映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「銀の匙 13」荒川弘

2015年06月30日 | コミックス
卒業まじか。見よ、この成長ぶり

銀の匙 Silver Spoon 13 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


* * * * * * * * * *

エゾノー3年となった八軒たち。
まずは乗馬クラブの様子です。
馬術の地方大会。
まさかの展開を見せて、なんと全国大会まで行っちゃうのですねー。
これはすごい。
ただし、本作は馬術のど根性物語ではないので、
八軒ももちろん出場はしますが、どちらかと言うと足の引っ張り役。
でもそこがいいですね。
なんでもできる奴だったら、つまらない。
でも、皆で緊張し、頑張って、支えあう。
高校生らしいチームワークが清々しいです。


それにしても八軒の父の写真が
彼らの護符というかお守り代わりになっているというのがすごい。
その父も、以前に比べたらずいぶん雰囲気が柔らかくなったような・・・。
息子を少しずつ認め始めている。
・・・よかったね、八軒くん。


ここでも出てきた、ピザの試食会は、
エゾノーで作ったベーコンとじゃがいもを使ったジャーマンピザ。
ひゃ~、美味しそう。
しかもじゃがいもは3種類の食べ比べ。
まあどれだって美味しくないわけがないです。
北海道のホクホクじゃがいも・・・。


さて、前巻で、意を決して北海道を離れた駒場くんは、
なんと東京に出て肉体労働で稼いでいました。
何かを目標にしてお金をためていたようなのですが、
本巻ではまだその目的は明らかにされません。
うーん、楽しみですね。
本当ならまだ高校生とは思えないこの自立心。
大人だなあ・・・。
というわけで、次第に卒業に近づいてくる
・・・なんだか今から寂しくなってきてしまいます。
卒業でこのストーリーも終わりとなりそうな感じですしね。

「銀の匙 13」荒川弘 少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆

マレフィセント

2015年06月29日 | 映画(ま行)
現代のお伽話は「王子」も無力



* * * * * * * * * *

誰もが知る「眠れる森の美女」のおとぎ話を、
邪悪な妖精側の視点から描く実写作品。
だから主役は、アンジーことアンジェリーナ・ジョリーが演じる“マレフィセント”です。



彼女は素晴らしくたくましい翼を持ち
自由に空を飛び回る妖精。
少女期の彼女が人間の少年ステファンと出会い恋に落ちます。
しかし、せっかく芽生えた愛も、
少年が長じて社会的地位を得たいという全く人間的な欲望に駆られるにつれて、変わっていきます。
ステファンは自らの欲望のために、
マレフィセントの愛を利用し、最大の裏切りを働くのです。
最愛の人に裏切られる辛さ・・・。
つまり、あの悪い妖精がオーロラ姫に掛けた呪いというのは、
このことが原因だったわけですね。



しかし、まだ赤子のオーロラ姫の無垢な愛らしさにふれるうちに、
マレフィセントの気持ちも変わっていくのですが・・・。



うーむ、両親から引き離され、
あんな頼りないおばさまたちに育てられたにしては、
なんと明るく心優しく育ったオーロラ姫・・・。
それこそ「ゴッドマザー」が見守ったおかげ?
そもそも、その呪いを信じるならば、
16歳の誕生日の前日までお城で両親と楽しく暮らしたっていいではないかと、
ツッコミを入れたくなりますが・・・。
本作の呪いをとく「真実の愛」のキスは王子様のキスではありません。
我が身を犠牲にしても相手を慈しみ守ろうとする気持ち。
これぞ、「愛」。



ふう、それにしても、アメコミの映画化と並んで
このようなファンタジーも、見れば面白いのは確かですが、
わざわざ劇場で見るまでもないなあ・・・という気持ちが強まってきました。
だからやっぱり、「シンデレラ」も、後日見ることにします。

マレフィセント MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
アンジェリーナ・ジョリー,エル・ファニング,シャールト・コプリー,レスリー・マンヴィル,イメルダ・スタウントン
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「マレフィセント」
2014年/アメリカ/97分
監督:ロバート・ストロンバーグ
出演:アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、サム・ライリー、シャルト・コプリー、イメルダ・スタウントン

現代のファンタジー度★★★★☆
満足度★★★☆☆

真夜中のゆりかご

2015年06月27日 | 映画(ま行)
人の心の奥底の裂け目



* * * * * * * * * *

敏腕刑事であるアンドレアスは、
美しい妻とまだ乳児の息子と、それなりに満ち足りた生活をしていました。
ある時、通報を受けて駆けつけた一室で、
薬物依存の男女による育児放棄の現場に遭遇します。
糞尿にまみれて凍えている哀れな赤ん坊は、
ちょうど自分の息子と同じくらい。
それでアンドレアスは通常よりもこの子のことが気にかかってしまうのです。
一方アンドレアスの息子は夜泣きはするものの、
両親の愛を一身に受けて穏やかで満ち足りた毎日・・・
と、アンドレアスは思っていました。
しかし、ある夜事件が起こります・・・。



