映画と本の『たんぽぽ館』

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「時生」東野圭吾

2015年01月07日 | 本(ミステリ)
時をさかのぼれたら

時生 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社


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不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、
宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。
どうしようもない若者だった拓実は、
「トキオ」と名乗る少年と共に、
謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。
過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。


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本作、単行本出初出版された時は「トキオ」とカタカナだったのですが、
文庫化の時に漢字に改題されたのだそうです。
「トキオ」はやっぱりジュリーのイメージが強いからかな?
それでもいいんですけどね。


不治の病で昏々と眠り続ける息子の最期の時が迫っている時、
宮本拓実は妻に20年以上前の記憶を語り始めます。
それはまだ結婚前、親に見捨てられたと思い込み、
ひねくれて何に対しても投げやりだった拓実。
そんな彼の前に「トキオ」と名乗る少年が現れる。
正体不明のこの少年を怪訝に思いながらも、
どこか親しみを感じてしまう拓実は、
トキオともに、何か危ない事件に巻き込まれ行方不明となった
恋人千鶴の行方を探すため、大阪へ向かいます。


泣きたくなってしまうくらいにいい子なんですよね、このトキオくん。
それというのも、彼は両親の愛を一心に受けて育ったからに他なりません。
そう、このトキオこそが、20年後の昏睡状態の拓実の息子であるわけです。
時をさかのぼり、20年前の自分の父親を助けに来たトキオ。
不思議でステキな物語でした。


20年前といっても、本作の初出は2002年。
とすると今から30年以上前が舞台ですね。
だから、パソコンや携帯電話が夢のように語られていたりします。
ほんの30年前には、そういうものがまだ何もなかった。
思えば情報の激変の時代を私達は生きているのですねえ・・・。

「時生」東野圭吾 講談社文庫
満足度★★★☆☆