弟ではなくて幼なじみの恋人同士。
昏睡状態にあるのは女性の方。
ここまで変えられたら、著者も面白くはないでしょうと思ったりしますが・・・・。


意識のない人との会話。
そして現実と脳の創りだす幻想、
その境界の危うさ
というテーマが生きてさえいればいいと、
割り切るしかないでしょうか。


「完全なる首長竜の日」乾緑郎 宝島社文庫
満足度★★★★☆
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