子を思う強い母の愛の物語かと思いました。
・・・しかしこれが、衝撃の展開を見せます。
普通は母の愛は絶対的なもの・・・そのように描く物語は多いですよね。
けれども現実は、昨今育児放棄の話は後を絶たないし、
育児ノイローゼなどというものもある。
母親になれば必ず我が子を愛せるとは限らない。
いえ、愛していなくはないのですが、
時には子供が自分の平穏な生活を脅かす重荷のように思えてしまうことが、
誰にもあるのかもしれない。
本作中では、アンドレアスの妻・アナの両親もまた、
我が子を無条件に愛せない親のようでした。
自分の娘ばかりではなく、孫に会いにすら来ないのです。
アナの悲劇の根っこは、多分こんなところにもあるのでしょう。
人の心の奥底の暗い裂け目をすくい取る、
なるほど、「未来を生きる君たちへ」のスサンネ・ビア監督の手腕ですねえ・・・。



また、アンドレアスは、ある思い込みから罪を犯す事になるのですが、
この場合、これを犯罪と呼ぶには少し抵抗を感じるのです。
何が犯罪で、何が正義なのか・・・
そんなことも考えさせられます。

しかし、このどうにもこうにも抜き差しならない、心境と状況に落ち込んでしまったアンドレアスを、
わかってくれる人がいてよかった・・・! 
そう思わずにいられません。
それはアンドレアスの先輩であり同僚のシモンなのですが、
始めは妻と離婚した痛手のために飲んだくれて暴れるとんでもない奴。
しかし、アンドレアスの苦境を見るうちに、生活を立て直していくんですよ。
この人の存在が救いでしたねえ・・・。
アンドレアスは、隠し通そうとか逃げ切ろうとは思っていなかった。
誰かに自分の罪を暴いて欲しかった。
そんな気持ちが明らかに見て取れました。



ミーハー的見地から、
アンドレアス役のニコライ・コスター=ワルドウ、モロに好みなんですけど~!!!



「真夜中のゆりかご」
2014年/デンマーク/102分
監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・ソーマス・イェンセン
出演:ニコライ・コスター=ワルドウ、ウルリッヒ・トムセン、マリア・ボネビー、ニコライ・リー・カース、リッケ・メイ・アンデルセン
衝撃の展開度★★★★☆
現代の問題をえぐる度★★★★☆
満足度★★★★★

「南極風」笹本稜平

2015年06月26日 | 本(その他)
山の自然より厳しい、人の世・・・

南極風 (祥伝社文庫)
笹本 稜平
祥伝社


* * * * * * * * * *

ニュージーランドの名峰アスパイアリングで起きた遭難事故が、
森尾正樹を奈落の底に突き落とした。
登山ガイドの彼は悪天候のなか瀕死のツアー客を救出し一躍英雄となるが、
突如、保険金殺人の容疑で逮捕されたのだ。
冤罪を主張するも検察の取り調べはあまりに作為的で―
眺望絶佳な山の表情と圧巻の雪山行、
そして決して諦めない男の法廷対決を描く愛と奇跡の感動作。


* * * * * * * * * *

私、自分で登山をしたりはしないのですが、
山岳小説は嫌いではありません。
峻烈な自然とそれに対峙する生死をかけた人間のドラマ。
つい、夢中になってしまいます。
本作の主人公はニュージーランドの名峰アスパイアリングで登山ガイドを勤める森尾。
特別危険な山ではないのですが、
日本からの登山客を無理なく山頂まで導くことで定評のあるツアーを企画しています。
しかしこの時のツアーは、
体調を崩した登山客がいたため日程がずれ込み、
落石というアクシデントと、
さらに天候の急激な悪化で最大級の危機に瀕してしまう。
しかし森尾は、持ち前の責任感と粘りで、
全滅してもおかしくなかった状況から、死者も出たものの、多くを救い、
奇跡の生還を遂げたのです。
・・・ところが彼の行為が、
保険金を狙った「未必の故意」による殺人であるとの告発があり、
突如逮捕され、検察の底意地の悪い取り調べを受けることとなる・・・。


その時の山の出来事と、検察の取り調べの様子が交互に描かれていきます。
私は、山の出来事の方はすんなり読めましたが、
逮捕後の部分はあまりにもヒリヒリした感じで、
正直読むのが辛かった・・・・。
あくまでも「犯罪ありき」で、真実を見極めようともしない、
悪意としか思えない検察。
そもそも彼を告発したのは誰なのか? 
この冤罪を受けて、森尾がよく頑張れたな・・・と感心してしまいます。
もっとも、それこそが常に山の危険と向かい合い、
自分に挑戦し続けた森尾の頑張りどころではありますが・・・。
山よりも人の世のほうが厳しいというのが、私にはキツすぎる・・・。
それでいて、ラストの湯沢検察官の懺悔めいた告白のくだりは、
ちょっとやり過ぎという気もしましたが・・・。

「南極風」笹本稜平 祥伝社文庫
満足度★★★☆☆

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

2015年06月25日 | 映画(か行)
“公妃”を演じる



* * * * * * * * * *

ハリウッドを代表する人気女優からモナコ公国の公妃となったグレース・ケリーを
ニコール・キッドマンが演じます。



1954年、映画「喝采」でアカデミー主演女優賞を受賞した、グレース・ケリー(ニコール・キッドマン)。
1956年にモナコ大公レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚し、女優を引退しました。
ここまでは誰もが知る、おとぎ話のような幸福な結末。
しかし、現実はその先が非常に厳しい。
王子様と結婚した庶民の女性。
実在の彼女たちも、実際には大変な苦労を背負い込むことになるようです。
ダイアナ妃然り。
日本でも美智子様や雅子様・・・
失礼ながら、別の人と結婚していれば
もっと活き活きと自分らしく生きることができたのではと思わずにいられません。



さて、結婚から6年、未だに公妃としての立場に馴染めないグレース。
そんな時、ヒッチコックから映画出演の誘いがあり、
彼女の心は揺れるのです。
しかし、折しもフランスのシャルル・ド・ゴール大統領が過酷な課税をモナコに要求。
モナコは窮地に立たされます。
グレースは、外交辞令の特訓を受け、
各国指導者を招いたパーティーに臨むのですが・・・。



このような結婚で、女性はまず最初に“自分自身”や“妻”ではなく、
“公妃”であることを要求されてしまうのだろうと思います。
生まれながらの王族ならまだしも、
これまでに想像もしたことのない立場で、
しかもそれがすべて衆目にさらされることになるというのは、
それだけで大変なストレスなのでしょう・・・。
揺れ動き悩む彼女が最後に選択したのは、
彼女ならではの生き方なのでした。
すなわち、「公妃」を演じること。
公妃を本当の自分と切り離し演技として割り切ること。
このことがモナコばかりか彼女自身をも救うわけですね。
もともと美しくオーラの漂う女性なのだから、
あとはほんのちょっと知識と仕草や礼儀を身につければもう完璧!!
全く、そのままどこかの公妃に収まってしまっても
十分に通用しそうに優雅でステキなニコール・キッドマンでした。



グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 [DVD]
ニコール・キッドマン,ティム・ロス,フランク・ランジェラ,パス・ベガ
ギャガ


「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」
2013年/フランス/103分
監督:オリビエ・ダアン
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、パス・ベガ、パーカー・ポージー
歴史発掘度★★★★☆
おとぎ話の現実度★★★★☆
満足度★★★.5


ハイネケン誘拐の代償

2015年06月23日 | 映画(は行)
犯罪の代償とは



* * * * * * * * * *

1983年、オランダ、アムステルダム。
有名ビール企業ハイネケンの会長が誘拐された実話に基づく物語です。



これまで犯罪などに関わったこともない幼なじみの5人の若者が、
巨大組織を装い、
フレディ・ハイネケン(アンソニー・ホプキンス)氏の誘拐を決行。
しかし、海千山千のハイネケン氏は人質となっても動じず、
食事に注文をつけたり本を要求したり、
誘拐犯らを心理的に追い詰めていく・・・。

何しろ、あのレクター博士を演じたアンソニー・ホプキンス。
一体どんなふうに犯人たちを食いつぶしていくのか・・・と、
若干期待があったのですが、
実はそういう話ではなかったんですね。
まあ確かに、ここまでのし上がってきたハイネケン氏、
甘ちゃんの若造グループなど手玉にとってしまう、
確かにそういう雰囲気はありましたが。



ハイネケンとその運転手を監禁しながら、
何くわぬ顔で日常生活をも続けていた彼ら。
始めは5日でかたをつけるつもりだったのが、
3週間近くたっても身代金要求に対する返事がなく、どんどん焦燥してゆくのです。
いつ警察が踏み込んでくるかに怯え、
また、もしこのままナシのつぶてならどうするのか不安にもなります。
まず見せしめとして運転手を殺してみせるのか。
そしてその後にハイネケンをも・・・?
犯罪には全く素人の彼らにはそのような度胸がありません。



チームの一人が思わずつぶやく。
「今やめれば、金は入らないけれど、安らぎの日々を取り戻せる・・・」
まさにここが本作のテーマのように思いました。
犯罪に手を染めれば、
家族と共に笑い、食事をする、
そんな、ささやかではあるけれど人としてあたり前の幸福な生活に
もう戻ることができない。
たとえそれが殺人にまで及ばないにしても・・・。
そのことがすなわち犯罪の「代償」であるわけです。
ついには大金を得てしまった後、初めて彼らはそのことを思い知ることになる。



ここで、アンソニー・ホプキンスの起用は、
逆に失敗だったような気がします。
どうも、変な方に期待(?)してしまって、拍子抜け。
ストーリー自体は納得の行くものでしたが。


「ハイネケン誘拐の代償」
2015年/ベルギー・イギリス・オランダ/95分
監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ジム・スタージェス、サム・ワーシントン、ライアン・クワンテン、マーク・ファン・イーウェン
満足度★★★☆☆

「杏のふむふむ」 杏

2015年06月22日 | 本(エッセイ)
ごく普通の女の子?

杏のふむふむ (ちくま文庫)
筑摩書房


* * * * * * * * * *

ラブラドールのハリーと過ごした小学校時代、
歴女の第一歩を踏み出した中学時代、
単身海外にモデル修業に行った頃、
そして、女優として活動を始めたとき…。
NHK連続テレビ小説のヒロインを演じ国民的な女優となった杏が、
それまでの人生を、人との出会いをテーマに振り返って描いたエッセイ集。
そのとき感じたことを次につなげて明日に向かう姿は、感動必至。


* * * * * * * * * *

先日読んだのが、三浦しをんさんの「ふむふむ」で、
こちらは女優・杏さんの「ふむふむ」です。
インタビューではないけれど、
様々な人と出会ったエピソードやその時聞いた話などがエッセイとして描かれています。


驚いてしまうのが文章のお上手なこと、
そして中の可愛らしいカットもすべて杏さん自らのものということで、
やっぱり、天は2物も3物も与えてしまうことがあるという
見本のような方ですね。
彼女がこのように文章を描くことを苦としないのは、
冒頭にエピソードがあるのですが、
小学校の時の担任"エンドウマメ"先生が、
毎日子どもたちが書いた日記に、
必ず一言づつコメントを付けて返してくれていたかららしいのです。
実は私にも小学校の時に同じ経験がありまして、
それ以来こんな感じ・・・?
だから急に、親近感が持ててしまいました。


世界的有名な俳優を親にもち、モデルで、女優・・・。
交友も広くて、さぞかし積極的でお話し上手なお嬢さん
・・・と思ったのですが、
本作の解説で村上春樹氏がこのように言っています。
「ごく普通の女の子」と。
ちょっと意外な感じがしたのですが、
それは多分、杏さんが、自らの知識や経験をことさら人前でひけらかしたりせず、
いつも人の話を真剣に「ふむふむ」と聞いて、
自分に取り入れようとする、
そんな聞き上手な女性だからなのかもしれません。
そんなところも好感が持てますし、
彼女が「歴女」であるというのも、ポイント高い。
もし続きが出るなら、また読みたい。
素敵な本でした。

「杏のふむふむ」杏 ちくま文庫
満足度★★★★☆

バルフィ!人生に唄えば

2015年06月21日 | 映画(は行)
切ない恋の物語+ミステリ



* * * * * * * * * *

聴覚に障害を持つバルフィ(ランビール・カプール)は、
眼差しや表情、身振り手振りで豊かな感情を表現する明るい青年。
そんな彼がある日シェルティ(イリアナ・デクルーズ)という美しい女性と出会い一目惚れ。

すぐに求愛するのですが、彼女の手にはすでに婚約指輪が・・・。
でも彼女は、表情豊かでイキイキとしたバルフィに明らかに惹かれていくのですが、
結局安定した生活を求め資産家と結婚してしまいます。
さて、数年が過ぎて・・・。



バルフィの父が病で入院のため大金が必要になります。
苦肉の策でバルフィは幼なじみのジルミル(プリヤンカー・チョプラ)の誘拐をもくろみます。
ジルミルは自閉症で施設に入っていたのですが、
最近家に戻ってきていました。
しかし彼女を理解するものは周りにいなくて、孤独な日々・・・。
さてところが、彼が彼女の部屋に忍び込んでみればベッドはカラ。
それなのに、彼はジルミル誘拐の容疑で警察に捕まってしまいます。
なんと、バルフィの作った脅迫状の他に
もう一通の脅迫状が届いていた・・・というから話はややこしい。



しかしその後またバルフィとジルミルは出会い、
ジルミルはバルフィに対して心をひらいていく・・・。
シェルティとジルミルのバルフィを挟んだ微妙な関係。
あんなに底抜けに明るかったバルフィがシェルティと別れてからの表情の暗いこと・・・。
結局バルフィでなく資産家を結婚相手として選んでしまったシェルティの後ろめたさ・・・。
切ない恋の物語に、何やらミステリも絡めて、
なかなか見応えのある一作です。



言葉を持たないバルフィは
時にはパントマイムのような身振り手振りで語りかけます。
それはまるで昔の無声映画の映像のよう。
「雨に唄えば」を彷彿とさせるシーンもあり、
だからこそ、この邦題がそれにかけてあるわけなんですね。
ただ歌って踊る一昔まえのインド作品しかイメージのない方には是非おすすめ。
じっくりとストーリーを楽しめます。
まったく、最近のインド作品には唸らされてしまいます。
また、インドの女優さんは本当に美人ですよね~。
見とれてしまいます。



バルフィ!人生に唄えば [DVD]
ランビール・カプール,プリヤンカー・チョープラー,イリヤーナー・デクルーズ
ポニーキャニオン


「バルフィ! 人生に唄えば」
2012年/インド/151分
監督・脚本:アヌラーグ・バス
出演:ランビール・カプール、プリヤンカー・チョプラ、イリアナ・デクルーズ

ロマンス度★★★★☆
バルフィの魅力度★★★★☆
満足度★★★★☆

海街diary

2015年06月19日 | 映画(あ行)
鎌倉の四季と4姉妹



* * * * * * * * * *

吉田秋生さんの原作コミックが大好きで、
当ブログでもご紹介していましたが、待ちに待った映画公開。
でも、一抹の不安もありました。
大好きな本やコミックの映画化。
これには私としては2パターンありまして、
ストーリーを知っていてさえもまた感動を新たにするケース。
そしてもう一つは、う~ん、本で読むだけで十分だった、なんでわざわざ映画化したんだろ
・・・と思ってしまうケース。
本作は見事に前者に該当しました!! 
大満足。
本の感動どころとはまた違うツボがあり、
何気ないシーンなんだけど泣けてきてしまうところがあったり、
この役をこの人が!!という驚きがあったり、
さすが是枝監督ですね。
一生ついていきます!!



鎌倉に暮らす三姉妹
幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)のもとに
15年前に家を出た父の訃報が届きます。
葬儀のために山形に赴いた3人は、
異母妹14歳のすず(広瀬すず)と対面します。
父をなくし、身寄りは血の繋がらない義母と義弟だけになってしまったすずは、
でも気丈に振舞っていました。
そんなすずに幸は「一緒に暮らさない?」と、声をかけるのです。





そうして始まった鎌倉での4人の暮らし。
彼女たちの父母の過去の愛憎を軸としながら、
現在の彼女たちそれぞれの仕事や恋愛について語られていきます。
共に暮らす始めの日からいきなり打ち解けられるわけがない。
一つ一つの心の揺れを経ながら、家族として互いに受け入れ打ち解けていくさまが、
美しい鎌倉の四季を背景に描き出されています。





本作で光っているのは、ただ大人の女性の恋愛を描くだけでなく、
中学生の少女を配したところですね。
まだ恋も知らないみずみずしい少女の存在が
本作を素晴らしく鮮烈なものとしています。

サッカーのチームメイト風太は、なんとあの前田旺志郎くんで、
二人のりの自転車で通り抜ける桜の満開のトンネル・・・
素晴らしいシーンでした!! 
若いって素晴らしい・・・!!
オバサンはうるうるしてしまいます。


それにしてもなんとトンデモなく豪華な出演陣。
実際こんな4姉妹が住んでいる家があったら、
美人姉妹ということで近所でも評判になっちゃいますね。
お母さんが大竹しのぶさん、
大おばさんが樹木希林さん。
サッカーチームのコーチには鈴木亮平さん。

サチ姉の恋人(既婚者)が堤真一さん・・・。

でも実際この豪華出演陣は無駄じゃない!!


映画のセリフはかなり原作を忠実になぞっていますが、
すべてを取り入れれば2時間に収まるわけがない。
映画では、すずがはじめに憧れたイケメンの天才サッカー少年のエピソードが
バッサリ削られていますが、
まあ確かに、この映画のテーマの中では省いたほうがスッキリします。
原作のなかでも、名前だけ出てくる話題のドジ看護師アライさんは、
映画でも姿は表さない。
佳乃の彼は実は高校生だった!!などという逸話もバッサリ。
どのような要素を残してどこを削るか、
そういうテーマを生かす映画作りが垣間見えて、
原作と比べてみるのも面白いですね。


千佳ちゃんはさすがに映画ではアフロヘアじゃなかった!!
夏帆さんのアフロヘアも見てみたかったですが・・・。

「海街diary」
満足度★★★★★

「アルカトラズ幻想 上・下」島田荘司

2015年06月18日 | 本(ミステリ)
科学であり、冒険であり、ファンタジーなミステリ!!

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)
島田 荘司
文藝春秋
 
アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)
島田 荘司
文藝春秋


* * * * * * * * * *

1939年、ワシントンDC近郊で娼婦の死体が発見された。
時をおかず第二の事件も発生。
凄惨な猟奇殺人に世間が沸く中、
恐竜の謎について独自の解釈を示した「重力論文」が発見される。
思いがけない点と点が結ばれたときに浮かびあがる動機
―先端科学の知見と奔放な想像力で、
現代ミステリーの最前線を走る著者渾身の一作!
(上)

猟奇殺人の犯人が捕まった。
陪審員の理解は得られず、
男は凶悪犯の巣窟・孤島の牢獄アルカトラズへと送られる。
折しも第二次世界大戦の暗雲が垂れ込め始めたその時期、
囚人たちの焦燥は募り、やがて脱獄劇に巻き込まれた男は信じられない世界に迷い込む。
島田荘司にしか紡げない、天衣無縫のタペストリー。
(下)


* * * * * * * * * *

島田荘司作品だけは文庫化を待たずに読むことが多いのですが、
本作は見逃していました。
というのも、本作は御手洗潔シリーズではないのですね。
それでちょっぴり興味半減ということだったかと思うのですが、
いやいや、バカでした。
こんな面白いものを見逃していたなんて!

冒頭、1939年、ワシントンで猟奇事件発生。
・・・これが実は「猟奇殺人」ではなく、
どうもたまたま病気や事故で亡くなったあとの遺体に、
猟奇的な行為が行われていた事がわかります。
一体、誰が何のために???
と思っていると、突如「重力論文」などというものが出てくる。
一見、何の関係もないようでいながら、
これが存外に面白いのです。

太古、巨大な恐竜たちが地球を支配していたのは周知の事実ですが、
論者はこれはありえないことだというのです。
あの巨体を支えるのに骨格があまりにも貧弱だと。
象でさえあの体を支えるのにあの太い足が必要で、そう素早くも動けない。
なのにあの恐竜の足の細さは何だ? 
ティラノサウルスはあの強靭なアゴを持つために
頭部が巨大であるにもかかわらず、脚部が貧弱。
あんなもので草食恐竜たちを素早く捕まえられるわけがない。
・・・映画などの中ではあの巨大な恐竜が
実に素早く走り回っていますが・・・。
ここの部分だけネタばらししますが、
当時は地球の自転速度が今よりも早かったのではないかと論者はいいます。
自転速度が早いと遠心力が強く働くので、
地球の持つ引力と相殺した「重力」は小さくなる。
だから恐竜たちは少ない重力の中で、身軽に行動できたのだろうと。
しかし、巨大な隕石と地球が衝突し、
そのせいで地球の自転速度が変わってしまった。
以前から隕石の落下のために恐竜が絶滅したという説はありますが、
重力のことに触れているのは私は初めてみました。
実際に認められている説なのかどうかはわかりませんが、
何やら壮大なロマンがありますねえ・・・。
私はこういう話、大好きなんですよ~。

・・・とか何とかで、興奮しているうちに上巻が終わってしまいまして、
さて肝心のアルカトラズはどうした??と、我に返るわけですが、
下巻が、いよいよそのアルカトラズの監獄です。


猟奇事件の犯人バーナードは
実際に殺人を犯したわけでもないのに陪審員の心証が悪く、
アルカトラズの監獄に送られてしまいます。
そこで彼は優秀で真面目(といっていいのか?)な学生にも関わらず、
脱走計画に巻き込まれてしまうのです。
この辺りは結構リアルなお話。
ところが、そこからまた私達は、不可思議な幻想世界に放り出されてしまいます。


曰く、「パンプキン王国」。
どう見ても「日本」が舞台に思えますが、
アルカトラズがなぜ突然日本になる・・・??
そして見え隠れする「原子爆弾」の恐怖。
原爆だから、日本なのか。
もしかすると、このアルカトラズというのは「軍艦島」?
その辺りまでは見当がついたのですけれどね。
どこまでがリアルでどこまでが幻想なのかよくわからない。
この辺りが、島田荘司氏の真骨頂であります。
最後の最後の真相が明かされる部分には
本当に驚かされます!!


この本の解説で伊坂幸太郎さんが
「誤解を恐れず言うならば、章ごとのつながりはかなり無茶です(笑)」
と述べていますが、確かに・・・。
だけどその無茶な展開が本作の醍醐味でもありまして、
島田荘司ファンはそこが好きなわけですよね!!


科学であり冒険であり、ファンタジーであり、歴史である。
そして、何よりもミステリでエンタテイメント!! 

好きです!!

「アルカトラズ幻想 上・下」島田荘司 文春文庫

満足度★★★★★

寄生獣

2015年06月17日 | 映画(か行)
寄生か、共存か



* * * * * * * * * *

連載完結から20年を経て映画化されたという本作。
公開時はパスしてしまいましたが、
すでに後編を上映中の今、やっと拝見しました。
これは、その20年前でなく、
CG技術がしっかりと進化した今になって映画化されたということに
非常に意義があると思いました。



人間の脳を乗っ取って肉体を操り、
他の人間を捕食するという謎の寄生生物、パラサイト。
平凡な高校生・泉新一(染谷将太)も、一匹のパラサイトに襲われます。
しかし、“それ”は脳を奪うことに失敗。
そのまま右腕に寄生し、自らミギー(阿部サダヲ)と名乗ります。
困惑した真一ですが、次第に友情に近い感情を抱くように・・・。



人を食む寄生獣はかなりおぞましいのですが、
ミギーはちょっと愛嬌もあって面白い。
彼はつまり、寄生しそこねた出来損ないであり特異体であるわけなのですが、
寄生している真一が命を落とすと自分自身も死ぬことになってしまうわけなので、
新一の身を守るのです。
そんなわけで、二人(?)は寄生というよりも
共生関係になっていく。



一方寄生獣側もいろいろな個性があって、
中でも田宮良子(深津絵里)は、人間との共生の道を探っている。
そんな彼女にとって、真一とミギーのあり方が気になるわけです。
しかもあろうことか彼女は妊娠している!! 
寄生された人間同士の間でできる子供はやはり人間であるはずだが・・・。
感情を持たない彼らだけれど、母となることで何かが芽生えていくのかどうか・・・、
やはり先が気になりますね!



真一と母の関係のこともあり、
このような恐ろしげな映像が溢れた作品でありながら
本作のサブテーマが“母性”というところがまた、魅力的です。
全く頼りげない新一が、ある事件を機に変わっていきます。
そういうところを染谷将太さんが半端なく演じきっていました。
ん~、でも、死んだ子犬を「ただの肉」と言うようになってしまった新一は、
この先どうなってしまうのだろう。
この辺りも気になる所。
奇をてらった映像だけに頼るわけでなく、
内容的にもぜひ続きを見たくなってしまう本作なのでした。
東出昌大さんの、とんでもない役柄にもびっくり!!



寄生獣 DVD 通常版
染谷将太,深津絵里,阿部サダヲ,橋本 愛,東出昌大
東宝


「寄生獣」
2014年/日本/109分
監督:山崎貴
脚本:古沢良太・山崎貴
原作:岩明均
出演:染谷将太、深津絵里、阿部サダヲ、橋本愛、東出昌大


トゥモローランド

2015年06月15日 | 映画(た行)
かつて未来に憧れた大人たちのためのファンタジー



* * * * * * * * * *

バッジに触れた瞬間表れる未知の世界。
予告編を見てワクワクしましたが・・・、
実際に見るとその時以上の感慨はないような・・・。



17歳ケイシー(ブリット・ロバートソン)は、
自分の荷物の中に見慣れないピンバッチが紛れているのを見つけます。
バッジに触れたケイシーは、
テクノロジーの発達した未知の世界「トゥモローランド」に迷い込みますが、
程なく戻ってしまいます。
そんな時、アテナ(ラフイー・キャシディ)と名乗る謎の少女が、
再びトゥモローランドに行きたければ、
フランクという男を尋ねろというのです。
しかし、訪ねたフランク(ジョージ・クルーニー)は、
夢を失った中年男で・・・。



アテナのパワフルでキュートな様がとても楽しかった。
そう遠くない未来に、本当にこんなふうなロボットが、
人間に混じって生活する世界が来るのでしょうか?
そう言えばドラマ「エクスタント」に登場するロボット少年役ピアース・ガニォンが、
ケイシーの弟役で出ていました。
ドラマではロボット役ということもあって極力無表情なのですが、
こちらは表情豊かで可愛かった!!


何が飛び出すかわからない、
おもちゃ箱をひっくり返したような世界観。
確かに非常に楽しくはありましたが、
「感動」とまでは行かないような・・・。
私達が子供の頃、確かに未来は輝いていました。
様々なテクノロジーの発達とともに、
人々は豊かで幸福な生活を送っているに違いない、と。
けれど、実際はそうでもないんだなあ・・・。
何時の世にも人は争うものだし、
依然としてある貧富の差、差別。
始めから有り余るほどのテクノロジーに囲まれた世界に生まれてきた今の子供達は
未来に何を夢見るのだろう。



・・・どうも本作は、かつて未来に憧れた大人たちの、
ノスタルジーにしか過ぎないような気がします。


「トゥモローランド」
2015年/アメリカ/130分
監督:ブラッド・バード
出演:ジョージ・クルーニー、ヒュー・ローリー、ブリット・ロバートソン、ラフイー・キャシディ、トーマス・ロビンソン、

満足度★★★☆☆

「想像ラジオ」いとうせいこう 

2015年06月14日 | 本(その他)
死者たちのことばは、思いの外優しい

想像ラジオ (河出文庫)
いとう せいこう
河出書房新社


* * * * * * * * * *

深夜二時四十六分。
海沿いの小さな町を見下ろす杉の木のてっぺんから、
「想像」という電波を使って「あなたの想像力の中」だけで聴こえるという、
ラジオ番組のオンエアを始めたDJアーク。
その理由は―
東日本大震災を背景に、
生者と死者の新たな関係を描き出しベストセラーとなった著者代表作。


* * * * * * * * * *

本作は、キノベス!2014第一位を始めとして
様々な賞を受賞したベストセラーです。
というのも、あの3.11東日本大震災に由来するストーリーで、
確かに私達日本人にとって大切な物語なのです。


・・・こんばんは、ただ今草木も眠る深夜二時四十六分です。
いやあ、寒い。
凍えるほど寒い。
ていうかもう凍えてます。



・・・と、軽妙な語りで始まるものの、
このDJアークのおかれた状況というのが異様なのです。
街を見下ろす小山に生えている杉の木のてっぺんに
仰向けになって首をのけぞらせたまま町並みを逆さに見ている・・・。
そんな悲惨な状況で身動きもできず、
ひたすらラジオのDJを流しているという・・・。


つまり、彼は地震のあとの大津波にのまれ、
この樹のてっぺんに引っかかったまま、
実は亡くなっているのです。
そうして、このラジオのリスナーとして、メッセージを寄せているのも
同じくこの震災で亡くなった人々。
物言わぬはずの死者たちの語りはしかし、
死の苦しさや恨みつらみではなく、
生前のふとした日常の思い出話や家族の安否。
優しさと切なさが交差します。
それは癒やしであり、祈りでもあるような・・・。


そうではあるのですが、
DJアークがいつまでもこんなところでDJを続けているのは、
やはり何か心残りがあるようなのです。
夜と朝の間の静寂、
そんな時に彼のラジオを聞いてみたい気がします。


本作にはまた、被災地に集うボランティアたちの話も描かれています。
ボランティアという言葉の裏にふとにじむ「偽善」的なもの。
それは被災者のためではなく、自己満足のためなのではないか・・・。
そんなことを言ったらボランティアがいなくなってしまう!! 
つまりはそのように自問することができているのなら大丈夫、
そんな気もします。
答えのある問いではありません。
でも常に問い続けて行くべきことなのかもしれません。

「想像ラジオ」いとうせいこう 河出文庫
満足度★★★★☆

ハッピーフライト

2015年06月13日 | 映画(は行)
組織の中の人と人



* * * * * * * * * *

私、本作をなんとなくドジなCAの成長物語のようなもの・・・
と思い込んでいたのですが、違いました。



羽田からホノルルを目指して、離陸しようとしている航空便。
機長昇格が間近の副操縦士・鈴木(田辺誠一)、
その教官役である機長・原田(時任三郎)。
新米CAの斎藤(綾瀬はるか)。
そしてグランドスタッフや整備士たち。
空港で働く様々な人々やトラブルの様子を捉えながら、
なんとか定刻通りに航空機は離陸。
しかし、途中で機体にトラブルが発生し・・・。



私はいつも飛行機に乗るときに、
「やっぱり旅行なんかよせばよかった」
と軽い後悔に襲われます。
未だにやっぱりちょっと怖い。
けれどもやっぱり格別な旅のワクワク感というのもありますね。
本作の離陸までの描写は、
そうした緊張感やらワクワク感がリアルに感じられて、すごく良かったと思います。



そして、様々な職種の人々がそれぞれの職務に励むからこそ
安心で快適な旅をすることができるのだということがよ~く分かりました。
空の旅を支えるのは何もパイロットやCAだけではない。
当たり前のことではありますが、
眼に見えない部分はたしかに意識しづらいものです。
各所にスポットを当てた本作の構成は正しい。
特に本作中で、窓際族的オペレーション・ディレクターの岸部一徳さん。

彼が、落雷で多くのPCがダウンした時に、俄然これまでの経験で知恵を巡らせ部下を引っ張っていく。
そんなシーンがなんとも心地よかった。
時任三郎さんの機長もカッコイイなあ・・・!
(若い頃からのファンなもので・・・)
ベテランが自らの知識と経験を持って若い人を支えようとする。
時には厳しく、また時にはそっと背中を押すように・・・。
これはそうした組織の人間づくりの物語でもありました。
そしてなおかつエンタテイメント。
そう、楽しいことが何よりです!
意外と満足度高いです。



「ハッピーフライト」
2008年/日本/103分
監督:矢口史靖
出演:田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子

社会度★★★★☆
満足度★★★★★

予告犯

2015年06月11日 | 映画(や行)
シンブンシ、キタww



* * * * * * * * * *

動画サイトで新聞紙の頭巾で顔を隠した謎の男が、犯行を予告します。
それは、食品店でゴキブリを揚げた油で品物を出したのを自慢気に投稿した若者や、
30を過ぎて就職活動している人をバカにした投稿者、
そしてまた、集団食中毒を起こしたあげく開き直った食品加工会社の社長
・・・このようなものに対して制裁を行う、というもの。
そしてまたその制裁を行うところが動画で投稿されるので、
あっという間にアクセスが膨れ上がっていき、社会現象になっていきます。
サイバー犯罪対策課の捜査官吉野(戸田恵梨香)が、捜査開始。



現代の必殺仕事人めいた“シンブンシ”チームは、
産廃処理場の仕事で知り合った若者たち。
ゲイツ(生田斗真)、
カンサイ(鈴木亮平)

ノビタ(濱田岳)、

メタボ(荒川良々)、

そしてフィリピンから来たヒョロ(福山康平)。
それぞれの事情からまともな仕事に付くことができず、
社会から見放されたような境遇が呼び合ったとでもいいましょうか・・・
不思議な絆で結ばれていくのですが、
彼らの犯行は実は単なる正義気取りなのではなく、
ある一つの目的があった・・・。
まさに現代日本の状況の中で生きる作品。


ゲイツの事情も悲惨過ぎるほど悲惨・・・。
にしてもこんな真面目で優しい青年がきちんと生きられない社会はおかしい。
すでに憲法違反のこの日本なのでは・・・。
吉野の妙にタカビーで独断的な態度が始めちょっと鼻についたのですが、
彼女にも彼女の事情がありましたか・・・。
ひたすらゲイツを追い、追いかけられる二人のシーンは
なかなかイカしています。
ネットと言う媒介で直接的に逢うことのない捜査陣と犯人が、
初めて対峙し、“走る”という最も生々しい対決をする時・・・
何かふしぎな共感が生まれるような・・・。


自尊心を傷つけられて、
それでいっそう頑張ろうと思える人と、思えない人と・・、
確かに人それぞれですね。
そんなにムキになって頑張らなくても生きやすい世の中であって欲しいです。


鈴木亮平さんは、包容力のある夫とかお兄さんも似合うし、
こんなやさぐれた感じの役も、クレイジーな筋肉男も似合う。
近頃かなり気になる存在です。
でも、役柄によって、極端に痩せたり肉をつけたり・・・、
体調を崩さないか心配になってしまいます。
程々でいいんですよ・・・。
演技で十分カバーできます!!


さて、そしてまたWOWOWにて同じく「予告犯」のドラマが始まりました。
こちらの“シンブンシ”は東山紀之さんで、
言ってみれば本作生田斗真“シンブンシ”の意思を継いだ。
この東山“シンブンシ”の本業が、な、なんと・・・!! 
今後どんなドラマが繰り広げられるのか。
こちらも楽しみです。

「予告犯」
2015年/日本/119分
監督:中村義洋
原作:筒井哲也
出演:生田斗真、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳、荒川良々、福山康平
社会問題度★★★★☆
仲間との絆★★★★☆
満足度★★★★☆